イブラの手術とメルカートの方針について

ズラタン・イブラヒモビッチデ・ケテラエルジャンルカ・スカマッカ
ミランの公式サイトにて、イブラヒモビッチが左膝の手術を受けたこと、およびその回復に要する期間が「推定7~8カ月」であることが発表されました。

今シーズンのイブラは昨季に引き続き怪我に悩まされ、特にシーズン後半戦(1月以降)は約300分の出場時間に止まるなど、コンディション不良は明白でした。

そのためシーズンを終え、オフに入ったところで手術による完治(膝のコンディション回復)を目指すという流れは個人的にも予想の一つとしてあったのですが、この離脱期間の長さは流石に想定外。最初に知った時は絶句してしまいました、

少なくともこれを書いている時点で、イブラの来シーズンの去就についてはっきりした報道は見られません。ただ、複数報道によればあくまでイブラは現役続行を希望しているとのことです。

現時点で考えは変わらない。イブラは辞めない――Daniele Longo

イブラヒモビッチが受けた膝の手術は、7~8カ月でピッチに戻れるという答えを出した。イブラがシーズン終了後すぐに手術を受けたのは、回復期間を短縮して早くピッチに戻ろうとしたためである。
本人は辞めるつもりはなく、ミランでプレーを続けることが彼の意思だ。一方、クラブも契約更新の問題でズラタンに門戸を閉じることはないだろう。現時点で最も可能性が高いのは、両者が回復の具合を見ながら、どのような契約をいつ結ぶか話し合うことだろう
――milannews.it



もちろん、ただでさえ復帰に要する期間が長い上、年齢によるコンディション管理の難しさをも考えるとその苦労は想像を絶します。そのため復帰の可否に関しては予断を許さない状況といえますね。

しかしながらイブラのこれまでの実績を踏まえれば、不屈の精神で戻ってくることは十分にあり得る話であって、個人的にも彼の勇姿を見続けたい思いは今なお強いです。これは彼のモチベーションに依る部分もとても大きいだけに、引き続き注目していきたいと思います。



他方、この一件はクラブにとっても今夏のメルカートの方針に重大な影響を及ぼし得るものです。
仮にイブラがミラン残留を果たしたとしても、プレー可能になるのは早くとも年明けでしょう。また、年齢により懸念される復帰後のコンディションを考えれば、彼を端からピッチ上の主戦力としてアテにするのは得策とは言えません。

以上の点を前提として来夏のミランのCF編成を考えると、まずジルーが今季に引き続きレギュラークラスとして確定です。
そして、今夏はリバプールからオリギの加入が決定的とされています。ジルーとは主に期待される役割が異なるタイプのCFであり、上手くハマればジルーと並んでレギュラークラスとして計算し得ますね。

ここで、問題となるのは「3人目のCFは誰になるか」です。
今季にその役割を務めたのはレビッチでした。イブラ、ジルーが離脱した今シーズン序盤、CFとして出場したレビッチは持ち味のダイナミズムを武器にチームに貢献。イブラやジルーとは異なるタスクを任せられる彼は貴重であり、第3CFとしてかなり有り難い存在でした。
しかしながら、復帰したジルーと入れ替わるように負傷離脱して以降はレギュラーに定着できずに復帰と離脱を繰り返し、最終盤はスーパーサブとしての役割に終始。全体的に期待外れのパフォーマンスに終わったことで今オフシーズンでの放出の可能性が取り沙汰されています。

また、現在のミランには昨冬に加入した若手FWラゼティッチがいますが、今のところピオリ監督から戦力として扱われているとはいえず、来シーズンはレンタル移籍で経験を積むことになるでしょう。

今季のミランは幸いにもジルーがシーズン途中からフル稼働してくれたため事なきを得ましたが、第3CFの存在というのはシーズンを安定して過ごす上で重要になります。そのため仮にレビッチ、ラゼティッチを放出する場合、代わりを補強してしっかりとその穴を埋めて欲しいところです。



それでは具体的に、現在のミランのCF補強候補についてホットな名前を2人見ていきましょう。

まずはサッスオーロに所属するスカマッカです。彼に対してはミランの他にインテルが強い興味を示していると報じられており、ともすればスカマッカを巡ってミラノ勢がリーグ戦に引き続き激しく競争するかもしれないとのこと。



しかしながら、第3CFとして考えるとスカマッカは身に余る存在です。若手とはいえ即戦力(主力)クラスですからね。
仮にオリギを左ウイングもこなせる選手(今季のレビッチみたいな感じ)として第3CF扱いするならば、レギュラーとしてスカマッカを迎え入れるシナリオも考えられますが…。現時点ではちょっと考え辛いかなと思いますね。


続いて、2人目の獲得候補としてここではデ・ケテラエルを挙げさせてもらいます。

デ・ケテラエルは所属先のクラブ・ブルージュにて、今季はCFをメインポジションにしてプレー。公式戦49試合に出場して18ゴール10アシストを記録しました。

【21-22】デ・ケテラエル_出場ポジション
――今季のデ・ケテラエルの出場ポジションおよび試合数・得点・アシスト(『transfermarkt』より)

ただ、彼はCFだけでなく2列目のあらゆるポジションでプレーできるポリバレント性を武器の一つとしています。上図の通り今季もトップ下や両サイドでそれぞれ数試合スタメン出場しているとのことですし、また昨季に関しては2列目でのプレーの比重が高くなっています。

【20-21】デ・ケテラエル_出場ポジション
――昨季のデ・ケテラエルの出場ポジションおよび試合数・得点・アシスト(『transfermarkt』より)

ミランにとって、CFの他に2列目の様々なポジションでも起用できそうな彼を持て余すことはないでしょう。最初は第3CFを含む様々なポジション・役割を試しながら徐々にカルチョの水に慣れてもらい、年明けからはイブラ(※残留したと仮定した場合)の復帰に応じて臨機応変に起用ポジションの比重を変えるなんてことも期待できます。
個人的に、現在噂されるアタッカー候補の中では一番気になっている名前ですね。

イブラヒム・バ(オランダ、ベルギーを担当地区とするチームスカウト)からのポジティブな報告もあり、ミランのフロントはデ・ケテラエルを非常に気に入っている――Daniele Longo




今回言及したスカマッカとデ・ケテラエル、両者の共通点としては「若さ」と「移籍金の高さ」が挙げられます。
若くして実績のある選手の市場価値は高くなるのが自然ですし、この手の選手を獲ろうとするならある程度の出費は避けられません。
そして、ミランフロントが長期に渡って活躍し得る有望なストライカーを熱望しでいることは確かですから、ここは出来る限り妥協せずチームにとって最適な人物を確保して欲しいと思います。

それでは今回はこの辺で。

6Comments

Aki

いつもありがとうございます。
イブラに関しては色々と驚愕でした。来シーズン前半でれないことが確定というのも大ショックですが、今シーズン後半ずっと想像を絶する苦痛を背負っていた姿には、まさに漢を感じます。ぜんぶカッコいい…

新FWのメインターゲットはその2人なのでしょうね。オーナー交代までは具体的な動きができないと思うので、他ポジも含めて報道は眉唾で読んでいます。
スカマッカは価格次第ですがイタリア人CFとしてはベストですが今後CLでの躍進を目指すチームのCFとしては物足りなさを感じています。
デケテラエールの方が期待感は大きいでしょうか。

ジルー、イブラ、オリギ(レビッチ?)がいることを前提とすると今年は大きな投資はしないと考えています。報道ないけどベロッティが最適解かもしれませんね。

余談ですが、上記報道を見た時にイブラヒム・バがスカウトをしていることを初めて知りました。懐かしい名前です。

  • 2022/05/27 (Fri) 10:48
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名無しのミラニスタ

スクデット発狂して死ぬ程酒飲みましたよ未だに嬉しいですよ延々嬉しい

動きの変調やプレーの質の低下
そしてプロ意識の塊である彼がシーズン中に肥大化したのを見て大き目の問題を抱えてるとは思ってましたが
ちょっと想像を超える問題で驚いてます
もう何度も手術してる上にこんな事をしたら後の人生にまで障害が出る可能性がある
イブラはそろそろ自分の事も大切にして欲しい

ただそんな中でも責任から逃げずグループを支えミランの歴史を支え続けてくれた事に心からの感謝をしたい
トッティも言ってましたがプレイヤーとしては今季本当に苦しかったはずです
イブラが帰って来てから様々な事件があり変革があり衝突があり
彼の帰還と共にどんどんポジティブな流れが出始めもしかしたらと信じはじめる人も増えた
ミラニスタの多くは祈りに近い希望を持ったはずです
デルビーの興奮も最高潮で若手はどんどん伸び試合が楽しくて楽しくてそんな最高の2年半だったと思う
敵としても味方としても古き良きミランを知るイブラが「俺の知るミランに戻す」と豪語し行った事は簡単な事じゃない
昨今の世の中は経歴や歴史を蔑ろにする傾向も見られますが大事なものなんだと言いたい
過去の栄光まで忘れたら人生とは何なのか何を積み上げてるのか分からなくなる
多くのレジェンドやスタッフ達が命をかけて築き上げたミランの栄光は誇示するべきもので
忘れようとしたり馬鹿にされていいものじゃない

カルチョとは非常なもので彼でも切られる時は切られる今までもそうでした
マルディーニですら綺麗なお別れは出来なかった
ミランのイブラとしてだけでなくイブラヒモビッチ個人のファンでもある私としては
もしお別れでも仕方ないとはいえ少し辛い、というか大分辛い
出来る事ならやれるだけやってミランで引退して欲しいと言うのが心からの願いです

カカニスタ22

カカニスタ22

To Akiさん

コメントありがとうございます。

仰る通りオーナー問題が解決するまでは補強に動くのは難しいですし、ましてビッグネーム獲得は尚更でしょうね。致し方ない面も大きいとはいえ、正直この買収話はタイミングが悪いというかなんというか…。

ベロッティはフリーというのが大きな魅力ですね。ただ、陣容のバランスという点では少し重たくなるかもしれません。オリギがミランの左サイドもこなせれば良いんですけどね。

  • 2022/05/27 (Fri) 20:07
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カカニスタ22

カカニスタ22

To 名無しのミラニスタさん

お久しぶりです。コメントありがとうございます。

今シーズンだけで見ればイブラのピッチ上での貢献は限定されたものの、ここ2年半のイブラのピッチ内外でのパフォーマンスが現チームの礎を築いたのは間違いないと思われます。「ミランでプレーする誇り」といった旨を口にする選手は今も昔も多い一方、それを本当の意味で理解し体現した選手は限られるわけですが、イブラはその数少ない一人ですよね。彼がその身を削って伝えたメンタリティは確実に次代のミラン選手たちに伝播したはずですし、願わくはそれが半永久的にチームに受け継がれていって欲しいと思います。

そしてイブラ個人に関していえば、おそらく今季のチームパフォーマンスには満足すれど個人としては決して満足できていないのでしょうね。イブラのこれまでの言動や推察される性格を考えれば納得がいきますし、来季は個人としてもピッチで結果を残してやろうという思いは強いはず。仰るように、やれるだけやってからミランで気持ち良く引退して欲しいですね。

  • 2022/05/27 (Fri) 20:25
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hiromiffy

ファンバステンがアイドルのワシが上書きされる程の渋さ…
絶対ミランで引退して欲しい。

  • 2022/05/27 (Fri) 20:46
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カカニスタ22

カカニスタ22

To hiromiffyさん

コメントありがとうございます。

彼のカリスマ性は唯一無二だと思います、ホントに。
僕もミランで現役を終えて欲しいと心から思います。

  • 2022/05/28 (Sat) 15:52
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