【ダブル主演の躍動】ヴェローナ対ミラン【2021-22シーズン・セリエA第36節】
今回はセリエA第36節、エラス・ヴェローナ対ミランのマッチレビューを行いたいと思います。
スタメン

基本システム:ヴェローナ「3-4-2-1」、ミラン「4-2-3-1」
スタメン

基本システム:ヴェローナ「3-4-2-1」、ミラン「4-2-3-1」
○左サイドの攻撃
まずはミランの攻撃について。
この試合におけるミランの組み立ては主に左サイドを使って行われます。メニャン+両CBの3枚による最後方での構成を基本にトモリがボールを前に持ち出し、そこからレオン、テオ、クルニッチ、ジルー等が中心となって相手の守備を崩していきました。

――例えばこの場面。ヴェローナはシメオネとカプラーリがミランの両CB、バラクがケシエをマークする形が基本。そこでミランはGKメニャンを含めたバックラインのパス回しから、サイドに開いたCBへと展開してマークを外す

――その後の場面。パスを受けたトモリはそのまま前方にボールを持ち運んだ
この試合のポイントとして、「レオンの使い方」が普段とは異なった点が挙げられると思います。基本的にマンツーマン志向の強い相手に対してミランはCF(ジルー)へのロングボールを多用する傾向があり、そのためレオンもそのこぼれ球を拾うため内に絞ってプレーする傾向が強いわけですが、今回の彼はサイドを起点に攻める形が多く見られました。
また、こうしたレオンのアウトサイドでのプレーを活かす為、周囲が連動して動きます。まずテオは積極的に内に潜ることで、自身を基本的にマークする右WBファラオーニを誘引。そうしてサイドのレオンのためにスペース・パスコースを提供していく、と。

――例えばこの場面。テオが内に絞ってファラオーニを引き付けながら、カラブリからパスを引き出したシーン。その後ジルーにワンタッチで落とし、そのジルーは左サイドのレオンに展開する

――その後の場面。周囲の味方の動きにより、ボールを受けたレオンの周りにスペースを生じさせる。ここからレオンはドリブルを仕掛け、そのままゴール前に侵入してあわやPKかというシーンを作り出した
そして、クルニッチは主戦場を左ハーフスペースとし、高めの位置を取ることで自身のマーク担当であるタメゼを引き付けて中盤にスペースを作り出します。その後は自身が下がってそのスペースで楔のパスを受けるか、もしくは彼の代わりにジルーやテオが当該スペースを使用することで、ボールを前進させていくと。
周囲に多く人を配することで、クルニッチのポジショニングセンスや球離れの良さが活かされる結果となりました。

――例えばこの場面。クルニッチが高い位置を取りタメゼを引き付け、空いた中盤のスペースにはジルーが下りてきてテオからパスを引き出す

――その後の場面。こぼれ球を拾ったクルニッチはタメゼをいなしがら、飛び出したレオンにスルーパスを供給した
一方、ヴェローナもレオンに対しては十分に警戒しているようで、押し込まれた際にはバラクがレオンに付くなどして極力1対1(レオン対カサーレ)の状況を減らす試みが見られました。そのためこの形から決定機に繋げるのは中々苦労しましたが、好調のレオンが前向きに仕掛ければまず奪われることはないため、ミランとしては概ね狙い通りの形が作れていたのではないかなと。
特に前半は上記の形で相手をゴール前まで押し込み、CKを次々と獲得していきました(それらのCKから得点が生まれないのが残念ですが…)。
○右サイドの攻撃
一方、ミランの右サイドの攻撃はどうか。
先述の通りミランはクルニッチが左サイドを主戦場として崩しに絡むため、右サイドではトナーリが高い位置を取りバランスを取ります。アンカーにケシエを置き、クルニッチとトナーリの両インサイドハーフのような形ですね。
また、トナーリの強靭なフィジカルやダイナミズムはこうした役割においても効果を発揮します。上述の左サイド主体の攻撃の中で、トナーリは逆サイド方面から積極的に飛び出すなどしてゴール前の人数を担保。それと同時にロングボールのターゲットにもなります。そして前者の役割はドッピエッタという形で実を結び、後者の役割も前半15分に実を結びかけました。

――当該シーンについて。最前線で自身のマーク担当であるイリッチと競り合うトナーリ。この後こぼれ球を拾いネットを揺らした(※惜しくもオフサイド判定によりノーゴール)
また、右からの組み立てにおいて、トナーリの高めの位置取りが活かされるシーンというのもありました。

――例えばこの場面。トナーリの高い位置取りにより相手のイリッチとCBチェッケリーニが押し下げられ、サレマがライン間で一時的にフリーとなりパスを引き出す。この後、ボールは右サイドのカラブリアに展開される

――その後の場面。トナーリとサレマのローテーションにより相手の守備を乱しつつ、スルーパスを引き出した
○被カウンター
一方、ヴェローナは押し込まれたり後方からのビルドアップが上手くいかなかったりという状況が続く中、カウンターに活路を見出そうとします。
この局面において主導的な役割を担うのは主にカプラーリです。ただしチーム全体が押し込まれた際には、基本的にカラブリアを始めミランのDF陣がしっかりと彼へのパスを警戒しているため中々上手くいきません。

――例えばこの場面。自陣ペナルティエリア内でボールを奪ったヴェローナは前方のカプラーリにボールを預けようとするが、カラブリアによりインターセプトされた
他方、ミランもジルーのフリックが味方と合わないなど嫌な形でボールを失う状況というのも散見され、その際にはヴェローナのスピーディーなカウンターが火を吹きます。すると38分、ミランはボールロストの流れから相手に持ち込まれ、最後はファラオーニに決められヴェローナが先制しました。

――当該シーンについて。警戒していたカプラーリにライン間でボールが渡ってしまう
ミランとしてはテオが流動的に中へ動くことで、被カウンター時はヴェローナ側右サイドのスペースが弱所になり得ます。
上記のシーンにおいては当初クルニッチがファラオーニをマークしていたのですが、ボールが右から左へと移動する過程で彼は所定の位置に戻ろうとしました。

――右サイドでフリーのファラオーニ
しかし、ここからスピーディーにヴェローナ側左サイドを崩されてしまい、最終的にゴール前にてファーサイドから飛び込んだファラオーニにクロスが渡ってしまった、と。
○3得点
ミランは1点ビハインドとなったものの、気落ちすることなく攻め続けます。すると前半アディショナルタイム、続く後半早々の49分にトナーリがドッピエッタをマークし、すぐさま逆転に成功しました。

――1点目のシーンについて

――2点目のシーンについて
どちらのシーンもレオンの仕掛けから最後にトナーリがクロスに合わせるという形でしたが、これは先述の通りフィニッシュの形として想定していたものでしょう。チームの狙いが結実したゴールだったと思います。
その後、逆転に成功したミランはテオの流動性を落としたりトナーリが後方に下がったりして被カウンターのリスクを下げていきます。対するヴェローナは前半よりボールを握り押し込む時間帯を増やしていきますが、ミラン守備陣の粘りを前に決定機には至りません。
そうこうしている内に時間が過ぎ、84分にミランはイブラとフロレンツィを投入。すると直後の86分、フロレンツィがゴールを奪いミランが決定的な3点目をゲットしました。

――3点目のシーンについて。前方にドリブルで持ち運ぶフロレンツィに相手DFが前に出て対応。それにより生じた背後のスペースを認識したフロレンツィは、サイドのメシアスにボールを預けてスペースに飛び込む

――その後の場面。メシアスから正確なリターンを受けたフロレンツィはそのままエリア内に侵入し、強烈なシュートをネットに突き刺した
前方にスペースを見つけ、ワンツーなどを駆使してそこに侵入する形はフロレンツィの十八番といっていいですし、ここではその持ち味が十分に発揮されたといって良いと思います。余談ですが、フロレンツィはサレマよりもメシアスとの相性が良さそうな印象を受けますね。
さて。そんなわけでミランが3得点を奪い、試合終了。
ヴェローナ1-3ミラン
雑感
見事な逆転勝利を見せたミラン。
VARによるゴール取り消し、その後の失点と、勢いを失いかねない状況に続けて直面しながらも集中を切らさずにプレーできていたのは素晴らしかったと思います。中でもこの試合の「主演」を務めたレオン、そしてトナーリは今季の成長を象徴するパフォーマンスだったのではないかと。
そして、今回3点も取れたのはもちろんレオン、トナーリのプレーに因る部分が大きかったわけですが、彼ら2人だけでなくクルニッチ等「脇役」がしっかりと自身の役割を遂行したことも理由の一つでしょう。戦術的要請に応えてくれた彼らの働きにより、殊に攻撃時のチームパフォーマンスが向上していた印象を受けました。
続いて守備面に関して、少々気になったのはカラブリアのプレーです。もちろん良いプレーもあれど、相手の仕掛けに対応し切れずに躱され、チームとしてピンチに陥る場面が何度か見られました、今一度好調時の守備パフォーマンスを取り戻してもらいたいと思います。
一方、そんな中でしたが両CBは安定したパフォーマンスを披露。しかもトモリ、カルルはどちらも累積警告リーチという厳しい状況にありながらも大体において落ち着いたプレーを見せ、イエローを貰わずに試合を終わらせました。次節も何とかこの状況を凌ぎ、最終節まで出場し続けて欲しいと思います。
さて。今節の勝利を受け、優勝までに必要な勝ち点が残り「4」となりました。
アタランタとサッスオーロはいずれも難敵ではありますが、今のミランであれば乗り越えられる壁ではないでしょうか。大いに期待していきたいですね。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。
まずはミランの攻撃について。
この試合におけるミランの組み立ては主に左サイドを使って行われます。メニャン+両CBの3枚による最後方での構成を基本にトモリがボールを前に持ち出し、そこからレオン、テオ、クルニッチ、ジルー等が中心となって相手の守備を崩していきました。

――例えばこの場面。ヴェローナはシメオネとカプラーリがミランの両CB、バラクがケシエをマークする形が基本。そこでミランはGKメニャンを含めたバックラインのパス回しから、サイドに開いたCBへと展開してマークを外す

――その後の場面。パスを受けたトモリはそのまま前方にボールを持ち運んだ
この試合のポイントとして、「レオンの使い方」が普段とは異なった点が挙げられると思います。基本的にマンツーマン志向の強い相手に対してミランはCF(ジルー)へのロングボールを多用する傾向があり、そのためレオンもそのこぼれ球を拾うため内に絞ってプレーする傾向が強いわけですが、今回の彼はサイドを起点に攻める形が多く見られました。
また、こうしたレオンのアウトサイドでのプレーを活かす為、周囲が連動して動きます。まずテオは積極的に内に潜ることで、自身を基本的にマークする右WBファラオーニを誘引。そうしてサイドのレオンのためにスペース・パスコースを提供していく、と。

――例えばこの場面。テオが内に絞ってファラオーニを引き付けながら、カラブリからパスを引き出したシーン。その後ジルーにワンタッチで落とし、そのジルーは左サイドのレオンに展開する

――その後の場面。周囲の味方の動きにより、ボールを受けたレオンの周りにスペースを生じさせる。ここからレオンはドリブルを仕掛け、そのままゴール前に侵入してあわやPKかというシーンを作り出した
そして、クルニッチは主戦場を左ハーフスペースとし、高めの位置を取ることで自身のマーク担当であるタメゼを引き付けて中盤にスペースを作り出します。その後は自身が下がってそのスペースで楔のパスを受けるか、もしくは彼の代わりにジルーやテオが当該スペースを使用することで、ボールを前進させていくと。
周囲に多く人を配することで、クルニッチのポジショニングセンスや球離れの良さが活かされる結果となりました。

――例えばこの場面。クルニッチが高い位置を取りタメゼを引き付け、空いた中盤のスペースにはジルーが下りてきてテオからパスを引き出す

――その後の場面。こぼれ球を拾ったクルニッチはタメゼをいなしがら、飛び出したレオンにスルーパスを供給した
一方、ヴェローナもレオンに対しては十分に警戒しているようで、押し込まれた際にはバラクがレオンに付くなどして極力1対1(レオン対カサーレ)の状況を減らす試みが見られました。そのためこの形から決定機に繋げるのは中々苦労しましたが、好調のレオンが前向きに仕掛ければまず奪われることはないため、ミランとしては概ね狙い通りの形が作れていたのではないかなと。
特に前半は上記の形で相手をゴール前まで押し込み、CKを次々と獲得していきました(それらのCKから得点が生まれないのが残念ですが…)。
○右サイドの攻撃
一方、ミランの右サイドの攻撃はどうか。
先述の通りミランはクルニッチが左サイドを主戦場として崩しに絡むため、右サイドではトナーリが高い位置を取りバランスを取ります。アンカーにケシエを置き、クルニッチとトナーリの両インサイドハーフのような形ですね。
また、トナーリの強靭なフィジカルやダイナミズムはこうした役割においても効果を発揮します。上述の左サイド主体の攻撃の中で、トナーリは逆サイド方面から積極的に飛び出すなどしてゴール前の人数を担保。それと同時にロングボールのターゲットにもなります。そして前者の役割はドッピエッタという形で実を結び、後者の役割も前半15分に実を結びかけました。

――当該シーンについて。最前線で自身のマーク担当であるイリッチと競り合うトナーリ。この後こぼれ球を拾いネットを揺らした(※惜しくもオフサイド判定によりノーゴール)
また、右からの組み立てにおいて、トナーリの高めの位置取りが活かされるシーンというのもありました。

――例えばこの場面。トナーリの高い位置取りにより相手のイリッチとCBチェッケリーニが押し下げられ、サレマがライン間で一時的にフリーとなりパスを引き出す。この後、ボールは右サイドのカラブリアに展開される

――その後の場面。トナーリとサレマのローテーションにより相手の守備を乱しつつ、スルーパスを引き出した
○被カウンター
一方、ヴェローナは押し込まれたり後方からのビルドアップが上手くいかなかったりという状況が続く中、カウンターに活路を見出そうとします。
この局面において主導的な役割を担うのは主にカプラーリです。ただしチーム全体が押し込まれた際には、基本的にカラブリアを始めミランのDF陣がしっかりと彼へのパスを警戒しているため中々上手くいきません。

――例えばこの場面。自陣ペナルティエリア内でボールを奪ったヴェローナは前方のカプラーリにボールを預けようとするが、カラブリアによりインターセプトされた
他方、ミランもジルーのフリックが味方と合わないなど嫌な形でボールを失う状況というのも散見され、その際にはヴェローナのスピーディーなカウンターが火を吹きます。すると38分、ミランはボールロストの流れから相手に持ち込まれ、最後はファラオーニに決められヴェローナが先制しました。

――当該シーンについて。警戒していたカプラーリにライン間でボールが渡ってしまう
ミランとしてはテオが流動的に中へ動くことで、被カウンター時はヴェローナ側右サイドのスペースが弱所になり得ます。
上記のシーンにおいては当初クルニッチがファラオーニをマークしていたのですが、ボールが右から左へと移動する過程で彼は所定の位置に戻ろうとしました。

――右サイドでフリーのファラオーニ
しかし、ここからスピーディーにヴェローナ側左サイドを崩されてしまい、最終的にゴール前にてファーサイドから飛び込んだファラオーニにクロスが渡ってしまった、と。
○3得点
ミランは1点ビハインドとなったものの、気落ちすることなく攻め続けます。すると前半アディショナルタイム、続く後半早々の49分にトナーリがドッピエッタをマークし、すぐさま逆転に成功しました。

――1点目のシーンについて

――2点目のシーンについて
どちらのシーンもレオンの仕掛けから最後にトナーリがクロスに合わせるという形でしたが、これは先述の通りフィニッシュの形として想定していたものでしょう。チームの狙いが結実したゴールだったと思います。
その後、逆転に成功したミランはテオの流動性を落としたりトナーリが後方に下がったりして被カウンターのリスクを下げていきます。対するヴェローナは前半よりボールを握り押し込む時間帯を増やしていきますが、ミラン守備陣の粘りを前に決定機には至りません。
そうこうしている内に時間が過ぎ、84分にミランはイブラとフロレンツィを投入。すると直後の86分、フロレンツィがゴールを奪いミランが決定的な3点目をゲットしました。

――3点目のシーンについて。前方にドリブルで持ち運ぶフロレンツィに相手DFが前に出て対応。それにより生じた背後のスペースを認識したフロレンツィは、サイドのメシアスにボールを預けてスペースに飛び込む

――その後の場面。メシアスから正確なリターンを受けたフロレンツィはそのままエリア内に侵入し、強烈なシュートをネットに突き刺した
前方にスペースを見つけ、ワンツーなどを駆使してそこに侵入する形はフロレンツィの十八番といっていいですし、ここではその持ち味が十分に発揮されたといって良いと思います。余談ですが、フロレンツィはサレマよりもメシアスとの相性が良さそうな印象を受けますね。
さて。そんなわけでミランが3得点を奪い、試合終了。
ヴェローナ1-3ミラン
雑感
見事な逆転勝利を見せたミラン。
VARによるゴール取り消し、その後の失点と、勢いを失いかねない状況に続けて直面しながらも集中を切らさずにプレーできていたのは素晴らしかったと思います。中でもこの試合の「主演」を務めたレオン、そしてトナーリは今季の成長を象徴するパフォーマンスだったのではないかと。
そして、今回3点も取れたのはもちろんレオン、トナーリのプレーに因る部分が大きかったわけですが、彼ら2人だけでなくクルニッチ等「脇役」がしっかりと自身の役割を遂行したことも理由の一つでしょう。戦術的要請に応えてくれた彼らの働きにより、殊に攻撃時のチームパフォーマンスが向上していた印象を受けました。
続いて守備面に関して、少々気になったのはカラブリアのプレーです。もちろん良いプレーもあれど、相手の仕掛けに対応し切れずに躱され、チームとしてピンチに陥る場面が何度か見られました、今一度好調時の守備パフォーマンスを取り戻してもらいたいと思います。
一方、そんな中でしたが両CBは安定したパフォーマンスを披露。しかもトモリ、カルルはどちらも累積警告リーチという厳しい状況にありながらも大体において落ち着いたプレーを見せ、イエローを貰わずに試合を終わらせました。次節も何とかこの状況を凌ぎ、最終節まで出場し続けて欲しいと思います。
さて。今節の勝利を受け、優勝までに必要な勝ち点が残り「4」となりました。
アタランタとサッスオーロはいずれも難敵ではありますが、今のミランであれば乗り越えられる壁ではないでしょうか。大いに期待していきたいですね。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。