【報われた猛攻】 ミラン対フィオレンティーナ 【2021-22シーズン・セリエA第35節】
今回はセリエA第35節、ミラン対フィオレンティーナのマッチレビューを行いたいと思います。
スタメン

基本システム:ミラン「4-2-3-1」、フィオレンティーナ「4-3-3」
スタメン

基本システム:ミラン「4-2-3-1」、フィオレンティーナ「4-3-3」
○ミランの守備
まずはミランの守備について。
前節ラツィオ戦との比較で言うと、ポイントになったのが相手SBへの対応の仕方だったのではないかと思います。

――例えばこの場面。中央を経由して右SBヴェヌーティにボールが渡る。ここでケシエが中央から寄せに行き、ダンカンのマークを後方のトモリ背後に受け渡す
プレス時にジルーとレオンの2人がかりでヴィオラCB2枚に対応する形が基本のミランに対し、主にヴィオラはレオンの背後で一時的に浮く格好となる右SBヴェヌーティへボールを預けようとします。しかしそこにはケシエがスライドして対応し、背後もそれに連動することで継続的にプレスをかけ続けました。

――その後の場面。ダンカンがボールを受けるもトモリとケシエに挟み込まれボールロスト。ミランがボールを回収してカウンターに繋げた
ヴィオラの右SB-右インサイドハーフのビルドアップ時における位置関係はさほど変わらず、そのためミランボランチ(ケシエ)も相手インサイドハーフへのパスコースを消しながら相手SBにプレスをかけることが可能となります。そこでヴィオラとしては何度か右SBが攻め上がるなどしてインサイドハーフ(ダンカン)をフリーにさせる動きもありましたが、概ねミランの狙い通りの形が機能したのではないかと。
先述の形でプレッシャーをかけヴィオラからボールを回収、時には高い位置でボールを奪い、カウンターの場面へと繋げていきました。
○ミランの攻撃
続いてミランの攻撃(ボール保持時)について。
ラツィオ戦に引き続き右から積極的に組み立てていくミラン。それに対してヴィオラはカブラルに加えて左IHマレーが前に出てミランの2CBを牽制し、ボールをサイドに誘導。そこからの縦パスを奪いどころとして狙ってきました。
一方、ミランにとって一つ狙い所となったのがマレーの背後のスペースです。サイド誘導後は精力的に戻って斜めのパスコース・中盤スペースを埋めようとするマレーですが、状況によってはそのスペースへのパスを遮れない場面というのが生まれます。そこでミランとしては最終ラインのパス回しとダブルボランチの流動的な動きで相手の陣形を揺さぶりながら、当該スペースに入り込んだブラヒムやジルーに楔のパスを当て、速攻を仕掛けていきました。

――例えばこの場面。カラブリアがメニャンからボールを受け、前方にドリブルで運ぶ。そこから下がってきたジルーに縦パスを供給

――ジルーはワンタッチで右サイドに流れていたブラヒムに落とす。それに連動して右サイドのメシアスが中に侵入

――その後の場面。裏に抜けだしたメシアスがブラヒムからスルーパスを引き出した
大まかな流れとしては前節ラツィオ戦と共通するものの、相違点としてブラヒムに動きの幅が与えられたことが挙げられると思われます。
前節はビルドアップ時に左ハーフスペースから大きく動かず、それゆえ右からの組み立てにほとんど絡めなかったブラヒムですが、今節は上記のように右サイドにも積極的に顔を出しながらボールに絡んでいきました。それもあり、彼がボール運びの面で目立つシーンというのが散見されましたね。

――例えばこの場面。マレーの背後(アンカーのアムラバトの横)にポジションを取るトナーリとブラヒム。ここで、カラブリアからブラヒムに浮き球のパスが通る

――その後の場面。ブラヒムはワンタッチでトナーリに落とし、ライン突破。そのまま速攻へと繋げた
○後半の変更
以上のようにして、カウンター・ポゼッション両面からチャンスシーンを量産していったミラン。しかしいつもの如く決定機を中々モノにできません。
ブラヒムは上記のようにボール運びで見せ場を作るも、相変わらずゴール前ではほとんど貢献できず。またジルーやレオンも訪れた決定機をフイにしてしまい、スコアレスのまま時間が経過していきました、
そこで後半になると、ミランは比較的早い時間にメンバーを交代。56分にブラヒムとメシアスに代え、レビッチとクルニッチと投入します。
それと同時期に、ミランはボール保持の際の基本システムを両SBが幅を取る「3-1-4-2」に変更。前半はカラブリアが下がり目の位置で組み立てに絡む右に偏った3バックのような形が基本でしたが、ここからは主にケシエが下がることで3バックとなり、時にメニャンを含む4人でバックラインを構成しました。

――交代後のミランの陣形。ここでは両SBが高い位置を取り、相手を押し込む
こうした変更の効果は「ライン間のスペース」という形で1つ表れます。
それまでの形だと、2枚のミランCBにはフィオのCF+インサイドハーフ1人が寄せ、そして右サイドのカラブリアに対して左WGのサポナーラが対応するという対応関係が基本となっていましたが、今度はボランチのケシエが下がることにより対面のインサイドハーフも前に引っ張られ易くなります。すなわち中盤が空き易くなるため、そのスペースにポジションを取るクルニッチ、レオン、レビッチ等がパスを引き出していく、と。

――例えばこの場面。ケシエが下がってボールを受け、そこにボナベントゥーラ(※途中からインサイドハーフに投入)が対応しに出てくる。そこで、ケシエはいったんGKメニャンにバックパス

――その後の場面。ボナベントゥーラはそのままメニャンにまでプレスをかける。それと同時に、カルルへのパスを予期したトレイラ(※途中からインサイドハーフに投入)が前に出てくる。ここで、メニャンは中央のトナーリへのパスを選択

――そこにはアムラバトが対応にしに出てくるが、それをいなして前を向くトナーリ。これにより中盤は全て前に引き出され、がら空きとなったライン間でクルニッチがパスを引き出す

――クルニッチが速攻を開始し、惜しいシーンを作り出した
一方、これに対し相手が下がったりマークを受け渡したりなどして中盤のスペース・選択肢の制限を重視した場合、ミランはメニャンを軸にロングボールを積極的に選択。前線ではレビッチ(もしくはレオン)がジルーとの距離を近く保ちながらこぼれ球を拾う形で一度ならずチャンスを作り出していきます。
こうした攻撃は、先述の中盤背後のスペースに侵入する選手(主にクルニッチ、レオン)を警戒して相手DFが前に出てきた場合、特に効果を発揮します。というのもその際、相手最終ラインは手薄となりますからね。

――例えばこの場面。メニャンが最前線へのロングボールを選択。ここで、レオンへのパスを警戒してイゴールが少し前に出ている

――その後の場面。ロングボールは近い距離にいるジルー、レビッチのいるところに送られ、手薄な最終ラインを突く

――オフサイドとなったものの、こぼれ球をレビッチが拾いシュートチャンスを作り出した
メニャンは最前線のみならず左右に散らすなど、レジスタとしてのセンスを如何なく発揮しました。
更にミランは67分にジルーに代えてイブラを投入。また76分頃にはレオンの位置を左サイドに戻し、その一方でレビッチを右サイドに移すなど積極的に変化を加えながら先制点を奪いにかかります。
すると82分。レビッチとイブラの連動でGKにまでプレッシャーをかけた結果、GKテラッチャーノが痛恨のパスミス。そのボールをレオンが華麗にネットに流し込み、ミランが待望のゴールを挙げました。
前節に引き続き、またしてもポジション変更とレビッチ&イブラによる守備からのゴールという事で、積極的な采配が功を奏した結果となりました。
このゴール自体は相手のミスに因る部分が大きいものの、ミランの積極果敢な攻撃が実を結んだゴールといってもいいでしょうね。決定機の数からしても妥当な結果でしょう。
そんなわけで、試合終盤にゴールをもぎ取ったミランの勝利で幕を閉じました。
ミラン1-0フィオレンティーナ
雑感
超重要な一戦をモノにしたミラン。
パスミス等をきっかけにいくつか危ない場面も作られましたが、DF陣が集中した守りでゴール前のピンチを凌ぎつつ、それでも防ぎ切れない時はメニャンが最後の壁として立ちふさがりました。後半終盤、76分のシーンは象徴的でしたね。
今のミランはイブラ、レビッチを筆頭に得点の欲しい状況で使える交代カードがようやく揃い、実際、投入された彼らのプレーで勢いを付けてゴールをもぎ取るという展開が2試合連続で続いています。一方、そうした試合展開においては全体が前掛かりとなり、被カウンター等から危険なシーンを作られるリスクは高まる傾向にある、と。決勝点を狙うそうした流れの中で逆に失点を喫してしまっては元も子もありません。
ここ2試合のミランが劇的な形で勝ちを拾えているのも、DF陣を中心とする守備の基盤あってのものだと思いますし、ここにきて彼らの存在感というのは一際目立っているように思われます。
今シーズン残り3戦の間で決定力を改善しようにも限界があるように見受けられるだけに、守備の安定というのがスクデット獲得の絶対条件ではないしょうか。是非ともこのまま無失点を維持して欲しいですね。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。
まずはミランの守備について。
前節ラツィオ戦との比較で言うと、ポイントになったのが相手SBへの対応の仕方だったのではないかと思います。

――例えばこの場面。中央を経由して右SBヴェヌーティにボールが渡る。ここでケシエが中央から寄せに行き、ダンカンのマークを後方のトモリ背後に受け渡す
プレス時にジルーとレオンの2人がかりでヴィオラCB2枚に対応する形が基本のミランに対し、主にヴィオラはレオンの背後で一時的に浮く格好となる右SBヴェヌーティへボールを預けようとします。しかしそこにはケシエがスライドして対応し、背後もそれに連動することで継続的にプレスをかけ続けました。

――その後の場面。ダンカンがボールを受けるもトモリとケシエに挟み込まれボールロスト。ミランがボールを回収してカウンターに繋げた
ヴィオラの右SB-右インサイドハーフのビルドアップ時における位置関係はさほど変わらず、そのためミランボランチ(ケシエ)も相手インサイドハーフへのパスコースを消しながら相手SBにプレスをかけることが可能となります。そこでヴィオラとしては何度か右SBが攻め上がるなどしてインサイドハーフ(ダンカン)をフリーにさせる動きもありましたが、概ねミランの狙い通りの形が機能したのではないかと。
先述の形でプレッシャーをかけヴィオラからボールを回収、時には高い位置でボールを奪い、カウンターの場面へと繋げていきました。
○ミランの攻撃
続いてミランの攻撃(ボール保持時)について。
ラツィオ戦に引き続き右から積極的に組み立てていくミラン。それに対してヴィオラはカブラルに加えて左IHマレーが前に出てミランの2CBを牽制し、ボールをサイドに誘導。そこからの縦パスを奪いどころとして狙ってきました。
一方、ミランにとって一つ狙い所となったのがマレーの背後のスペースです。サイド誘導後は精力的に戻って斜めのパスコース・中盤スペースを埋めようとするマレーですが、状況によってはそのスペースへのパスを遮れない場面というのが生まれます。そこでミランとしては最終ラインのパス回しとダブルボランチの流動的な動きで相手の陣形を揺さぶりながら、当該スペースに入り込んだブラヒムやジルーに楔のパスを当て、速攻を仕掛けていきました。

――例えばこの場面。カラブリアがメニャンからボールを受け、前方にドリブルで運ぶ。そこから下がってきたジルーに縦パスを供給

――ジルーはワンタッチで右サイドに流れていたブラヒムに落とす。それに連動して右サイドのメシアスが中に侵入

――その後の場面。裏に抜けだしたメシアスがブラヒムからスルーパスを引き出した
大まかな流れとしては前節ラツィオ戦と共通するものの、相違点としてブラヒムに動きの幅が与えられたことが挙げられると思われます。
前節はビルドアップ時に左ハーフスペースから大きく動かず、それゆえ右からの組み立てにほとんど絡めなかったブラヒムですが、今節は上記のように右サイドにも積極的に顔を出しながらボールに絡んでいきました。それもあり、彼がボール運びの面で目立つシーンというのが散見されましたね。

――例えばこの場面。マレーの背後(アンカーのアムラバトの横)にポジションを取るトナーリとブラヒム。ここで、カラブリアからブラヒムに浮き球のパスが通る

――その後の場面。ブラヒムはワンタッチでトナーリに落とし、ライン突破。そのまま速攻へと繋げた
○後半の変更
以上のようにして、カウンター・ポゼッション両面からチャンスシーンを量産していったミラン。しかしいつもの如く決定機を中々モノにできません。
ブラヒムは上記のようにボール運びで見せ場を作るも、相変わらずゴール前ではほとんど貢献できず。またジルーやレオンも訪れた決定機をフイにしてしまい、スコアレスのまま時間が経過していきました、
そこで後半になると、ミランは比較的早い時間にメンバーを交代。56分にブラヒムとメシアスに代え、レビッチとクルニッチと投入します。
それと同時期に、ミランはボール保持の際の基本システムを両SBが幅を取る「3-1-4-2」に変更。前半はカラブリアが下がり目の位置で組み立てに絡む右に偏った3バックのような形が基本でしたが、ここからは主にケシエが下がることで3バックとなり、時にメニャンを含む4人でバックラインを構成しました。

――交代後のミランの陣形。ここでは両SBが高い位置を取り、相手を押し込む
こうした変更の効果は「ライン間のスペース」という形で1つ表れます。
それまでの形だと、2枚のミランCBにはフィオのCF+インサイドハーフ1人が寄せ、そして右サイドのカラブリアに対して左WGのサポナーラが対応するという対応関係が基本となっていましたが、今度はボランチのケシエが下がることにより対面のインサイドハーフも前に引っ張られ易くなります。すなわち中盤が空き易くなるため、そのスペースにポジションを取るクルニッチ、レオン、レビッチ等がパスを引き出していく、と。

――例えばこの場面。ケシエが下がってボールを受け、そこにボナベントゥーラ(※途中からインサイドハーフに投入)が対応しに出てくる。そこで、ケシエはいったんGKメニャンにバックパス

――その後の場面。ボナベントゥーラはそのままメニャンにまでプレスをかける。それと同時に、カルルへのパスを予期したトレイラ(※途中からインサイドハーフに投入)が前に出てくる。ここで、メニャンは中央のトナーリへのパスを選択

――そこにはアムラバトが対応にしに出てくるが、それをいなして前を向くトナーリ。これにより中盤は全て前に引き出され、がら空きとなったライン間でクルニッチがパスを引き出す

――クルニッチが速攻を開始し、惜しいシーンを作り出した
一方、これに対し相手が下がったりマークを受け渡したりなどして中盤のスペース・選択肢の制限を重視した場合、ミランはメニャンを軸にロングボールを積極的に選択。前線ではレビッチ(もしくはレオン)がジルーとの距離を近く保ちながらこぼれ球を拾う形で一度ならずチャンスを作り出していきます。
こうした攻撃は、先述の中盤背後のスペースに侵入する選手(主にクルニッチ、レオン)を警戒して相手DFが前に出てきた場合、特に効果を発揮します。というのもその際、相手最終ラインは手薄となりますからね。

――例えばこの場面。メニャンが最前線へのロングボールを選択。ここで、レオンへのパスを警戒してイゴールが少し前に出ている

――その後の場面。ロングボールは近い距離にいるジルー、レビッチのいるところに送られ、手薄な最終ラインを突く

――オフサイドとなったものの、こぼれ球をレビッチが拾いシュートチャンスを作り出した
メニャンは最前線のみならず左右に散らすなど、レジスタとしてのセンスを如何なく発揮しました。
更にミランは67分にジルーに代えてイブラを投入。また76分頃にはレオンの位置を左サイドに戻し、その一方でレビッチを右サイドに移すなど積極的に変化を加えながら先制点を奪いにかかります。
すると82分。レビッチとイブラの連動でGKにまでプレッシャーをかけた結果、GKテラッチャーノが痛恨のパスミス。そのボールをレオンが華麗にネットに流し込み、ミランが待望のゴールを挙げました。
前節に引き続き、またしてもポジション変更とレビッチ&イブラによる守備からのゴールという事で、積極的な采配が功を奏した結果となりました。
このゴール自体は相手のミスに因る部分が大きいものの、ミランの積極果敢な攻撃が実を結んだゴールといってもいいでしょうね。決定機の数からしても妥当な結果でしょう。
そんなわけで、試合終盤にゴールをもぎ取ったミランの勝利で幕を閉じました。
ミラン1-0フィオレンティーナ
雑感
超重要な一戦をモノにしたミラン。
パスミス等をきっかけにいくつか危ない場面も作られましたが、DF陣が集中した守りでゴール前のピンチを凌ぎつつ、それでも防ぎ切れない時はメニャンが最後の壁として立ちふさがりました。後半終盤、76分のシーンは象徴的でしたね。
今のミランはイブラ、レビッチを筆頭に得点の欲しい状況で使える交代カードがようやく揃い、実際、投入された彼らのプレーで勢いを付けてゴールをもぎ取るという展開が2試合連続で続いています。一方、そうした試合展開においては全体が前掛かりとなり、被カウンター等から危険なシーンを作られるリスクは高まる傾向にある、と。決勝点を狙うそうした流れの中で逆に失点を喫してしまっては元も子もありません。
ここ2試合のミランが劇的な形で勝ちを拾えているのも、DF陣を中心とする守備の基盤あってのものだと思いますし、ここにきて彼らの存在感というのは一際目立っているように思われます。
今シーズン残り3戦の間で決定力を改善しようにも限界があるように見受けられるだけに、守備の安定というのがスクデット獲得の絶対条件ではないしょうか。是非ともこのまま無失点を維持して欲しいですね。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。