【8試合ぶりの複数得点】ミラン対ジェノア【2021-22シーズン・セリエA第33節】
スタメン

基本システム:ミラン「4-3-3」、ジェノア「4-3-2-1」
今回はミランが久々に2得点(※調べてみたらミランが2点を取ったのは2月のサレルニターナ戦以来8試合ぶりです)を挙げての勝利という事で、攻撃の局面に焦点を絞って見ていこうと思います。
まずは試合序盤のミランの攻撃とジェノア守備についてです。
ジェノアは守備時4-3-2-1でセットし、チームとしてのプレスの開始位置を低めに設定。中央を固めてミランの前進を阻もうとする形です。
これに対しボールの主導権を握ったミランは、攻撃時に4-3-3の形を軸にします。ベナセルがケシエとライン間に侵入し、レオン、サレマの2人がサイドで幅を取る形が基本になりました

――ジェノアの守備陣形とミランの攻撃陣形
こうした両陣形のマッチアップにおいて、ポイントになったのがサイドでした。ジェノアが中央を固める一方、比較的空き易いサイドのスペースでボールを受けるSBを起点にミランは攻めていきます。

――例えばこの場面。ミランのSBに対し、ジェノアはインサイドハーフが出てくる形が基本。ここでミランはケシエが飛び出して相手CBを引っ張り、このあと相手インサイドハーフの背後のスペースにテオがレオンとのワンツーで侵入。そのままドリブルでゴール前に侵入して惜しいチャンスを作り出した
すると11分、カルルがサイドからボールを持ち運び正確なクロスを供給。そのボールをファーサイドから飛び込んだレオンがダイレクトで合わせ、ミランが先制点を獲得しました。

――1点目のシーンについて。左サイドのテオにボールを展開するミラン

――その後、CBを経由して逆サイドのカルルに展開するミラン。ジェノアの中盤3枚はスライドが遅れ、カルルにフリーで前進を許す

――その後の場面。ゴール前の状況を見極める時間とスペースを得たカルルは、この後ファーサイドへ正確なクロス。それにレオンが合わせてネットを揺らした
カルルはカラブリアがウォームアップ中に負傷したことにより急遽SBに回されたわけですが、それでも堂々たるパフォーマンスを披露。来季はカラブリアの地位すら安泰ではないのではないかと感じさせます。
一方、レオンも公式戦7試合ぶりのゴールを記録。前半はそれ以外の多くの場面でロストマシーンと化していたものの、立ち位置が整理されゴールも取れたという事で、シーズン最終盤戦に向けた復調が期待されますね。
さて。得点シーン以外にも、ミランはサイドを使った攻撃でジェノアの中盤3枚を揺さぶるなどして攻撃を仕掛けます。

――例えばこの場面。右サイドからボールを前進させ、ジェノア守備陣を引き付けたところでベナセルのサイドチェンジ。逆サイドで待つレオンにボールを展開させた
決定機にまでは中々至らなかったものの、良い形を作り出すことに成功していました。
○ジェノアの修正
そんな中、20分過ぎにジェノアはシステムを4-4-2(4-4-1-1)に変更。前線の2枚でミランの2CB+アンカーの動きを制限し、かつ中盤ラインの枚数を増やすことで前述のミランのサイド攻撃に対応します。

――20分過ぎからのジェノアの守備陣形。エクバンが左サイドに回って4-4-2を形成。ここではカルルを監視する
これによりミランはSBを起点としたサイド攻撃を中々仕掛けられなくなり、攻撃が行き詰り易くなりました。
こうなった際、例えばボトムの構造を変化させたり(例として、トナーリを一列下げて3バックを形成し、かつベナセルをアンカーに落として後方から3+1でボールを動かす)、もしくはアンカーのトナーリに多少リスクをかけてでもボールを回し、中央を経由させることで相手の守備の基準点を乱したりといった対応が見たかった所でしたがそうしたことはほとんどせず。
攻めあぐねる状況が続き、トモリによる裏へのロングパスやマーカーを外すキープからの強引な縦パスといった形で散発的なチャンスを作るに止まりました。
既に1点リードしている状況という事であまりリスクをかけたくなかったのかもしれませんが、対応力という点で個人的には疑問を感じました。以前はもっと流動的に配置を変えるなどしていたんですけどね。
○ミランの2点目
後半になってからもジェノアの守備(前からの強度を高める)に対し有効な打開策を見つけられぬまま時間が過ぎていった印象ですが、徐々に試合展開がオープンなものになっていきます。
そんな中、ミランは61分にサレマとジルーに代えてメシアスとレビッチを投入。この2人が試合を決定づける追加点獲得に大きく貢献してくれました。
まずトップに入ったレビッチは、ジルーとは異なる動きで崩しに関わります。
主にサイドからの崩しの際に積極的にボールサイドに寄り、ダイナミズムを活かしてボールホルダーからスルーパスを引き出す動きを見せていく、と。特に左サイド側は彼の得意とするプレーエリアですし、彼とレオン、テオが絡んでスピーディーな攻めを展開していきます。

――例えばこの場面。左サイドからのレオンのドリブル突破に合わせ、レビッチが相手CB間に抜け出しスルーパスを引き出す
一方のメシアスに強く求められた働きはエリア内への飛び込みです。先述の形で左サイドから攻め込んでいく際、逆サイドからエリア内に侵入しフィニッシャーとして機能する右ウインガーのパフォーマンスはチャンスの質に直結します。この点、得点力に微塵も期待できないサレマよりもメシアスはゴール前で危険を作り出せるという事で、レビッチと同時に投入されたのもこうした働きを期待してのことでしょう。

――例えばこの場面。レオン、テオの連携により左サイドからエリア内に侵入するミラン。そこからファーサイドで待つメシアスにクロスが送られた
そして87分。両者のこうしたプレーが結実し、ミランが追加点を奪うことに成功しました。

――2点目のシーンについて。左サイドから突破するテオに合わせ、レビッチが相手CB間から抜け出しスルーパスを引き出す

――その後の場面。レビッチのクロスは一旦相手に阻まれるも、こぼれ球を拾ってファーサイドのメシアスに丁寧なクロス。その後、メシアスが一度GKにシュートを防がれるも再度押し込みネットを揺らした
最終盤に生じたピンチもメニャンにより事なきを得たミラン。試合は2-0で終了しました。
ミラン2-0ジェノア
雑感
3試合ぶりの勝利を手に入れたミラン。
そしてここまで言及しなかったものの、この試合でも相手の攻撃を無失点に抑え、リーグ戦6試合連続のクリーンシートを達成。DF陣にいくつかのアクシデントが生じた事で流石に多少の危うさは見られたものの、最後の砦であるメニャン、DFリーダーのトモリを中心に守り切ってくれました。
一方、攻撃に関してはまだまだ手放しで喜べるような状況とは言えないと思いますが、メンバー上の限界というのはどうしてもあるでしょうから、今季はこのまま騙し騙しやっていくしかないかもしれません。
ただし、この試合ではレビッチが持ち味を発揮して実質的なアシストを行い、またメシアスもスーパーサブとして結果を残したというのは今後に向けての収穫ですし、彼らが攻撃の切り札としてこれからも活躍してくれるとだいぶ大きいですね。
さて。次戦はインテルとの決勝進出をかけたコッパ・イタリア準決勝となります。
タイトル獲得の機運が高まっている今、ミランとしては是非ともモノにしたい一戦です。日程的にやや厳しいですが頑張って欲しいですね。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。