【安定の守備と課題の攻撃】ミラン対ボローニャ【2021-22シーズン・セリエA第31節】
今回はセリエA第31節、ミラン対ボローニャのマッチレビューを行いたいと思います。
スタメン

基本システム:ミラン「4-2-3-1」、ボローニャ「3-5-2」
スタメン

基本システム:ミラン「4-2-3-1」、ボローニャ「3-5-2」
○ミランの守備
まずはミランの守備、ボローニャの攻撃について。
ボローニャは攻撃時の形の一つとして、後方からのビルドアップ時、ショートパスを繋ぐ際はインサイドハーフの裏への飛び出しを活かそうとします。

――例えばこの場面。GKからボールを受けたヒッキーにテオが前に出て対応
例えばサイドのボローニャWBにボールが渡ったとき、それに対しミランSBが対応に出た裏のスペースをインサイドハーフが突く、といった形ですね。
ただし、こうした形に対しては主にミランボランチがしっかりとマークすることで対応。また、時に相手アンカーがポジションを入れ替えて飛び出すこともありましたが、それに対してもマーク担当のブラヒムが集中して対応するなどしたため、当該攻撃の形で破られるシーンというのはほとんどありませんでした。

――先ほどの続きの場面。ヒッキーから裏に抜けだしたアエビシェールにパスが送られるも、ベナセルによりインターセプトされた
また、守備の観点ということでいうと、ミランはネガティブトランジションの局面においても非常に安定したパフォーマンスを披露。
ミランがポゼッションで押し込んだ際、ボローニャとしては2トップへのパスを起点にカウンターを仕掛けたいところだったでしょうが、ミランはダブルボランチと2CBを中心に被カウンター時のスペースと選択肢をしっかりと管理。そのためボールロスト後に彼らが中心となって対応することで、相手2トップへのパスを許さず攻撃を遅らせたり、または鋭いカウンタープレスでボールを再回収したりといったシーンが散見されました。
この点に関し、特にベナセルは好守に素晴らしいパフォーマンスだったと思います。

――例えばこの場面。自陣でブラヒムのパスをカットし、カウンターを目論むボローニャ選手(赤)

――ここで、トナーリはアルナウトビッチを、ベナセルはバロウをそれぞれ監視しパスコースを塞ぐ。時間を稼ぎ、その間に味方がボールホルダーにプレッシャーをかける

――その後の場面。バロウへのパスをベナセルがインターセプト。高い位置で再びミランボールとなった
このように、代表ウィークを挟んでもミランのハイレベルな守備組織はしっかりと維持されていたため、ボローニャ戦も無失点で終えることに成功しました。これでカップ戦を含め5試合連続のクリーンシート達成です。
○ミランの攻撃1
一方、ミランの攻撃とボローニャの守備についてはどうか。
この点、ミランにとって一つポイントになったのがカラブリアの動きだったのではないかと。

――例えばこの場面。ボローニャが前からプレスを仕掛け、内に絞ったカラブリアにはダイクスがマンツーマンで対応。ここで、ホルダーのカルルは前線へのロングボールを選択

――その後の場面。ロングボールを拾い敵陣に運ぶミラン。ダイクスは自陣における自身の担当スペースに戻ったため、カラブリアはフリーで中央に侵入。ここで、ホルダーのベナセルはジルーへのロングボールを選択

――その後の場面。ジルーが手前にボールを落とし、バイタルエリアでフリーのカラブリアがシュートを放った
このように彼が中央寄りにポジションを取り、そこから前線へと侵入する動きで一度ならずチャンスを作り出していきました。

――別の場面。相手の中盤3枚の横にするすると侵入し、トナーリからパスを引き出すカラブリア

――後半の場面。エリア内に侵入し、レオンからスルーパスを引き出すカラブリア
こういったシーンの他、ミランはクロスやミドルレンジからバカスカとシュートを撃っていくわけですが決めきれず。
そうこうしている内に時間が経ち、ボローニャは人数をかけゴール前で守備を固める割り切った戦い方に舵を切るようになる、と。前半は比較的オープンな時間帯や状況もあっただけに、スコアレスでこうした展開になるとだいぶ苦しくなりますね。
○ミランの攻撃2
さて。それに対してミランはイブラヒモビッチを投入し、彼へのロングボールを増やしながらゴールをこじ開けようとするわけですが、こうした終盤の「パワープレー」が大抵機能しないというのがミランの抱える問題の1つです。
その原因について考えられる理由をいくつか抜粋していくと、まず「ボールの受け手側」のクオリティが足りない点です。イブラにロングボールを当てて周囲に落としてもらうまではいいとしても、そのこぼれ球を上手く拾って密集地帯でゴールないしチャンスへと繋げてくれる選手が欠けています。
例えばブラヒム。彼には(パワープレーで活きる)フィジカルや高さがなく、またゴール前での反応力、ルーズボールに対する嗅覚や処理能力も高くないため、こういった戦術・役割では最も活きないタイプといって過言ではありません。この試合でも終盤は消えていましたが、彼が今回のような試合展開で終盤に存在感を失うのは今に始まった話ではありませんしね。
また、本来であればこういう状況で奮起するベきレビッチは相変わらず不調。この試合では惜しいシーンこそありましたが、やはり全体を通して物足りないものがあります。
そして、課題は受け手だけではなく出し手側にもあります。
例えばレオンは、試合終盤のこうした展開になると疲労と焦りで精度の低いプレーを連発します。それもあり本来であればイブラと共に優秀なクロスの出し手を同時に投入するなどしてパワープレーの精度を高めたいところですが、ミランにはそういったスーパーサブがいない、と。
こうした属人的な側面に加え、戦術的な部分にもいくつか疑問の余地があります。例えばパワープレーといってもただシンプルにボールを蹴り込むのではなく、両サイドの幅を使いながら相手の視点・陣形をずらすなどしてクロス対応を困難にさせるといったひと手間を加えることが重要であるように思われますが、そういった戦術的な工夫ははっきりと見て取れません。
焦りにより選手たちがそういうひと手間を忘れているようにも考えられますが、それならばピオリ監督がトレーニングの段階でしっかりと意識を根付かせる必要がありますね。
さて。ネチネチと書いてきましたが、結局のところミランは33本ものシュートを撃ちながらもスコルプスキの守るゴールを破ることはできず。試合はスコアレスドローに終わりました。
ミラン0-0ボローニャ
雑感
勝ち点を取りこぼす傾向が強いミランの4月の試合、しかし相性の良いボローニャが相手なのでどうなるかといったところでしたが、結果は引き分け。非常に痛い勝ち点1です。
確かに決定的と呼べるようなシュートチャンスこそ多くなかったものの、前述の守備・ネガティブトランジションにより試合の主導権は確実に握れていましたし、1点をもぎ取り勝利してもおかしくない内容だったと思います。
今後に目を向けると、この試合を観ていて感じたのは、これからのミランの結果を握るのは「できるだけ早い時間帯での先制点」ではないかという事です。
試合時間が経つにつれて相手の対応がクローズドなものになり易く、それに応じてミランが精度の低いパワープレーを始めるといった展開は極力避けるべきです。そして、そのためには比較的オープンな時間帯で点を取るというのが最も確実な方法ではないかと。
守備の安定が今後も続いてくれること前提ではあるものの、今のミランは1・2点取れれば勝てるチームです。ですから、何とか得点を取るパターンというのを今一度確立して欲しいと思います。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。
まずはミランの守備、ボローニャの攻撃について。
ボローニャは攻撃時の形の一つとして、後方からのビルドアップ時、ショートパスを繋ぐ際はインサイドハーフの裏への飛び出しを活かそうとします。

――例えばこの場面。GKからボールを受けたヒッキーにテオが前に出て対応
例えばサイドのボローニャWBにボールが渡ったとき、それに対しミランSBが対応に出た裏のスペースをインサイドハーフが突く、といった形ですね。
ただし、こうした形に対しては主にミランボランチがしっかりとマークすることで対応。また、時に相手アンカーがポジションを入れ替えて飛び出すこともありましたが、それに対してもマーク担当のブラヒムが集中して対応するなどしたため、当該攻撃の形で破られるシーンというのはほとんどありませんでした。

――先ほどの続きの場面。ヒッキーから裏に抜けだしたアエビシェールにパスが送られるも、ベナセルによりインターセプトされた
また、守備の観点ということでいうと、ミランはネガティブトランジションの局面においても非常に安定したパフォーマンスを披露。
ミランがポゼッションで押し込んだ際、ボローニャとしては2トップへのパスを起点にカウンターを仕掛けたいところだったでしょうが、ミランはダブルボランチと2CBを中心に被カウンター時のスペースと選択肢をしっかりと管理。そのためボールロスト後に彼らが中心となって対応することで、相手2トップへのパスを許さず攻撃を遅らせたり、または鋭いカウンタープレスでボールを再回収したりといったシーンが散見されました。
この点に関し、特にベナセルは好守に素晴らしいパフォーマンスだったと思います。

――例えばこの場面。自陣でブラヒムのパスをカットし、カウンターを目論むボローニャ選手(赤)

――ここで、トナーリはアルナウトビッチを、ベナセルはバロウをそれぞれ監視しパスコースを塞ぐ。時間を稼ぎ、その間に味方がボールホルダーにプレッシャーをかける

――その後の場面。バロウへのパスをベナセルがインターセプト。高い位置で再びミランボールとなった
このように、代表ウィークを挟んでもミランのハイレベルな守備組織はしっかりと維持されていたため、ボローニャ戦も無失点で終えることに成功しました。これでカップ戦を含め5試合連続のクリーンシート達成です。
○ミランの攻撃1
一方、ミランの攻撃とボローニャの守備についてはどうか。
この点、ミランにとって一つポイントになったのがカラブリアの動きだったのではないかと。

――例えばこの場面。ボローニャが前からプレスを仕掛け、内に絞ったカラブリアにはダイクスがマンツーマンで対応。ここで、ホルダーのカルルは前線へのロングボールを選択

――その後の場面。ロングボールを拾い敵陣に運ぶミラン。ダイクスは自陣における自身の担当スペースに戻ったため、カラブリアはフリーで中央に侵入。ここで、ホルダーのベナセルはジルーへのロングボールを選択

――その後の場面。ジルーが手前にボールを落とし、バイタルエリアでフリーのカラブリアがシュートを放った
このように彼が中央寄りにポジションを取り、そこから前線へと侵入する動きで一度ならずチャンスを作り出していきました。

――別の場面。相手の中盤3枚の横にするすると侵入し、トナーリからパスを引き出すカラブリア

――後半の場面。エリア内に侵入し、レオンからスルーパスを引き出すカラブリア
こういったシーンの他、ミランはクロスやミドルレンジからバカスカとシュートを撃っていくわけですが決めきれず。
そうこうしている内に時間が経ち、ボローニャは人数をかけゴール前で守備を固める割り切った戦い方に舵を切るようになる、と。前半は比較的オープンな時間帯や状況もあっただけに、スコアレスでこうした展開になるとだいぶ苦しくなりますね。
○ミランの攻撃2
さて。それに対してミランはイブラヒモビッチを投入し、彼へのロングボールを増やしながらゴールをこじ開けようとするわけですが、こうした終盤の「パワープレー」が大抵機能しないというのがミランの抱える問題の1つです。
その原因について考えられる理由をいくつか抜粋していくと、まず「ボールの受け手側」のクオリティが足りない点です。イブラにロングボールを当てて周囲に落としてもらうまではいいとしても、そのこぼれ球を上手く拾って密集地帯でゴールないしチャンスへと繋げてくれる選手が欠けています。
例えばブラヒム。彼には(パワープレーで活きる)フィジカルや高さがなく、またゴール前での反応力、ルーズボールに対する嗅覚や処理能力も高くないため、こういった戦術・役割では最も活きないタイプといって過言ではありません。この試合でも終盤は消えていましたが、彼が今回のような試合展開で終盤に存在感を失うのは今に始まった話ではありませんしね。
また、本来であればこういう状況で奮起するベきレビッチは相変わらず不調。この試合では惜しいシーンこそありましたが、やはり全体を通して物足りないものがあります。
そして、課題は受け手だけではなく出し手側にもあります。
例えばレオンは、試合終盤のこうした展開になると疲労と焦りで精度の低いプレーを連発します。それもあり本来であればイブラと共に優秀なクロスの出し手を同時に投入するなどしてパワープレーの精度を高めたいところですが、ミランにはそういったスーパーサブがいない、と。
こうした属人的な側面に加え、戦術的な部分にもいくつか疑問の余地があります。例えばパワープレーといってもただシンプルにボールを蹴り込むのではなく、両サイドの幅を使いながら相手の視点・陣形をずらすなどしてクロス対応を困難にさせるといったひと手間を加えることが重要であるように思われますが、そういった戦術的な工夫ははっきりと見て取れません。
焦りにより選手たちがそういうひと手間を忘れているようにも考えられますが、それならばピオリ監督がトレーニングの段階でしっかりと意識を根付かせる必要がありますね。
さて。ネチネチと書いてきましたが、結局のところミランは33本ものシュートを撃ちながらもスコルプスキの守るゴールを破ることはできず。試合はスコアレスドローに終わりました。
ミラン0-0ボローニャ
雑感
勝ち点を取りこぼす傾向が強いミランの4月の試合、しかし相性の良いボローニャが相手なのでどうなるかといったところでしたが、結果は引き分け。非常に痛い勝ち点1です。
確かに決定的と呼べるようなシュートチャンスこそ多くなかったものの、前述の守備・ネガティブトランジションにより試合の主導権は確実に握れていましたし、1点をもぎ取り勝利してもおかしくない内容だったと思います。
今後に目を向けると、この試合を観ていて感じたのは、これからのミランの結果を握るのは「できるだけ早い時間帯での先制点」ではないかという事です。
試合時間が経つにつれて相手の対応がクローズドなものになり易く、それに応じてミランが精度の低いパワープレーを始めるといった展開は極力避けるべきです。そして、そのためには比較的オープンな時間帯で点を取るというのが最も確実な方法ではないかと。
守備の安定が今後も続いてくれること前提ではあるものの、今のミランは1・2点取れれば勝てるチームです。ですから、何とか得点を取るパターンというのを今一度確立して欲しいと思います。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。