【復活のB】カリアリ対ミラン【2021-22シーズン・セリエA第30節】
今回はセリエA第30節、カリアリ対ミランのマッチレビューを行いたいと思います。
スタメン

基本システム:カリアリ「3-5-2」、ミラン「4-2-3-1」
スタメン

基本システム:カリアリ「3-5-2」、ミラン「4-2-3-1」
○ミランの攻撃1
まずはミランの攻撃とカリアリの守備についてです。
システム上、カリアリはミランに噛み合わせやすいこともあり、マンツーマン気味に前からプレスをかけていきミランのビルドアップを妨害しにかかります。

――守備時における前線のカリアリの陣形
そのため、ミランとしてはまず前線へのロングボールを使ってセーフティに攻めていくというのが1つの形でした。
こうした攻めを効果的にするため、ミランは最前線のジルーの周囲にレオン、ブラヒム、時にメシアスを配する形を積極的に取ります。そして彼らにジルーへのロングボールのこぼれ球を拾わせたり、ジルーが動くことで生じるスペースを突かせたりといった形で素早くチャンスを作っていこうとしました。

――参考1:この試合の前半、攻撃時におけるミランの平均ポジション。レオン(17)が中に入り、ジルー(9)やブラヒム(10)と近い距離を保つ
とは言え、こうした形は全体的にあまり上手くいかず。ブラヒムに積極的にこぼれ球を拾わせたり、前方のスペースを突かせたりするタスクを求めるのはあまり有効とは言えませんし、レオンもサイドではなく中央エリアでのプレーが中心となったことで脅威が半減。
本来、こういうゲームプランだったらトップ下にケシエを置いてダブルボランチにトナーリとベナセル、そして左サイドハーフにレビッチを起用するのがベターな気もしますが、この試合ではトナーリが病み上がり、レビッチはまだまだコンディション不良という事で致し方なかったのかもしれませんね。
○ミランの攻撃2
一方、ロングボールではなく後方からパスを繋いでいく場合について。
この点、ミランにとって鍵になったのがテオの動きです。彼が中央へとポジションを移す動きを積極的に行うことでパスの引き出しを図りつつ、彼のマーク担当である対面のベッラノーヴァを迷わせます。

――例えばこの場面。テオが中央に侵入し、ベッラノーヴァを引き付ける。ここでホルダーのメニャンは左サイドのトモリにパス
そしてテオが中央へ移動した際、左サイド前方のスペースをトモリが中心となって使っていく、と。

――その後の場面。左サイド前方のスペースにはベナセルが流れてパスを引き出す。ここで、ベッラノーヴァは急いで担当スペースに戻り、ベナセルに対応
マンツーマン色の強い相手の場合、ミランとしてはこうしてSBに流動的かつ大胆な動きを求める傾向が強いわけですが、改めてテオがこうした動きを無理なく行えることはチームにとって非常に大きいものがありますね。
中央であろうと前方にスペースがあればドリブルで持ち上がれますし、またサイドと中央とでは視野の確保に難易度の差が生じますが、彼はしっかりと周囲の動きを認知しプレーしている様子が窺えます。
この試合では彼の動き出しやドリブルから何度も惜しいチャンスが作り出され、59分に生まれた決勝ゴールも、得点に絡んだブラヒムに起点となる縦パスを送ったのはテオでした。
もう一つ、この点に関連してトモリのパフォーマンスにも言及しておきたいところです。
この試合のトモリはメニャン等と協同して相手の2トップに対し数的優位を作りつつ、機を見てテオが空けたサイド前方のスペースに持ち運ぶシーンが何度か見られましたが、こういったプレーは重要です。というのもCBが前方に持ち運び相手の第一プレッシャーラインを越すことで、その前方の相手守備陣を揺さぶりマークをずらすことが可能となります。
正直なところ、ロマニョーリよりこういった持ち運びプレーをトモリはこなせるんじゃないかという事で、その観点でもトモリ(とカルル)を優先的に起用する利点があるように個人的には思います。

――例えばこの場面。メニャンが相手のCFを引き付け、サイドに流れたトモリにパス

――その後の場面。前方のスペースにボールを運ぶトモリに対し、ベッラノーヴァがテオへのマークを離して対応。これにより空いた中央のテオにトモリからパスが送られた
現状は持ち運んだ後のパス精度にやや難がありますが(上記のシーンにおいてもテオの前方にパスを出せれば速攻のチャンスとなったものの、実際にはやや後方に出し流れを止めてしまった)、これは伸びしろと考えられます。トモリには攻撃面でももっと貢献できるポテンシャルがあると思いますから、その面でも期待していきたいですね。
○ミランの守備
続いてカリアリの攻撃とミランの守備について。
カリアリはビルドアップ/ゴールキック時には後方から繋ぐ選択をあまり採らず、前線へとロングボールを蹴り込んでいく形が多めです。また、方向もほぼ自陣左サイド側へと一貫していました。
一方、カリアリが後方から繋いだ際にはミランがプレスからボールを奪取し、そのままショートカウンターに繋げて決定機を作り出すなど、惜しいシーンを演出。そのため、上記のカリアリのロングボール攻撃はミランにとって(ポジティブトランジションを考えると)あまり望ましいものではなかったかなぁと。
ただし、ミラン側もそうしたカリアリの攻めを予期していたのか、メシアスを下げ同サイドの守備を厚くする形で対応する、と。
以上により、「カリアリの攻撃vsミランの守備」という局面における主戦場は「左サイド側のミドルサード」となりました。

――参考2:この試合におけるカリアリのボールタッチポジション。ミドルサードでは左サイド側でのボールタッチが非常に多い
そこで、ミランにとってはその主戦場のスペースを担当する選手たち(主にカルル、カラブリア、ベナセル、メシアス)の守備時のプレーが特に重要となったわけですが、その点彼らは十分なパフォーマンスを披露し、カリアリの攻撃を封じ込める中心的な役割を遂行。彼らの貢献は以下に挙げるようなスタッツにも表れています。

――参考3:この試合における守備時の空中戦数ランキング(『WhoScored』)

――参考4:タックル成功数ランキング。ここには載っていないがメシアスも「3回」を記録

――参考5:インターセプト数ランキング
また、中でもベナセルのパフォーマンスは素晴らしく、持ち味である出足の速さと粘り強いマーキングを活かして抜群の存在感を発揮しました。
――この試合におけるベナセルの主要スタッツ
今回のようにロングボールが多用される展開ですと、そのこぼれ球を回収してマイボールにするという仕事の重要性が増すわけですが、この点についてベナセルは「ボール回収数:13回」とトップの数字をマーク。決勝ゴールはもちろんのこと、こうした守備面においても見事な活躍ぶりでした。
そんなわけで彼らを中心にカリアリの攻撃を封じ込めたミランは、今節もしっかりと無失点で終えることに成功しています。
カリアリ0-1ミラン
雑感
ミランはこれで3試合連続のウノゼロ勝利です。
これまでも全体的には良い守備パフォーマンスを披露していたものの、個人のミスや判定ミスにより勿体ない失点を重ねていたわけですが、そうした部分が減ったことでチームとしてのパフォーマンスが結果にしっかりと反映されるようになったんじゃないかなと。
もちろんカルルの台頭やベナセルの完全復活といった要素が今のチームに大きな好影響をもたらしていることは間違いなく、彼らのおかげで以前よりも更に強固になった印象ですね。
そう考えると、やはり今後のミランに残された課題は「得点力の向上」になります(この点については、前節のエンポリ戦マッチレビューの「雑感」にて既に言及しているため割愛)
これさえどうにかできれば夢のタイトル獲得に向け視界良好というわけで、是非とも改善して欲しいですね。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。
まずはミランの攻撃とカリアリの守備についてです。
システム上、カリアリはミランに噛み合わせやすいこともあり、マンツーマン気味に前からプレスをかけていきミランのビルドアップを妨害しにかかります。

――守備時における前線のカリアリの陣形
そのため、ミランとしてはまず前線へのロングボールを使ってセーフティに攻めていくというのが1つの形でした。
こうした攻めを効果的にするため、ミランは最前線のジルーの周囲にレオン、ブラヒム、時にメシアスを配する形を積極的に取ります。そして彼らにジルーへのロングボールのこぼれ球を拾わせたり、ジルーが動くことで生じるスペースを突かせたりといった形で素早くチャンスを作っていこうとしました。

――参考1:この試合の前半、攻撃時におけるミランの平均ポジション。レオン(17)が中に入り、ジルー(9)やブラヒム(10)と近い距離を保つ
とは言え、こうした形は全体的にあまり上手くいかず。ブラヒムに積極的にこぼれ球を拾わせたり、前方のスペースを突かせたりするタスクを求めるのはあまり有効とは言えませんし、レオンもサイドではなく中央エリアでのプレーが中心となったことで脅威が半減。
本来、こういうゲームプランだったらトップ下にケシエを置いてダブルボランチにトナーリとベナセル、そして左サイドハーフにレビッチを起用するのがベターな気もしますが、この試合ではトナーリが病み上がり、レビッチはまだまだコンディション不良という事で致し方なかったのかもしれませんね。
○ミランの攻撃2
一方、ロングボールではなく後方からパスを繋いでいく場合について。
この点、ミランにとって鍵になったのがテオの動きです。彼が中央へとポジションを移す動きを積極的に行うことでパスの引き出しを図りつつ、彼のマーク担当である対面のベッラノーヴァを迷わせます。

――例えばこの場面。テオが中央に侵入し、ベッラノーヴァを引き付ける。ここでホルダーのメニャンは左サイドのトモリにパス
そしてテオが中央へ移動した際、左サイド前方のスペースをトモリが中心となって使っていく、と。

――その後の場面。左サイド前方のスペースにはベナセルが流れてパスを引き出す。ここで、ベッラノーヴァは急いで担当スペースに戻り、ベナセルに対応
マンツーマン色の強い相手の場合、ミランとしてはこうしてSBに流動的かつ大胆な動きを求める傾向が強いわけですが、改めてテオがこうした動きを無理なく行えることはチームにとって非常に大きいものがありますね。
中央であろうと前方にスペースがあればドリブルで持ち上がれますし、またサイドと中央とでは視野の確保に難易度の差が生じますが、彼はしっかりと周囲の動きを認知しプレーしている様子が窺えます。
この試合では彼の動き出しやドリブルから何度も惜しいチャンスが作り出され、59分に生まれた決勝ゴールも、得点に絡んだブラヒムに起点となる縦パスを送ったのはテオでした。
もう一つ、この点に関連してトモリのパフォーマンスにも言及しておきたいところです。
この試合のトモリはメニャン等と協同して相手の2トップに対し数的優位を作りつつ、機を見てテオが空けたサイド前方のスペースに持ち運ぶシーンが何度か見られましたが、こういったプレーは重要です。というのもCBが前方に持ち運び相手の第一プレッシャーラインを越すことで、その前方の相手守備陣を揺さぶりマークをずらすことが可能となります。
正直なところ、ロマニョーリよりこういった持ち運びプレーをトモリはこなせるんじゃないかという事で、その観点でもトモリ(とカルル)を優先的に起用する利点があるように個人的には思います。

――例えばこの場面。メニャンが相手のCFを引き付け、サイドに流れたトモリにパス

――その後の場面。前方のスペースにボールを運ぶトモリに対し、ベッラノーヴァがテオへのマークを離して対応。これにより空いた中央のテオにトモリからパスが送られた
現状は持ち運んだ後のパス精度にやや難がありますが(上記のシーンにおいてもテオの前方にパスを出せれば速攻のチャンスとなったものの、実際にはやや後方に出し流れを止めてしまった)、これは伸びしろと考えられます。トモリには攻撃面でももっと貢献できるポテンシャルがあると思いますから、その面でも期待していきたいですね。
○ミランの守備
続いてカリアリの攻撃とミランの守備について。
カリアリはビルドアップ/ゴールキック時には後方から繋ぐ選択をあまり採らず、前線へとロングボールを蹴り込んでいく形が多めです。また、方向もほぼ自陣左サイド側へと一貫していました。
一方、カリアリが後方から繋いだ際にはミランがプレスからボールを奪取し、そのままショートカウンターに繋げて決定機を作り出すなど、惜しいシーンを演出。そのため、上記のカリアリのロングボール攻撃はミランにとって(ポジティブトランジションを考えると)あまり望ましいものではなかったかなぁと。
ただし、ミラン側もそうしたカリアリの攻めを予期していたのか、メシアスを下げ同サイドの守備を厚くする形で対応する、と。
以上により、「カリアリの攻撃vsミランの守備」という局面における主戦場は「左サイド側のミドルサード」となりました。

――参考2:この試合におけるカリアリのボールタッチポジション。ミドルサードでは左サイド側でのボールタッチが非常に多い
そこで、ミランにとってはその主戦場のスペースを担当する選手たち(主にカルル、カラブリア、ベナセル、メシアス)の守備時のプレーが特に重要となったわけですが、その点彼らは十分なパフォーマンスを披露し、カリアリの攻撃を封じ込める中心的な役割を遂行。彼らの貢献は以下に挙げるようなスタッツにも表れています。

――参考3:この試合における守備時の空中戦数ランキング(『WhoScored』)

――参考4:タックル成功数ランキング。ここには載っていないがメシアスも「3回」を記録

――参考5:インターセプト数ランキング
また、中でもベナセルのパフォーマンスは素晴らしく、持ち味である出足の速さと粘り強いマーキングを活かして抜群の存在感を発揮しました。
Bennacer vs Cagliari (A)
— FDJRedemtionSZN (@AmineGouiri10) March 19, 2022
90 "
1 Goal
50/61 passes completed (The most)
2 key passes
93 touches
3/4 dribbles completed (The most)
3 accurate long balls
2 blocks
1 clearances
2 interceptions
13 recoveries
11 duels won
3 fouls won
Another masterclass performance 😍😍😍😍
――この試合におけるベナセルの主要スタッツ
今回のようにロングボールが多用される展開ですと、そのこぼれ球を回収してマイボールにするという仕事の重要性が増すわけですが、この点についてベナセルは「ボール回収数:13回」とトップの数字をマーク。決勝ゴールはもちろんのこと、こうした守備面においても見事な活躍ぶりでした。
そんなわけで彼らを中心にカリアリの攻撃を封じ込めたミランは、今節もしっかりと無失点で終えることに成功しています。
カリアリ0-1ミラン
雑感
ミランはこれで3試合連続のウノゼロ勝利です。
これまでも全体的には良い守備パフォーマンスを披露していたものの、個人のミスや判定ミスにより勿体ない失点を重ねていたわけですが、そうした部分が減ったことでチームとしてのパフォーマンスが結果にしっかりと反映されるようになったんじゃないかなと。
もちろんカルルの台頭やベナセルの完全復活といった要素が今のチームに大きな好影響をもたらしていることは間違いなく、彼らのおかげで以前よりも更に強固になった印象ですね。
そう考えると、やはり今後のミランに残された課題は「得点力の向上」になります(この点については、前節のエンポリ戦マッチレビューの「雑感」にて既に言及しているため割愛)
これさえどうにかできれば夢のタイトル獲得に向け視界良好というわけで、是非とも改善して欲しいですね。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。