【好守がもたらす勝ち点3】 ミラン対エンポリ 【2021-22シーズン・セリエA第29節】
今回はセリエA第29節、ミラン対エンポリのマッチレビューを行いたいと思います。
スタメン

基本システム:ミラン「4-2-3-1」、エンポリ「4-3-2-1」
スタメン

基本システム:ミラン「4-2-3-1」、エンポリ「4-3-2-1」
○エンポリの守備
まずはミランの攻撃とエンポリの守備についてです。
エンポリは4-3-2-1でセット。機を見てCFピナモンティを起点にしたプレスを仕掛けますが、それがハマらないなら無理せずブロックを作って構えます。
この点について前回対戦時と比較すると、エンポリはいくつかの変更を行っています。
例えば、前線の形を「2トップ+トップ下」から「1トップ+ダブルトップ下」にしている点です。前回はトップに2枚を割いている分ブロック時に中盤の枚数が足りず、サイドやバイタル付近を空けてしまうといった場面が散見されましたが、この試合ではダブルトップ下が中盤3枚と連動しながら当該スペースを埋めていきました。

――エンポリの守備陣形(4-3-2-1)。ここではバイラミがサイドのカバーを行う
もう一つの注目点はプレスの開始位置です。もし今のミランに半端なハイプレスをかけた場合、GK+2CBによる最後方からのボール出しによりスペースのある中盤を使って速攻を仕掛けられます。
おそらくそうした部分を警戒したエンポリは、前線のピナモンティによるプレスの開始地点を下げ、コンパクトな陣形を重視しているように見受けられました。

――例えばこの場面。ピナモンティはある程度ミランCBに運ばせたのち、両CB間を切りながらプレスをかける
こうしたエンポリの変更により、前回よりもスペースの利用に苦労したミラン。ただしそのぶん最終ラインが受ける圧力は弱く、後方からエンポリを押し込んでいきます。
特に、この試合ではやや懸念材料であった左SB起用のフロレンツィが弱みを晒されることなく持ち味を発揮し、サイドチェンジによる展開や前線へ飛び出すなどしてチャンスを演出しました。

――例えばこの場面。フロレンツィがサイドのレオンにボールを預け、そのまま前方にインナーラップ

――その後の場面。レオンからパスを受けたフロレンツィは、ケシエとのパス交換で突破を図る

――その後、最終的にフロレンツィがシュートチャンスを迎えた
それでも決定打に欠けていたミランでしたが、前半19分。セットプレーの流れからカルルがコントロールされた見事なミドルシュートを放ち、予想外の形で先制に成功します。
このゴールの持つ価値はとてつもなく大きく、終わってみればこれが決勝点となりました。
○ミランの堅守
続いてはミランの守備についてです。
エンポリはダブルトップ下を含め中盤に5枚の人数を割くという事で、ミランとしては如何にして中央を守るかというのポイントの1つでした。
この点について、まずミランはレオンを縦スライドさせてジルーと2トップを形成し、エンポリの2CBを牽制。そして、3MF(ケシエ、ベナセル、トナーリ)に加えてメシアスやフロレンツィが中に絞ることで中盤における数的問題の解消を図ります。

――例えばこの場面。ロマニョーリからジェルコフスキがパスを受ける。しかしジェルコフスキはトナーリに寄せられており、また味方のMFはそれぞれマークされているためすぐにサイドのフィアモッツィに叩く
このように、ミランは大体においてエンポリの中央の選択肢をキッチリとマークすることに成功。そこでエンポリとしては、レオンの縦スライドやメシアスの絞りによりスペースの生じるサイド(特に右サイド)へとボールを運んでいくわけですが、中央に人数をかけるエンポリにとって望ましいルートではありません。
例えば右サイドへとボール誘導後のミランは、主にトナーリが右SBへと寄せに行きます。同時にフロレンツィがトナーリの背後の選択肢(主に右インサイドハーフのジェルコフスキ)をマークし、中の選択肢はケシエやベナセル、そしてバックパスのコースはレオンやジルーが消すという風にして、相手を袋小路へ追い込んでいきました。

――先ほどの続きの場面。フィアモッツィはサイドに流れたジェルコフスキにパスを送るが、そこにはフロレンツィが対応。その後、ジェルコフスキはワンタッチで前方のサイドにパスを送るも味方と合わず、ミランがボールを回収した
4-3-2-1だと初期配置としてサイドに幅と深みを取る選手を置けず、中央を塞がれた場合に苦しくなり易いです。ミランとしてはそうした構造上の弱所になり得る部分を上手く利用できていた印象でした。
また、ときにエンポリはトランジション時も含め前線のピナモンティにボールを当てて打開を図りますが、そこに待っているのはトモリ&カルルです。ナポリのオシメンを封じたコンビ相手に成長途上のピナモンティでは当然ながら分が悪く、そこから効果的なチャンスを生み出すことはできませんでした。

――例えばこの場面。先ほどと同様の形で追い詰めるミラン。ここでエンポリは前方のピナモンティにパスを送る

――その後の場面。ピナモンティから飛び出したジェルコフスキにパスが送られるも、カルルの素早いカバーリングによりカットされた
そこで、同サイドから攻め切る形を作れないエンポリは、何度か逆サイド(ミラン側右サイド)に展開することでボールを前進していきます。そこからは片側サイドに人数をかけて崩しを図るわけですが、この方法も中々上手くいかないと。

――例えばこの場面。バイラミが左サイドから中央へとボールを動かす。逆サイドは空いている状況
ミランがエンポリと同様に同サイドに人数をかけて守る中で、エンポリとしては幅を使って攻め込むというのが一つ有効な手段になり得ました。しかし上記のように右SBフィアモッツィがレオンを気にして後方でバランスを取ることが多く、他の選手も片側サイドに寄っているため崩しの局面において有効に展開することができません。
また、ミランとしてもそうした展開に対する警戒はしっかりと行っており、例えばサイドチェンジの有効な中継地点となり得るアンカーのアスラニに対しては主にケシエが監視。またバックパスによるCB経由の作り直しを阻止するため、ジルーとレオンの2人にしっかりと相手CBをマーク・監視させています。

――例えばこの場面。ルペルトにバックパスが送られ、作り直しを図るエンポリ

――その後の場面。ボールはルペルトからロマニョーリへ。その間、レオンがロマニョーリに寄せに行く

――その後の場面。レオンの寄せによりスペースの狭い方向へと押し戻されるロマニョーリ

――その後の場面。パスをベナセルがカットし、カウンターのチャンスへと繋げた
以上のようにして、エンポリの攻撃をほぼ狙い通りに封じ込めクリーンシートを達成したミラン。特に前半は見事なパフォーマンスを披露し、エンポリのシュートを1本(枠外)に抑えることに成功しました。
ミラン1-0エンポリ
雑感
後半は開始早々にチャンスを作られ、その後はミスもあり流れを相手にやや引き渡してしまいましたが、メニャンのファインセーブを始めとして粘り強く対応。
中盤含む守備陣の踏ん張りというのは素晴らしいところで、2試合連続のクリーンシートも決してフロックではないでしょう。
今の守備組織がそう簡単に崩れるとは思えないため、今後も勝利という結果を安定して残せるかどうかは「攻撃陣のパフォーマンス向上」に懸かっていると思います。
現在はジルー以外のアタッカー陣の調子が思わしくなく、中でもエース級であるレオンのプレー判断が相当悪くなっていることから、おそらく肉体的疲労と同等の精神的疲労(頭の疲れ)というのがこのシーズン終盤戦に襲い掛かっているように見受けられます。
そしてジルーにせよ今の状態をシーズン最後までキープし続けるのは年齢的に難しいでしょうから、彼らの疲労を軽減するためにどうしてもイブラとレビッチの復調が求められますね。
イブラは(再 負 傷 さ え な け れ ば)時間と共に状態を上げてくるでしょうから良いとして、レビッチに復調の気配があまり感じられないのは非常に気がかりなところ。
個人的にイブラとレビッチはセット起用して欲しいので、どうにか双方共に復調してくれると良いんですけどね。
さて。次節のミランの相手はカリアリとなります。
今節を含め中下位クラブとのこの5連戦は、当該クラブとの対戦成績が振るわないミランにとって極めて重要になります。
次節も確実に勝利を収めて欲しいですね。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。
まずはミランの攻撃とエンポリの守備についてです。
エンポリは4-3-2-1でセット。機を見てCFピナモンティを起点にしたプレスを仕掛けますが、それがハマらないなら無理せずブロックを作って構えます。
この点について前回対戦時と比較すると、エンポリはいくつかの変更を行っています。
例えば、前線の形を「2トップ+トップ下」から「1トップ+ダブルトップ下」にしている点です。前回はトップに2枚を割いている分ブロック時に中盤の枚数が足りず、サイドやバイタル付近を空けてしまうといった場面が散見されましたが、この試合ではダブルトップ下が中盤3枚と連動しながら当該スペースを埋めていきました。

――エンポリの守備陣形(4-3-2-1)。ここではバイラミがサイドのカバーを行う
もう一つの注目点はプレスの開始位置です。もし今のミランに半端なハイプレスをかけた場合、GK+2CBによる最後方からのボール出しによりスペースのある中盤を使って速攻を仕掛けられます。
おそらくそうした部分を警戒したエンポリは、前線のピナモンティによるプレスの開始地点を下げ、コンパクトな陣形を重視しているように見受けられました。

――例えばこの場面。ピナモンティはある程度ミランCBに運ばせたのち、両CB間を切りながらプレスをかける
こうしたエンポリの変更により、前回よりもスペースの利用に苦労したミラン。ただしそのぶん最終ラインが受ける圧力は弱く、後方からエンポリを押し込んでいきます。
特に、この試合ではやや懸念材料であった左SB起用のフロレンツィが弱みを晒されることなく持ち味を発揮し、サイドチェンジによる展開や前線へ飛び出すなどしてチャンスを演出しました。

――例えばこの場面。フロレンツィがサイドのレオンにボールを預け、そのまま前方にインナーラップ

――その後の場面。レオンからパスを受けたフロレンツィは、ケシエとのパス交換で突破を図る

――その後、最終的にフロレンツィがシュートチャンスを迎えた
それでも決定打に欠けていたミランでしたが、前半19分。セットプレーの流れからカルルがコントロールされた見事なミドルシュートを放ち、予想外の形で先制に成功します。
このゴールの持つ価値はとてつもなく大きく、終わってみればこれが決勝点となりました。
○ミランの堅守
続いてはミランの守備についてです。
エンポリはダブルトップ下を含め中盤に5枚の人数を割くという事で、ミランとしては如何にして中央を守るかというのポイントの1つでした。
この点について、まずミランはレオンを縦スライドさせてジルーと2トップを形成し、エンポリの2CBを牽制。そして、3MF(ケシエ、ベナセル、トナーリ)に加えてメシアスやフロレンツィが中に絞ることで中盤における数的問題の解消を図ります。

――例えばこの場面。ロマニョーリからジェルコフスキがパスを受ける。しかしジェルコフスキはトナーリに寄せられており、また味方のMFはそれぞれマークされているためすぐにサイドのフィアモッツィに叩く
このように、ミランは大体においてエンポリの中央の選択肢をキッチリとマークすることに成功。そこでエンポリとしては、レオンの縦スライドやメシアスの絞りによりスペースの生じるサイド(特に右サイド)へとボールを運んでいくわけですが、中央に人数をかけるエンポリにとって望ましいルートではありません。
例えば右サイドへとボール誘導後のミランは、主にトナーリが右SBへと寄せに行きます。同時にフロレンツィがトナーリの背後の選択肢(主に右インサイドハーフのジェルコフスキ)をマークし、中の選択肢はケシエやベナセル、そしてバックパスのコースはレオンやジルーが消すという風にして、相手を袋小路へ追い込んでいきました。

――先ほどの続きの場面。フィアモッツィはサイドに流れたジェルコフスキにパスを送るが、そこにはフロレンツィが対応。その後、ジェルコフスキはワンタッチで前方のサイドにパスを送るも味方と合わず、ミランがボールを回収した
4-3-2-1だと初期配置としてサイドに幅と深みを取る選手を置けず、中央を塞がれた場合に苦しくなり易いです。ミランとしてはそうした構造上の弱所になり得る部分を上手く利用できていた印象でした。
また、ときにエンポリはトランジション時も含め前線のピナモンティにボールを当てて打開を図りますが、そこに待っているのはトモリ&カルルです。ナポリのオシメンを封じたコンビ相手に成長途上のピナモンティでは当然ながら分が悪く、そこから効果的なチャンスを生み出すことはできませんでした。

――例えばこの場面。先ほどと同様の形で追い詰めるミラン。ここでエンポリは前方のピナモンティにパスを送る

――その後の場面。ピナモンティから飛び出したジェルコフスキにパスが送られるも、カルルの素早いカバーリングによりカットされた
そこで、同サイドから攻め切る形を作れないエンポリは、何度か逆サイド(ミラン側右サイド)に展開することでボールを前進していきます。そこからは片側サイドに人数をかけて崩しを図るわけですが、この方法も中々上手くいかないと。

――例えばこの場面。バイラミが左サイドから中央へとボールを動かす。逆サイドは空いている状況
ミランがエンポリと同様に同サイドに人数をかけて守る中で、エンポリとしては幅を使って攻め込むというのが一つ有効な手段になり得ました。しかし上記のように右SBフィアモッツィがレオンを気にして後方でバランスを取ることが多く、他の選手も片側サイドに寄っているため崩しの局面において有効に展開することができません。
また、ミランとしてもそうした展開に対する警戒はしっかりと行っており、例えばサイドチェンジの有効な中継地点となり得るアンカーのアスラニに対しては主にケシエが監視。またバックパスによるCB経由の作り直しを阻止するため、ジルーとレオンの2人にしっかりと相手CBをマーク・監視させています。

――例えばこの場面。ルペルトにバックパスが送られ、作り直しを図るエンポリ

――その後の場面。ボールはルペルトからロマニョーリへ。その間、レオンがロマニョーリに寄せに行く

――その後の場面。レオンの寄せによりスペースの狭い方向へと押し戻されるロマニョーリ

――その後の場面。パスをベナセルがカットし、カウンターのチャンスへと繋げた
以上のようにして、エンポリの攻撃をほぼ狙い通りに封じ込めクリーンシートを達成したミラン。特に前半は見事なパフォーマンスを披露し、エンポリのシュートを1本(枠外)に抑えることに成功しました。
ミラン1-0エンポリ
雑感
後半は開始早々にチャンスを作られ、その後はミスもあり流れを相手にやや引き渡してしまいましたが、メニャンのファインセーブを始めとして粘り強く対応。
中盤含む守備陣の踏ん張りというのは素晴らしいところで、2試合連続のクリーンシートも決してフロックではないでしょう。
今の守備組織がそう簡単に崩れるとは思えないため、今後も勝利という結果を安定して残せるかどうかは「攻撃陣のパフォーマンス向上」に懸かっていると思います。
現在はジルー以外のアタッカー陣の調子が思わしくなく、中でもエース級であるレオンのプレー判断が相当悪くなっていることから、おそらく肉体的疲労と同等の精神的疲労(頭の疲れ)というのがこのシーズン終盤戦に襲い掛かっているように見受けられます。
そしてジルーにせよ今の状態をシーズン最後までキープし続けるのは年齢的に難しいでしょうから、彼らの疲労を軽減するためにどうしてもイブラとレビッチの復調が求められますね。
イブラは(再 負 傷 さ え な け れ ば)時間と共に状態を上げてくるでしょうから良いとして、レビッチに復調の気配があまり感じられないのは非常に気がかりなところ。
個人的にイブラとレビッチはセット起用して欲しいので、どうにか双方共に復調してくれると良いんですけどね。
さて。次節のミランの相手はカリアリとなります。
今節を含め中下位クラブとのこの5連戦は、当該クラブとの対戦成績が振るわないミランにとって極めて重要になります。
次節も確実に勝利を収めて欲しいですね。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。