【誤算が引き起こした結果】 サレルニターナ対ミラン 【2021-22シーズン・セリエA第26節】
スタメン

基本システム:サレルニターナ「4-4-2」、ミラン「4-2-3-1」
これを閲覧してくださっているほとんどの方がご存知でしょうが、この試合の結果は2-2でした。
最下位チームを相手に不覚を取ったという事で、当然ながらこの結果は憂慮すべきものです。
ではどこが問題だったのか。この点については何よりも「対戦相手のスカウティング不足」が挙げられるのではないかと。
言わずもがな、試合に臨む上では対戦相手の戦術や選手を分析し、対策を講じることが結果を残すためには極めて重要です。
典型例として、昨季のサッスオーロ戦で見せた「試合開始から6.76秒」でのゴールや、記憶に新しいサンプドリア戦におけるメニャン&レオンによる電光石火の速攻ゴールなど、そうしたミランの特徴的なゴールはいずれも対戦相手を研究したことによるものだと明言されています。
しかしながら、今節対戦したサレルニターナは数日前に監督を解任したばかりであり、そのためチームの戦術的な側面に未知数な部分が増えた状況でした。
また、俗に「監督解任ブースト」と言われる、監督解任直後に起きやすいチームの一時的なパフォーマンス向上現象というのも無視できない側面で、ミランとしては対戦相手に対する確信を持てないまま臨まざるを得ない状況だった、と。
実際、サレルニターナのパフォーマンスはおそらくミランにとっても、そして我々ミラニスティにとっても想定以上のものだったように思われます。
まず守備については4-4-2のコンパクトなセット守備をメインに、状況によってプレスを織り交ぜていく形が基本。シーズン前半戦のミランとの対戦時は前線2枚の守備貢献度が極めて低く、ミランは簡単にビルドアップできたわけですが、今回はそうはいきませんでした(※前回対戦時のマッチレポート記事はコチラ)。
攻撃に関しても、守備からのカウンターや前線のジュリッチの高さを活かしたり、サイドチェンジでミランのプレスを回避したりして素早くチャンスを演出。そうして2得点を奪うことに成功しています。
個人的にはサレルニターナがここまでのものを見せてくるとは思いませんでしたし、おそらくはミランも選手たちの中で前回対戦時の印象が残っていたこともあり、油断や慢心といった側面は少なからずあったように思われました。
○攻撃力不足
とは言え、ミランは5分に幸先良く先制点を奪うことに成功します。
前トピックではサレルニターナの良い部分を強調しましたが、一方で失点シーンのCBのスプリットを始め、付け入るスキは十分にあったように思われます。実際、その後もミランは相手のハイライン(ラインコントロールも微妙な感じ)の裏を突くことで素早くチャンスシーンを作り出し、追加点を奪いにかかります。
しかし、そうした際に目立ったのが「パス精度の低さ」です。パスのズレが異様に目立ち、時には被カウンターのきっかけにもなりました。特にレオンとブラヒムはその傾向が強く、集中力の欠如したプレーを続けた事から相手を舐めてかかっていたんじゃないかと邪推したくなります。
また、裏を狙うことにこだわった影響もあってか、後方からのパス回しに際して苦戦するシーンが見受けられました。

一例として上図の場面について見ていきます。ミランの2CBに対してサレルニターナは2トップで牽制し、中盤と協力しながらミランのダブルボランチへのパスコースを消しています。
ここでカラブリアの様子を見てみると、彼は(おそらく)ベナセルに対してジェスチャーで「下がれ!」と指示を送っています。確かにベナセルがトモリの横に下りて3CBを形成し、相手の2トップに対して数的優位を作るというのは1つの打開策であって、それなら後方3人によるパス回しで相手の陣形を動かし、ライン間やサイドにスペースを作り出すことが期待できました。
しかし実際はそうならず、近くに有効なパスの出し先が見つからないホルダーのトモリは、左サイドに張ったテオ(画面外)へのパスを余儀なくされます。

その後、テオから下がってきたレオンにボールが渡った場面。サレルニターナの守備陣形は崩れておらず、2トップもしっかりとミランのダブルボランチをマークしている状況です。それにもかかわらず、レオンがミランボランチ方向へと雑なパスを送ったため、あっさりとジュリッチにインターセプトされ被カウンターの起点となりました。

その後、サレルニターナがカウンターを開始した場面。ジュリッチからパスを受けたボナッツォーリが前方に持ち運び、それと同時に2人が飛び出し前方のミラン2CBに圧力をかけます。トナーリの迅速なプレスバックや相手の精度がやや物足りなかったことにより事なきを得ましたが、ヒヤリとするシーンでした。
上記の通りもしベナセルが下がっていれば後方は3人でスペースを埋められていたため、より危険度は低くなったはずなのですが…。
他方、ミランはボランチが下がる(下がろうとする)シーンももちろんありましたが、その動きの意図を周囲としっかり共有できていたかというと怪しいところ。すなわち、どちらの場合であっても崩しの形は明確でなく、それゆえ後方からの組み立てによる崩しは散発的なものにとどまった印象でした。
上記これらの点についても、相手のスカウティング不足というのが影響していたかなと。相手の出方がはっきりしていれば、ミランとしてももう少し明確な形を持てたと思いますしね。
サレルニターナ2-2ミラン
雑感
後半になりミランはメンタル的にやや持ち直して攻勢をかけましたが、前述の通り最後の精度が足りずに攻めあぐねます。そのため結局のところ、追加点は途中出場のレビッチによるミドルシュートの1点にとどまってしまいました。
両チームの順位を考えるとミランにとって極めて勿体ない結果であることは間違いないわけですが、長いシーズンにおいては強いチームでもこういう事は起こり得ます(スクデットを獲った10-11シーズンにしろ、29節で最下位バーリに引き分けていますしね)。また、当記事で何度も強調しているように今回は相手監督の交代直後によるスカウティング不足がありましたから、情状酌量の余地はあるんじゃないかなと。
今のミランには酷い試合をした後でもすぐ持ち直す力がありますし、おそらく次節のウディネーゼ戦ではやってくれるはず。ですから引き続き期待していきたいと思います。
一部選手の迷走やトップ下の補強を怠ったフロントへの不満をネチネチと書きたくはないので、その意味でも次節は絶対に勝って欲しいです(笑)
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。