【興味深き「塩試合」】 ミラン対ユベントス【2021-22シーズン・セリエA第23節】
スタメン

基本システム:ミラン「4-2-3-1」、ユベントス「4-4-2「
前半については、全体的に両者がアグレッシブにプレスを仕掛け合うインテンシティの高い展開となりました。
そのため、まずポイントとなったのは如何にして相手のプレスを回避し、速攻へと繋げるかです。
この点について、ユベントスではクアドラードがキーマンの1人としてプレー。中盤に入りながらパスを引き出し、そこからのドリブルやパスで打開を図ります。

――例えばこの場面。デ・シリオのポジショニングでレオンを前に引き出し、その背後のスペースでクアドラードがパスを引き出す
一方のミランは、ブラヒムとメシアスがライン間に入りCFイブラと近い距離間でプレー。そしてクルニッチ、トナーリに対応する相手のダブルボランチ(ベンタンクール、ロカテッリ)の背後でパスを受ける形などにより、速攻を仕掛けようとします。

――例えばこの場面。ブラヒムがメニャンからパスを引き出す
しかしながら、両チームともにそこから先が中々上手くいかず。この点についてはユベントスがベンタンクール、ミランはトナーリが特に素晴らしい機動力や対人能力を見せ、それぞれが相手にとって有効なスペース・選択肢を潰していきました。

――ボールを受け、ドリブルで前方に運ぶクアドラード。しかしトナーリにより止められる(赤)

――ドリブルで運ぶブラヒムに対し、ベンタンクールがカバーに入ってブラヒムを止める
そんなわけで。速攻が難しくなった両チーム。そこでミランはレオンのドリブル突破に頼りたいところでしたが、ユーベもそこは十分に警戒しており、大体において2人以上をレオンに付けることで対応。強引に突破しようにもチャレンジ&カバーが徹底されているため、フィニッシュにまで繋げることがほとんどできません。
対するユーベの攻撃もディバラ、クアドラードを中心とする右サイドをミランのトナーリを中心とする守備で封じ込め、また左ではカラブリアが安定したプレーを見せるなどして相手にチャンスを作らせません。
しかもファイナルサードでのクオリティに多少なり欠ける両チームのため、相手にゴール前で固められた際には非常に苦しいものがありました。ミランとしてはそれでも何度か攻め込みシュートチャンスを作るものの、キエッリーニ・ルガーニのCBコンビに阻まれるなどしてゴールならず。前半はスコアレスで折り返すことになりました。
○ミランの好守
後半。ミランはハイプレス強度を落とす一方で、主に自陣左サイドにボールを追い込む守備でユベントスの攻撃を封じ込めていきます。
具体的に、CFのジルー(負傷したイブラに代わって前半途中投入)と右SH(メシアス、途中からサレマ)が主に相手CBに制限をかけて自陣左サイドに誘導し、逆サイドのボランチを含め後方が同サイドにコンパクトに圧縮。そこから縦パスを受ける選手を複数人で厳しくチェックに行き、ボール奪取を図っていく、と

――例えばこの場面。メシアスに寄せられたキエッリーニは右CBのルガーニにパス。そこへ寄せるジルー

――その後の場面。ルガーニから前方のクアドラード(画面外)にパス

――その後の場面。クアドラードに対しては対面のテオと、左サイドに絞っていたクルニッチの2人で対応。この後ボールを奪取した
こうした形によりクアドラードやディバラのいるエリアのスペースを消し、彼らにチャンスメイクする隙を与えないことに成功します。前半はトナーリを中心とする個を活かした1対1のデュエルが目立ちましたが、後半は体力的な事情もあり、より組織的に上手く守っていた印象です。

――同様の場面。ここではルガーニからディバラがパスを受ける。そこにはトナーリが厳しくチェックにいく

――その後の場面。トナーリの厳しいチェックによりサイドに追い詰められるディバラ。その後トナーリはテオ、ベナセル(途中から右ボランチに投入)と一緒に囲い込み、ミランがボールを奪取した
一方で、左サイドに圧縮する分、自陣右サイドはやや手薄になることは避けられません。そのため右へ展開をされた場合には自陣への迅速な撤退やスライドなど、注意が必要でした。

――例えばこの場面。左サイドでの密集を回避したベンタンクールがCBキエッリーニに展開。その前方にはスペースがあるため、キエッリーニがドリブルで運んでいく

――その後の場面。キエッリーニがボールを運ぶも、前方にパスの選択肢は少ない状況。そこでサイドのサンドロにスルーパスを供給。
とは言え、ユーベはあまりそちらのスペースを有効に使う手段はないようでした(モラタがロクに絡めない)。
また、ミランとしてもコレにすぐに対応。60分にベナセル(右ボランチに入り、クルニッチはトップ下へ)とサレマ(右SH)を投入することで、右サイドを高い機動力でカバーしようとします。

――例えばこの場面。サレマがCBに寄せに行ったため、シュチェスニーが左SBサンドロへのロングパスを選択。しかし、ここへはベナセルが中央からサイドへ素早くチェックに行き、同時に中盤のクルニッチとサレマが迅速にサポートに向かい周囲のパスコースを閉じる

――その後の場面。3人がかりでサンドロを止め(赤)、最終的にミランのスローインとなった
このようにしてミランは、前後半通じてユーベの枠内シュートを「0」に抑えることに成功。また以下のデータを見ても、ユーベにチャンスクリエイトの機会を出来るだけ与えないような守備が機能していたといえるのではないかと。

――この試合における各ゾーンでのボールタッチ数について。(左の数字がミラン。右がユベントス)ユベントスはディフェンシブゾーン、ミドルゾーンにおいてミランよりも多くのボールタッチを記録したが、アタッキングゾーンでの回数は下回った
しかしながら、結果はスコアレス。これに関してはミランも決定力が足りなかったわけで、改善が必須であることは間違いありません。
ミラン0-0ユベントス
雑感
両チーム共に守備で奮闘する一方で、攻撃がイマイチ機能しない…そんな状況ですと、「塩試合」と呼ばれてしまうのも致し方ありません。
とは言え、ビッグマッチ特有の緊張感あるゲームであったことは確かですし、個人的には主に守備面で楽しめました。まぁやっぱりユーベ戦はミラノダービーと並んで特別だと思います。
さて。これにて代表ウィークを迎えるミランですが、代表ウィーク後の対戦相手はインテルとなります。
間違いなく難しい試合になるでしょうが、逆転スクデットの可能性を残す為にはもちろん、CL圏内の地位を固めるためにも重要な一戦です。
この代表ウィークで現在抱える課題点は出来る限り修正してもらい、万全の態勢で臨んで欲しいですね。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。