フロレンツィの戦術的柔軟性について
今シーズン序盤は新加入ながら怪我もあり、コンディション調整や周囲との連携の習熟および戦術理解が遅れていましたが、次第に本領を発揮。今ではカラブリアの不在を補う見事な活躍を披露しています。
そして、シーズンの経過と共に戦術理解やチームメイトとの相互理解が進み、上記の良さがチームの中で活かされるようになったことで、ピッチ上において様々な機能・役割を担うようになっています。
それでは具体例を見ていきましょう。
(1)ローマ戦
ローマ戦においてフロレンツィが見せた動きの一つが、中盤に加わるというものです。

――ローマ戦における一場面
この試合ではダブルボランチの一角であるクルニッチが早い段階で前線に上がり、トナーリが1アンカーとなるのが基本。そのため、トナーリの両脇のスペースにSBのフロレンツィとテオが絞り、中盤でのビルドアップをサポートすると同時に被カウンターに備えるという形を何度か取りました。

――別の場面。ここではGKメニャンがボールを持ち、圧力をかけるローマの前線。そこで、フロレンツィが中に絞る

――その後の場面。フロレンツィがメニャンからパスを引き出した
(2)ヴェネツィア戦
後方からのビルドアップ時、相手の第一プレッシャーラインを躱す際の出口としてフロレンツィは機能します。
この試合、ミランは後方でボールを回しつつヴェネツィアの前線3枚を引き付けてから、少し高めの位置を取るフロレンツィへとパスを供給する形を何度か見せます。そしてサイドでボールを受けるフロレンツィに対してはMFやSBが対応しに出て来るわけですが、フロレンツィはそうしたプレッシャーをワンタッチパスやファーストタッチで上手く躱しながらボールを前進させ、速攻の起点となりました。

—―例えばこの場面。テオ、ガッビア、カルル(画面外)とパスを繋ぎ、左から右へとボールを動かすミラン。ヴェネツィアは彼らに対し前線の3枚で対応

――その後の場面。カルルはフロレンツィへのパスを選択。そこには中盤からブシオが飛び出て対応

――その後の場面。ブシオのサイドへの対応により生じた背後のスペースに入るバカヨコ。そこへフロレンツィがパスを通し、プレスを突破した
(3)ジェノア戦
この試合のフロレンツィはトモリが負傷交代したことによる緊急出場でしたが、後半からは積極的に右アウトサイドレーンで幅を取り、サイド攻撃に関与します。

――例えばこの場面。右サイドで高い位置を取るフロレンツィ。そこへカルル、トナーリとテンポ良くパスを繋いでボール送り届ける

――その後の場面。フロレンツィはジルー、ダニエルの待つ前線にパスを供給し、チャンスを演出した
一方、延長戦からフロレンツィは主に下がり目の位置で3バックの一角を構成。これには相手のシステム変更(2トップ)への対応という側面があったように思われます。

――ジェノアの2トップに対し、ミランはフロレンツィが下がって3バックでボールを回す
以上。ここ数試合のフロレンツィを軽く振り返ってみましたが、ここでは複数の役割をこなす彼の戦術的柔軟性が見て取れます。
現代サッカーにおいてSBに複数の役割・機能を求めているチームは多く、それはピオリ・ミランにとっても例外ではありません。そのため上記のように、1試合毎ないし1試合の中でも複数の役割をこなせるフロレンツィのような存在は非常に重要ですし、チームの戦術の選択肢を広げてくれる選手ですね。
また、今回は攻撃の局面に焦点を絞りましたが、現在のフロレンツィは守備においても安定したパフォーマンスを披露しています。更に言えば、経験豊富なベテランとしての振る舞いにも特筆すべきものがあり、この点に関し特に個人的に印象に残っているのが以下のシーンです。
we know it’s not your fault, we hope you’ll understand it.
— frasca (@frascone_ilaria) December 7, 2021
ti vogliamo bene @fikayotomori_ pic.twitter.com/wufPE9yBuN
――リバプール戦の試合後のシーン。この試合で失点に直結するミスを犯したことに責任を感じ、うなだれるトモリ。そこへフロレンツィが近づき、激励する
今シーズンは買取OP付きレンタルでの加入となっているフロレンツィですが、今の活躍をシーズン終了まで続けられれば買取の可能性は十分にあるのではないかと思います。
まして、カラブリアの稼働率がどうにも安定しない現状だと彼のような存在は益々重要です。個人的には是非ともフロレンツィに活躍を続けてもらい、来季以降も残って欲しいですね。
Forza Florenzi!
それでは今回はこの辺で。