【勝利の代償】 ミラン対ジェノア 【2021-22シーズン・コッパイタリアR16】
今回はコッパ・イタリアベスト16、ミラン対ジェノアのマッチレビューを行いたいと思います。
スタメン

基本システム:ミラン「4-2-3-1」、ジェノア「4-3-3」
スタメン

基本システム:ミラン「4-2-3-1」、ジェノア「4-3-3」
○前半の苦戦
前半17分。ミランはエスティゴーアにヘディングで決められ失点を喫します。
試合後にピオリ監督が「試合へのアプローチを間違えてしまった」と言及したように、実際にミランの前半のパフォーマンスが全体的に良くなかったのは確かだと思います。この点について、インテンシティといった選手個々のパフォーマンスがその原因の一つだとは思いますが、ここでは主に戦術的な観点から見ていきたいと思います。
後方からのビルドアップ時、ミランのユニットは4バック+アンカーのトナーリという構成が前半は基本でした。一方、ダブルボランチの一角であるクルニッチは早い段階でライン間に入り、主にそこでパスを引き出そうとします。大枠としてはローマ戦の陣形と同様のものだったわけですが、その時とは異なり結果的に上手くいきませんでした。

――前半に見られた、ミランのビルドアップ時の陣形
こうしたミランに対するジェノアの守備は、4-3-3(4-5-1)でセットする形が基本。1トップがアンカーのトナーリを見ながらミランCBに牽制をかけつつ、両WG+中盤が中央を締めることでライン間へのパスコースを封じます。

――ジェノアの守備陣形。

――その後の場面。トモリがボールを持ち運び、ライン間へ縦パス。しかしカットされた
以前のローマ戦では比較的スペースのあるライン間に素早くボールを入れ、ジルーと2列目+クルニッチ等が中心となり効率的に攻めるシーンが何度か生まれたわけですが、今回は上記のため苦戦を強いられることに。
時にはトナーリがボールを受け、彼が何度か縦パスを差し込むわけですが、ダニエルやクルニッチでは狭いスペースにてあまり効果的にプレーできず。攻めあぐねる状況というのが続きました。
また守備に関しても、全体として相手のドリブルを使った攻撃等に対しやや受動的な動きを見せてしまい、17分には失点。しかもその数分後にはトモリが負傷して交代を余儀なくされる最悪の展開となりました。
○後半の反撃
そんな中、迎えた後半。
前半途中から改善の兆候は既にありましたが、後半からミランは明確な修正を加えて立ち直ります。
まずはボランチの立ち位置です。クルニッチがトナーリと近い位置に移り、主に相手の中盤の前にポジショニングします。

――例えばこの場面。ガッビアからカルルにパスが展開され、そこに対応するイエボア。この間、クルニッチはトナーリと相手中盤ラインの前にポジショニング
後方でのパスの選択肢が増えた事により、相手の1トップがミランCBからミランボランチへのパスコースを切るのが難しくなります。また、状況によってはミランボランチに対し相手の中盤が前に出て対応せざるを得なくなるため、ミランとしてはライン間でのスペースを見つけ易くなる、と。

――その後の場面。カルルからライン間のメシアスに縦パスが通る。左インサイドハーフのメレゴーニは手前のクルニッチをマークしていたため、背後のケアが遅れる

――メシアスがワンタッチでサイドのフロレンツィに展開。ミランがボールを前進させた
こうしてミランはポゼッションを安定させつつ、サイドを使った攻撃を積極的に展開していきます。
先のようにジェノアが中央を固め、また状況に応じてミランCBにWGが対応することもあり、比較的空き易いサイドのスペース。そこへとタイミング良くボールを送り込み、ジェノアの守備を押し込んでいきました。
この点に関して印象的なパフォーマンスを披露したのがフロレンツィです。トモリとの交代で右SBに入った彼はアウトサイドレーンを縦に広く動きながら積極的にボールを貰い、サイド攻撃を活性化させていきます。
また、フロレンツィ投入の関係で右CBにポジションを移したカルルも安定したパフォーマンスを披露。ラインを押し上げて攻撃に関与していきました。

――例えばこの場面。カルルが右サイドのフロレンツィに展開し、相手の左WGエクバンを押し下げる

――その後の場面。フロレンツィからカルルへバックパス。そこへはエクバンが対応

――その後の場面。エクバンがカルルに対応することで、サイドでフリーになるフロレンツィ。そこへカルル、トナーリとテンポ良くパスを繋いでボール送り届ける

――その後の場面。フロレンツィはジルー、ダニエルの待つ前線にパスを供給

――その後の場面。ダニエルが巧みに抜け出し、そこへジルーがラストパス。相手にインターセプトされるも、非常に惜しい形を作り出した
更にミランは62分、レオンを投入して左サイドからの攻勢を強めます。
この試合で先発したレビッチは左アウトサイドレーンを主戦場とし、何度か突破からチャンスを演出したものの、殊にドリブルでの突破力は今やレオンの方が明確に上回ります。
そんなレオンの投入により、ジェノアを益々追い詰めていきました。
このようにして次々と手を打ち、惜しいチャンスを量産していくミラン。すると74分、ジルーがヘディングで見事に合わせてミランが待望の同点弾をゲット。後半にはそれ以上の追加点はなく1-1で延長戦に突入しましたが、その後ミランが2点を挙げて勝利を収めました。
ミラン3-1ジェノア
雑感
粘り強いパフォーマンスを見せるジェノアに苦戦を強いられながらも、最後には何とか勝利を収めベスト8進出を果たしたミラン。
前半のパフォーマンスは決して褒められたものではありませんでしたが、後半にはしっかりと修正を施しチームとして立て直した点は見事だったと思います。
とは言え勝利の代償は非常に重く、この試合ではトモリが負傷交代してしまうという事態に。この記事を書いている段階では怪我の具合について明らかになっていませんが、とにかく軽傷であることを願います(追記:トモリは半月板損傷により手術。全治は最短1カ月と報じられています)。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。
前半17分。ミランはエスティゴーアにヘディングで決められ失点を喫します。
試合後にピオリ監督が「試合へのアプローチを間違えてしまった」と言及したように、実際にミランの前半のパフォーマンスが全体的に良くなかったのは確かだと思います。この点について、インテンシティといった選手個々のパフォーマンスがその原因の一つだとは思いますが、ここでは主に戦術的な観点から見ていきたいと思います。
後方からのビルドアップ時、ミランのユニットは4バック+アンカーのトナーリという構成が前半は基本でした。一方、ダブルボランチの一角であるクルニッチは早い段階でライン間に入り、主にそこでパスを引き出そうとします。大枠としてはローマ戦の陣形と同様のものだったわけですが、その時とは異なり結果的に上手くいきませんでした。

――前半に見られた、ミランのビルドアップ時の陣形
こうしたミランに対するジェノアの守備は、4-3-3(4-5-1)でセットする形が基本。1トップがアンカーのトナーリを見ながらミランCBに牽制をかけつつ、両WG+中盤が中央を締めることでライン間へのパスコースを封じます。

――ジェノアの守備陣形。

――その後の場面。トモリがボールを持ち運び、ライン間へ縦パス。しかしカットされた
以前のローマ戦では比較的スペースのあるライン間に素早くボールを入れ、ジルーと2列目+クルニッチ等が中心となり効率的に攻めるシーンが何度か生まれたわけですが、今回は上記のため苦戦を強いられることに。
時にはトナーリがボールを受け、彼が何度か縦パスを差し込むわけですが、ダニエルやクルニッチでは狭いスペースにてあまり効果的にプレーできず。攻めあぐねる状況というのが続きました。
また守備に関しても、全体として相手のドリブルを使った攻撃等に対しやや受動的な動きを見せてしまい、17分には失点。しかもその数分後にはトモリが負傷して交代を余儀なくされる最悪の展開となりました。
○後半の反撃
そんな中、迎えた後半。
前半途中から改善の兆候は既にありましたが、後半からミランは明確な修正を加えて立ち直ります。
まずはボランチの立ち位置です。クルニッチがトナーリと近い位置に移り、主に相手の中盤の前にポジショニングします。

――例えばこの場面。ガッビアからカルルにパスが展開され、そこに対応するイエボア。この間、クルニッチはトナーリと相手中盤ラインの前にポジショニング
後方でのパスの選択肢が増えた事により、相手の1トップがミランCBからミランボランチへのパスコースを切るのが難しくなります。また、状況によってはミランボランチに対し相手の中盤が前に出て対応せざるを得なくなるため、ミランとしてはライン間でのスペースを見つけ易くなる、と。

――その後の場面。カルルからライン間のメシアスに縦パスが通る。左インサイドハーフのメレゴーニは手前のクルニッチをマークしていたため、背後のケアが遅れる

――メシアスがワンタッチでサイドのフロレンツィに展開。ミランがボールを前進させた
こうしてミランはポゼッションを安定させつつ、サイドを使った攻撃を積極的に展開していきます。
先のようにジェノアが中央を固め、また状況に応じてミランCBにWGが対応することもあり、比較的空き易いサイドのスペース。そこへとタイミング良くボールを送り込み、ジェノアの守備を押し込んでいきました。
この点に関して印象的なパフォーマンスを披露したのがフロレンツィです。トモリとの交代で右SBに入った彼はアウトサイドレーンを縦に広く動きながら積極的にボールを貰い、サイド攻撃を活性化させていきます。
また、フロレンツィ投入の関係で右CBにポジションを移したカルルも安定したパフォーマンスを披露。ラインを押し上げて攻撃に関与していきました。

――例えばこの場面。カルルが右サイドのフロレンツィに展開し、相手の左WGエクバンを押し下げる

――その後の場面。フロレンツィからカルルへバックパス。そこへはエクバンが対応

――その後の場面。エクバンがカルルに対応することで、サイドでフリーになるフロレンツィ。そこへカルル、トナーリとテンポ良くパスを繋いでボール送り届ける

――その後の場面。フロレンツィはジルー、ダニエルの待つ前線にパスを供給

――その後の場面。ダニエルが巧みに抜け出し、そこへジルーがラストパス。相手にインターセプトされるも、非常に惜しい形を作り出した
更にミランは62分、レオンを投入して左サイドからの攻勢を強めます。
この試合で先発したレビッチは左アウトサイドレーンを主戦場とし、何度か突破からチャンスを演出したものの、殊にドリブルでの突破力は今やレオンの方が明確に上回ります。
そんなレオンの投入により、ジェノアを益々追い詰めていきました。
このようにして次々と手を打ち、惜しいチャンスを量産していくミラン。すると74分、ジルーがヘディングで見事に合わせてミランが待望の同点弾をゲット。後半にはそれ以上の追加点はなく1-1で延長戦に突入しましたが、その後ミランが2点を挙げて勝利を収めました。
ミラン3-1ジェノア
雑感
粘り強いパフォーマンスを見せるジェノアに苦戦を強いられながらも、最後には何とか勝利を収めベスト8進出を果たしたミラン。
前半のパフォーマンスは決して褒められたものではありませんでしたが、後半にはしっかりと修正を施しチームとして立て直した点は見事だったと思います。
とは言え勝利の代償は非常に重く、この試合ではトモリが負傷交代してしまうという事態に。この記事を書いている段階では怪我の具合について明らかになっていませんが、とにかく軽傷であることを願います(追記:トモリは半月板損傷により手術。全治は最短1カ月と報じられています)。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。