トナーリの躍動 ~VSローマ~

サンドロ・トナーリ
前回のローマ戦マッチレビュー記事にてあまり言及できなかったトナーリのパフォーマンスについて、今回はもう少し言及していきたいと思います。
守備面

トナーリの役割は多岐に渡ったわけですが、まずは守備の側面について見ていきましょう。
この試合のミランは攻撃時、ダブルボランチの相方であるクルニッチが継続的に高い位置を取り、トナーリが後方でバランスを取るという形が基本でした。

そこで、ポイントとなったのが守備時のトナーリのパフォーマンスです。とりわけトランジション時においては相手の攻撃を遅らせるべく、素早い判断と豊富な運動量に基づく守備がより求められました。
また、この試合のミランは離脱者の続出に伴い急造CBコンビで臨まざるを得なかったという事で、DF陣へのサポートというのもいつも以上に重要な仕事となりました。

そしてトナーリは精力的に動き回り、上記のタスクを忠実に遂行。殊に後者に関しては、危険度の高いザニオーロを要所で潰すことで、チームのピンチを未然に防ぐといったシーンが散見されました。


【21-22】トナーリ_ローマ戦1
――例えばこの場面。ザニオーロがガッビアとのマッチアップ(赤)を制し突破するが、そこへトナーリが素早くサポートに入る


【21-22】トナーリ_ローマ戦2
――エリア内に侵入するザニオーロにトナーリが対応


【21-22】トナーリ_ローマ戦3
――トナーリがザニオーロとの競り合いを何とか制し、事なきを得た



攻撃面

続いては攻撃の局面について、要点を絞って見ていきます。
後半、クルニッチの交代後に主戦場を左サイドに移したトナーリ。そこから彼は左サイドでの組み立て~崩しの局面に積極的に絡んでいくわけですが、その際にはチームとして「カルスドルプ(右WB)の裏のスペース」を一つの狙いどころとしていたように思われます。
というのもカルスドルプは守備面において未だ粗さが見られ、しかもこの試合では既にイエローカードを貰っており退場のリスクがありました。そこで、集中的にそのスペースを突くことで守備を崩しつつ、あわよくば彼の退場を誘う狙いがあったのかなと。
そして、当該スペースの攻略のために活かされたのがテオやレオンのスピード、およびトナーリの能力です。


【21-22】トナーリ_ローマ戦4
――例えばこの場面。左サイドでボールを持つトナーリ(赤)。この後、トナーリはボールキープしながらカルスドルプを含む3人(青)の注意を引き付ける


【21-22】トナーリ_ローマ戦5
――ボールキープするトナーリ。その間、前方にスペースを見つけたテオがそこへ走り出す


【21-22】トナーリ_ローマ戦6
――その後の場面。トナーリがテオに正確な浮き球のスルーパスを供給。チャンスを演出した

相手を引き付けたり躱したりして、スペースと時間を作り出す「ドリブルとキープ力(テクニック・フィジカル)」、そしてスペースに走り出す味方へと合わせる「パスの判断や精度、視野」など、こういった場面ではトナーリの強みというものが存分に発揮されています。
更に74分。トナーリのスルーパスに抜け出したテオをカルスドルプが倒したことで、退場という結果に繋がりました。


【21-22】トナーリ_ローマ戦7
――当該シーンについて。左サイドでボールを持つトナーリ。


【21-22】トナーリ_ローマ戦8
――まずは相手ボランチと正対して相手の動きを止めてから、スペースへとボールを持ち出す


【21-22】トナーリ_ローマ戦9
――その後の場面。背後からの相手のプレスをいなしつつボールを運び、前方に飛び出すテオに正確なスルーパスを供給


【21-22】トナーリ_ローマ戦10
――スルーパスに抜け出したテオをカルスドルプが倒し、退場となった




今季のトナーリは戦術理解度の高まりと共に積極性を身に付け、上記のようなプレーを行えるまでに精神的・技術的成長を遂げています。
攻守における貢献度の高さは目を見張るものがありますし、現時点でも既にミランにとって欠かせない戦力ですね。

とは言え、彼にはまだまだ多くの伸びしろが残されているように思われますし、上記のような積極的・主体的なプレーの頻度や精度が向上すれば、より決定的な選手になれます。
実際にそうなるポテンシャルは十分にあるように感じられるだけに、これからの更なる成長が本当に楽しみです。

ミランにおいてトナーリがカンピオーネになる過程をしっかりと見守っていきたいですね。


それでは今回はこの辺で。

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