【2021年勝利締め】エンポリ対ミラン【2021-22シーズン・セリエA第19節】
今回はセリエA第19節、エンポリ対ミランのマッチレビューを行いたいと思います。
スタメン

基本システム:エンポリ「4-3-1-2」、ミラン「4-2-3-1」
スタメン

基本システム:エンポリ「4-3-1-2」、ミラン「4-2-3-1」
○エンポリのプレス回避
まずはエンポリの攻撃と、ミランの守備についてです。
この試合のエンポリはミランのプレスを何度となく躱し、ゴール前に侵入していきました。
まず、被ハイプレス時はときにゴールキーパーを活用しつつ、レイオフ等を用いたパス回しでプレス回避を図ります。

――例えばこの場面。右CBロマニョーリに対し、ケシエがリッチへのパスコースを切りながらプレス。そこで、ロマニョーリは前方のジュルコフスキ(画面外)にパス

――その後の場面。ジュルコフスキがワンタッチでリッチに落とす。この後、そジルーがリッチに対応するも躱され、最終的に左CBのルペルトにフリーでボールが渡った
ミランは前線の2枚(ジルー、ケシエ)の内どちらかがCBにプレスをかけてボールをサイドに誘導し、もう片方が相手アンカーをマークする形が基本でしたが、上記のようなエンポリのパス回しによりアンカーor逆サイドのCBにフリーでボールを持たせてしまう場面が散見されました。
また、エンポリについて注目すべきはテクニックの平均レベルの高さです。
なかでも中盤の選手たちのキープ力や左CBルペルトの展開力は特筆すべきものがあり、ミランの「ボールをサイドに誘導→陣形を圧縮してプレッシャーを強め、ボールを回収する」といった狙いを外すプレーを披露。それによりミランとしては手薄なサイドへボールを展開されるなどして、被速攻の場面を多く作られる結果となりました。

――例えばこの場面。敵陣左サイドでプレッシャーを強めるミラン。ここでパリージは前方へのパスを選択

――その後の場面。バイラミがボールを受け、そこにはベナセルが対応(赤)。ミランとしてはここでボールを回収したい

――その後の場面。バイラミがベナセルのマークを外し、逆サイドでフリーのジュルコフスキにパス。速攻へ繋げた
そこで後半になると、ミランは全体的なラインを下げて中央のスペースを消す守備を重視する形に変更。これにより相手CBをフリーにさせ易くなりますが、ライン間を使われ速攻を食らうといった場面は減った印象でした(後半開始早々を除く)。
一方で、敵陣深い位置でボールを失った際などはそのままプレッシャーをかける形。すると62分。ルペルトのパスを見事にインターセプトしたサレマがエリア手前で倒されFKを獲得。それをフロレンツィがモノにし、貴重な追加点をゲットしました。
○エンポリのプレス
続いてはミランの攻撃と、エンポリの守備についてです。
エンポリは2トップと中盤の4枚で、ミランの中央経由のビルドアップを阻止する形が基本。そしてサイドにボールが渡った際は手近なパスコースを消し、同サイドに追い詰めていきます。
こうした相手の守備に特に手を焼いたのがテオです。手近なパスコースを消されると判断が遅れてボールロストする(しかける)シーンというのが散見されました。

――例えばこの場面。手近なパスコースの無いテオはボールキープし、打開を図る

――その後の場面。しかしテオは必要以上にこねくり回した挙句、ボールロスト。ちなみに、ここでは監督がジェスチャーで怒りをあらわにする(赤)
こういった事情もあり、ミランのビルドアップの手段は前線へのロングボールがメインとなります。まぁビルドアップ時の陣形は最初から固定的でしたし、トップ下に機動力のあるケシエを配したことからも、ロングボール主体というのは当初のゲームプラン通りなのでしょうね。
○エンポリの弱所
敵陣プレスの局面ではミランを苦しめたエンポリでしたが、自陣深くでの守備となると脆さを露呈します。
まず、エンポリは自陣での守備時も基本的に4-3-1-2で守るため、サイドが空きやすいというのが1つ。そのため、ミランとしてはサイドチェンジなどで手薄なスペースへ展開できれば比較的容易にボールを持ち運ぶことができます。

――例えばこの場面。右サイドからボールを受けたトナーリは、左サイドのテオへ展開

――その後の場面。テオからサレマへとボールが渡る。この後、サレマはジルーへのクロスを選択
そして、自陣深くまで運ばれた場合に問題となるのが「バイタルエリアを始めとするゴール近辺の緩さ」です。これに関してはゴール前を固める人数が比較的少ないことと、守備よりも攻撃に重きを置いた選手起用の2つが原因として考えられます。

――その後の場面。サレマのクロスをジルーが落とし、フリーのケシエがダイレクトでネットに突き刺した
上記の流れで12分に先制点を奪ったミランは、18分に追いつかれこそするものの、42分に再びサイドを起点にして勝ち越し点を獲得しました。

――2点目のシーンについて。サイドのサレマからエリア内のケシエにパスが通り、ケシエがネットを揺らす。ここでジュルコフスキ(赤)は戻りが遅れてゴール前のスペースを埋められず、ケシエにエリア内での楽なボールタッチを許している
その後、後半には2点の追加点と1失点を許し、試合は2-4で終了。ミランが勝利を収めました。
エンポリ2-4ミラン
雑感
2021年最後の試合は4得点勝利という事で、2失点は気になりますがそれでも最近の鬱憤を晴らすナイスゲームだったのではないかと思います。
冬の王者の座はインテルに明け渡したものの、勝ち点差「4」の2位という成績は上々ですし、嫌な流れをストップしてウィンターブレイクを迎えられたのもメンタル的に良かったんじゃないかと。
他方で、後半戦に向けて解決すべき課題は多いですし、目標達成のためにはパフォーマンスの向上が不可欠です。
監督・スタッフ・選手たちの努力はもちろんのこと、フロントには補強という形でしっかりとチームをサポートしてもらいたいですね。
後半戦も引き続き期待していきましょう。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。
まずはエンポリの攻撃と、ミランの守備についてです。
この試合のエンポリはミランのプレスを何度となく躱し、ゴール前に侵入していきました。
まず、被ハイプレス時はときにゴールキーパーを活用しつつ、レイオフ等を用いたパス回しでプレス回避を図ります。

――例えばこの場面。右CBロマニョーリに対し、ケシエがリッチへのパスコースを切りながらプレス。そこで、ロマニョーリは前方のジュルコフスキ(画面外)にパス

――その後の場面。ジュルコフスキがワンタッチでリッチに落とす。この後、そジルーがリッチに対応するも躱され、最終的に左CBのルペルトにフリーでボールが渡った
ミランは前線の2枚(ジルー、ケシエ)の内どちらかがCBにプレスをかけてボールをサイドに誘導し、もう片方が相手アンカーをマークする形が基本でしたが、上記のようなエンポリのパス回しによりアンカーor逆サイドのCBにフリーでボールを持たせてしまう場面が散見されました。
また、エンポリについて注目すべきはテクニックの平均レベルの高さです。
なかでも中盤の選手たちのキープ力や左CBルペルトの展開力は特筆すべきものがあり、ミランの「ボールをサイドに誘導→陣形を圧縮してプレッシャーを強め、ボールを回収する」といった狙いを外すプレーを披露。それによりミランとしては手薄なサイドへボールを展開されるなどして、被速攻の場面を多く作られる結果となりました。

――例えばこの場面。敵陣左サイドでプレッシャーを強めるミラン。ここでパリージは前方へのパスを選択

――その後の場面。バイラミがボールを受け、そこにはベナセルが対応(赤)。ミランとしてはここでボールを回収したい

――その後の場面。バイラミがベナセルのマークを外し、逆サイドでフリーのジュルコフスキにパス。速攻へ繋げた
そこで後半になると、ミランは全体的なラインを下げて中央のスペースを消す守備を重視する形に変更。これにより相手CBをフリーにさせ易くなりますが、ライン間を使われ速攻を食らうといった場面は減った印象でした(後半開始早々を除く)。
一方で、敵陣深い位置でボールを失った際などはそのままプレッシャーをかける形。すると62分。ルペルトのパスを見事にインターセプトしたサレマがエリア手前で倒されFKを獲得。それをフロレンツィがモノにし、貴重な追加点をゲットしました。
○エンポリのプレス
続いてはミランの攻撃と、エンポリの守備についてです。
エンポリは2トップと中盤の4枚で、ミランの中央経由のビルドアップを阻止する形が基本。そしてサイドにボールが渡った際は手近なパスコースを消し、同サイドに追い詰めていきます。
こうした相手の守備に特に手を焼いたのがテオです。手近なパスコースを消されると判断が遅れてボールロストする(しかける)シーンというのが散見されました。

――例えばこの場面。手近なパスコースの無いテオはボールキープし、打開を図る

――その後の場面。しかしテオは必要以上にこねくり回した挙句、ボールロスト。ちなみに、ここでは監督がジェスチャーで怒りをあらわにする(赤)
こういった事情もあり、ミランのビルドアップの手段は前線へのロングボールがメインとなります。まぁビルドアップ時の陣形は最初から固定的でしたし、トップ下に機動力のあるケシエを配したことからも、ロングボール主体というのは当初のゲームプラン通りなのでしょうね。
○エンポリの弱所
敵陣プレスの局面ではミランを苦しめたエンポリでしたが、自陣深くでの守備となると脆さを露呈します。
まず、エンポリは自陣での守備時も基本的に4-3-1-2で守るため、サイドが空きやすいというのが1つ。そのため、ミランとしてはサイドチェンジなどで手薄なスペースへ展開できれば比較的容易にボールを持ち運ぶことができます。

――例えばこの場面。右サイドからボールを受けたトナーリは、左サイドのテオへ展開

――その後の場面。テオからサレマへとボールが渡る。この後、サレマはジルーへのクロスを選択
そして、自陣深くまで運ばれた場合に問題となるのが「バイタルエリアを始めとするゴール近辺の緩さ」です。これに関してはゴール前を固める人数が比較的少ないことと、守備よりも攻撃に重きを置いた選手起用の2つが原因として考えられます。

――その後の場面。サレマのクロスをジルーが落とし、フリーのケシエがダイレクトでネットに突き刺した
上記の流れで12分に先制点を奪ったミランは、18分に追いつかれこそするものの、42分に再びサイドを起点にして勝ち越し点を獲得しました。

――2点目のシーンについて。サイドのサレマからエリア内のケシエにパスが通り、ケシエがネットを揺らす。ここでジュルコフスキ(赤)は戻りが遅れてゴール前のスペースを埋められず、ケシエにエリア内での楽なボールタッチを許している
その後、後半には2点の追加点と1失点を許し、試合は2-4で終了。ミランが勝利を収めました。
エンポリ2-4ミラン
雑感
2021年最後の試合は4得点勝利という事で、2失点は気になりますがそれでも最近の鬱憤を晴らすナイスゲームだったのではないかと思います。
冬の王者の座はインテルに明け渡したものの、勝ち点差「4」の2位という成績は上々ですし、嫌な流れをストップしてウィンターブレイクを迎えられたのもメンタル的に良かったんじゃないかと。
他方で、後半戦に向けて解決すべき課題は多いですし、目標達成のためにはパフォーマンスの向上が不可欠です。
監督・スタッフ・選手たちの努力はもちろんのこと、フロントには補強という形でしっかりとチームをサポートしてもらいたいですね。
後半戦も引き続き期待していきましょう。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。