【弾みをつけてCLへ】ミラン対サレルニターナ【2021-22シーズン・セリエA第16節】

2021-22シーズン・試合サレルニターナ戦
今回はセリエA第16節、ミラン対サレルニターナのマッチレビューを行いたいと思います。

スタメン

【21-22】ミラン対サレルニターナ_スタメン_TACTICALista_20211261642

基本システム:ミラン「4-2-3-1」、サレルニターナ「4-4-1-1」
試合の構図

試合の構図は序盤から明確となりました。
「引いて構えるサレルニターナ」と「ボールポゼッションするミラン」という事で、サレルニターナの守備をどう崩していくかというのがミランのポイントとなりました。


【21-22】ミラン対サレルニターナ_戦術分析1
――サレルニターナの守備陣形(4-4-1-1)

この点について、ミランは「サイド・ライン間・裏」という各スペースを有効に使いながら、次々とチャンスを作り出していきます。



サイド

まずはサイドです。全体的にプレッシャーの少ないミランは後方でボールを回しながらサイドに展開し、レオンとテオの位置的な連携を使いながらゴールに迫っていきます


【21-22】ミラン対サレルニターナ_戦術分析2
――例えばこの場面。サイドでボールを受けるレオン。その際、テオは相手SB-CB裏に走ってSB(ヴェセリ)を牽制。これにより、レオンにスペースを提供する


また、ボランチの一角であるケシエは積極的にライン間やゴール前に侵入していきます。サレルニターナの前線からのプレッシャーが弱く、ミランとしては後方で楽にボールを持てるため、普段は最終ラインに下がることの多いボランチを前線に回す余裕があったということかなと。

そして5分、再びサイドからレオンがドリブルで持ち運び、クロス。それにケシエが合わせてミランが先制に成功しました。


【21-22】ミラン対サレルニターナ_戦術分析3
――例えばこの場面。レオンがサイドでボールを持ち、テオが同様の動きでレオンにスペースを提供。他方、ケシエは前方に構える


【21-22】ミラン対サレルニターナ_戦術分析4
――その後の場面。レオンがドリブルで敵陣深くまで運んでクロス。それにケシエが合わせ、先制に成功した



ライン間

続いてはライン間。この点においてはブラヒムがいつも通り主導的な役割を担い、17分にはサレマのチーム2点目となるゴールの起点となっています。


【21-22】ミラン対サレルニターナ_戦術分析5
――2点目のシーンについて。レオンからライン間のブラヒムにパスが通る


【21-22】ミラン対サレルニターナ_戦術分析6
――その後の場面。ブラヒムがドリブルで持ち運び、サレマにパス。その後、サレマが見事なシュートで2点目を獲得した


サレルニターナは前線2枚の守備貢献が少ないこともあり、中盤の連動も上手くいかずこのようにライン間を使われ(かけ)るシーンが少なくありませんでした。





最後に裏。先述のサイドやライン間だけでなく、ミランは裏を使って相手DFに牽制をかけていきます。

こうした役割を最初は主にペッレグリが担っていたわけですが、16分にまさかの負傷交代。そのままクルニッチが前線に投入されます。
前回の記事に書いたように個人的にはペッレグリに大きな期待を寄せていたのですが、裏切られる結果に。ミラン時代末期のアレシャンドレ・パトを彷彿とさせる怪我耐性の低さですね…。



サレルニターナの修正

早くも2点ビハインドとなったサレルニターナは流石にこのままじゃヤバいということで、いくつか修正を施します。
まずは右サイドのゾルテアを一列下げて守備時に5バックに。先述の通りサイドをだいぶやられていたため、そこへの対応でしょう。
更に、前からのプレッシャーを強め、ボールを奪いにいくシーンを増やしていきます。


【21-22】ミラン対サレルニターナ_戦術分析7
――サレルニターナの守備陣形(5-3-1-1)


とは言え、これらの修正によっても本質的な改善には至らず。一番の問題である「2トップの守備貢献」が低いことやそれに伴う全体の連携の悪さによって中盤ライン手前のスペースを使われますし、また攻撃においてはパスもズレてしまうなど、流れを押し戻すことができないままミランにチャンスを作られ続けます。


【21-22】ミラン対サレルニターナ_戦術分析8
――例えばこの場面。サレルニターナは前線2枚のプレッシャーが弱く、ここではフリーのバカヨコが左に展開


【21-22】ミラン対サレルニターナ_戦術分析9
――その後の場面。ボールを受けたテオに対してはスキアボーネが中盤から前に出て対応。一方、前線2枚(赤)は中盤ライン手前のスペースを埋めず、バカヨコへのパスをあっさりと許す


【21-22】ミラン対サレルニターナ_戦術分析10
――その後の場面。フリーのバカヨコには中盤からディタッキオが詰めに行くが、これにより中盤が空きケシエがフリーとなる。この後、パスを受けたケシエがエリア前までボールを運んで決定機を作り出した


前線からのプレスに関しても上記と同様の問題が露呈し、ミランはメニャンのロングフィードから前方に素早くボールを供給するなどしてチャンスを創出していきました。


【21-22】ミラン対サレルニターナ_戦術分析11
――例えばこの場面。前から人を捕まえるサレルニターナだが、GKメニャンにはプレッシャーをかけず。ここで、手薄となった相手最終ラインへメニャンがボールを供給


【21-22】ミラン対サレルニターナ_戦術分析12
――その後の場面。メニャンからのロングボールをクルニッチが頭で落とし、そのこぼれ球をレオンが拾って速攻。その後、ミランは決定機を作り出した


しかしながら、ミランも決定力不足が響いて試合を決定づける重要な3点目を決めきれまず。ペッレグリが負傷交代したためピッチ上にはストライカーが不在ですし、本来はエースとしての働きが求められるレオンも相変わらず最後の精度に欠けるプレー。2-0とリードには成功したものの、もどかしい展開が続く前半となりました。



後半の注目

後半早々、ミランはレオンとバカヨコに代えてメシアスとベナセルを投入。そして引き続き守備の甘いサレルニターナ相手にチャンスを量産していきます。

後半になり、パフォーマンスが向上したように見受けられたのはフロレンツィです。
左サイドからの攻撃の比重が高まったことや、後半から同サイドハーフに入ったメシアスが主に右サイドの幅を取ることにより、内寄りでのプレーが増えたフロレンツィ。スペース認知に長けた彼は前方のスペースへ侵入する形を一つの武器とするわけですが、正にそうした動きを見せてチャンスを演出していきます。


【21-22】ミラン対サレルニターナ_戦術分析13
――例えばこの場面。ボールを受けたフロレンツィに対し相手インサイドハーフが対応。その背後のスペースを認識したフロレンツィはサイドのメシアスにボールを預け、そのスペースでリターンを受ける


【21-22】ミラン対サレルニターナ_戦術分析14
――その後の場面。パスを受けたフロレンツィはそのままワンタッチでブラヒムにパスし、今度はWB-CB間のスペースへ侵入。そこでブラヒムからリターンパスを受ける


【21-22】ミラン対サレルニターナ_戦術分析15
――最終的にクロスまで持ち込み、チャンスを演出した


フロレンツィに単独での突破力はありませんが、このように味方を上手く使って突破することは可能です。加入当初からしばらくはチームメイトとの相互理解が浅かったようでかなり苦戦していましたが、時間が経ちそういった問題が改善し始めた事で持ち味を出せるようになってきた印象です。
また、繰り返しになりますがこの点に関してはメシアスの動きも良かったかなと。メシアスは前評判ほどの突破力こそ感じられませんが、味方を使う意識がありよく走るので使い勝手がいいですし、殊にフロレンツィとの相性においてはサレマよりも良いんじゃないかと。


さて。こうした右サイドの突破だけでなく左サイドやカウンターからもチャンスを作り出していったミランでしたが、やはりというべきか最後の部分で決めきれず。サレルニターナにほとんどチャンスを作らせなかったため無事に2-0と勝利したものの、個人的にはやや不満の残る結果となりました。


ミラン2-0サレルニターナ

雑感

もし万全の状態のイブラが出場していればドッピエッタ、上手くいけばトリプレッタはやってのけたであろう試合内容なだけに、正直なところ大勝劇が見たかったという思いは強いです。
この点に関してはピオリ監督が言うように、特にレオンとブラヒムはもっとゴール前での精度を上げていく必要があると思います。現状頼れるスコアラーがイブラだけというのは人数的に心許ないですしね。

とは言えフィニッシュ以外の局面においては、過密日程の中でターンオーバーを実行しながらも非常に安定したパフォーマンスだったと思いますし、チーム全体としての振る舞いに不満はありません。この調子なら(こ れ 以 上 怪 我 人 が 増 え な け れ ば)手堅く勝ち点を積んでいけますし、引き続き期待していきたいですね。

さて。ミッドウィークにはいよいよCLグループステージ最終節、リバプール戦が行われます。
奇跡のグループステージ突破が懸かった一戦ですし、ここまで可能性を残したからには是非とも実現して欲しいと思います。もう一方のポルト対アトレティコの結果次第でもあるため、まずはリバプールに勝利して天命を待ちたいですね。


Forza Milan!

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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