【バウンスバック】 ジェノア対ミラン 【2021-22シーズン・セリエA第15節】
今回はセリエA第15節、ジェノア対ミランのマッチレビューを行いたいと思います。
スタメン

基本システム:ジェノア「3-5-2」、ミラン「4-2-3-1」
スタメン

基本システム:ジェノア「3-5-2」、ミラン「4-2-3-1」
○守備の安定
この試合は、ミランが直近のリーグ戦2試合で7失点という守備を立て直せるかというのがポイントの1つでした。
これについて、重要なポイントは2点。トモリが復帰したことと、クルニッチを再び左サイドハーフで起用したことです。
前者については以前にも何度も言及していますし、後者についてもアトレティコ戦にてその効果は実証されているため、詳細は割愛します。
それでは、実際にこの試合のミランの守備を見ていきましょう。

――例えばこの場面。相手のバックパスに対し、ハイプレスを仕掛けるミラン
この試合のミランは、前線のイブラが積極的にハイプレスのスイッチを入れます。その際、基本的に自陣右サイドへと誘導する形が見られました。

――その後の場面
そこからは普段のように右サイドハーフ(メシアス)が基本的に斜めのパスコースを切り、ボールを縦(サイド)に誘導。そこには右SB(カルル)が縦を切りながら寄せ、相手を袋小路に追い込んでいきます。
一方、対するジェノアはインサイドハーフがサイドや後方に流れる動きでミランボランチを釣り出し、それにより空いたスペースへ2トップの一角が顔を出すという形で展開を目論みますが、そこにはミランCBがしっかりと付き、そうした狙いを封じ込めていきました。

――その後の場面。ロヴェッラがサイドに流れて斜めのパスコースを空け、そこにビアンキが顔を出しパスを引き出す。しかし、ガッビアにより阻止された。また、ここではクルニッチが反対サイドのインサイドハーフへのパスコースをしっかりと消している
ガッビアはケアーが開始数分で負傷したことによる緊急出場でしたが、前回と比べ安定したパフォーマンスを披露してくれましたね。
また先に挙げたトモリ、クルニッチの他に、この試合で特筆すべきはイブラの守備パフォーマンスだったかなと。
4日前にはフル出場を果たしながら、この試合でも先発となったイブラのコンディションについては個人的にかなり気がかりだったのですが、過密日程を感じさせない動きでチームのハイプレスを主導。
先に挙げたサイドへの誘導もそうですし、その後のパスコースの限定も的確かつ献身的で、非常に安定していたように見受けられました。
この試合のミランはチームとして非常にインテンシティの高い守備を披露していたわけですが、こうしたイブラによる動きがチームに精神面で大きな影響をもたらしたものは間違いないでしょう。イブラが守備をやっているのに、他の選手がサボるなんて許されませんからね。

――例えばこの場面。ジェノアがミラン側右サイドでバックパスを選択し、GKからの作り直しを図る。しかし、バックパスに対しイブラとクルニッチが素早く前に出て全体を押し上げ、逆サイドへの展開を阻止。前半終盤の時間帯であってもアグレッシブな守備を維持する

――その後の場面。再び右サイドにボールが展開され、同様の形で追い込むミラン。エクバンへの縦パスにトモリが対応し、ボールを奪取した
そして、いくつかあった散発的なピンチもメニャンの圧倒的身体能力を活かしたセービングにより事なき得たミランは、前2試合とは異なりクリーンシートで試合を終えることに成功しました。
○イブラヒムの関係性
続いてミランの攻撃面についてです。
9分のイブラの直接FKを皮切りに、この試合では計3得点を奪ったミラン。攻撃面においても素晴らしい結果を出したわけですが、内容的にはいくつか気になる部分も見られます。
今回はその内の1つ、トップ下ブラヒムとCFの関係性に焦点を当てていこうと思います。

――例えばこの場面。サイドでのパス交換で相手の中盤の選手を引き付け、ライン間のブラヒムにパスを通した
ライン間や中盤ラインにてブラヒムがパスを引き出し、ドリブルで持ち運ぶというのはミランのビルドアップ~崩しのプロセスにおける攻撃の形の1つです。この試合でも、ブラヒムのドリブルというのが有力な武器となっていました。
その一方で、このようなシーンも見られました。

――例えばこの場面。先ほどと同様の位置でブラヒムがパスを引き出すも、イブラと動きが被ってしまう
ビルドアップ時、CFイブラはこの試合では積極的に相手中盤ライン近辺に下がってボールを引き出そうとするわけですが、その場合上記のようにブラヒムと動きが被ることがあり得ます。
また、これによる一番の問題としては深さが取りづらくなることで相手DFラインに圧をかけにくく、それゆえライン間を広げる(=ブラヒムにプレーし易い環境を与える)ことが難しくなる点です。

――例えばこの場面。テオ(赤)がボールを受けるが、前線に人がおらず、ジェノアDFラインは背後をあまり気にせずコンパクトな陣形を保てる状態。

――その後の場面。テオが狭いスペースにて強引に突破を図るが、3人に囲まれ最終的にジェノアボールとなった(赤)
イブラが前線を離れる際は誰かが代わりに侵入するわけですが、タイミングや連携、選手のタイプの問題もありそうしたポジションチェンジは中々上手くいっていないように見受けられます。昨季まではレビッチがこの手の役割において中心的な存在となっていたわけですが、現在は怪我で離脱中という状況ですしね。
このように、イブラとブラヒムのプレースタイル的な相性は少なくとも現時点で良好とは言えないですし、出来得る限りで改善が求められる部分かなと。
さて。そんな中、後半の60分にイブラに代わってペッレグリが投入されたわけですが、その直後に以下のような形で3点目が生まれました。

――3点目のシーンについて。クルニッチとテオの連携で左サイドを突破し、一気に敵陣へ侵入。その際、ペッレグリはDFと駆け引きしながら前方へと駆け上がる

――その後の場面。押し下げたDFラインの手前のスペースにブラヒムが入り、テオはそこにパス

――その後の場面。ブラヒムのラストパスをメシアスが見事にゴールに流し込み、3点目を獲得した
ペッレグリは相手DFラインと積極的に駆け引きをし、深さを取れるタイプの選手です。元々ジェノアにて16歳で台頭したときも鋭い動き出しや駆け引きに定評がありましたが、先の得点シーンにおいてもファー・ニアサイド双方に細かくフェイントを入れながら動いて相手を惑わし、結果として相手DFラインを押し下げて手前のブラヒムにスペースを提供しています。
ブラヒムはその後77分に交代したため共演は20分にも満たなかったわけですが、個人的な印象としては両者のタイプ的な相性は良く、今後の共演に期待が持てるパフォーマンスだったのではないかなと。

――別の場面について。相手中盤ラインでパスを受けるブラヒム。一方、ペッレグリは前線で相手DFラインに圧をかける

――その後の場面。ブラヒムが相手を躱してドリブルで前方に運ぶ。ペッレグリはDFラインと駆け引きしつつ、ブラヒムからパスを引き出す

――その後の場面。エリア内に侵入したブラヒムへペッレグリからリターンパス。惜しい形を作り出した(※オフサイド)
この他にも、ペッレグリは最後まで積極的に裏に抜け出してチャンスを作ろうとしていましたし、実際に後半終盤にはテオから非常に惜しいラストパスが出され、それが通っていれば1点というシーンもありました。
レビッチに引き続きジルーが離脱してしまい、レギュラーCFがイブラしかいなくなった今、ペッレグリに懸かる期待というのは非常に大きくなっています。是非ともここから活躍を見せて欲しいですね。
ジェノア0-3ミラン
雑感
リーグ2連敗中でメンタル的にも肉体的にも厳しい状況だったわけですが、そんな中で違いを作り出したのはやはりイブラヒモビッチでした。
FKによる先制点とアグレッシブな姿勢はチームに勢いをもたらすに十分なものでしたし、彼の存在なくしてこの試合の完勝はなかったでしょう。
ただ、連戦による疲労だけは物凄く気がかりですし、これでまた昨季のようにイブラが戦線離脱ということになれば最悪です。同じくミランの精神的支柱であるケアーが離脱を余儀なくされたことを踏まえると尚更でしょう。
選択肢の少ない状況のため難しいとは言え、せめて次節のサレルニターナ戦ではイブラを休ませたいところですね。この点については先述の通りペッレグリの台頭に期待です。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました(※メシアスについてはいずれ単独記事で言及させていただきます)。
この試合は、ミランが直近のリーグ戦2試合で7失点という守備を立て直せるかというのがポイントの1つでした。
これについて、重要なポイントは2点。トモリが復帰したことと、クルニッチを再び左サイドハーフで起用したことです。
前者については以前にも何度も言及していますし、後者についてもアトレティコ戦にてその効果は実証されているため、詳細は割愛します。
それでは、実際にこの試合のミランの守備を見ていきましょう。

――例えばこの場面。相手のバックパスに対し、ハイプレスを仕掛けるミラン
この試合のミランは、前線のイブラが積極的にハイプレスのスイッチを入れます。その際、基本的に自陣右サイドへと誘導する形が見られました。

――その後の場面
そこからは普段のように右サイドハーフ(メシアス)が基本的に斜めのパスコースを切り、ボールを縦(サイド)に誘導。そこには右SB(カルル)が縦を切りながら寄せ、相手を袋小路に追い込んでいきます。
一方、対するジェノアはインサイドハーフがサイドや後方に流れる動きでミランボランチを釣り出し、それにより空いたスペースへ2トップの一角が顔を出すという形で展開を目論みますが、そこにはミランCBがしっかりと付き、そうした狙いを封じ込めていきました。

――その後の場面。ロヴェッラがサイドに流れて斜めのパスコースを空け、そこにビアンキが顔を出しパスを引き出す。しかし、ガッビアにより阻止された。また、ここではクルニッチが反対サイドのインサイドハーフへのパスコースをしっかりと消している
ガッビアはケアーが開始数分で負傷したことによる緊急出場でしたが、前回と比べ安定したパフォーマンスを披露してくれましたね。
また先に挙げたトモリ、クルニッチの他に、この試合で特筆すべきはイブラの守備パフォーマンスだったかなと。
4日前にはフル出場を果たしながら、この試合でも先発となったイブラのコンディションについては個人的にかなり気がかりだったのですが、過密日程を感じさせない動きでチームのハイプレスを主導。
先に挙げたサイドへの誘導もそうですし、その後のパスコースの限定も的確かつ献身的で、非常に安定していたように見受けられました。
この試合のミランはチームとして非常にインテンシティの高い守備を披露していたわけですが、こうしたイブラによる動きがチームに精神面で大きな影響をもたらしたものは間違いないでしょう。イブラが守備をやっているのに、他の選手がサボるなんて許されませんからね。

――例えばこの場面。ジェノアがミラン側右サイドでバックパスを選択し、GKからの作り直しを図る。しかし、バックパスに対しイブラとクルニッチが素早く前に出て全体を押し上げ、逆サイドへの展開を阻止。前半終盤の時間帯であってもアグレッシブな守備を維持する

――その後の場面。再び右サイドにボールが展開され、同様の形で追い込むミラン。エクバンへの縦パスにトモリが対応し、ボールを奪取した
そして、いくつかあった散発的なピンチもメニャンの圧倒的身体能力を活かしたセービングにより事なき得たミランは、前2試合とは異なりクリーンシートで試合を終えることに成功しました。
○イブラヒムの関係性
続いてミランの攻撃面についてです。
9分のイブラの直接FKを皮切りに、この試合では計3得点を奪ったミラン。攻撃面においても素晴らしい結果を出したわけですが、内容的にはいくつか気になる部分も見られます。
今回はその内の1つ、トップ下ブラヒムとCFの関係性に焦点を当てていこうと思います。

――例えばこの場面。サイドでのパス交換で相手の中盤の選手を引き付け、ライン間のブラヒムにパスを通した
ライン間や中盤ラインにてブラヒムがパスを引き出し、ドリブルで持ち運ぶというのはミランのビルドアップ~崩しのプロセスにおける攻撃の形の1つです。この試合でも、ブラヒムのドリブルというのが有力な武器となっていました。
その一方で、このようなシーンも見られました。

――例えばこの場面。先ほどと同様の位置でブラヒムがパスを引き出すも、イブラと動きが被ってしまう
ビルドアップ時、CFイブラはこの試合では積極的に相手中盤ライン近辺に下がってボールを引き出そうとするわけですが、その場合上記のようにブラヒムと動きが被ることがあり得ます。
また、これによる一番の問題としては深さが取りづらくなることで相手DFラインに圧をかけにくく、それゆえライン間を広げる(=ブラヒムにプレーし易い環境を与える)ことが難しくなる点です。

――例えばこの場面。テオ(赤)がボールを受けるが、前線に人がおらず、ジェノアDFラインは背後をあまり気にせずコンパクトな陣形を保てる状態。

――その後の場面。テオが狭いスペースにて強引に突破を図るが、3人に囲まれ最終的にジェノアボールとなった(赤)
イブラが前線を離れる際は誰かが代わりに侵入するわけですが、タイミングや連携、選手のタイプの問題もありそうしたポジションチェンジは中々上手くいっていないように見受けられます。昨季まではレビッチがこの手の役割において中心的な存在となっていたわけですが、現在は怪我で離脱中という状況ですしね。
このように、イブラとブラヒムのプレースタイル的な相性は少なくとも現時点で良好とは言えないですし、出来得る限りで改善が求められる部分かなと。
さて。そんな中、後半の60分にイブラに代わってペッレグリが投入されたわけですが、その直後に以下のような形で3点目が生まれました。

――3点目のシーンについて。クルニッチとテオの連携で左サイドを突破し、一気に敵陣へ侵入。その際、ペッレグリはDFと駆け引きしながら前方へと駆け上がる

――その後の場面。押し下げたDFラインの手前のスペースにブラヒムが入り、テオはそこにパス

――その後の場面。ブラヒムのラストパスをメシアスが見事にゴールに流し込み、3点目を獲得した
ペッレグリは相手DFラインと積極的に駆け引きをし、深さを取れるタイプの選手です。元々ジェノアにて16歳で台頭したときも鋭い動き出しや駆け引きに定評がありましたが、先の得点シーンにおいてもファー・ニアサイド双方に細かくフェイントを入れながら動いて相手を惑わし、結果として相手DFラインを押し下げて手前のブラヒムにスペースを提供しています。
ブラヒムはその後77分に交代したため共演は20分にも満たなかったわけですが、個人的な印象としては両者のタイプ的な相性は良く、今後の共演に期待が持てるパフォーマンスだったのではないかなと。

――別の場面について。相手中盤ラインでパスを受けるブラヒム。一方、ペッレグリは前線で相手DFラインに圧をかける

――その後の場面。ブラヒムが相手を躱してドリブルで前方に運ぶ。ペッレグリはDFラインと駆け引きしつつ、ブラヒムからパスを引き出す

――その後の場面。エリア内に侵入したブラヒムへペッレグリからリターンパス。惜しい形を作り出した(※オフサイド)
この他にも、ペッレグリは最後まで積極的に裏に抜け出してチャンスを作ろうとしていましたし、実際に後半終盤にはテオから非常に惜しいラストパスが出され、それが通っていれば1点というシーンもありました。
レビッチに引き続きジルーが離脱してしまい、レギュラーCFがイブラしかいなくなった今、ペッレグリに懸かる期待というのは非常に大きくなっています。是非ともここから活躍を見せて欲しいですね。
ジェノア0-3ミラン
雑感
リーグ2連敗中でメンタル的にも肉体的にも厳しい状況だったわけですが、そんな中で違いを作り出したのはやはりイブラヒモビッチでした。
FKによる先制点とアグレッシブな姿勢はチームに勢いをもたらすに十分なものでしたし、彼の存在なくしてこの試合の完勝はなかったでしょう。
ただ、連戦による疲労だけは物凄く気がかりですし、これでまた昨季のようにイブラが戦線離脱ということになれば最悪です。同じくミランの精神的支柱であるケアーが離脱を余儀なくされたことを踏まえると尚更でしょう。
選択肢の少ない状況のため難しいとは言え、せめて次節のサレルニターナ戦ではイブラを休ませたいところですね。この点については先述の通りペッレグリの台頭に期待です。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました(※メシアスについてはいずれ単独記事で言及させていただきます)。