【天敵イタリアーノ】フィオレンティーナ対ミラン【2021-22シーズン・セリエA第13節】
スタメン

基本システム:フィオレンティーナ「4-3-3」、ミラン「4-2-3-1」
まずはミランの攻撃と、フィオレンティーナの守備についてです。
ミランはボランチの片方が積極的に最終ラインに下がり、3バックを形成する形が基本。
一方、こうした相手の形を予期していたであろうフィオは序盤から対応していきます。

――ミランのビルドアップ時の陣形と、フィオのプレス時の守備陣形
下がるボランチに対してはダンカンが付いていき、右のケアーにはヴラホビッチが付く。そして、ガッビアがボールを持てばボナベントゥーラが前に出て対応します。
一方、両ウイングの内、右のカジェホンは高めの位置を取るテオをマークし、左のサポナーラはカルルを監視しつつ、手薄な中央を時にケアする、と。
こうすることで、右サイドではテオのドリブルのスペースを消し、左サイドでは内に絞って中盤でパスを引き出そうとするサレマをマークし易くなります。

――例えばこの場面。ここでサポナーラはサレマを監視。ボールホルダーのタタルシャヌは左前方のテオへのロングパスを選択

――その後の場面。ロングボールに対し、テオをマークしていたカジェホンが競り勝った(赤)
イタリアーノは昨季のスペツィア監督時代にもミランのビルドアップを封じることに力を入れ、見事に成功して完勝を収めたわけですが、後述する攻撃面を含めこの試合でも対策を講じてきた印象です(ただ、スペツィア戦のようにかっちり罠にはめられた感じはありませんでしたが)。
○ミランの守備
続いてはヴィオラの攻撃と、ミランの守備についてです。
ミランはイブラが片方の相手CBをマーク・プレスし、もう一方の相手CBに対してはブラヒムもしくはレオンが状況に応じて前に出てプレス。そして後方がその動きに連動してマーク・プレスをかけ、フィオのビルドアップ妨害を試みます。
この点に関し、ミランは左・右サイドそれぞれで異なるパフォーマンスとなった印象でした。
まずミラン側右サイドですが、こちらはサレマ、トナーリ(ケシエ)、カルル、ケアーを中心に安定したパフォーマンスを披露。流動的なサポナーラを主に対面のカルルが粘り強い守備で捕まえつつ、CFヴラホビッチへの楔のパスに対してはケアーが徹底マークし、自由にプレーさせません。

――例えばこの場面。ヴラホビッチがサイドに流れてパスを引き出し、空いた中央のスペースにサポナーラが侵入してパスを受けることを目論む。しかし、そこにはカルルとケシエが素早く反応

――その後の場面。手近なパスコースが切られ、出しあぐねるヴラホビッチにケアーが襲い掛かる(赤)
一方、ミラン側左サイドはどうか。こちらでは左SH(レオン)が主に相手CBに出ることで、フィオの右SBがフリーになり易い状況が生まれます。

――例えばこの場面。イブラが右にいる際は、主にレオンがCBヴェヌーティにアタックに行く。ここでヴェヌーティは右SBのオドリオにパスを通す
こうなった場合、ミランとしては主に左SB(テオ)が前に出て噛み合わせ、その背後や周囲のスペースを左CB(この試合ではガッビア)とボランチが中心となり埋めるという構造ですが、この試合のフィオはココを起点の1つとして攻め立てていくと。

――その後の場面。オドリオソラに対してはテオが前に出て、背後ではガッビアがカジェホンをマーク。しかしこの後、連係から自陣深くまで持ち運ばれた
普段はトモリがいるので、彼の圧倒的な機動力と対人力でもってこうした守備が良く機能しているわけですが、今回は肝心の彼が欠場。そして、代役のガッビアに同様の働きは到底期待できないというものです。
ピオリ監督がトモリを欠かせない戦力として捉え、酷使せざるを得ない理由はココにあると思いますし、かえすがえすも試合前日の負傷離脱が悔やまれます。
さて。そんなわけでミランは15分にCKからダンカンに先制を許すわけですが、このCKのきっかけとなったのもミラン側左サイドを破られたことでした。

――当該シーンについて。ここではインサイドハーフを経由して右SBオドリオソラへ

――その後の場面。オドリオソラにはテオが対応するも、間に合わずに中央ヴラホビッチ(画面外)へのパスを許す

――中央ヴラホビッチを経由し、スカスカの右サイドへ展開。最終的にCK獲得へと繋がった
○悔やまれる前半のチャンス
1点ビハインドとなったミランでしたが、反撃の糸口をつかんでフィオを押し込み始めました。
先述の通り、フィオは左CBガッビアに対してボナベントゥーラが対応する形が基本です。そのため、ボナベンの背後にブラヒムがポジションを取り、そこでパスを引き出すことでプレスを回避するというのが1つの攻め所となりました。

――例えばこの場面。ガッビアからパスを引き出すブラヒム

――その後の場面。ブラヒムにはトレイラが対応するも、それにより中央のスペースが空く。ケシエがブラヒムからパスを引き出し、フィオを押し込んでいった
このようにして背後のスペースが気になり出すと、前へと出づらくなります。つまりミラン最終ラインへのプレッシャーが弱まる、と。
その一方で、フィオDF陣は高めのラインを維持しようとするため、ミランは最終ラインから裏のスペースへとどんどん蹴り込んでいきます。

――例えばこの場面。裏を狙うレオンとイブラ。ここでガッビアはレオンにロングパスを通した(オフサイド)
この点に関し、イブラやレオンは今回のフィオDF陣に対し完全に質的な優位に立っていたため、次々と惜しいシーンを作り出していきました。
更に、押し込まれ始めたフィオはカジェホンだけでなくサポナーラも最終ラインに入って頻繁に6バックを形成し、引き続きサイド攻撃を封じ込めようとしますが、その分中盤のスペースが空き易くなるためそこを使ってミランは攻め立てます。先述のブラヒムが引き出した場面にしてもそうですね。

――例えばこの場面。逆サイドにスペースを残すフィオレンティーナ守備陣。ここでフリーのガッビアはカルルへのサイドチェンジを選択

――その後の場面。カルルがサポナーラと競り合い(赤)、ボールは中央のスペースにこぼれる。そこにはサレマが反応

――その後の場面。サレマがこぼれ球を拾い、チャンスに繋げた
このようにして、前半中盤辺りからはチャンスを量産していくミラン。しかしクロスが引っかかったりラストパスがずれたり、フィオDF陣にゴール前にて阻止されたりでチャンスをモノにできず、非常にもどかしい展開が続きました。

――例えばこの場面。切り替えの場面でケアーがヴラホビッチからボールを奪い、その流れからエリア内に見事なクロスを通すが、頭で合わせたイブラが決定機を決めきれず
すると前半アディショナルタイム。ミランはサポナーラに見事なシュートを決められ2失点目を喫してしまう、と。
試合を振り返ってみれば、この前半に得点を奪えず、あまつさえ終了間際に追加失点をくらったというのがミランにとって痛恨だったように感じますね。
○後半の流れ
後半については軽く流します。
2点ビハインドとなったミランは後半開始から10分後。ジルー、メシアス、フロレンツィを投入してスクランブルアタックの態勢を整えます。
そして60分にはヴラホビッチに決められ3点差となりますが、その数分後にイブラが2得点を挙げて1点差に。
しかしながら85分。テオのしょうもないミスからゴール前でボールを失い、ヴラホビッチに再度決められ万事休す。96分に1点を返したものの反撃はここまででした。
正直に言って、こういう締まりがない試合(後半)は個人的に好きではありません。ましてミランが負けたのであれば尚更です。
そのため、申し訳ありませんが後半については流れを追うだけで終わりです。
フィオレンティーナ4-3ミラン
雑感
ミランはトモリが欠場して代役がガッビア、対するヴィオラもCBに負傷者続出という状況だったため、乱打戦になったのは必然的だったように感じます。
そういった中で、勝つチャンスも多くありながら競り負けたというのは悔しいですし、いくつかのしょうもない失点の仕方からしても勿体なさを強く感じる一戦となった印象です。
まぁ長丁場となるシーズンを無敗で乗り切るなんてことは滅多にできることじゃないですし、遅かれ早かれ負ける時はくる、と。大事なのはすぐに切り替えることで、今のチームならそれができると思っていますから、引き続き期待していきたいと思います。
まずはミッドウィークのアトレティコ戦。正直ELには回って欲しくないので2位がダメなら4位敗退でも…と思っていますが、いずれにせよミランとしての意地は見せて欲しいですね。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。