ラファエル・レオンはバロンドールを獲れるのか
ミランのサレマーケルスが以前、レオンについて以下のように発言しました。
Alexis Saelemaekers en interview :
— Milan Actu 🇫🇷 (@MilanActuFR) August 20, 2021
« Le plus talentueux ? Rafael Leao.
Si il veut, il peut gagner un ballon d’or. » pic.twitter.com/MLpmeOOMTJ
「レオンは天才だ。彼が望むならバロンドールだって獲れるよ」
これまでもレオンのピカイチの才能についてはピオリ監督、そしてイブラを始めとするチームメイト等が異口同音に言っており、その潜在能力の開放が待たれるところでありました。
そして今シーズン。ここまでレオンは主に左サイドハーフとしてフル稼働し、リーグ戦12試合で4ゴール1アシスト。CLを含む公式戦ですと16試合で5ゴール2アシストを記録し、上々のスタートを見せています。
今季ここまでにおけるレオンの注目ポイントとして挙げられるのが、「ドリブラーとしての成長」ではないかと思われます。
昨季のレオンは左サイドハーフだけでなくワントップとしても度々起用され、また左サイドハーフ起用時においてもストライカー的な役割を担うなどしたため、そうした多岐に渡る役割をレオンが消化し切れていない側面があったように見受けられました。
一方、今季は左サイドレーンでのプレー機会が増加し、サイドからボールを持ち運ぶ役割の比重が高まったことで、ドリブラーとしてレオンは躍動。
またミランでの3シーズン目を迎え、フィジカル能力やコーディネーション能力が向上したことも大きな追い風となったのでしょう。セリエAトップクラスの推進力と突破力を武器にミランの欠かせない戦力としての地位を確立しました。
この点について、データの観点からレオンの成長を見ていきましょう。

上図はドリブルに関するレオンの平均スタッツで、2つ並んだ数字の左側が昨シーズン、右の数字が今シーズンのものです。
こうして見比べると多くのスタッツが良化していることが分かります。特に、役割の変化や自身の成長によってドリブル回数(Dribbles Attempted)や突破数(Players Dribbled Past)が大きく増加していますね。
また、ボール運びの貢献度(Carries以下)も特筆すべきものがあります。

――参考:今季におけるレオンのボール運びに関する平均スタッツと、セリエAの攻撃的MF・ウインガーを対象としたパーセンタイル。
そしてこれに関連し、もう一つ注目すべきは「Dispossessed(相手のタックルでボールを失った数)」の少なさ(0.82回)ではないかなと。
ボールを持って相手に仕掛けるドリブラーは得てしてこの手のスタッツが悪化しやすく、実際に上記ソースによれば、ここ1年の5大リーグで最もボールロストしているアタッカーはネイマール(4.49回)であり、今季のセリエAではリベリ(4.60回)とのことです。
一方、レオンはボールコントロール時のミス(上記スタッツだと「Miscontrols」)こそ少なくありませんが、いったん良い形でボールを持ち、仕掛ければまず奪われることはないと。強靭なフィジカルとテクニックがありますからね。
○改善点
さて。このように著しい成長を見せるレオンですが、その一方でカンピオーネとして世界を代表する選手になるにはもっと改善すべき点があります。
その1つとして考えられるのが、「ゴール前(中央)への侵入」です。

――例えば、このインテル戦の一場面について。左サイド高い位置でボールを受けるバロトゥーレ。ここで、レオンとしてはゴール前(中央)に侵入し、前線のイブラとの連携や飛び出し等でチャンスに絡みたい

――その後の場面。しかし、実際にはレオンは左サイドに流れ、止まってしまう。ここでバロトゥーレからイブラにパスが通るが、周囲には他に選択肢が無い状況

――その後の場面。孤立したイブラがボールロスト。
(確か)トリノ戦後にピオリ監督がレオンの中央に侵入するタイミングや頻度について言及していましたが、例えばダイアゴナルな(斜めの)飛び出しからゴールに絡んでいくといったプレーが今後レオンにもっと求められていくと思います。
特にイブラが1トップの場合、彼の流動的な動きやラストパサーとしての真価を発揮するため両サイドやトップ下には前方スペースへの飛び出しの感覚が重要になってきますから、チーム戦術を考えても改善が求められる点ではないかなと。
もう1つ課題を挙げると、それは「ドリブルに続くプレーの精度・判断」の面です。
先述の通り、レオンのドリブルによる突破やボール運びの貢献度は素晴らしいものがあるわけですが、そのドリブルに続くパスやクロス、シュートの精度・判断についてはまだ改善の余地があるように見受けられます。
周囲との連動した崩しを継続して行えるようになればゴール・アシストという数字にもハッキリと表れるようになるでしょうし、引き続き更なる改善に期待していきたい部分です。
○おわりに
さて。記事の最初に言及したサレマのコメントについてですが、確かに今のミラン選手からもしバロンドーラーが生まれるとすれば、それはレオンが最もあり得るんじゃないかと思います。
とは言えそのためにクリアすべきハードルは高いですし、何より継続性という点が今後のレオンにとって最も重要であるように感じます。
昨季は後半戦に失速して伸び悩んでしまっただけに、今季はシーズンを通した活躍を披露して欲しいですし、前述の課題を克服してゴール・アシストを量産できればいよいよカンピオーネとしてその名が広まるのは確実です。
今シーズンのレオンには大いに期待していきたいですし、チームと共に飛躍の1年となって欲しいですね。
それでは今回はこの辺で。