【価値ある1勝】 ミラン対トリノ 【2021-22シーズン・セリエA第10節】

2021-22シーズン・試合トリノ戦
今回はセリエA第10節、ミラン対トリノのマッチレビューを行いたいと思います。

スタメン

【21-22】ミラン対トリノ_スタメン_TACTICALista_202110281220

基本システム:ミラン「4-2-3-1」、トリノ「3-4-2-1」
得点期待値

始めに、この試合における両チームの得点期待値(xG)を見てみましょう。

【21-22】トリノ戦_xG

ミランのxGが「1.12」なのに対し、ヴェローナが「0.49」。
これを基に考えると、ミランからすれば「得点機に繋がるような良い攻撃はあまりできなかったが、一方で安定した守備により相手にチャンスを作らせなかった」といえますし、これは実際に試合を観た上での個人的見解にもなじみます。

では、ミランの攻守に関し以下で具体的に見ていきましょう。



ミランの攻撃

まずはミランの攻撃についてですが、ミランは中盤で中々ボールを持つことができず、安定したビルドアップを行うことができませんでした。

その原因としてまず1つ挙げられるのが、トリノの守備です。


【21-22】ミラン対トリノ_戦術分析1
――トリノの守備陣形

以前に対戦したヴェローナと同様、トリノは守備時に陣形を変えてミランの陣形と噛み合わせ、後方からのビルドアップを妨害していきます。


【21-22】ミラン対トリノ_戦術分析2
――その後の場面。カラブリアが中に侵入してタタルシャヌからパスを引き出すも、アイナがここまで付いてきて自由にさせず


ほぼマンツーマンで対応されたミランはヴェローナ戦と同様に①前線へのロングボールを起点とした速攻ないしポゼッションや、②ドリブルによる打開を試みるわけですが、これらが上手くいきません。

①に関しては、主なロングボールのターゲットとなるジルーやレオンがブレーメルを中心とする相手守備陣に大いに苦戦を強いられたこと、更に前線の選手たちの細かいミスが目立ったことでボールを中々保持できなかったというのが考えられます。


【21-22】トリノ戦_守備時空中戦ランキング
――参考1:この試合における守備時の空中戦数ランキング。ブレーメルが1位となる「9回」を記録


【21-22】トリノ戦_インターセプト数ランキング
――参考2:この試合におけるインターセプト数ランキング。ブレーメルが1位となる「7回」を記録


②に関しても、ドリブルで局面を打開できるブラヒムとテオの不在(テオは後半から登場)ですとか、ヴェローナ戦ではこの観点からキープレーヤーとなっていたレオンがこの試合では疲労困憊していたこと等により、中々上手くいきませんでした。

そもそもミランはヴェローナ戦もかなり苦戦していたわけですが、その時と似た相手のセットアップに対しこちらは当時よりも更に分の悪い状況(レオンの疲労蓄積や、不慣れなカルル左SB起用etc.)でしたから、この試合における苦戦はある意味必然だったといえそうです。



トナーリのパフォーマンス

さて。続いてミランの守備についてです。
最初に言及した通り、トリノに大したチャンスを作らせることのなかったミラン。その要因の1つとして、まずはトナーリのパフォーマンスを挙げたいと思います。


【21-22】ミラン対トリノ_戦術分析3
――例えばこの場面。シンゴがボールを受けた際、前に出て対応するカルル。シンゴは前方のリネティにパス


おそらくトリノは攻め所の1つとして、不慣れな左SBというポジションを務めたカルル周辺のスペースを想定していたはずです。
例えば上記のようにカルルが前に出てきた場合にはその裏のスペースを狙い、そこで起点を作りたいトリノ。しかし、主にそのスペースを狙うリネティに対してミランはトナーリが的確に対応することで、そうした攻撃を大体において封じ込めていきました。


【21-22】ミラン対トリノ_戦術分析4
――カルルの背後のスペースでボールを受けたリネティにはトナーリがしっかりマークに付く


また、トナーリのカバーリング範囲は広く、時には逆サイドにも及びました。


【21-22】ミラン対トリノ_戦術分析5
――例えばこの場面。左サイドでボールを受けたポベガへの対応のためケシエが前に出る。その背後のスペースでボールを引き出したブレカロにはトナーリが対応


【21-22】ミラン対トリノ_戦術分析6
――その後の場面。ブレカロがドリブル突破を目論むが、トナーリが止めてマイボールにした(赤)


そして、13分にはトナーリのCKからジルーが決めてミランが先制点をゲット。
このほかにもトナーリは積極的なドリブルで局面を打開しようとするなど、相変わらずの好パフォーマンスを発揮してくれました。



ジルーの献身性

続いて、ミランの守備安定の更なる要因としては、ジルーの献身性が挙げられます。

前節のボローニャ戦で1トップとして出場したイブラは守備貢献度が低く、そのため2列目や中盤の選手が積極的にそのカバーを行った結果、相手にスペースを与えてしまうリスクが増大していました。

一方、この試合のジルーはレビッチほどではないにしろ、継続的なプレスやカバーリング・プレスバックなど献身的な守備を実行。それにより相手にとって有効なスペース・選択肢を消すことに貢献してくれました。


【21-22】ミラン対トリノ_戦術分析7
――例えばこの場面。レオンがトップに移動し、攻守が入れ替わった際、代わりにジルーが一時的にサイドハーフとしての守備を担当する


また、トリノはこの試合でポベガとルキッチのダブルボランチを中心にミランのプレスを躱しつつ、逆サイドへの展開も積極的に行うことでミランの守備に揺さぶりをかけてきましたが、そうした際にジルーが中盤をサポートします。


【21-22】ミラン対トリノ_戦術分析8
――右から左サイドへとボールを展開し、パスを回すトリノ。ここでジルーは下がり、中央のルキッチのマークに付く


【21-22】ミラン対トリノ_戦術分析9
――その後の場面。アイナへとパスが渡ったところで、ジルーが中央へのパスコースを切りながらプレス。相手にバックパスを強いた


トリノの積極的な前線への飛び出しや先述のサイドチェンジによりミランは押し込まれる時間帯が少なくなかったものの、前線(ジルー)がプレスバックして自陣での守備に参加してくれることで失点のリスクを減らせますね。


【21-22】ミラン対トリノ_戦術分析10
――例えば後半のこの場面。ミランが押し返そうとするも、ルキッチにボールを預け攻撃を続行しようとするトリノ


【21-22】ミラン対トリノ_戦術分析11
――その後の場面。パスを受けたルキッチをジルーがプレスバックで止めた


おそらくミランとしては体力的な問題もあり、この試合(の特に後半)にある程度押し込まれる展開になることは織り込み済みだったのではないかと。そこでトリノの捕まえづらい攻撃に対してラインを下げて対応しつつ、全員で粘り強く対応していくことでシュートチャンス(決定機)を作らせないようした、と。

後半途中からはバカヨコ投入という恒例の「守備緩め」を行い、実際に彼のところから2・3度ピンチを招いたミランでしたが、タタルシャヌの好セーブもあり事なきを得て無失点。無事に勝利を収めました。

ミラン1-0トリノ



雑感

非常にタフな試合でしたが、ミランは勝ち点3を積むことに成功。
長いシーズンの中にはこういった試合も往々にしてあるわけですが、そこで勝ち切れるかどうかでシーズン終了後の順位は大きく変わり得ます。その意味で、この勝利は通常よりも高い価値があったといえそうです。

また、その点に関してもう一つ言わせてもらうと、セットプレーから得点を奪えたというのもこの試合の個人的な満足ポイントです。
やはり、流れの中からの攻撃が上手くいかないときに頼りにしたいのはセットプレーであって、それを得点源の1つにできればより安定した結果が得られやすくなります。
そして、今のミランには優秀なキッカー(トナーリ)やフィニッシャー(ジルー等)がいるだけに、今後もセットプレーによる得点は期待していきたいですね。

さて。来週のミランはローマ、ポルト、インテル相手の3連戦という事で、一息つく暇もなく厳しい日程が続きます。
一方、今節にはテオが復帰し、次節以降にはブラヒムやレビッチといった主力の復帰が期待されています。彼らの復帰でブーストをかけ、引き続き勝利を積み重ねていって欲しいと思います。

Forza Milan!


最後まで読んでいただきありがとうございました。

6Comments

Aki

カカニスタさん、いつもありがとうございます。

事前からもそうでしたが序盤の展開も苦しい試合で、良くて引き分けかもなんて弱気なことを考えていました。特に得点の気配がまるでなかったのでCKの時に「こういう試合はセットプレーで得点できると大きいんだけどなー」…と思っていたらジルーの先制ゴールと、大興奮しました!!

トナーリの守備+奪取後のキープは効いてましたね。MOMだと思っています。後半2ボランチ2枚替えをしたので、そこの圧力を上げて失点しないことに総力注ぐのがこの試合のキモだったのでしょうか。その狙いでこそ活躍しないといけないバカヨコのパフォーマンスは大がっかりでしたけど。ケシエも病み上がりのせいか出足が悪くパス受けもカットも良くなかったのは残念です。ベナセルは体がキレていて良かった気がします。

週末からの激戦は、テオとブラヒムがどこまでコンディションを上げてくれるかが間違いなく大きなポイントですよね!楽しみすぎます!!

  • 2021/10/28 (Thu) 13:39
  • REPLY

ばんでぃえら

主力が多数欠けてる中でのリーグ戦連勝は本当に頼もしいですね。
リーグは好調だしCLでも一矢報いて欲しいな。正直ベスメンならポルト、アトレティコには勝てると信じてます。
Forza MILAN!!

  • 2021/10/28 (Thu) 19:34
  • REPLY

みらぽん

厳しい試合でしたね〜。 
トナーリの活躍や復帰組のテスト的な出場もあったので、苦しい中でも収穫の多い試合だったと思います。
ただバカヨコなぜ使うんですかねー。ピオリは本当に「守備緩め」をしたいんですか?怪我人が多いのでローテーションの為にも仕方ない起用なのかもれませんが不安でなりません…。

  • 2021/10/28 (Thu) 22:04
  • REPLY
カカニスタ22

カカニスタ22

To Akiさん

コメントありがとうございます。

厳しいコンディション状況の中、試合序盤で先制点を取れたのはミランにとってホントに大きかったですね。あの得点で精神的にもだいぶ楽になったと思います。

今後のミランの中盤の軸はトナーリとベナセルになると個人的に思っている(思いたい)ので、トナーリだけでなくベナセルもフィジカルコンディションがだいぶ整ってきたのは嬉しいですね。昨季は不完全燃焼だったでしょうから、今季は「らしい」プレーをたくさん見たいです。

ローマは段々と軸となる形が固まってきたような印象を受けますし、厄介な試合になるでしょうね。それだけに、仰るようにテオとブラヒムのパフォーマンスは重要になると思うので、期待したいですね!

  • 2021/10/28 (Thu) 23:04
  • REPLY
カカニスタ22

カカニスタ22

To ばんでぃえらさん

コメントありがとうございます。

CLは次節のポルト戦、そしてその裏のリバプール対アトレティコの結果次第で早くも大勢が決まりそうですね。ミランの勝利は必須として、加えてリバプールが勝ってくれれば2位通過は辛うじて見えてきます。
僕もチーム力に関しては同様の見解なので、後はそれを結果で証明して欲しいですね。

  • 2021/10/28 (Thu) 23:05
  • REPLY
カカニスタ22

カカニスタ22

To みらぽんさん

コメントありがとうございます。

バカヨコに関してはコンディションの向上待ちといった感じですが、仮にコンディションが上がったとてレギュラー陣を脅かすようなパフォーマンスには期待できなさそうなところが何ともですね…。
現在は仰るように怪我人続出のために起用せざるを得ない状況ですが、主力が戻ってきてクルニッチをボランチ計算できるようになってからもこの有様だと出場機会は少なくなるでしょうね。

  • 2021/10/28 (Thu) 23:07
  • REPLY