【洗練された守備組織】 アタランタ対ミラン 【2021-22シーズン・セリエA第7節】

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カカニスタ22
今回はセリエA第7節、アタランタ対ミランのマッチレビューを行いたいと思います。

スタメン

【21-22】アタランタ対ミラン_スタメン_TACTICALista_20211061120

基本システム:アタランタ「3-4-1-2」、ミラン「4-2-3-1」
(※当記事におけるキャプチャ画像の映像引用元はいずれも『Dazn』より)


電光石火の先制点

試合開始からわずか28秒、ミランはカラブリアがネットを揺らして先制点を獲得。
キックオフ直後に生じたアタランタの隙を突いた格好となりましたが、その得点までのプロセスにはミランの狙いとする形が見て取れました。


【21-22】アタランタ対ミラン_戦術分析1
――1点目の流れについて。キックオフ直後、アタランタが前方へのロングボールを選択。その後ミランがボールを回収し、下がったケシエがボールを受けたシーン。


アタランタの守備は、まず2トップがそれぞれミランの2CBをマークし、トナーリにはペッシーナが、ケシエにはデローンが付く形が基本です。
そこでミランは、ダブルボランチが縦横に動くことで対面のマーカーを引き付け、中央にスペースを作り出します。上記のシーンにおいてはケシエが下がってボールを受けてデローンを前に引き付ける一方で、トナーリはサイドに流れてペッシーナをサイドに引き付けることで、結果として中盤にスペースを生じさせる、と。


【21-22】アタランタ対ミラン_戦術分析2
――その後の場面。ケシエから中央でフリーのサレマにパスが渡る

空いた中央のスペースにはサレマが侵入し、ケシエからパスを引き出しました。DF陣は手前のレビッチ、ブラヒム等に牽制され、前に出て潰しに行くことができません。
更に、ここでポイントとなったのがテオのポジショニングです。


【21-22】アタランタ対ミラン_戦術分析3
――その後の場面。サレマからテオにパスが通る


【21-22】アタランタ対ミラン_戦術分析4
――その後の場面。テオから裏に抜けたカラブリア(赤)にスルーパスが通り、カラブリアがネットを揺らした


攻撃時、主にサイドレーンに位置するSHレオンに対し、同SBのテオが内寄りのポジションを取る形は最近の試合で良く見られるものですが、この試合ではその傾向をより強めました。
上記のシーンにおいてテオは中盤に深く潜り込み、サレマからパスを受けて相手のプレスを完全に外すことに成功。そこから同じく中へと侵入したカラブリアにスルーパスを送り、先制点をお膳立てしました。

アタランタのマンツーマン色の強いディフェンスへの対策の1つとして、このようなSB(テオ)の中に絞る動きを用いてマークを外そうとしたのでしょうし、中盤でボールを受けようと前方にスペースさえあればテオは輝きます。そのため上記のシーンに限らず、テオを活用しようとする場面は散見されました。


【21-22】アタランタ対ミラン_戦術分析5
――例えばこの後半の場面。ボールロスト直後、前からの圧力を強めるアタランタの守備に対し、テオが内に潜りライン間に侵入することでケアーからパスを引き出す


【21-22】アタランタ対ミラン_戦術分析6
――テオがボールを受け、ミランの速攻に。その後、前方のレビッチにスルーパスを供給し、ミランが惜しいチャンスを作り出した



ミランの守備~左サイドでの対応~

最高の立ち上がりを見せたミラン。その後は主にアタランタがボールを持つ展開となりますが、ミランは組織的な守備を披露してアタランタの攻撃を封じ込めていきました。

まずはミラン側左サイドでの守備についてです。


【21-22】アタランタ対ミラン_戦術分析7
――ジムシティがボールを持った場面

基本的にアタランタはCB・ボランチ・WB・CFから成るひし形のユニットを中心に、そこからゲームを組み立てようとしますが、ミランはそこに激しくプレスをかけていきます。


【21-22】アタランタ対ミラン_戦術分析8
――例えばこの場面。GKからジムシティにボールが渡った際、まずはレオンがプレス。プレスを受けたジムシティはサイドのザッパコスタに渡すが、そこにはテオがチェックに行く


先に挙げた4人への対応として、基本的にミランはジムシティにレオン、ザッパコスタにテオ、デローンにブラヒム、マリノフスキにケシエ(orトモリ)をそれぞれ付け、厳しくマークしていきました。
そしてボールをサイドに誘導してからは、ミラン各選手が相手のバックパスや中央への展開を阻止する位置取りをし、相手を同サイドに封じ込めていく、と。


【21-22】アタランタ対ミラン_戦術分析9
――先ほどの場面の後。下がってボールを受けにきたマリノフスキにはトモリが対応し、上がるデローンにはブラヒムが付いていく。また、中盤ではサレマが絞って逆サイドのボランチ(フロイラー)をマークし、レオンとレビッチがバックパスのコースを切る。
この後、ザッパコスタのマリノフスキへのパスはテオにカットされ、ミランのショートカウンターに繋がった



こうしたミランの守備に対し、アタランタは例えば以下のような形で突破を図ります。


【21-22】アタランタ対ミラン_戦術分析10
――例えばこの場面。ザッパコスタがマリノフスキからボールを受ける。


【21-22】アタランタ対ミラン_戦術分析11
――その後、マリノフスキがサイドに流れ、ボランチのケシエを引っ張り中央にスペースを作り出す

このようにして生じさせた中央のスペースにザッパコスタが外から飛び込んでいくという形を見せますが、そこには主にテオがマークを外すことなく付いていくことで対応。上記のシーンにおいても、その後パスを出せずにボールをキープしたマリノフスキが、ケシエとプレスバックしたブラヒムに挟まれボールを奪われています。

更に、アタランタはペッシーナやサパタが右サイドに顔を出してビルドアップの出口となることで打開を図りますが、それに対してはトナーリやCB陣がそれぞれ対応してピンチの芽を摘んでいきました


【21-22】アタランタ対ミラン_戦術分析12
――例えばこの場面。サイドに追い詰められるも、ザッパコスタは右サイド前方に流れていたペッシーナ(画面外)にパスを送る


【21-22】アタランタ対ミラン_戦術分析13
――しかしここにもトモリが対応し、攻撃を止めた(赤)



ミランの守備~右サイドでの対応~

以上のように、アタランタはミラン側左サイドからの組み立てを多くの場面で封じられ、時にはボールロストから速攻を食らう展開になりました。
そこで、アタランタは時おりサイドチェンジを使うなどして、ミラン側右サイドからも打開を狙います。しかしそこでもミランの整然とした守備が待ち受ける結果となりました


【21-22】アタランタ対ミラン_戦術分析14
――例えばこの場面。ミラン側から見て右へサイドチェンジ


【21-22】アタランタ対ミラン_戦術分析15
――その後の場面。中央に絞っていたサレマが素早くサイドに戻って対応。最終的に相手の攻撃を遅らせた

右サイドではケアー、カラブリア、トナーリ、サレマが中心となって対応します。特にケアーは対面のサパタを相手に堂々たるパフォーマンスを披露。カウンターの場面で一度サパタに抜かれピンチを迎えはしたものの、それ以外は見事に封じ込めてくれましたね。

また、アタランタは20分過ぎにペッシーナが負傷交代し、左サイドのユニットがペッツェッラ(交代選手)とメーレとなったことで機能性が低下。これもまたミランの右サイドの守備を結果的に助けることとなりました。

そして、右サイドでの対応について左サイドでのソレと同じく重要となったのが、バックパスによる作り直しや中央への展開の阻止です。


【21-22】アタランタ対ミラン_戦術分析16
――例えばこの場面。アタランタ側左サイドでフロイラーがボールを受け、中央への展開を目論む。しかし、中盤のデローンへのパスコースはブラヒムが切っており、またレビッチやレオンがプレスの準備をすることでバックパス・サイドチェンジを牽制


【21-22】アタランタ対ミラン_戦術分析17
――その後の場面。フロイラーは展開を諦め、近くの味方にパス。引き続きスペースの狭い同サイドでの攻撃を続けた


非常にコンパクトな守備を志向するミランにとって、相手のバックパスや中央経由等によるサイドチェンジは出来る限り避けたいことです。特に、自分たちから見て右から左へ展開される場合、前残りしている左サイドハーフとボランチの間のスペースを使われやすく、実際ミランが過去にアタランタにボコられた試合ではそのスペースをイリチッチやマリノフスキ等に攻略されていました。


ミランアタランタ1
――例えば、過去の試合におけるこの場面。左サイド後方からボールを運んできたジムシティ(CB)に対し、ミランは中盤3枚(ダブルボランチ+右サイドハーフ)が絞って対応。一方、レビッチ(黄丸。左サイドハーフ)は前方に残る。ここで、マリノフスキーが中央でパスを受ける機会を窺う


ミランアタランタ2
――その後の場面。マリノフスキーがジムシティからボールを受ける。ボランチがスライドして対応しようとするも、マリノフスキーは後方から上がってきたデ・ローン(緑丸)にパス。この後、デ・ローンはそのまま前方のスペースに持ち運び、最終的にミドルシュートを放った


しかし今回は、チーム全体として強度の高い守備を披露することで相手に時間とスペースを与えず、コンパクトな守備陣形を維持します。
この点に関し、先述の通りブラヒムは中央にて中継地点となり得るデローンをマークし、中央経由の攻撃を阻止する役割を遂行。彼は普段と比べると目立ちませんでしたが、素晴らしい守備面での貢献だったと思います。

そしてレビッチ。彼もまた攻撃のみならず守備の貢献度が非常に高く、彼の存在はチームのプレスの機能性を高める上で不可欠なものとなっています。


【21-22】アタランタ対ミラン_戦術分析18
――例えばこの場面。左サイドでのアタランタのスローインにて、相手はCBにボールを戻す。これを機にレビッチが一気にプレスをかける


【21-22】アタランタ対ミラン_戦術分析19
――ボールはGKにまで戻されるが、レビッチが引き続き強烈なプレス。これに連動して周囲の味方選手たちも前に押し上げる


【21-22】アタランタ対ミラン_戦術分析20
――その後の場面。ミランは先に述べた左サイドでの守備陣形を素早く作り上げ、アタランタを同サイドに押し込む。この後、ミランはスローインを獲得した


このようにしてミランは、連動した組織的な守備でアタランタの攻撃を大体において見事に封じ込めていきました。
それでも何度か被カウンターやCK等でピンチを迎えはしたものの、そこではメニャンがファインセーブを披露。

すると42分。敵陣にてボールを奪ったトナーリがそのままゴール前に侵入してシュート。キーパーとの1対1を制し、貴重な追加点をゲットしました。


【21-22】アタランタ対ミラン_戦術分析21
――2点目のシーンについて。ボールを受けたフロイラーに対し、トナーリが寄せに行く。前方の選手はそれぞれマークされパスを出し辛い状況


【21-22】アタランタ対ミラン_戦術分析22
――その後の場面。フロイラーは反転し左サイドを見るも、パロミノへのパスコースはレビッチに切られている。そうこうしている内にトナーリが距離を詰め、ボールを奪いにかかる


【21-22】アタランタ対ミラン_戦術分析23
――トナーリがボールを奪い、キーパーとの1対1を制して2点目を獲得した


一見すればフロイラーの軽率なミスによる失点ですが、それだけでなくミランの継続的かつ組織的な守備を前に疲弊し、集中力・判断力が低下していたというのも一因としてあるのではないかと思います。



ミランのポジティブトランジション

最後にミランのポジティブトランジションについてです。
先述の通り、左右の揺さぶりによる崩しを封じられたアタランタは片側サイド(主に左サイド)から攻めこんでいく形が多かったのですが、その際にはカウンター要員としてやや前残りとなったレオンがトランジション時の起点となり、アタランタを押し返していくシーンが散見されました。


【21-22】アタランタ対ミラン_戦術分析24
――例えばこの場面。左サイドからの相手の攻撃を凌いだミランは、前方のレオンにパスを送りカウンターに移行する


【21-22】アタランタ対ミラン_戦術分析25
――その後の場面。デローンがレオンを止めに出てくるがそれを躱し、その後ボールを運んで前線のレビッチにスルーパスを供給。最終的にミランはCKを獲得した


多少のマークは物ともせず前にボールを運んでいけるレオンの存在は非常に重要で、中でも(ロング)カウンター時は彼のドリブルとキープ力が輝きますね。
また、同サイドにはテオもおり、チャンスと見るや一気に駆け上がってきます。細かい連携については未熟ですが、それでもこの2人のいる左サイドは驚異的です

すると78分。ミランはカウンターからレオンが決め、試合を決定づける3点目を獲得しました。


【21-22】アタランタ対ミラン_戦術分析26
――後半、3点目のシーンについて。アタランタの左サイドから中央へのパスをカットし、自陣ペナルティエリア手前からミランがカウンターに移行。


【21-22】アタランタ対ミラン_戦術分析27
――ボールを拾ったメシアス(途中投入)は、前方のレオンにパスを送る


【21-22】アタランタ対ミラン_戦術分析28
――その後の場面。ボールを受けたレオンは、駆け上がってきたテオにパス。


【21-22】アタランタ対ミラン_戦術分析29
――相手のチェックを躱したテオがそのまま一気にドリブルでゴール前まで持ち運ぶ。その後、テオから再度レオンにボールが渡り、見事なシュートをネットに突き刺した


こうして3点を奪ったミラン。試合終了間際にはミスから連続して2失点を喫しましたが、大事には至らず勝利を収めました。

アタランタ2-3ミラン



雑感

個人のミス(と微妙な判定?)をキッカケに終盤に2失点を喫したものの、チームとしては全体的に素晴らしいパフォーマンスを披露。

振り返れば昨季の最終節アタランタ戦では守備時に5バック気味となる形で挑み、最終的にPKによる2得点で勝利を収めましたが、ミランにとって従属的な試合内容であることは否めませんでした。
一方、この試合でミランはアグレッシブな姿勢で臨んでゲームを実質的に支配し、敵将ガスペリーニにも認めさせる形での勝利であるわけで、同じ勝利という結果でもその具体的な内容には違いがあるように見受けられますね。

このように、名将ピオリ監督の下に組織された今のミランはハイレベルな選手と戦術を兼ね備えたチームであり、どの相手とも十二分に戦えるクオリティを示し続けています。
今後は怪我人や欧州カップ戦の有無によって大きく結果は変わりそうですが、現状はスクデット候補と目されるに相応しいパフォーマンスを見せているだけに、このコンディションを維持・向上し続けてくれることを願ってやみません。

代表ウィーク後のミランにも要注目ですね。


Forza Milan!


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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Comments 2

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Aki  

いつもありがとうございます。
アタランタ撃破!やりましたね!!

今回は力で勝った印象が強く、戦力・戦術ともに勝利した実感がありますね。もう苦手意識がなくなりました。
しかしそれでもアタランタは難敵と感じましたし、ペッシーナのこと含め展開次第でどうなったかわからない試合でしたね。そういう試合も勝ちきれたのが大きいです。

活躍した選手は全員という感じですが、個人的にトモリの存在がチームに大きくなっている気がします。ロマニョーリも今季はかなりハイプレスをしていますが、トモリでないときにテオやレオンが同じように活躍できるかわかりません。そのうえで守備面ではほぼノーミス、守備無双状態です。改めて€28Mはお買い得でした。

レオンもますます覚醒ですね。1人剥がす、かわすのができるとアタランタのようなチーム戦術相手には超有効ですし、今季は何よりシュートが格段に上手くなっていますね。小さいフォームで力強く撃てるので、今季は得点量産の予感がハンパない。ハウゲパパが認めるのも納得です。

メニャン→レオンの弾丸フィードもシビレました。

代表ウィーク明けが待ち遠しいですね!

  • 2021/10/06 (Wed) 14:11
  • REPLY
カカニスタ22
カカニスタ22  
To Akiさん

コメントありがとうございます。

トモリはとんでもない選手に成長しましたね。現代型CBに相応しい選手ですし、市場価値はもはや買ったときの倍以上と考えていいんじゃないかと思います。CBの柱として、長くミランを支えて欲しいです。

レオンのゴールは痺れましたね~。確か以前にも似た角度からシュートを放ち、その時はポストに当たってゴールならずといったシーンがあったと思うのですが、このシュートパターンを得意にできれば今季はゴール量産にも期待できそうです。

  • 2021/10/06 (Wed) 19:00
  • REPLY