【最大の懸念】 ユベントス対ミラン 【2021-22シーズン・セリエA第4節】

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カカニスタ22
今回はセリエA第4節、ユベントス対ミランのマッチレビューを行いたいと思います。

スタメン

【21-22】ユベントス対ミラン_スタメン_TACTICALista_20219221248

基本システム:ユベントス「4-4-2」、ミラン「4-2-3-1」
(※当記事におけるキャプチャ画像の映像引用元はいずれも『Dazn』より)


ユーベのプレス回避

試合開始早々の4分。被CKの流れからユーベがロングカウンターを発動。モラタがネットを揺らしてユーベが先制に成功します。
この得点シーンについてはミランの杜撰な守備対応に因る部分も大きかったわけですが、その後も引き続きユーベが主導権を握る展開となりました。

ユーベは後方からのビルドアップ時、ダニーロが最終ラインに加わり3バックでボールを回す形が基本。それに対しミランは相手の3バックに対してレビッチ、ブラヒム、レオンの3枚でプレスをかけていきます。
それと同時に、DFライン手前の中央に主にポジションを取るロカテッリにはトナーリが前に出て対応。その後方のスペースを主にケシエが担当するという形となりました。

こうしたミランの形に対し、ユーベにとって主な攻め所となったのがケシエ周りのスペース(ユーベにとっての右サイド)です。そこをベンタンクール、クアドラード、ディバラが中心となって攻め立てていき、ライン間でボールを引き出してプレスを突破していきました。


【21-22】ユベントス対ミラン_戦術分析1
――例えばこの場面。GKからボールを受けるボヌッチ。ここでユーベの3CBに対してミランは先の3人、ロカテッリにはトナーリがそれぞれマーク。そして、ここではケシエがライン間のベンタンクールをマークしており、内に絞ったクアドラードがフリーとなっている


【21-22】ユベントス対ミラン_戦術分析2
――ボヌッチからクアドラードにパスが通り、プレスを突破した


対面のダニーロ(CB)にレオン(サイドハーフ)が対応し、レビッチ・ブラヒムと共に一時的に3トップとなる場合、このボランチとサイドハーフの周辺は空きやすく、昨季から3バックのチーム相手に頻繁に攻められるスペースであります。

そういった場合に上手くCBが縦へのスライドで中盤をカバーできれば良いのですが、それが得意なトモリは本日右SB起用。加えてディバラの存在や、前線のモラタが継続的に裏抜けを行い、ミランDF陣を牽制することで前に出づらい状況を作り出していたのも厄介でした。


【21-22】ユベントス対ミラン_戦術分析3
――例えばこの場面。ミランのプレスに対し、パスを受けたロカテッリはワンタッチで前線にロングパス


【21-22】ユベントス対ミラン_戦術分析4
――それに対してモラタが飛び出し、エリア手前でボールを受けた


モラタに対しては先制点のシーンを除き、前半は主に対面のケアーが上手く抑え込んでくれていましたが、彼のスピードへの対応については肉体的にかなりの負担があったのでしょう。36分、ケアーは負傷により交代を余儀なくされます。

また、ミランは連戦による疲れの影響でチーム全体として動きが重く、それも劣勢の原因となった印象でしたね。



ミランの機能不全

上記のように守備(プレス)がハマらず、それに続くカウンターも繰り出せない状況が続いたミラン。
それだけでなく、攻撃(ポゼッション)の局面においても同様に攻めあぐねる展開が続きました。

この点について、ポイントとなったのはトモリの右SB起用です。負傷したカラブリアに代わり右SBのスタメンとして試合に臨んだトモリでしたが、もちろんトモリの本職はCBです。そのためほとんど攻め上がらず、後方からのサポートに徹しました。
これにより、ミランの攻撃時の形も普段とは異なるものに。まず、右サイドの幅を取る役割がサレマに一任されました。そして、その内側の右ハーフスペース近辺の人数を確保するため、そこにはボランチ(主にトナーリ)が前に出たり1トップのレビッチが顔を出したりします。
更に、レビッチ移動時にも前線の人数を確保するためか、左サイドハーフのレオンが積極的に中に入ってストライカー的な役割を担う形に。それに応じ、左サイドの幅を取るのは主にSBのテオとなりました。


【21-22】ユベントス対ミラン_戦術分析5
――前半、ミランの攻撃時の基本陣形

しかしながら、結果としてこの形は全く機能しません。
その原因を列挙していくと、まずユーベ側のコンパクトな守備組織が挙げられます。

早々に先制点を挙げたユーベは、2トップもしっかりと守備に参加するコンパクトな4-4-2のブロックを低めの位置に形成し、ミランの攻撃に対し落ち着いて対処していきました。

続いて肝心のミラン側に目を向けていくと、1つはレオンが積極的に中に侵入したことです。
今季のレオンはサイドレーンを担当する事が多くなり、そこからのドリブルで数多くのチャンスを作り出していたわけですが、中に入れば当然ながらそういった機会は減少します。

また、中に入った時のレオンは昨季同様に課題が少なくなく、周囲との連携が未熟なため、効果的な動きを見せることはほとんどありませんでした。


【21-22】ユベントス対ミラン_戦術分析6
――例えばこの場面。ロマニョーリがボールを持ち運ぶ際、狭いライン間のスペースで受けようとするレオン。ブラヒムとポジションが被ったため横に移動するが、そこもベンタンクールの守備範囲


【21-22】ユベントス対ミラン_戦術分析7
――その後の場面。ロマニョーリが強引に間に通そうとするも、敢え無くインターセプト。ユーベボールとなった


そして、左サイドレーンを任されたテオも沈黙。元々スピードに乗ったスペースへのドリブル・フリーランニングを武器とするテオにとって、ブロックを作って待ち構えている相手に足元でボールを受けても効果的な働きは中々できません。そういう時は連携による突破を図りたいところですが、同サイドのレオンは上述の通りですのでそれもできず、と。おまけに連戦による疲労でコンディションも最悪でした。

このように、本来ストロングポイントであるはずの左サイドは機能不全に陥りましたが、それは右サイドも同様です。
右SBを務めたトモリは不慣れなポジション故に消極的なプレーに終始。それにより、前方のサレマもほとんど自由に動けず、得意の流動的なポジション移動を行うことができませんでした。


【21-22】ユベントス対ミラン_戦術分析8
――例えばこの場面。下がってきたレビッチにトモリがパス。それと同時にサレマが対面のSBを引き付けながら中に侵入し(赤)、サイドにスペースを作ってトモリの上がりを促す


【21-22】ユベントス対ミラン_戦術分析9
――その後の場面。レビッチが近くのケシエにワンタッチで叩き、ケシエが前向きでボールを受ける。しかしここでトモリは後方に下がっており、サイド前方に人がいないためボールを展開できず。最終的にバックパスからの作り直しとなった


そんなわけで、後述する戦術変更の時まで完全に攻めあぐねる格好となったミラン。時おりブラヒムがドリブルで打開を図るも、散発的なものに止まりました。
対してユベントスはしっかりと守りながらボールを奪取し、縦に速い攻撃を仕掛けるなどしてチャンスを演出。前トピックで触れたプレス回避も合わせ、優勢に試合を進めていきました。



ミランの修正

そんな中ミランは36分、負傷したケアーに代わってカルルを投入。彼を右SBに置き、トモリを本職のCBに戻します。
そしてカルルの登場により、彼がSBらしく何度か攻め上がることで右サイドが活性化しました。

そして迎えた後半、ミランは攻撃の形をガラッと変更

まず、レオンの基本ポジションをサイドレーンに戻し、積極的にドリブルで仕掛けさせます。


【21-22】ユベントス対ミラン_戦術分析10
――例えばこの場面。サイドでボールを受けたレオン(赤)は、そのまま縦に突破を図る


【21-22】ユベントス対ミラン_戦術分析11
――縦にぶち抜き一気に敵陣深くまでボールを運び、クロスを放った


相手の守備が整っている難しい状況での仕掛けが多く、そのため中々シュートチャンスには繋がらなかったものの、彼のドリブルにより相手の守備に圧をかけ何度かラインを押し下げることに成功しています。

他方、右サイドではSBカルルが幅を取ることで、サレマが積極的に中に侵入することが可能に。
更に、トナーリが下がり目の位置から右サイドの攻撃をオーガナイズ。この立ち位置は攻め上がるカルルの背後のスペースをカバーする被カウンター対策としても有効であり、攻守に安定感が増す形となりました。


【21-22】ユベントス対ミラン_戦術分析12
――後半、ミランの攻撃時の基本陣形

そして61分にはこの形からの連携プレーにより、惜しいチャンスを作り出しています。


【21-22】ユベントス対ミラン_戦術分析13
――トナーリからライン間のブラヒムにパスが通る


【21-22】ユベントス対ミラン_戦術分析14
――その後、近くのサレマとのワンツーを使ってブラヒムがエリア内に侵入した


このようにして多くの選手を適切に配置し直したことで攻守に安定感を取り戻し、ユーベを押し込むことに成功したミラン。そのため前半と異なり、相手陣地の深い所でボールを持つことが可能になりました。


【21-22】ユベントス戦_ボールタッチポジション_前半1
――この試合「前半」におけるミランのボールタッチポジションについて(左攻め。『WhoScored』より)

上図の赤枠で囲った部分が「敵陣深くでのボールタッチ」です。こう見ると、前半は敵陣深く、特にサイドでボールを持てていないことがわかります。


【21-22】ユベントス戦_ボールタッチポジション_後半1
――この試合「後半」におけるミランのボールタッチポジションについて

一方、上図は後半のボールタッチポジションです。赤枠で囲った部分を前半と比較すると、その差が顕著に見られます。


「低い位置で待ち構える」ことと「相手に押し込まれる」ことは似て非なるものです。前半はユーベに狙い通りの守備をされましたが、後半はミランが優勢に試合を進めたといっていいのではないかなと。

すると76分。CKからレビッチが頭で合わせ、ミランが同点に追いつきました。


【21-22】ユベントス対ミラン_戦術分析15
――1点目のCKに繋がったシーンについて。敵陣深くのサイドでボールを持ったレビッチが、ファーサイドにクロス


【21-22】ユベントス対ミラン_戦術分析16
――その後の場面。クロスボールをカルルが折り返すと、ボールはラビオに当たりCKに


ユーベ守備陣を前に決定機こそ作り損ねていたミランでしたが、相手を押し込みゴール前でのプレーが増えればチャンスは生じやすくなりますし、CKの獲得はその1つです。
まして今のミランには優秀なプレースキッカーであるトナーリがいるため、CKの持つ価値は大きいですね。



被カウンター対応

最後に後半の守備についても軽く触れておきたいと思います。
ミランが主導権を握る展開となったこともあり、ユーベは2トップメインのロングカウンターによる攻撃を多用してきます。

しかし、そこはミランがしっかりと対応。特にモラタのスピードに対しては同サイドのトモリとトナーリを中心にしっかりと封じ込めていきました。


【21-22】ユベントス対ミラン_戦術分析17
――例えばこの場面。カルルの中央へのパスをサンドロがインターセプト。ボールは前方のモラタに転がる。そこにはトナーリが対応


【21-22】ユベントス対ミラン_戦術分析18
――その後の場面。モラタがスピードを活かして一気に前に持ち運ぶ。一度は躱されかけたトナーリだが、この後追いつきボールを奪った


この点、中でもトモリの安定感は素晴らしく、ミランは攻勢をかける一方で少なくない被カウンターの場面を迎えたわけですが、トモリのサイドから崩される感じはほとんどありませんでしたね。


そんなわけで、ミランは開始早々の失点以外は許すことなく試合終了。

ユベントス1-1ミラン


雑感

ミランは前半こそ頭を抱える内容でしたが、後半はキッチリと修正して試合の主導権を握って1点を奪い返し、結果はドロー。
ミランとしては試合終盤のカルルのシュートが決まっていれば最高だったものの、試合展開・内容や負傷者続出といった事情を踏まえれば、負けずに引き分けに持ち込めた点を強調するべきかなと思います。

ところでユベントスはミランとの対戦において、先制した試合では直近22戦で21勝していたそうです。
どうりでユーベに先制されたら絶望感を覚えるわけですが、しかしながらミランはこの試合ではもう少しで逆転かといったところまで迫ることができました。

これはおそらく、ミランがここ2年ほどでメンタリティーの面を大幅に改善することができ、数年前までユベントスに対し感じていた苦手意識を払拭できたのが大きいのではないかと。こういった側面からも、チームとしての成長が見られますね。


そんなミランにとって、目下懸念すべきは怪我人の多さです。
この試合でもケアーが負傷してしまい、現在は試合をこなす毎に怪我人が増えていく非常に嫌な流れとなっています。

主力が負傷すれば当然ながらチームのパフォーマンスに大きな影響を与えるわけで、カラブリア欠場による右サイドの構成力の低下やジルー・イブラといったターゲットマンの不在はこの試合でもチームにとって大きな痛手となりました。
いくらチームのメンタリティーが改善されようと離脱者が続出すればパフォーマンス低下は免れませんし、この点については本当に気がかりです。

今後も週2試合ペースの日程が続くため、上手くターンオーバーを行いできるだけ選手の負傷リスクを減らしていって欲しいと思います。
ただ、その際に良い結果も出すには控え選手の活躍が不可欠ですし、今回のカルルのように現サブ組の台頭には大いに期待していきたいところです。

Forza Milan!


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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Comments 2

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Aki  

今節もありがとうございます。とても楽しみにしていました。

まずは結果、アリアンツで、満身創痍のチーム状態で、追いついての引き分けは上々と考えています。選手たちは勝てなかったことを悔しがったというニュースも、さらに心地よいです。でも欲を言えばやはり勝ちたかった試合です。試合前の状態として追い詰められていたのは間違いなくユーヴェであり、このうちに徹底的に叩きたかったです。それでも60年振りの開幕4試合勝利無しなので、充分ですが。

結果的に、RSBトモリは失策だったのかなと思います。SBの上がりが不十分となりRWGとの連携もなくなり、ミラン守備の強みであるトモリのハイプレスがなくなってしまったのが中盤を支配された原因の1つだと思いました。トモリ、もうすっかりキーマンですね。いっそ明確な3CBにして守りを固めることを優先しても良かったのかなと思いますが、その辺は素人考えですかねー。

それもこれも、すべては怪我人続出と疲労困憊なチーム状況が根本ですので、
この先のプロビンチャ2連戦は「ターンオーバーして絶対2連勝」でお願いしたいです。そうすれば厳しい来週に備えられ、ダニエルやガッビア、ペッレグリなども起用するチャンスになりますし。CL出場チームですから、欲を出していきましょう!!

  • 2021/09/22 (Wed) 18:05
  • REPLY
カカニスタ22
カカニスタ22  
To Akiさん

コメントありがとうございます。

仰るように次の2戦は必勝をお願いしたいですね。ターンオーバーは間違いなくするでしょうし、それ故にチームのパフォーマンスに未知数な部分は生じますが、ここで勝ち点を取りこぼすのは非常に勿体ないですし。
個人的には特にペッレグリが見たいと思っていて、そろそろ顔見せくらいはできるんじゃないかなーと思っています。。それとブラヒムを休ませるためにも、早々に試合を決定づけてダニエルに出番を回したいですね。

  • 2021/09/22 (Wed) 21:32
  • REPLY