【2020-21シーズン】 カラブリアの成長と活躍 ~ワン・クラブ・マンへの大きな一歩~

ダヴィデ・カラブリア
はじめに

先日、ミランがカラブリアとの契約延長を発表しました。



契約期間は2025年まで延長。また、報道によれば年俸は200万ユーロ+ボーナス(もしくは260万ユーロ)とのことです。

今季のカラブリアは素晴らしいパフォーマンスを披露し、ミランの2位フィニッシュおよびCL権獲得に大きく貢献してくれました。そのため、来年までとなっていた契約期間の延長は極めて妥当ですし、来シーズン開幕前までに無事に決まってくれて一安心ですね。

さて。今回はそんなカラブリアの20-21シーズンについて、いくつかのスタッツを参照しつつ振り返っていこうかなと。
カラブリアの出場時間

まずは出場時間についてです。

カラブリア_出場時間(修正)

上記はカラブリアが本格的にトップチームでプレーするようになった15-16シーズンから20-21までの出場時間をまとめたものですが、今季は公式戦での総プレー時間が3223分となっています(赤枠)。この数字はカラブリアのこれまでのキャリアでベストですね。

カラブリアは今シーズン後半戦こそ約1カ月近く負傷離脱した時期があったものの、それ以外は不動の右SBとしてピッチに君臨。中でもリーグ戦ではケシエ、テオに次ぎ、フィールドプレーヤーの中でチーム3位となる出場時間数をマークしました。



カラブリアの具体的なプレースタイル

もちろん、カラブリアは出場時間だけではなく、その具体的なプレーにも特筆すべきものがありました。

まずは攻撃(組み立て)についてですが、彼は味方のCBやボランチと連動しながら立ち位置を柔軟に変えつつ、ボールを引き出してはそのパスセンスを如何なく発揮。タイミング良く積極的に縦パスを供給し、ボールを前進させていく主導的な役割を担いました。

カラブリア_パススタッツ_2020-21(赤枠強調)

この点について、5大リーグにおける他のSB達と比較すると、カラブリアは「ファイナルサードへのパス本数(平均5.31本/96パーセンタイル)」や「ボールの前進パス本数(平均5.93本/93パーセンタイル)」といったスタッツで非常に優れた数字をマークしていることがわかります。ミランの組み立て時における、彼の貢献度の高さが窺い知れますね。


更に崩しの局面においても、攻撃的な逆SBであるテオとのバランスを取りつつ、豊富な運動量を活かしたタイミングの良い攻め上がりでチャンスに絡んでいくプレーが随所に見られました。
また、場合によっては中央に侵入してボールを受け、そこからミドルシュートやワンツー突破するなどの多彩な動きを披露します。


【20-21】ミラン対クロトーネ_戦術分析3
――第21節クロトーネ戦における、メイテからサイドのカラブリアにパスが出た場面。ミランボランチのケアのため、クロトーネのMFは前に引き出されており、中盤にはスペースがある状況


【20-21】ミラン対クロトーネ_戦術分析4
――その後の場面。パスを受けたカラブリアは素早くそのスペースに持ち運ぶ。そしてカラブリアは前方のイブラにボールを預け、トップ下のレオンと共にエリア内に侵入していく


【20-21】ミラン対クロトーネ_戦術分析5
――その後、イブラはエリア内に侵入したレオンにパス。そのレオンの背後へと走るカラブリア


【20-21】ミラン対クロトーネ_戦術分析6
――その後の場面。レオンがヒールで後ろに流し、ボールはフリーのカラブリアへ。カラブリアはダイレクトでゴールに流し込んだ

このような中央(寄り)でのプレーは現代のSBに求められる要素の1つですが、カラブリアもそうしたプレーを状況に応じてこなしてくれますね。



続いて守備の局面についてですが、こちらに関しても大きな成長が見られました。

まず、ポジショニングや判断面(前に出て相手を捕まえるか、引いてスペースを埋めるか等といった状況判断)が改善し、プレーの安定感が向上。


【2020-21】サンプドリア対ミラン_戦術分析9
――第10節、サンプドリア戦における一場面。ミランのボールロスト後、中央から左サイドのアウジェッロ(SB)にパスが渡り、サンプドリアがカウンターを開始。サイドで数的不利のカラブリアは、自身の背後を走るカンドレーヴァ(SH)へのパスを警戒し、前に飛び込まずにディレイを選択して味方の戻りを待つ


【2020-21】サンプドリア対ミラン_戦術分析10
――その後の場面。ケシエがアウジェッロに対応し、2対2の状況となる。そしてアウジェッロはカンドレーヴァにパスを渡し、自身は前方に走るが、ケシエがしっかりと付いていく。


【2020-21】サンプドリア対ミラン_戦術分析11
――その後の場面。ボールを持ったカンドレーヴァに対し、ミランはカラブリアとプレスバックしたサレマの2人で対応。また中央へのパスコースはディアスが封じる。そして最終的にカラブリアがボールを奪取。


【2020-21】サンプドリア対ミラン_戦術分析12
――こうしてボールを再奪取したミランは、カウンターから惜しいチャンスを作り出した


また、安定した判断力とポジショニングによりプレーに落ち着きが生まれ、その結果として元々持ち味としていたタックル等によるボール奪取にも磨きがかかった印象です。

カラブリア_タックル_2020-21
――カラブリアのタックルに関するスタッツ



――第4節、インテル戦における2点目のシーンについて。ミランの2点目に繋がるロングカウンターはカラブリアのボール奪取から開始された


また戦術的にも、積極的なプレスを主戦術とするミランにとって右SBカラブリアによる精力的なプレッシャ―は重要です。数字にも彼の献身性やその精度が表れていますね。

カラブリア_プレッシャー_2020-21
――カラブリアのプレスに関するスタッツ


そして、ゴール前での守備においても全体的に冷静なプレーを披露。
中でも今シーズン最終節のアタランタ戦では、ミランが普段よりも守備の重心を下げる戦術を採ったこともあり今まで以上にゴール前での冷静な守備が強く求められたわけですが、カラブリアはその役目をしっかりと遂行。他の選手同様に見事なパフォーマンスでアタランタの攻撃をシャットアウトしました。

アタランタ戦_クリア数ランキング
――アタランタ戦におけるクリア数ランキング。カラブリアは「8回」と両チーム合わせてトップの数字を記録



おわりに

以上、ここまで見てきたように今季は素晴らしいパフォーマンスを披露してくれたカラブリアですが、彼はまだ24歳。成長の余地はまだまだ残されているように思われます。
例えばラストパスやクロスには今なお若干の難が見られますし、そうした部分(相手ゴール前でのプレー精度等)を改善していくことで、選手として更なる高みに至ることができるのかなと。

もちろん現時点でも素晴らしい選手ですし、既にセリエA有数のSBだと思いますけどね。
ただ彼には世界を代表するSBになって欲しいので、そのために更なる成長を遂げて欲しいと感じます。

そして、いずれはミランのカピターノになって欲しい。
個人的にミランのカピターノには「実力とミラン愛」の両方が十分に備わっていないといけないと思っているのですが、カラブリアはこうした条件を満たし得る存在ですからね。

願わくは「ワン・クラブ・マン」として、カラブリアにはミランでキャリアを全うしてほしいと思います。


それでは今回はこの辺で。

6Comments

Hiromiffy

守備も軽い所があったのに、リベリーを抑え込むほどになりましたね。

  • 2021/07/12 (Mon) 22:17
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Aki

カカニスタさん

カラブリアの延長は本当に嬉しいですね。ワンクラブマン、バンディエラを目指して今後も成長が楽しみです。
守備は磨きが掛かり今年はあらゆる強敵を抑え込み、文句ないレベルでした。その上で攻守においてポジショニングや周囲との連携が格段に良くなりましたし、フィニッシュも結構上手いので、来季はクロスの精度が上がると頼もしいです。
今の状態でも、十分にアズーリのスタメン取れると思ってます!(欲目ですかね…?)

ケシエ大統領の延長も続いて期待ですね。

  • 2021/07/13 (Tue) 15:36
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CL8

去年の今頃は売却して新しいSBをとって欲しいと間違った考えをしていました。飛び抜けて身体能力が高くなくても急に覚醒するからサッカーはわからないものですね。テオに負けず劣らずミランに欠かせないSBになりました。ミランはやはり下部組織出身のイタリア人がカピターノでいて欲しいので、デシリオのように伸び悩まず象徴的な選手になることを期待しています。

  • 2021/07/13 (Tue) 19:23
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カカニスタ22

カカニスタ22

To Hiromiffyさん

コメントありがとうございます。

出始めのころと比べると、守備面は特に大きく改善されましたねー。
この調子で更なる成長を遂げて欲しいです。

  • 2021/07/19 (Mon) 21:31
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カカニスタ22

カカニスタ22

To Akiさん

コメントありがとうございます。

僕もカラブリアは十分に代表のレギュラークラスだと思いますよ。
ただ、代表で不動の存在となって酷使されるよりかは準レギュラー辺りで基本は納まりつつ、重要な国際大会でしっかりと起用されるみたいな流れが個人的には望ましいですかね。とにかく代表で怪我されるのはホントにやるせないので。

  • 2021/07/19 (Mon) 21:39
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カカニスタ22

カカニスタ22

To CL8さん

コメントありがとうございます。

>>ミランはやはり下部組織出身のイタリア人がカピターノでいて欲しいので、~

そこは拘りたいですよね。僕としても仰るように生え抜きイタリア人か、そうでなくともミランでプレーする誇りと責任を自覚し、かつ長期間在籍して確かな実績を作り上げた選手(例えばアンブロジーニのような選手)が理想ですね。

  • 2021/07/19 (Mon) 21:44
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