【2020-21シーズン】 カラブリアの成長と活躍 ~ワン・クラブ・マンへの大きな一歩~
先日、ミランがカラブリアとの契約延長を発表しました。
Official Statement: Davide Calabria ➡ https://t.co/48wW6UeOnS
— AC Milan (@acmilan) July 9, 2021
Comunicato Ufficiale: @davidecalabria2 ➡ https://t.co/SlyyFHWyEh#SempreMilan pic.twitter.com/CpBvlOfJZs
契約期間は2025年まで延長。また、報道によれば年俸は200万ユーロ+ボーナス(もしくは260万ユーロ)とのことです。
今季のカラブリアは素晴らしいパフォーマンスを披露し、ミランの2位フィニッシュおよびCL権獲得に大きく貢献してくれました。そのため、来年までとなっていた契約期間の延長は極めて妥当ですし、来シーズン開幕前までに無事に決まってくれて一安心ですね。
さて。今回はそんなカラブリアの20-21シーズンについて、いくつかのスタッツを参照しつつ振り返っていこうかなと。
まずは出場時間についてです。

上記はカラブリアが本格的にトップチームでプレーするようになった15-16シーズンから20-21までの出場時間をまとめたものですが、今季は公式戦での総プレー時間が3223分となっています(赤枠)。この数字はカラブリアのこれまでのキャリアでベストですね。
カラブリアは今シーズン後半戦こそ約1カ月近く負傷離脱した時期があったものの、それ以外は不動の右SBとしてピッチに君臨。中でもリーグ戦ではケシエ、テオに次ぎ、フィールドプレーヤーの中でチーム3位となる出場時間数をマークしました。
〇カラブリアの具体的なプレースタイル
もちろん、カラブリアは出場時間だけではなく、その具体的なプレーにも特筆すべきものがありました。
まずは攻撃(組み立て)についてですが、彼は味方のCBやボランチと連動しながら立ち位置を柔軟に変えつつ、ボールを引き出してはそのパスセンスを如何なく発揮。タイミング良く積極的に縦パスを供給し、ボールを前進させていく主導的な役割を担いました。

この点について、5大リーグにおける他のSB達と比較すると、カラブリアは「ファイナルサードへのパス本数(平均5.31本/96パーセンタイル)」や「ボールの前進パス本数(平均5.93本/93パーセンタイル)」といったスタッツで非常に優れた数字をマークしていることがわかります。ミランの組み立て時における、彼の貢献度の高さが窺い知れますね。
更に崩しの局面においても、攻撃的な逆SBであるテオとのバランスを取りつつ、豊富な運動量を活かしたタイミングの良い攻め上がりでチャンスに絡んでいくプレーが随所に見られました。
また、場合によっては中央に侵入してボールを受け、そこからミドルシュートやワンツー突破するなどの多彩な動きを披露します。

――第21節クロトーネ戦における、メイテからサイドのカラブリアにパスが出た場面。ミランボランチのケアのため、クロトーネのMFは前に引き出されており、中盤にはスペースがある状況

――その後の場面。パスを受けたカラブリアは素早くそのスペースに持ち運ぶ。そしてカラブリアは前方のイブラにボールを預け、トップ下のレオンと共にエリア内に侵入していく

――その後、イブラはエリア内に侵入したレオンにパス。そのレオンの背後へと走るカラブリア

――その後の場面。レオンがヒールで後ろに流し、ボールはフリーのカラブリアへ。カラブリアはダイレクトでゴールに流し込んだ
このような中央(寄り)でのプレーは現代のSBに求められる要素の1つですが、カラブリアもそうしたプレーを状況に応じてこなしてくれますね。
続いて守備の局面についてですが、こちらに関しても大きな成長が見られました。
まず、ポジショニングや判断面(前に出て相手を捕まえるか、引いてスペースを埋めるか等といった状況判断)が改善し、プレーの安定感が向上。

――第10節、サンプドリア戦における一場面。ミランのボールロスト後、中央から左サイドのアウジェッロ(SB)にパスが渡り、サンプドリアがカウンターを開始。サイドで数的不利のカラブリアは、自身の背後を走るカンドレーヴァ(SH)へのパスを警戒し、前に飛び込まずにディレイを選択して味方の戻りを待つ

――その後の場面。ケシエがアウジェッロに対応し、2対2の状況となる。そしてアウジェッロはカンドレーヴァにパスを渡し、自身は前方に走るが、ケシエがしっかりと付いていく。

――その後の場面。ボールを持ったカンドレーヴァに対し、ミランはカラブリアとプレスバックしたサレマの2人で対応。また中央へのパスコースはディアスが封じる。そして最終的にカラブリアがボールを奪取。

――こうしてボールを再奪取したミランは、カウンターから惜しいチャンスを作り出した
また、安定した判断力とポジショニングによりプレーに落ち着きが生まれ、その結果として元々持ち味としていたタックル等によるボール奪取にも磨きがかかった印象です。

――カラブリアのタックルに関するスタッツ
Calabria ➡️ Saelemaekers ➡️ Çalhanoglu ➡️ Rafael Leão ➡️ Ibra 🎯
— AC Milan Brasil II (📸🎥📄) (@acmilanbrvideos) October 18, 2020
4 passes ⚽
14 segundos ⏲️
Gol ✅
Contra-ataque de manual 🔥 pic.twitter.com/rM4ESEXtp8
――第4節、インテル戦における2点目のシーンについて。ミランの2点目に繋がるロングカウンターはカラブリアのボール奪取から開始された
また戦術的にも、積極的なプレスを主戦術とするミランにとって右SBカラブリアによる精力的なプレッシャ―は重要です。数字にも彼の献身性やその精度が表れていますね。

――カラブリアのプレスに関するスタッツ
そして、ゴール前での守備においても全体的に冷静なプレーを披露。
中でも今シーズン最終節のアタランタ戦では、ミランが普段よりも守備の重心を下げる戦術を採ったこともあり今まで以上にゴール前での冷静な守備が強く求められたわけですが、カラブリアはその役目をしっかりと遂行。他の選手同様に見事なパフォーマンスでアタランタの攻撃をシャットアウトしました。

――アタランタ戦におけるクリア数ランキング。カラブリアは「8回」と両チーム合わせてトップの数字を記録
〇おわりに
以上、ここまで見てきたように今季は素晴らしいパフォーマンスを披露してくれたカラブリアですが、彼はまだ24歳。成長の余地はまだまだ残されているように思われます。
例えばラストパスやクロスには今なお若干の難が見られますし、そうした部分(相手ゴール前でのプレー精度等)を改善していくことで、選手として更なる高みに至ることができるのかなと。
もちろん現時点でも素晴らしい選手ですし、既にセリエA有数のSBだと思いますけどね。
ただ彼には世界を代表するSBになって欲しいので、そのために更なる成長を遂げて欲しいと感じます。
そして、いずれはミランのカピターノになって欲しい。
個人的にミランのカピターノには「実力とミラン愛」の両方が十分に備わっていないといけないと思っているのですが、カラブリアはこうした条件を満たし得る存在ですからね。
願わくは「ワン・クラブ・マン」として、カラブリアにはミランでキャリアを全うしてほしいと思います。
それでは今回はこの辺で。