トナーリの「ミラン愛」
「クラブ愛がある選手/ない選手」というのは、ピッチ上でのパフォーマンス、インタビューにおけるコメント等、選手の様々な言動を根拠に判断されるものだと思います。
ただ、その中でも「お金」に関わる行動についてはファンも敏感になっており、その最たる例である年俸交渉などは、選手のクラブ愛を判断する上で重要な評価対象の1つではないでしょうか。
確かに選手にとって「年俸」というのは一種のステータスであり、また1人の人間としてお金を稼ぎたいという欲求を持つことは何も不思議な事ではありません。
そのため、優秀な選手が高額な年俸を望み、時には年俸の多寡を理由として別のクラブに移籍することも納得がいくように思われます。
しかしながら、ファンの心理として、そういった選手にクラブ愛を見出すことは一般的に難しいものがあります。
一方、何らかの行動を以てお金よりも所属クラブを優先することを証明した選手については、ファンもその選手の持つクラブ愛を確信し、選手に対しそれまで以上の愛着を持つようになるのではないかと。
○2つの事例
具体的に、そうした行動を見せてくれたミランの選手としてまず思い出されるのが、今シーズンのマンジュキッチです。
昨冬にチームの切り札として期待され加入したものの、怪我やコンディション不良により満足に出場できない状態が続いたマンジュキッチ。すると4月に、彼は1カ月分の給料をクラブに返上するという行動をとりました。
また、同様の事例は13-14シーズンにもありましたね。
当シーズンに大幅な減俸(1000万ユーロ→400万ユーロ)を受け入れてミランに帰還したカカでしたが、加入早々に負傷離脱を余儀なくされます。すると、カカは復帰するまで給料を受け取ることを辞退する意向を表明しました。
「怪我が治って再びプレーできるようになるまで、僕は愛とサポート以外何もいらない」
Class act from #Mandzukic who refused to take March's salary as he was unavailable due to his injurie
— ⚫🔴Milan Per Sempre🔴⚫ (@EllZozz) April 16, 2021
We haven't seen much from him but he can't be blamed
This situation is similar to 2013 when our boy #Kaka refused to receive his wages due to his injury
Nothing but respect 👏🏽 pic.twitter.com/AdUEhlHaIu
こうした2人の行いは、紛れもなくクラブ(ミラン)とそのファンに対するリスペクトの表れです。
お金は非常に大事なものであるからこそ、それを手放すことで表明されるクラブへの思いに感動しますし、そこには選手の抱くクラブ愛がはっきりと感じられますね。
○トナーリの「ミラン愛」
さて。上記の2人と同様に、お金に関する決断によってミラン愛を強調した選手が再び現れてくれました。それはサンドロ・トナーリです。
この点について。今オフシーズン、ミラン・ブレシア間におけるトナーリの完全移籍交渉が難航し、その結果、昨季交わした契約にあった買取OPが失効。
しかし、契約失効後も両クラブ間で粘り強く交渉が続けられ、遂に内容面で合意に達しました。
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— Milan Posts (@MilanPosts) July 7, 2021
@AntoVitiello: In the afternoon, Sandro #Tonali will officially sign his new contract with #ACMilan until 2025. 10M (paid last year) + 6.9M + 3M bonuses for him. #Olzer will move to #Brescia as counterpart, with buy back option in favour of #ACMilan. pic.twitter.com/gcnQVwPIeM
上記ソースによれば、その内容は「元々レンタル料として支払われていた1000万ユーロ」に加え、「約700万ユーロ+ボーナス300万ユーロ+オルツァー(買戻しOP付)」という内訳で総額「2000万ユーロ+α」とのこと。当初の契約では総額3500万ユーロだったため、大幅な値引きに成功しています。
そしてここからが本題ですが、上記の交渉と同時にトナーリ個人との契約も見直され、その結果トナーリは当初交わした契約よりも低い年俸でミランと合意。その額については諸説ありますが、凡そ40~50万ユーロほどの減額を受け入れ、年俸は120万ユーロとなったそうです。
📰 @Gazzetta_it: Sandro #Tonali has agreed to lower his salary from 1.6M€ to 1.2M€. pic.twitter.com/hIw6ATZrf1
— Milan Posts (@MilanPosts) July 8, 2021
これにより、晴れてミランへの完全移籍が実現した、と。公式発表によれば、トナーリはミランと2026年までの5年契約を結んだとのことです。
Official Statement: Sandro Tonali ➡ https://t.co/KKnmNIvoEo
— AC Milan (@acmilan) July 8, 2021
Comunicato Ufficiale: Sandro Tonali ➡ https://t.co/8VTc4IwzcO #NewPlayerUnlocked #SempreMilan pic.twitter.com/eIcR2RtbLq
この一連の交渉の中で今回特筆すべきはもちろん、トナーリが減俸を呑んだという点ですね。
確かに今シーズンのトナーリはビッグクラブへの適応に苦しんだ結果、お世辞にも良いパフォーマンスを披露したとは言えず、そのため契約の見直しを機にクラブ側が減俸を望んだのは理解できます。しかし、選手側からすれば決して簡単に受け入れられる要求ではなかったはずです。
それでも、トナーリはこの条件を承諾してくれました。しかも一部報道によれば、トナーリはミランへの完全移籍のため、事前に自らがクラブ側に減俸を申し出ていたなんて話もあるんですよね。
振り返ればトナーリは昨シーズンのレンタル加入時、背番号「8」を着用する許可を求め前任者であるガットゥーゾに連絡を取るなどといったエピソードを筆頭に、移籍当初からミラン愛を言動で示してくれていた選手です。そして今回の一件により、ミラニスタとしての印象を更に強めてくれることとなりましたね。
今のエリオット・ミランは選手に対し良くも悪くもドライな方針であるように見受けられますが、そういった中でも彼のようにミラン愛に溢れた選手がいるというのはとても貴重で有り難いことです。
最後に。クラブ愛が強い選手とは、すなわちファンからも強く愛される選手だと思います。
今後、トナーリのような選手が中心となってチームを牽引してくれたらファンとしては最高に嬉しいですし、そのためにもトナーリには来季こそ大きく飛躍を遂げて欲しいですね。

Forza Tonali!
それでは今回はこの辺で。