【完勝】ユベントス対ミラン【2020-21シーズン・セリエA第35節】
本当はもう少し戦術的な話をしたいので、詳しくは次回に回せたら回します(ミッドウィークにすぐトリノ戦があるため、時間的に後編も書けるかはかなり微妙ですが)。
。
皆さんご存知の通り、この試合の結果は3-0。ミランが完勝を収めました。
この結果には様々な理由を挙げることができるでしょうが、まず1つを挙げるとすればそれは「ミラン選手のモチベーションが極めて高かった」事だと思われます。
Guardate ibra alla fine.. Brividi
— brunibra (@Brunoyz98) May 9, 2021
Stasera voglio 11 zlatan!! Forza ragazzi siamo tutti con voi!
Avanti diavolo🔴⚫#ACMilan pic.twitter.com/azxS7yjZuV
試合前、ミラネッロに集まったミラニスティによる熱狂的な応援が話題となりましたが、こうした応援が糧となったのでしょう。この試合のミラン選手は全員が素晴らしい集中力と献身性を見せつけました。
具体的に。選手の「やる気」や「集中力」というものを数値化することはできないわけですが、試合のスタッツからそれらを窺い知ることは可能です。

――この試合におけるデュエル数の比較(『SofaScore』より)。左がユベントス、右がミラン
ミランのようにアグレッシブな守備スタイルを採用するチームにとって、対人戦は生命線となり得ます。その点、今回ミランはユベントスに大きく差を付けて勝利していますね。
また、以下のようなデータもあります。
Bennacer, Brahim Diaz, Kjaer, Saelemaekers and Kessié all finished tonight's game with 92% pass completion or above.
— MilanData📊 (@acmilandata) May 9, 2021
[via @AC_MilanFR] pic.twitter.com/bHit9fnVIy
ダブルボランチのベナセルとケシエ、そして2列目のサレマとブラヒムのいずれもが92%以上のパス成功率をマークしたとのことです。これもまた、高い集中力があったからこその数値でしょうね。
特にケシエとベナセルは攻守において躍動。チームとしてやや守備的なアプローチを採ったミランにとって、彼らボランチの守備範囲と安定したパス配給はとてつもなく大きいものだったと思います。
〇勝利の要因
このように、選手の気持ちの面が試合のパフォーマンス延いては結果に大きく影響したのは間違いないと思いますが、気持ちの強さだけで勝てるほどユベントスというチームは甘くありません。ユーベの選手たちだってこの試合にかける思いは強かったと思いますしね。
この点に関し、僕の好きな漫画に以下のようなシーンがあるのでご紹介します。

(出典:『ワールドトリガー』 葦原大介 集英社)
ここで強調したいのは、「勝負を決めるのは戦力・戦術、あとは運だ」という部分です。
もちろん人によって異なる意見があると思いますが、個人的にはかなり的を射たセリフだと思っていて、これはサッカーにおいても往々にして当てはまることではないかと(そもそもこの発言の真意は別にあるのですが、そこは割愛)。
例えば、以上の3要素を基準にこの試合を考えますと、まず「戦力」に関してはこの試合、両チームともにほぼフルメンバーで臨みました。
確かにそれでもスカッドの質・量ともにユーベに分があるのは確かですが、ミランも離脱者さえいなければかなり強力なメンバーですし、それこそ前回対戦時のスタメンと比べればその差は圧倒的です。

――セリエA第16節、ミラン対ユベントスのスタメン
前回のユーベ戦におけるミランも気持ちは十分に入っていましたし、想定以上のパフォーマンスを披露したわけですが、結局のところは1-3で敗北。殊にキエーザ対テオ、ディバラ対ロマニョーリの部分で個の力を見せつけられ、また途中出場の選手(クルゼフスキ、マッケニー)に3点目を奪われるなど、戦力差を痛感した試合でした。
続いてこの試合の「戦術」についてですが、これに関しては終わってみればミランの圧勝だったと思います。
詳細は(もし書ければ)次回に書きたいのですが、ミランとしては守備時にユーベを徹底的にサイドに追いやり、中央を使わせない守備を遂行しました。

――この試合におけるユベントスのヒートマップ(右攻め。『WhoScored』より)
以上のヒートマップを見ると明らかですが、ユベントスは後方の右(主にCBデ・リフトのプレーエリア)と右サイド(主にクアドラードのプレーエリア)の場所が濃く、中央エリアはかなり薄いですよね。
つまりミランは2列目がしっかりと中央に絞りながら、ボランチやトップ下と共同して中央へのパスコースを封じ、サイドに誘導することができていました。
比較として、最近のユーベが3-1で快勝したパルマ戦のヒートマップを以下に載せておきます。

――比較:パルマ戦におけるユベントスのヒートマップ
そして、この試合でサイドに追いやられたユーベの主な攻め手としてはクロスになるわけですが、そこはケアーとトモリのCBコンビが鉄壁の守備を見せ、尽く弾き返していく、と

――この試合におけるクリア数ランキング。トモリが「7回」で1位、ケアーが「6回」で2位
ケアーとトモリはクロス対応以外もド安定のパフォーマンスを披露しており、何度かあったユーベの速攻のチャンスやシュートチャンスをほぼ完璧に潰す素晴らしいプレーぶりでした。
まぁこのようにして、ミランはユーベの枠内シュートをわずか1本に抑えつつ、無失点で勝利を収めたというわけですね。
最後に「運」の要素についてですが、まずは以下の「ゴール期待値」と呼ばれるデータを見ていただきましょう。

――ユベントス対ミランのxG(『understat.com』より)
こちらのデータによれば、ユベントスのxG(ゴール期待値)は1.10、ミランのxGは1.23となっています。しかし、結果的にはスコア0-3という事で、大きく異なっていますね。
実際に、1点目のブラヒムのゴールと2点目のレビッチのゴール。これらはいずれもスーパーゴールと呼ぶに相応しい素晴らしいシュートであったわけですが、見方を変えればゴール期待値の低いシュートであり、多少の運も味方したゴールであったことは確かだと思います(もちろん、1点目のイブラのシュチェスニーに対するスクリーンプレーや、2点目のチャルハノールのフリーラン等、チームプレーに因るところも多分にあったわけですが)
以上をまとめますが、この試合のミランはまず十分な「戦力」で臨み、その上で効果的な「戦術」を用意して見事に遂行し、無失点に抑える。そして多少の「運」も味方に付けてゴールを量産し、勝利を収める、と。もちろん、「勝利への強い気持ち」を選手たちが持ち、それがスタッツ延いては結果にも表れていたであろうことは先述の通りです。
いくらユーベが組織的に不調とはいえ、あの戦力を相手に3-0で勝つのは決して容易ではありません。
この試合でミランはあらゆる面で勝利に値し、それがこの完勝に繋がったのだと思います。
まとめ
この勝利により、ミランは勝ち点「72」で3位浮上となりました。
しかも、今回は3点差を付けての勝利という事で、今季のユベントスとの直接対決の合計スコア(4-3)でリードとなりました。これにより、仮に勝ち点が同じとなってもミランが上の順位となります。
つまり5位ユーベの暫定勝ち点は「69」ですが、ミランとは実質4ポイントの差があるといえますね。
さて。残り3戦の内、2勝すれば4位以内確定という状況になった今、ミランに求めたいのはもちろん最終節(アタランタ戦)を迎える前にCL権獲得を決めることです。
この一戦は極めて重要でしたが、これ以後の試合も同様に重要なものですから、ミランには気持ちを切らさずに戦い抜いて欲しいと思います。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました