【安心の今節、不安の次節】ミラン対ベネヴェント【2020-21シーズン・セリエA第34節】
スタメン

4-2-3-1のミランと4-4-1-1(守備時)のベネヴェント。
ミランはイブラヒモビッチが待望の復帰です。
まずはミランの攻撃についてです。
ベネヴェントは守備時4-4-1-1が基本(ハイプレス時は2トップになることも)。それに対しミランは後方でボールを回しつつ、相手の前線2枚の横からボールを持ち出していきます。
その後は積極的に下がってくるイブラやトップ下チャルハノール等の出番です。ライン間でボールを引き出し、細かいパス回しで崩していこうとする、と。
今のミランのトップに求められる役割については前回の記事にて書きましたが、ラツィオ戦のマンジュキッチとは異なり、イブラは積極的に崩しの局面に関与してくれるためチャルやサレマはかなりやり易そうでしたね。

――参考:ラツィオ戦におけるマンジュキッチのボールタッチポジション(左攻め『WhoScored』より)。途中交代した63分までで、ボールタッチ数は「14回」

――参考2:ベネヴェント戦におけるイブラのボールタッチポジション(右攻め)。ボールタッチ数はマンジュキッチのプレー時間と同じ63分までで「35回」を記録(フルタイムだと「67回」)
そして開始早々の6分。華麗な崩しから最後はエリア内に飛び出したチャルハノールが決め、ミランが先制に成功。この一連のシーンでもイブラのプレーが光りました。

――1点目のシーンについて。右サイドでボールを回したのち、ロマニョーリ(13)からテオ(19)にボールが渡る。その際、チャル(赤10)と入れ替わるようにイブラ(11)が中盤ラインに下がってボールを受け、ヴィオラ(青10)を引き付ける

――その後の場面。イブラはテオにリターンパス。イブラがヴィオラを引き付けた事で生じたスペースにはケシエ(79)とチャルが反応。テオはそこにパスを送り、ケシエとチャルはカバーに入ったイオニタ(29)を連係で躱す

――その後の場面。前を向いたチャルはその後、右サイドのサレマ(56)にボールを預け、前方に走り込む。その間、ケシエとテオもエリア内に侵入していく

――その後の場面。サレマはワンタッチで中央にパス。ケシエが見事な斜めのランニングでグリク(15)を引き付けた事でチャルがフリーとなり、冷静なワンタッチシュートでネットを揺らした
この試合ではレビッチがベンチスタートだったため、イブラの代わりに前線に飛び出す選手にやや物足りなさを覚えましたが、次節以降は彼が左サイドで出るでしょうから問題なさそうです。
一方、この試合でフル出場したイブラの今後のコンディションは未知数ですし、また離脱するという可能性も低くありません。
代役と目されたマンジュキッチが期待外れに終わりそうな現状、イブラに懸かる期待は莫大なものがありますし、どうか無事に残りシーズンを過ごしてもらいたいです。
○ミランの守備
一方、ミランの守備について。
ミランの狙いとしては、普段通りプレスをかけできるだけ高めの位置でボールを回収しようというものだったのでしょうが、序盤からやや曖昧なプレスを見せてしまいます。
1つの原因としてはイブラのプレス強度が低く、相手をサイドに追い詰めた際にもバックパスで逃げられてしまい易いという点です。

――例えばこの場面。左SBのバルバ(93)にサレマ(56)がプレスをかける。そこで、バルバはカルディローラ(5)にバックパス。そこに対してはイブラがやや遅れて対応に行く

――その後の場面。カルディローラは逆サイドのグリク(15)に展開し、イブラのプレスを外す。右サイドに寄っていたミランは下がりながら陣形を整え、グリクはノープレッシャーのまま前方にボールを運んでいった
このようにしてサイドを変えられてしまうと手広いスペースを使われてしまいますし、ラインを下げさせられ体力的にもキツい状況となります。
もちろん、こういった点はイブラを起用する以上ある程度は避けられないものですが、好調時のミランは組織としてこの点を上手くカバーしていました。
しかし、自チームのコンディション低下や、相手チームの連携成熟によるGKを含めたビルドアップの安定感増加&ミラン研究が進んだ事などによってハイプレスを掻い潜られるシーンは多くなった印象です。
この試合の相手、ベネヴェントはロングボールによるビルドアップが多く、また組織的・個人的なクオリティが物足りなかったためさほど問題にはなりませんでしたが、例えば次節ユベントス相手に曖昧なハイプレスをしたらヤバいんじゃないかという話です。
試合を観るに、現在ユベントスも戦術的な問題を多数抱えているように見受けられますが、個人能力で言えばリーグでトップクラス。そのためハイプレスを掻い潜られ、スペースを与えてしまえば依然強力なチームであることは間違いなく、実際に前2回の対戦でミランはスペースを与えてしまった際、速攻から失点を喫しています。
そこで、以前に書いた記事「ミランの守備戦術とメンバー構成の変化について」にて言及したローマ戦のように、プレスの開始地点を若干下げつつ、コンパクトな陣形を維持したままプレスをかける形が現状のベストでしょうし、おそらくユベントス戦ではそうすると思いますが…果たしてどうなるか。
イブラ起用時のネガティブな面を強調してしまいましたが、それでもなおイブラが現チームにおいて戦術的・技術的・精神的に必要不可欠な選手であることは確実です。以前のように彼の本領を発揮できるよう、チームとして上手く守備面をサポートしていきたいですね。
○采配
攻守について、非常に大まかですが書きたいことは書いたため、後は采配面について少し触れます。
60分にテオが追加点を決め、2点リードとなったミランは70分過ぎ。レビッチとカスティジェホを投入。これは随分とリスキーだなぁと個人的に感じました。
というのもレビッチとカスティジェホは累積リーチで、あと1枚イエローを貰うと次節ユベントス戦で出場停止になるという状況でした。
そんな中での投入、そして92分にはカスティジェホがイエローを貰います。
まぁ正直な所、カスティジェホに関してはユーベ戦に欠場しても別に痛手ではないので途中投入も良いとして、もしレビッチが累積で欠場なんてことになっていれば大問題でしたし、その辺のリスク管理が少し甘いように感じました。
それに2点リードの状況において、累積リーチのレビッチより先にハウゲを出すという選択はなかったのでしょうか。
— Milan Reports (@MilanReports) May 1, 2021
29節サンプドリア戦にて、途中出場からチームを助ける貴重な同点弾をマークしたハウゲでしたが、そこからこの試合を含め5戦出場なし。ピオーリの試合前記者会見記事を読んでもハウゲの状態は問題なしとのことで、ここまで冷遇するのは不可解に感じます。
EL決勝ラウンドの登録メンバーから外した事といい今の扱いといい、ハウゲのモチベーションを大きく下げるであろう出来事が続いているのは気になりますし、ハウゲに凄く期待している者としては極めて残念です。
雑感
スコアは2-0で終了。
今シーズンにおいて苦戦が続くホームでの勝利、それにクリーンシートも達成という事で(全体的に守備は結構怪しかったですが)、結果的には満足のいくものとなりました。とりあえずは安心ですね。
そして今節はアタランタとナポリが引き分けたことで、ミランは2位アタランタ、3位ユベントスと同勝ち点「69」で暫定4位となりました。
そんなミランは次節ユベントスのホームに乗り込むという事で、いよいよ大一番です。
ユーベ戦については決戦の日が近づき次第、別記事にて書こうと思いますが、現時点で言いたいこととしては何よりもまず「ベストメンバーで臨んで欲しい」というものです。
このベネヴェント戦に関しても、試合前日にケアーとカラブリア、マンジュキッチが体調不良を訴えるという事態になりましたが、こういうのはもうホントに勘弁して欲しい。
練習中に負傷者が出ないことはもちろん、出来る限り万全のコンディションでもって次の試合に臨んで欲しいと強く願います。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。