【痛恨の敗戦】ミラン対サッスオーロ【2020-21シーズン・セリエA第32節】
今回はセリエA第32節、ミラン対サッスオーロのマッチレビューを行いたいと思います。
スタメン

カラブリアが復帰してくれた一方で、イブラ、ベナセル、テオといった、主力中の主力が揃ってコンディション不良で欠場という泣きたくなる位のチーム状態。
そんなミランはこの試合で4-4-2、厳密には両サイドハーフを中央に絞らせる「4-2-2-2」の形を選択。
これは、現状の採りうる選択肢の中ではかなり良いと個人的に感じるものでした。
スタメン

カラブリアが復帰してくれた一方で、イブラ、ベナセル、テオといった、主力中の主力が揃ってコンディション不良で欠場という泣きたくなる位のチーム状態。
そんなミランはこの試合で4-4-2、厳密には両サイドハーフを中央に絞らせる「4-2-2-2」の形を選択。
これは、現状の採りうる選択肢の中ではかなり良いと個人的に感じるものでした。
○ミランの攻撃
序盤からミランは明確な攻めの形を見せ、実際にチャンスを作り出していきます。
具体的に。ミランはビルドアップ時から先述の通りサイドハーフ(チャル、サレマ)が中央に絞り、ライン間でボールを引き出そうとするポジショニングを取ります。

――ミランの攻撃時の形。中央にチャルとサレマがいるため、ここでロカテッリは前に出られず、それによりメイテがフリーとなる。そこで、ドンナルンマがフリーのメイテにパスを通し、プレスを突破した
こうして中央に人数をかけつつ、後方でパスを回して相手を引き出すことで、中盤において数的優位を作り出すと。
サッスオーロは4-4-2でプレスをかける形ですが、中盤のボランチ2人の内どちらかもしくは両方が基本的に対面のミラボランチに付くため、その背後に位置するチャルorサレマにパスを通され速攻を受けるシーンが散見されました。

――例えばこの場面。後方でパスを回すミランに対し、前からプレスをかけるサッスオーロ。ここではメイテにオビアングが付き、ロカテッリ(画面外)は後方で守る。ここで、ドンナルンマは前方へのロングボールを選択

――その後の場面。この位置ではサレマ、チャルハノールに対しロカテッリが1人で守る状況。ロングボールを受けたサレマにロカテッリが対応するが、サレマはワンタッチで横のチャルハノールにパスを送る

――その後の場面。チャルハノールがフリーでボールを受け、ミランが速攻を開始した
チャルのパフォーマンスがイマイチ安定しない現状において、彼をトップ下に据えて自由に動いてもらういつものやり方は得策ではないですし(パスでリズムを作り動かすタイプなのに、最近はそのパスがズレまくってたため)、今回のようにある程度役割や立ち位置を明確にするのは妥当な采配だと思います。
また、一方でサレマはコンディションが上がってきているようなので、彼には積極的にライン間に入って崩しに関与してもらうと。彼も独力でキープしたりボールを運んだりというタイプではないですが、パスとポジショニングで周囲の味方と共同しながら相手守備を崩していきました。チャルも近くにサレマがいたのでやり易そうでしたしね。
ミランは相変わらずゴール前での精度に欠けるシーンというのはチラホラ見られたものの、チームとしてかなり良い形で試合に入ることができた印象です。
○サッスオーロの攻撃
一方のサッスオーロの攻撃ですが、コチラもサイドチェンジを多用しながらミランのハイプレスを躱し、何度か惜しいチャンスを作り出していきます。
ミランのサイドハーフ(特にサレマ)は、ボールが逆サイド側にある時には中盤のスペースを埋めるためにかなり中央に絞りますが、サッスオーロはそこを逆手に取り、サイドへボールを展開していくと。

――例えばこの場面。最前線からハイプレスをかけるミランに対し、サッスオーロは右にボールを展開。その後、ベラルディから中央のロカテッリにバックパス。そこへはサレマが絞ってプレスをかけに行くが、ロカテッリは手薄な左サイドに素早く展開する

――その後の場面。いったんミランを自陣に押し込んだ後、ボールは再びロカテッリに。そこで、ロカテッリは再び逆サイドにロングパスを通す

――その後の場面。ボールは逆サイドのベラルディに渡る。ここから、SBミュルドゥルのオーバーラップによりチャンスを作り出した
中でも、序盤はロカテッリやベラルディからの展開を許すシーンというのがやや目立ちましたし、特にベラルディ対ダロトの部分は最初かなり不安を感じるところでありました。
すると13分、ボガがゴール前で決定機を迎えます。が、ここはドンナルンマのファインセーブによりミランは何とか事なきを得ました。
○前半中盤~終盤戦の攻防
引き続きライン間のチャル、サレマへのパスを起点に速攻を仕掛けていくミラン。攻撃の形がハマり、サッスオーロを守勢に回らせることに成功します。
すると、20分辺りから、サッスオーロはミドルブロックを主体とする守備に変更。体力的な面もあるでしょうが、何より先述の通りボランチの背後を突かれていた部分を修正しようとしたのかなと。

――例えばこの場面。サッスオーロは2トップがミランボランチへのマークを重視。一方、これによりサッスオーロのボランチはそれぞれサレマ、チャルをマーク

――その後の場面。ミランはトモリの持ち運びからチャルにパスを出すも、そこにはオビアングがしっかりとマークに付いているため、チャルはバックパスを選択した
これにより中央を直接経由することが難しくなったミランでしたが、それでもサイドを経由した崩し等により、引き続きチャンスを演出していきます。

――例えばこの場面。ブロックを作るサッスオーロに対し、ミランは右サイドのカラブリアへのパスを選択

――その後の場面。カラブリアはライン間でポジショニングするサレマにワンタッチでパスを通す

――その後の場面。サレマから再びカラブリアにボールが渡り、サッスオーロ守備陣を押し込んでいった
前節のジェノア戦ではサイドを経由した崩しがほとんど上手くいかなかったわけですが、その原因の一つとしてはどの選手も裏抜けの意識が高く、ライン間でタイミング良く受けられる選手がいなかった事が挙げられます。

――ジェノア戦の一場面について。カルル(20)がボールを持った際、サレマとレオン両方が同様の方向に裏抜けする
しかし、今回はサレマが積極的にライン間に入り込み、ボールを受けることでそうした問題を解消させましたし、レオンの裏抜けの動きも意味を持つものとなりました(相手のDFラインを押し下げ、ライン間にスペースを作り出す)。
こうして流れを完全に掴み、引き続きチャンスを作り出していったミランは30分。サレマからのサイドチェンジを受けたチャルハノールが見事なコントロールシュートをネットに突き刺し、先制に成功します。

――得点シーンについて。サレマからチャルにサイドチェンジのパスが通る

――その後の場面。チャルハノールがこの位置からコントロールシュートを突き刺した。その際、ミュルドゥル番のシュートへの反応を鈍らせたダロトのオーバーラップも光った
得点後はサッスオーロが攻め込む時間帯もありましたが、安定のCBコンビとケシエを中心にしっかりと粘り強く対応し、不安だったダロトもベラルディを封じ込め、結果的に無失点に抑えて前半を折り返しました。
○決定力不足
後半。一点ビハインドのサッスオーロは守備時、両サイドハーフ(特にボガ)を上げて圧を強めてくるわけですが、ミランはそこを逆手に取り速攻を仕掛けていきます。
主な攻め所としては、高めに位置するサイドハーフの裏です。

――例えばこの場面。前からボールを奪いに行きたいサッスオーロ。ここでミランはチャルハノールが下がってトモリからボールを引き出す

――その後の場面。ボールを受けたチャルハノールはワンタッチで右サイドに展開。

――その後の場面。タイミング良くライン間に走り込んだサレマにカラブリアがワンタッチでパスを通す。この後、ミランは連携からチャンスを作り出した
もう一つは縦へのロングボールです。

――例えばこの場面。ドンナルンマにボールを持ち、ラインを上げるサッスオーロ。カラブリアへのパスは左SBキリアコプロスが警戒し、少し前に出る。そこで、ドンナルンマは左SBの背後のスペースにロングボールを送り込む

――その後の場面。そのスペースにはレオンが走り込み、フェラーリのマークを剥がして一気にドリブルでゴール前に侵入。チャンスを演出した
この試合のミランはドンナルンマの足元が冴えており、次々と良い位置にボールを送り込んでいく事が出来ていました。
いつもよりも各選手の動きが明確かつ効果的だったので、ドンナルンマにとってもパスを送りやすかったのかもしれません。
そんなわけで、プレスを躱しながら速攻の機会を量産していくミラン。しかしながら、相変わらずのゴール前での精度の低さにより追加点はならず、と。
サッスオーロ守備陣の粘りもあったとはいえ、ミランはチャンスをフイにし過ぎですし、結局のところこれが試合結果に大きく影響を与えることになります。
○決定力不足の結果
対するサッスオーロの攻撃について、後半も左サイドのボガのドリブル等で何度かミランの守備を切り崩していきますが、ミランも引き続きゴール前での粘り強い守備によって決定的なシュートチャンスはほとんど作らせません。
そんな中、サッスオーロは63分から一気にトラオレ、トリアン、ラスパドーリを投入。
また、それにより前線のラスパドーリ、トラオレに積極的に楔のパスを入れ、そこから速攻を狙っていく形を見せていきます。

――例えばこの場面。ラスパドーリが楔のパスを受けるが、ここにはトモリが対応し、ボールを奪いにかかる

――しかし、奪い切ることはできず。ラスパドーリは右サイドにボールを展開し、サッスオーロが速攻を開始した
もちろん上記のように、前線の2人に通れば速攻のチャンスに繋がるわけですが、ミランも大体の場合においてそこには厳しくマークを付けますし(ケアー、トモリ、もしくは後方のボランチが付く)、もしそこでミランがボールを奪えれば一気にショートカウンターができる状況になります。

――例えばこの場面。敵陣深くでプレスをかけるミランに対し、GKコンシーリは前方のトラオレ、ラスパドーリにロングパスを送る。ここにはケアーとトモリが反応

――その後の場面。ここからサッスオーロは何本かパスを繋ぎ、速攻に繋げようとするが、最終的にラスパドーリがボールロスト

――こぼれ球はミランに渡り、ショートカウンターに繋がった
両チームにとってハイリスクハイリターンのように思われる状況でしたが、76分。トラオレがライン間でボールを受け、サッスオーロが速攻を開始。その流れから最後はラスパドーリが押し込み、サッスオーロが同点に追いつきました。

――得点の少し前のシーンについて。ミランが前から奪いに行くも、コンシーリが前方のトラオレに鋭い縦パスを通す

――その後の場面。トラオレはドリブルを開始。ミランはケシエとクルニッチ(73分から途中出場)で奪いにいくが、奪い切れずにサッスオーロに押し込まれ、最終的に失点を喫した
その後は行け行けムードのサッスオーロに対し、ミランも引き続きゴール前に侵入するも決めきれない状況が続きます。
すると83分。ショートカウンターから再度ラスパドーリに見事なシュートを決められてサッスオーロが逆転、と。
ミランとしては、決めるべき時に決めないとどうなるかという事をハッキリと思い知らされた試合展開でしたね…。
その後、同点・逆転を目指すミランはブラヒム、カスティジェホ、カルルを投入という事で層の薄さを露呈する交代策を見せますが、案の定その効果は薄く、そのまま試合終了。
ミラン1-2サッスオーロ
雑感
苦しいチーム事情の中、かなり良い試合内容を見せたミラン。
チャンスの量から考えても攻守共に機能していたと思いますし、プレーからも勝利への強い意欲が感じられました。
メディア等では叩かれていますが、ピオリ監督は苦しいチーム状況の中で戦術面・精神面共に素晴らしい準備をしてくれたと個人的に思います。もちろん選手たちもですね。
しかしながら。結果は敗戦です。
この終盤戦は結果こそが全てのようなところがありますし、いくら内容が良くても決めるべきところを決められず、敗北を喫してしまえばどうしようもありません。
これで5位ナポリとの勝ち点差は3という事で、いよいよ恐れていた事態が起こってもおかしくなくなりつつあります。
冬の王者になったチームが最終的に4位より下に叩き落とされることなど僕の記憶する限りありませんか、果たしてどうなるか…。
ここからの試合の中にはラツィオ、ユベントス、アタランタといった順位上のライバルとの対決がガッツリと残っており、もはや無理矢理ポジティブな点を探すのも億劫になる試合日程ですが、何とかなることを祈るしかありません。
まずは目下のラツィオ戦。ここはもうホントのホントに必勝で頼みます。
Fotza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。
序盤からミランは明確な攻めの形を見せ、実際にチャンスを作り出していきます。
具体的に。ミランはビルドアップ時から先述の通りサイドハーフ(チャル、サレマ)が中央に絞り、ライン間でボールを引き出そうとするポジショニングを取ります。

――ミランの攻撃時の形。中央にチャルとサレマがいるため、ここでロカテッリは前に出られず、それによりメイテがフリーとなる。そこで、ドンナルンマがフリーのメイテにパスを通し、プレスを突破した
こうして中央に人数をかけつつ、後方でパスを回して相手を引き出すことで、中盤において数的優位を作り出すと。
サッスオーロは4-4-2でプレスをかける形ですが、中盤のボランチ2人の内どちらかもしくは両方が基本的に対面のミラボランチに付くため、その背後に位置するチャルorサレマにパスを通され速攻を受けるシーンが散見されました。

――例えばこの場面。後方でパスを回すミランに対し、前からプレスをかけるサッスオーロ。ここではメイテにオビアングが付き、ロカテッリ(画面外)は後方で守る。ここで、ドンナルンマは前方へのロングボールを選択

――その後の場面。この位置ではサレマ、チャルハノールに対しロカテッリが1人で守る状況。ロングボールを受けたサレマにロカテッリが対応するが、サレマはワンタッチで横のチャルハノールにパスを送る

――その後の場面。チャルハノールがフリーでボールを受け、ミランが速攻を開始した
チャルのパフォーマンスがイマイチ安定しない現状において、彼をトップ下に据えて自由に動いてもらういつものやり方は得策ではないですし(パスでリズムを作り動かすタイプなのに、最近はそのパスがズレまくってたため)、今回のようにある程度役割や立ち位置を明確にするのは妥当な采配だと思います。
また、一方でサレマはコンディションが上がってきているようなので、彼には積極的にライン間に入って崩しに関与してもらうと。彼も独力でキープしたりボールを運んだりというタイプではないですが、パスとポジショニングで周囲の味方と共同しながら相手守備を崩していきました。チャルも近くにサレマがいたのでやり易そうでしたしね。
ミランは相変わらずゴール前での精度に欠けるシーンというのはチラホラ見られたものの、チームとしてかなり良い形で試合に入ることができた印象です。
○サッスオーロの攻撃
一方のサッスオーロの攻撃ですが、コチラもサイドチェンジを多用しながらミランのハイプレスを躱し、何度か惜しいチャンスを作り出していきます。
ミランのサイドハーフ(特にサレマ)は、ボールが逆サイド側にある時には中盤のスペースを埋めるためにかなり中央に絞りますが、サッスオーロはそこを逆手に取り、サイドへボールを展開していくと。

――例えばこの場面。最前線からハイプレスをかけるミランに対し、サッスオーロは右にボールを展開。その後、ベラルディから中央のロカテッリにバックパス。そこへはサレマが絞ってプレスをかけに行くが、ロカテッリは手薄な左サイドに素早く展開する

――その後の場面。いったんミランを自陣に押し込んだ後、ボールは再びロカテッリに。そこで、ロカテッリは再び逆サイドにロングパスを通す

――その後の場面。ボールは逆サイドのベラルディに渡る。ここから、SBミュルドゥルのオーバーラップによりチャンスを作り出した
中でも、序盤はロカテッリやベラルディからの展開を許すシーンというのがやや目立ちましたし、特にベラルディ対ダロトの部分は最初かなり不安を感じるところでありました。
すると13分、ボガがゴール前で決定機を迎えます。が、ここはドンナルンマのファインセーブによりミランは何とか事なきを得ました。
○前半中盤~終盤戦の攻防
引き続きライン間のチャル、サレマへのパスを起点に速攻を仕掛けていくミラン。攻撃の形がハマり、サッスオーロを守勢に回らせることに成功します。
すると、20分辺りから、サッスオーロはミドルブロックを主体とする守備に変更。体力的な面もあるでしょうが、何より先述の通りボランチの背後を突かれていた部分を修正しようとしたのかなと。

――例えばこの場面。サッスオーロは2トップがミランボランチへのマークを重視。一方、これによりサッスオーロのボランチはそれぞれサレマ、チャルをマーク

――その後の場面。ミランはトモリの持ち運びからチャルにパスを出すも、そこにはオビアングがしっかりとマークに付いているため、チャルはバックパスを選択した
これにより中央を直接経由することが難しくなったミランでしたが、それでもサイドを経由した崩し等により、引き続きチャンスを演出していきます。

――例えばこの場面。ブロックを作るサッスオーロに対し、ミランは右サイドのカラブリアへのパスを選択

――その後の場面。カラブリアはライン間でポジショニングするサレマにワンタッチでパスを通す

――その後の場面。サレマから再びカラブリアにボールが渡り、サッスオーロ守備陣を押し込んでいった
前節のジェノア戦ではサイドを経由した崩しがほとんど上手くいかなかったわけですが、その原因の一つとしてはどの選手も裏抜けの意識が高く、ライン間でタイミング良く受けられる選手がいなかった事が挙げられます。

――ジェノア戦の一場面について。カルル(20)がボールを持った際、サレマとレオン両方が同様の方向に裏抜けする
しかし、今回はサレマが積極的にライン間に入り込み、ボールを受けることでそうした問題を解消させましたし、レオンの裏抜けの動きも意味を持つものとなりました(相手のDFラインを押し下げ、ライン間にスペースを作り出す)。
こうして流れを完全に掴み、引き続きチャンスを作り出していったミランは30分。サレマからのサイドチェンジを受けたチャルハノールが見事なコントロールシュートをネットに突き刺し、先制に成功します。

――得点シーンについて。サレマからチャルにサイドチェンジのパスが通る

――その後の場面。チャルハノールがこの位置からコントロールシュートを突き刺した。その際、ミュルドゥル番のシュートへの反応を鈍らせたダロトのオーバーラップも光った
得点後はサッスオーロが攻め込む時間帯もありましたが、安定のCBコンビとケシエを中心にしっかりと粘り強く対応し、不安だったダロトもベラルディを封じ込め、結果的に無失点に抑えて前半を折り返しました。
○決定力不足
後半。一点ビハインドのサッスオーロは守備時、両サイドハーフ(特にボガ)を上げて圧を強めてくるわけですが、ミランはそこを逆手に取り速攻を仕掛けていきます。
主な攻め所としては、高めに位置するサイドハーフの裏です。

――例えばこの場面。前からボールを奪いに行きたいサッスオーロ。ここでミランはチャルハノールが下がってトモリからボールを引き出す

――その後の場面。ボールを受けたチャルハノールはワンタッチで右サイドに展開。

――その後の場面。タイミング良くライン間に走り込んだサレマにカラブリアがワンタッチでパスを通す。この後、ミランは連携からチャンスを作り出した
もう一つは縦へのロングボールです。

――例えばこの場面。ドンナルンマにボールを持ち、ラインを上げるサッスオーロ。カラブリアへのパスは左SBキリアコプロスが警戒し、少し前に出る。そこで、ドンナルンマは左SBの背後のスペースにロングボールを送り込む

――その後の場面。そのスペースにはレオンが走り込み、フェラーリのマークを剥がして一気にドリブルでゴール前に侵入。チャンスを演出した
この試合のミランはドンナルンマの足元が冴えており、次々と良い位置にボールを送り込んでいく事が出来ていました。
いつもよりも各選手の動きが明確かつ効果的だったので、ドンナルンマにとってもパスを送りやすかったのかもしれません。
そんなわけで、プレスを躱しながら速攻の機会を量産していくミラン。しかしながら、相変わらずのゴール前での精度の低さにより追加点はならず、と。
サッスオーロ守備陣の粘りもあったとはいえ、ミランはチャンスをフイにし過ぎですし、結局のところこれが試合結果に大きく影響を与えることになります。
○決定力不足の結果
対するサッスオーロの攻撃について、後半も左サイドのボガのドリブル等で何度かミランの守備を切り崩していきますが、ミランも引き続きゴール前での粘り強い守備によって決定的なシュートチャンスはほとんど作らせません。
そんな中、サッスオーロは63分から一気にトラオレ、トリアン、ラスパドーリを投入。
また、それにより前線のラスパドーリ、トラオレに積極的に楔のパスを入れ、そこから速攻を狙っていく形を見せていきます。

――例えばこの場面。ラスパドーリが楔のパスを受けるが、ここにはトモリが対応し、ボールを奪いにかかる

――しかし、奪い切ることはできず。ラスパドーリは右サイドにボールを展開し、サッスオーロが速攻を開始した
もちろん上記のように、前線の2人に通れば速攻のチャンスに繋がるわけですが、ミランも大体の場合においてそこには厳しくマークを付けますし(ケアー、トモリ、もしくは後方のボランチが付く)、もしそこでミランがボールを奪えれば一気にショートカウンターができる状況になります。

――例えばこの場面。敵陣深くでプレスをかけるミランに対し、GKコンシーリは前方のトラオレ、ラスパドーリにロングパスを送る。ここにはケアーとトモリが反応

――その後の場面。ここからサッスオーロは何本かパスを繋ぎ、速攻に繋げようとするが、最終的にラスパドーリがボールロスト

――こぼれ球はミランに渡り、ショートカウンターに繋がった
両チームにとってハイリスクハイリターンのように思われる状況でしたが、76分。トラオレがライン間でボールを受け、サッスオーロが速攻を開始。その流れから最後はラスパドーリが押し込み、サッスオーロが同点に追いつきました。

――得点の少し前のシーンについて。ミランが前から奪いに行くも、コンシーリが前方のトラオレに鋭い縦パスを通す

――その後の場面。トラオレはドリブルを開始。ミランはケシエとクルニッチ(73分から途中出場)で奪いにいくが、奪い切れずにサッスオーロに押し込まれ、最終的に失点を喫した
その後は行け行けムードのサッスオーロに対し、ミランも引き続きゴール前に侵入するも決めきれない状況が続きます。
すると83分。ショートカウンターから再度ラスパドーリに見事なシュートを決められてサッスオーロが逆転、と。
ミランとしては、決めるべき時に決めないとどうなるかという事をハッキリと思い知らされた試合展開でしたね…。
その後、同点・逆転を目指すミランはブラヒム、カスティジェホ、カルルを投入という事で層の薄さを露呈する交代策を見せますが、案の定その効果は薄く、そのまま試合終了。
ミラン1-2サッスオーロ
雑感
苦しいチーム事情の中、かなり良い試合内容を見せたミラン。
チャンスの量から考えても攻守共に機能していたと思いますし、プレーからも勝利への強い意欲が感じられました。
メディア等では叩かれていますが、ピオリ監督は苦しいチーム状況の中で戦術面・精神面共に素晴らしい準備をしてくれたと個人的に思います。もちろん選手たちもですね。
しかしながら。結果は敗戦です。
この終盤戦は結果こそが全てのようなところがありますし、いくら内容が良くても決めるべきところを決められず、敗北を喫してしまえばどうしようもありません。
これで5位ナポリとの勝ち点差は3という事で、いよいよ恐れていた事態が起こってもおかしくなくなりつつあります。
冬の王者になったチームが最終的に4位より下に叩き落とされることなど僕の記憶する限りありませんか、果たしてどうなるか…。
ここからの試合の中にはラツィオ、ユベントス、アタランタといった順位上のライバルとの対決がガッツリと残っており、もはや無理矢理ポジティブな点を探すのも億劫になる試合日程ですが、何とかなることを祈るしかありません。
まずは目下のラツィオ戦。ここはもうホントのホントに必勝で頼みます。
Fotza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。