【機能的な攻撃】パルマ対ミラン【2020-21シーズン・セリエA第30節】
今回はセリエA第30節、パルマ対ミランのマッチレビューを今更ながら行いたいと思います。
スタメン

(※各図における選手を表すマークが小さいので、適宜画像をタップして確認いただけると幸いです。次回以降は大きさを修正します)
怪我人が続々と戻ってきたミランは、レビッチがスタメン復帰。またカルルがSBに入り、サレマは右サイドハーフに入る形。
いつぶりか知れない、ようやくチームとして十分に機能するスタメンを組めました(スペツィア戦はノーカン)。
スタメン

(※各図における選手を表すマークが小さいので、適宜画像をタップして確認いただけると幸いです。次回以降は大きさを修正します)
怪我人が続々と戻ってきたミランは、レビッチがスタメン復帰。またカルルがSBに入り、サレマは右サイドハーフに入る形。
いつぶりか知れない、ようやくチームとして十分に機能するスタメンを組めました(スペツィア戦はノーカン)。
○ミランの機能的な攻撃
まずはこの試合におけるミランの攻撃について。
この試合のミランは、サイド偏重の攻撃ではなく、積極的に中央を使っていきました。
具体的に。ミランは主に最終ライン3枚(ケアー、トモリ、カルル)とダブルボランチ(ベナセル、ケシエ)の組み合わせにより後方でパスを回し、パルマ守備陣を前に誘導。
一方のパルマはCFのペッレがボランチ(主にベナセル)をケアしながらCBにチェック、また両インサイドハーフ(特にクツカ)が前に出てミランのCBないしボランチにプレスをかけにくるため、その後ろが空きやすいと。

――パルマの守備について、ここではトモリ(23)がボールを持った場面。デニス・マン(98)がテオ(19)にマンツーマン気味に対応。そのため、トモリに対しては基本的にクツカ(33)が対応する
そこで、ミランは相手アンカーの脇にチャルハノールやイブラを位置させ、そこでボールを受けさせようとする狙いが見られました。

――例えばこの場面。1トップのペッレ(9)とクツカの間にポジショニングしたベナセル(4)がトモリからボールを貰い、そのまま左前方にドリブル。これにより相手の守備を引き付けた後、テオにボールを渡し、そのテオはトモリにバックパス

――その後の場面。先ほどの一連の流れでパルマ守備陣は全体的にサイドに寄せられ、陣形が乱れた状態に。そこで、トモリからボールを受けたケアー(24)は、右前方のライン間にポジショニングするイブラ(11)に縦パスを通した。
悪い時のミランっていうのはサイド偏重のビルドアップになりがちで、例えば「CBからサイドに張るSBにボールを渡すも、そこからの展開に苦慮する」というのがここ最近のお決まりでしたが、今回のように中央を使えれば話は別です。
この点についてはやはりベナセルの復帰が大きいと思いますし、安定したパス技術とポジショニングの相棒ケシエと協同して相手を動かしながら、隙あらば縦パスをズバズバ入れていきました。
パルマとしてはデニス・マンをテオにマンツーマン気味に付かせ、テオからの展開を封じようとしたのでしょうが、これによりクツカの守備範囲が広くなりますし、この試合のミランは中央を使う意識が高かったため裏目に出ましたかね。
そして中央が使えれば必然的にサイドにもスペースができますし、サイドにスペースができればテオが活きると。
テオは正直言って組み立ては上手くないですし、後方のビルドアップに深く関与させればボロを出しやすいわけですが(前節のサンプドリア戦は最悪のケースにしても、これまでにもビルドアップの場面で危ないシーンは頻発していました)、やはり前にスペースがある時の推進力はトップクラスです。
コンディション的にはまだまだ本調子でなく、パスミスやクロスミスは目立ったものの、前節と比べると明らかに活き活きしていました。そして、彼が活きる試合展開になればミランも多くのチャンスを作れますし、実際にこの試合でも前半の内にチャンスを量産していきましたね。
そんなわけでミランは前半8分。レビッチのゴールで早々に先制します。

――1点目のシーンについて。ミランの後方でのパス回しにより、パルマはインサイドハーフのクツカとエルナニ(23)が前に引き寄せられた状態。また、そのエルナニの背後にはチャルハノール(10)がポジショニング。そこで、まずボールホルダーのケアーはサイドのカルル(20)にボールを預ける

――その後の場面。カルルからサレマ(56)、サレマからチャルハノールとボールが動く。そこへはエルナニがプレスバック、またガリオーロ(7番)が前に出てスペースを消しにかかるが、チャルにボールキープされる

――その後の場面。チャルから中央のベナセルにボールが渡る。

――その後の場面。ベナセルが左前方のライン間にいるイブラにパスを通す。その際、同時にテオが外から走り込んでいるため、デニス・マンがそちらの対応に追われ、イブラのチェックに少し遅れた

――その後の場面。ここでボールをキープしたイブラは、中央に侵入したレビッチ(12)に完璧なパスを通す。そのレビッチも見事なターンから強烈なシュートをネットに突き刺した
機能した組織と適切な戦術の下で、それぞれの個が力を発揮した事で生まれた申し分のないゴールといえるのではないかと思います。
○レビッチのパフォーマンス
重要な先制点をマークしたレビッチについてですが、個人的にこの試合のレビッチの戦術的パフォーマンスは非常に高かったと感じていまして、彼の存在のデカさというのを再認識しました。
まずはサイドアタッカーとして。テオのスペース&パスコース作りのため裏に抜けたり、逆に近くに寄ってワンツーの壁役になったりと状況に応じて的確なサポートを見せ、左サイドの崩しに貢献。また、フィジカルを活かした突破も見られました。

――例えばこの場面。ベナセルからテオにボールが渡った際、レビッチも素早くワンツーの壁役としてポジショニング。一方、相手のマン(98)はワンツーを警戒し、レビッチへのパスコースを切るように動く。そこで、テオはレビッチを囮に縦に突破することに成功。

――その後の場面。レビッチはすかさずサイドへ走って対面のコンティ(5)を引き付けながら、テオに中央へのドリブルコースを提供。そのままテオは中央へ浸入し、惜しいチャンスを作り出した。
ブラヒムとかと比べて明らかにテオもやり易そうですし、インテリジェンスの高さという点でもレビッチは素晴らしい選手だと思います。
そして忘れてはいけないのが、ストライカーとしての役割もこなせるという点。特に、この試合のようにイブラが積極的にライン間に下がる場合、彼の代わりに前線に飛び出す選手は不可欠となるわけですが、この点を忠実にこなせるレビッチの存在というのはやはり大きい。
先の得点シーンにおいてもいち早く中央に入り込み、イブラからの見事なパスを見事なターンで受けてゴールを決める見事なプレーを見せてくれましたしね。
ボールロストなどもまだチラホラ見られますが、昨シーズン同様に後半戦に向けて状態を上げていっていると思いますし、この調子でゴールを量産していって欲しいと思います。
○パルマの攻撃とミランの守備
続いて、パルマの攻撃についても少しだけ触れておきたいと思います。
パルマの主な攻撃サイドは左。その際、アンカーのクルティッチが最終ラインに下がり、左CBのガリオーロが前に出てボールを運んでいこうとする形が散見されました。

――GKセーペ(1)がボールを持っている場面。ここで、クルティッチ(14)が最終ラインに下がり、ガリオーロがサイドに出る。それに応じてSBペッセーラ(3)が前に上がり、ジェルヴィーニョ(27)のポジションは中央寄りに
同時に、右インサイドハーフのクツカが高めの位置を取ることでマーカーのケシエを押し下げつつ、左インサイドハーフのエルナニは下がり目でボールを引き出してベナセルを前に引き出す、と。こうすることで中盤にスペースを作り出し、そのスペースを中央に絞ったジェルヴィーニョ等が使って突破を図るというのがパルマの狙いだったのかぁと。

――例えばこの場面。ボールを受けたクルティッチからエルナニ、その後サイドでフリーのガリオーロへとパスが通る。そこへはサレマが対応

――その後の場面。ガリオーロから前線のペッレに楔のパスが入り、ペッレはワンタッチで中央フリーのジェルヴィーニョへ。ケシエ(79)は前線に飛び出したクツカへの対応により最終ラインに入っており、ジェルヴィーニョへの対応に少し遅れる。その間にジェルヴィーニョは右サイドに展開し、最終的にパルマはクロスから惜しいチャンスを作り出した
しかしながら、こういったパルマの攻撃については中心となるべきジェルヴィーニョの不調や、ミランのダブルボランチや2列目の素早いプレスバックによってそんなに上手くいかず。全体としてチャンスの量は少ないものだったかと。
また、ミランは注意すべきカウンターの局面においてもカルルがジェルヴィーニョとのスピード対決に互角に渡り合いつつ、またチームとしてもしっかりラインを取ってオフサイドに追いやるなどして対抗。キッチリと封じ込めていきました。
ところで、カルルはポゼッションの局面においてまだおぼつかなさが散見されるものの、状況判断能力は悪くないと思いますし、このまま試合をこなしていくにつれて足元の技術も成長していくんじゃないかと楽観視しています。ですので、期待の成長枠として見守っていきたいなぁと。
○2桁ゴール達成
さて。試合内容に関してですが、1点目の後もミランが優勢。しかし、崩しの局面やカウンターの場面でテオやイブラにミスが目立ち、チャンスを中々ものにすることができません。
しかし44分、再三チャンスを迎えていたテオとイブラがここでも絡み、最後は前線に上がったケシエが流し込んでミランが追加点を獲得しました。
ケシエはこのゴールで2桁得点を達成。ミランの中盤登録の選手で、30試合までに2桁ゴールを記録したのはカカにまで遡るそうです。
PKによるゴールこそ多いものの、守備的なポジション・役割でこの成績は素晴らしいですし、怪我もせずフル稼働してくれる本当に有り難い選手ですね。
そんなわけで、前半は0-2で終了。もっと取れてもおかしくはない展開でしたが、それでも上々の結果で後半を迎えました。
○パルマの放り込み
後半、パルマは不振のジェルヴィーニョに代えてコルネリウスを投入し、システムを4-4-2に変更。ターゲットマンを前線に2人並べ、よりロングボールとクロスを重視した攻撃に切り替えます。

――後半のパルマ、基本フォーメーション
これ、ミランにとっては厄介な展開でした。トモリは自陣での空中戦に関しては秀でているわけではないですし(逆にロマニョーリはこの手のプレーに強い)、カルルも自陣での空中戦に身長・ポジショニングの両面で不安を見せることがあるため、パルマに押し込まれた時にどうなるかなぁと。

――例えばこの場面。中央でボールを受けたデニス・マンから右サイドのコンティにボールが渡る。その際、エリア前には2トップのコルネリウス(11)とペッレの他に、ファーサイドには屈強なクツカが構える形が多くなる

――その後の場面。コンティがファーサイドに滞空時間の長いクロスを送る。ここでは、クツカがカルルとの競り合いを制し、ボールをエリア内中央に折り返す。そこからパルマがシュートを連発するも、ドンナルンマのファインセーブに防がれた
そんな中60分。イブラがレッドカードを貰って一発退場。ミランは自陣への撤退を余儀なくされます
そして66分。パルマはペッレに放り込み、その落としをガリオーロが流し込んでパルマが一点を返す、と。多くのミラニスタが恐れていたであろう展開となりました。
ちなみにイブラにカードが出されたこの判定、イブラがマレスカ主審に対し汚い言葉で抗議したことが原因のようですが、報道によればマレスカ主審の聞き間違いが濃厚のようです。
まぁ僕のポリシーとして「明白な誤審以外に文句は言わない」というのがあって、今回は当人にどんなやりとりや背景があったかは定かではありませんので、これ以上の言及は止めておきます。
○冷静な采配
1点差、それも数的不利な状況という事で、70分過ぎからミランは守りの態勢に入ります。
まずは72分。ベナセルとサレマに代え、メイテとダロトを投入。
相手の放り込みに対してベナセルは有効ではないですし、ここはフィジカルと身長のあるメイテの方が効果的という判断でしょうね。
ダロトは体力的な面での交代でもあり、またこれによりシステムを5-3-1に変更します。
それまではパルマの2トップ+クツカに対し、ミランは同数で対応せざるを得ない状況(両CB+片側SB)が何度かあったわけですが、最終ラインの枚数を増やすことでより手堅くエリア内で対応していく、と。

――例えばこの場面。コンティからロングボールが入り、前線のペッレにボールが渡る。

――その後の場面。ボールはペッレからコルネリウスへ。しかし、ここでミランは人数をかけて囲い込む。コルネリウスはメイテ(18)に体をぶつけられバランスを崩し、最後は強引にシュートを放つも枠外へ。
続く77分。チャルハノールとカルルに代え、クルニッチとガッビアを投入するミラン。
カルルよりもガッビアの方が放り込みに強いですし、クルニッチも体力的・フィジカル的に妥当な交代でしょうね。
で、最後に84分。イブラ退場後に1トップに入っていたレビッチに代わり、レオンを投入と。
単純に1トップの選択肢で言えばマンジュキッチもあり得ましたが、こうした劣勢な状況の中、数少ないカウンターの機会にボールを運んでいける選手となると、スピードとフィジカル、テクニックを兼備したレオンが最適です。
そして94分。ダロトのボール奪取からカウンターを開始したミランは、最後にレオンが決めて試合を決定づけることに成功。
イブラ一発退場という予期せぬ事態の中、冷静な采配でゲームをコントロールしたピオリ監督、そして最後まで集中してプレーし続けたピッチ上の選手たちはいずれも素晴らしかったと思います。
パルマ1-3ミラン
雑感
ミランが何だかんだで勝利を収めることに成功しました。
前半の内容的にもっと楽に勝つべき試合であったと思いますし、心臓に悪いこういう試合はできれば勘弁願いたいものですが、まぁ勝ったので結果オーライですかね。
それに試合内容に関していえば、久々にチームとして機能するメンバーで挑み、案の定手応えは十分に掴めたのではないかと思います。
これでイブラ、テオ、チャルハノール辺りの一部主力選手のコンディションが上がってくれば申し分ないですし、そうなれば中下位クラブとの対戦で不覚を取る確率はめっきりと低くなるはずです。
そして懸念の右SBも、間もなくカラブリアが復帰という事で一安心ですし、勝負の終盤戦に向けて完全体ミランが仕上がる日もそう遠くなさそうです(次節はイブラが欠場してしまいますが…)。
さて。混戦模様が続くCL権争いですが、最もポイントでリードしているのは2位ミランです。
このまま勝利を続け、CLの切符を確実に手にしてもらいたいと思います。
Fotza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。
まずはこの試合におけるミランの攻撃について。
この試合のミランは、サイド偏重の攻撃ではなく、積極的に中央を使っていきました。
具体的に。ミランは主に最終ライン3枚(ケアー、トモリ、カルル)とダブルボランチ(ベナセル、ケシエ)の組み合わせにより後方でパスを回し、パルマ守備陣を前に誘導。
一方のパルマはCFのペッレがボランチ(主にベナセル)をケアしながらCBにチェック、また両インサイドハーフ(特にクツカ)が前に出てミランのCBないしボランチにプレスをかけにくるため、その後ろが空きやすいと。

――パルマの守備について、ここではトモリ(23)がボールを持った場面。デニス・マン(98)がテオ(19)にマンツーマン気味に対応。そのため、トモリに対しては基本的にクツカ(33)が対応する
そこで、ミランは相手アンカーの脇にチャルハノールやイブラを位置させ、そこでボールを受けさせようとする狙いが見られました。

――例えばこの場面。1トップのペッレ(9)とクツカの間にポジショニングしたベナセル(4)がトモリからボールを貰い、そのまま左前方にドリブル。これにより相手の守備を引き付けた後、テオにボールを渡し、そのテオはトモリにバックパス

――その後の場面。先ほどの一連の流れでパルマ守備陣は全体的にサイドに寄せられ、陣形が乱れた状態に。そこで、トモリからボールを受けたケアー(24)は、右前方のライン間にポジショニングするイブラ(11)に縦パスを通した。
悪い時のミランっていうのはサイド偏重のビルドアップになりがちで、例えば「CBからサイドに張るSBにボールを渡すも、そこからの展開に苦慮する」というのがここ最近のお決まりでしたが、今回のように中央を使えれば話は別です。
この点についてはやはりベナセルの復帰が大きいと思いますし、安定したパス技術とポジショニングの相棒ケシエと協同して相手を動かしながら、隙あらば縦パスをズバズバ入れていきました。
パルマとしてはデニス・マンをテオにマンツーマン気味に付かせ、テオからの展開を封じようとしたのでしょうが、これによりクツカの守備範囲が広くなりますし、この試合のミランは中央を使う意識が高かったため裏目に出ましたかね。
そして中央が使えれば必然的にサイドにもスペースができますし、サイドにスペースができればテオが活きると。
テオは正直言って組み立ては上手くないですし、後方のビルドアップに深く関与させればボロを出しやすいわけですが(前節のサンプドリア戦は最悪のケースにしても、これまでにもビルドアップの場面で危ないシーンは頻発していました)、やはり前にスペースがある時の推進力はトップクラスです。
コンディション的にはまだまだ本調子でなく、パスミスやクロスミスは目立ったものの、前節と比べると明らかに活き活きしていました。そして、彼が活きる試合展開になればミランも多くのチャンスを作れますし、実際にこの試合でも前半の内にチャンスを量産していきましたね。
そんなわけでミランは前半8分。レビッチのゴールで早々に先制します。

――1点目のシーンについて。ミランの後方でのパス回しにより、パルマはインサイドハーフのクツカとエルナニ(23)が前に引き寄せられた状態。また、そのエルナニの背後にはチャルハノール(10)がポジショニング。そこで、まずボールホルダーのケアーはサイドのカルル(20)にボールを預ける

――その後の場面。カルルからサレマ(56)、サレマからチャルハノールとボールが動く。そこへはエルナニがプレスバック、またガリオーロ(7番)が前に出てスペースを消しにかかるが、チャルにボールキープされる

――その後の場面。チャルから中央のベナセルにボールが渡る。

――その後の場面。ベナセルが左前方のライン間にいるイブラにパスを通す。その際、同時にテオが外から走り込んでいるため、デニス・マンがそちらの対応に追われ、イブラのチェックに少し遅れた

――その後の場面。ここでボールをキープしたイブラは、中央に侵入したレビッチ(12)に完璧なパスを通す。そのレビッチも見事なターンから強烈なシュートをネットに突き刺した
機能した組織と適切な戦術の下で、それぞれの個が力を発揮した事で生まれた申し分のないゴールといえるのではないかと思います。
○レビッチのパフォーマンス
重要な先制点をマークしたレビッチについてですが、個人的にこの試合のレビッチの戦術的パフォーマンスは非常に高かったと感じていまして、彼の存在のデカさというのを再認識しました。
まずはサイドアタッカーとして。テオのスペース&パスコース作りのため裏に抜けたり、逆に近くに寄ってワンツーの壁役になったりと状況に応じて的確なサポートを見せ、左サイドの崩しに貢献。また、フィジカルを活かした突破も見られました。

――例えばこの場面。ベナセルからテオにボールが渡った際、レビッチも素早くワンツーの壁役としてポジショニング。一方、相手のマン(98)はワンツーを警戒し、レビッチへのパスコースを切るように動く。そこで、テオはレビッチを囮に縦に突破することに成功。

――その後の場面。レビッチはすかさずサイドへ走って対面のコンティ(5)を引き付けながら、テオに中央へのドリブルコースを提供。そのままテオは中央へ浸入し、惜しいチャンスを作り出した。
ブラヒムとかと比べて明らかにテオもやり易そうですし、インテリジェンスの高さという点でもレビッチは素晴らしい選手だと思います。
そして忘れてはいけないのが、ストライカーとしての役割もこなせるという点。特に、この試合のようにイブラが積極的にライン間に下がる場合、彼の代わりに前線に飛び出す選手は不可欠となるわけですが、この点を忠実にこなせるレビッチの存在というのはやはり大きい。
先の得点シーンにおいてもいち早く中央に入り込み、イブラからの見事なパスを見事なターンで受けてゴールを決める見事なプレーを見せてくれましたしね。
ボールロストなどもまだチラホラ見られますが、昨シーズン同様に後半戦に向けて状態を上げていっていると思いますし、この調子でゴールを量産していって欲しいと思います。
○パルマの攻撃とミランの守備
続いて、パルマの攻撃についても少しだけ触れておきたいと思います。
パルマの主な攻撃サイドは左。その際、アンカーのクルティッチが最終ラインに下がり、左CBのガリオーロが前に出てボールを運んでいこうとする形が散見されました。

――GKセーペ(1)がボールを持っている場面。ここで、クルティッチ(14)が最終ラインに下がり、ガリオーロがサイドに出る。それに応じてSBペッセーラ(3)が前に上がり、ジェルヴィーニョ(27)のポジションは中央寄りに
同時に、右インサイドハーフのクツカが高めの位置を取ることでマーカーのケシエを押し下げつつ、左インサイドハーフのエルナニは下がり目でボールを引き出してベナセルを前に引き出す、と。こうすることで中盤にスペースを作り出し、そのスペースを中央に絞ったジェルヴィーニョ等が使って突破を図るというのがパルマの狙いだったのかぁと。

――例えばこの場面。ボールを受けたクルティッチからエルナニ、その後サイドでフリーのガリオーロへとパスが通る。そこへはサレマが対応

――その後の場面。ガリオーロから前線のペッレに楔のパスが入り、ペッレはワンタッチで中央フリーのジェルヴィーニョへ。ケシエ(79)は前線に飛び出したクツカへの対応により最終ラインに入っており、ジェルヴィーニョへの対応に少し遅れる。その間にジェルヴィーニョは右サイドに展開し、最終的にパルマはクロスから惜しいチャンスを作り出した
しかしながら、こういったパルマの攻撃については中心となるべきジェルヴィーニョの不調や、ミランのダブルボランチや2列目の素早いプレスバックによってそんなに上手くいかず。全体としてチャンスの量は少ないものだったかと。
また、ミランは注意すべきカウンターの局面においてもカルルがジェルヴィーニョとのスピード対決に互角に渡り合いつつ、またチームとしてもしっかりラインを取ってオフサイドに追いやるなどして対抗。キッチリと封じ込めていきました。
ところで、カルルはポゼッションの局面においてまだおぼつかなさが散見されるものの、状況判断能力は悪くないと思いますし、このまま試合をこなしていくにつれて足元の技術も成長していくんじゃないかと楽観視しています。ですので、期待の成長枠として見守っていきたいなぁと。
○2桁ゴール達成
さて。試合内容に関してですが、1点目の後もミランが優勢。しかし、崩しの局面やカウンターの場面でテオやイブラにミスが目立ち、チャンスを中々ものにすることができません。
しかし44分、再三チャンスを迎えていたテオとイブラがここでも絡み、最後は前線に上がったケシエが流し込んでミランが追加点を獲得しました。
ケシエはこのゴールで2桁得点を達成。ミランの中盤登録の選手で、30試合までに2桁ゴールを記録したのはカカにまで遡るそうです。
Franck Kessié is the first #ACMilan midfielder to score 10+ goals in the first 30 matches of a Serie A campaign since Kaká in 2008-09.
— MilanData📊 (@acmilandata) April 10, 2021
[via @OptaPaolo] pic.twitter.com/QJ6YqkgAap
PKによるゴールこそ多いものの、守備的なポジション・役割でこの成績は素晴らしいですし、怪我もせずフル稼働してくれる本当に有り難い選手ですね。
そんなわけで、前半は0-2で終了。もっと取れてもおかしくはない展開でしたが、それでも上々の結果で後半を迎えました。
○パルマの放り込み
後半、パルマは不振のジェルヴィーニョに代えてコルネリウスを投入し、システムを4-4-2に変更。ターゲットマンを前線に2人並べ、よりロングボールとクロスを重視した攻撃に切り替えます。

――後半のパルマ、基本フォーメーション
これ、ミランにとっては厄介な展開でした。トモリは自陣での空中戦に関しては秀でているわけではないですし(逆にロマニョーリはこの手のプレーに強い)、カルルも自陣での空中戦に身長・ポジショニングの両面で不安を見せることがあるため、パルマに押し込まれた時にどうなるかなぁと。

――例えばこの場面。中央でボールを受けたデニス・マンから右サイドのコンティにボールが渡る。その際、エリア前には2トップのコルネリウス(11)とペッレの他に、ファーサイドには屈強なクツカが構える形が多くなる

――その後の場面。コンティがファーサイドに滞空時間の長いクロスを送る。ここでは、クツカがカルルとの競り合いを制し、ボールをエリア内中央に折り返す。そこからパルマがシュートを連発するも、ドンナルンマのファインセーブに防がれた
そんな中60分。イブラがレッドカードを貰って一発退場。ミランは自陣への撤退を余儀なくされます
そして66分。パルマはペッレに放り込み、その落としをガリオーロが流し込んでパルマが一点を返す、と。多くのミラニスタが恐れていたであろう展開となりました。
ちなみにイブラにカードが出されたこの判定、イブラがマレスカ主審に対し汚い言葉で抗議したことが原因のようですが、報道によればマレスカ主審の聞き間違いが濃厚のようです。
まぁ僕のポリシーとして「明白な誤審以外に文句は言わない」というのがあって、今回は当人にどんなやりとりや背景があったかは定かではありませんので、これ以上の言及は止めておきます。
○冷静な采配
1点差、それも数的不利な状況という事で、70分過ぎからミランは守りの態勢に入ります。
まずは72分。ベナセルとサレマに代え、メイテとダロトを投入。
相手の放り込みに対してベナセルは有効ではないですし、ここはフィジカルと身長のあるメイテの方が効果的という判断でしょうね。
ダロトは体力的な面での交代でもあり、またこれによりシステムを5-3-1に変更します。
それまではパルマの2トップ+クツカに対し、ミランは同数で対応せざるを得ない状況(両CB+片側SB)が何度かあったわけですが、最終ラインの枚数を増やすことでより手堅くエリア内で対応していく、と。

――例えばこの場面。コンティからロングボールが入り、前線のペッレにボールが渡る。

――その後の場面。ボールはペッレからコルネリウスへ。しかし、ここでミランは人数をかけて囲い込む。コルネリウスはメイテ(18)に体をぶつけられバランスを崩し、最後は強引にシュートを放つも枠外へ。
続く77分。チャルハノールとカルルに代え、クルニッチとガッビアを投入するミラン。
カルルよりもガッビアの方が放り込みに強いですし、クルニッチも体力的・フィジカル的に妥当な交代でしょうね。
で、最後に84分。イブラ退場後に1トップに入っていたレビッチに代わり、レオンを投入と。
単純に1トップの選択肢で言えばマンジュキッチもあり得ましたが、こうした劣勢な状況の中、数少ないカウンターの機会にボールを運んでいける選手となると、スピードとフィジカル、テクニックを兼備したレオンが最適です。
そして94分。ダロトのボール奪取からカウンターを開始したミランは、最後にレオンが決めて試合を決定づけることに成功。
イブラ一発退場という予期せぬ事態の中、冷静な采配でゲームをコントロールしたピオリ監督、そして最後まで集中してプレーし続けたピッチ上の選手たちはいずれも素晴らしかったと思います。
パルマ1-3ミラン
雑感
ミランが何だかんだで勝利を収めることに成功しました。
前半の内容的にもっと楽に勝つべき試合であったと思いますし、心臓に悪いこういう試合はできれば勘弁願いたいものですが、まぁ勝ったので結果オーライですかね。
それに試合内容に関していえば、久々にチームとして機能するメンバーで挑み、案の定手応えは十分に掴めたのではないかと思います。
これでイブラ、テオ、チャルハノール辺りの一部主力選手のコンディションが上がってくれば申し分ないですし、そうなれば中下位クラブとの対戦で不覚を取る確率はめっきりと低くなるはずです。
そして懸念の右SBも、間もなくカラブリアが復帰という事で一安心ですし、勝負の終盤戦に向けて完全体ミランが仕上がる日もそう遠くなさそうです(次節はイブラが欠場してしまいますが…)。
さて。混戦模様が続くCL権争いですが、最もポイントでリードしているのは2位ミランです。
このまま勝利を続け、CLの切符を確実に手にしてもらいたいと思います。
Fotza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。