【シーソーゲーム】フィオレンティーナ対ミラン【2020-21シーズン・セリエA第28節】
スタメン

4-4-2のフィオレンティーナと4-2-3-1のミラン
まずはミランの攻撃についてですが、試合序盤の9分。フィオレンティーナの守備の乱れを突き、イブラが裏抜けからゴールネットを揺らして先制点を奪います。
そして、この試合のミランは、左サイドからの組み立て・崩しというシーンが非常に散見されました。

――参考:この試合におけるミランの攻撃サイド(『WhoScored』より)。

――参考2:この試合におけるミラン選手の平均ポジション
4-4-2で綺麗にラインを作るフィオに対し、ミランはテオを積極的に使って比較的空いている(左)サイドから攻めこむ形が基本です。その際、何度かケアーによる対角線のロングフィードなどで素早くボールを送り、チャンスを演出しようとしていきます。
そうなると、左サイドで如何に崩していくかっていうのが重要になってくるわけですが、この点については十分なパフォーマンスとまではいかなかったかなと(特に前半)。
問題としては、ブラヒム(この試合では左サイドハーフ起用)とチャルハノールの関係性だったり、ブラヒムとテオの連携が成熟されてなかったりで、テオからの展開に窮する場面というのが散見された点でしょうか。

――テオにボールが渡った際、ブラヒム(21)・チャルハノール(10)等とどのように崩していくか
チャルハノールは主に左寄りでのプレーを好むため、彼が左に流れた場合にブラヒムと被ってしまう場面が結構ありますし、またブラヒムもプレーの方向性が基本的に中央なので、サイドの深い位置に走り込む動きというのが中々見られません(レビッチとかレオンだったら、状況に応じてサイドに流れて起点を作り、そこから仕掛けるなどすると思うんですけどね)
両者ともにこの試合では結果を残してくれてはいますが、ブラヒムが今後も左サイドで起用される場合、周囲(テオやチャル)との関係性の向上はもう少し必要かなぁと。
間違いなく技術の高い良い選手ですし、上手く組み込んで欲しいですね。
以下、この試合で良いと感じた左サイドの崩し一つを挙げておきます。

――ケシエが最終ラインに下がり、それに応じてサイドに開いたトモリが前に持ち運び、テオを押し上げる。同時に、ブラヒムはサイドに流れる動きを見せ、中央にスペースを作る。その後、トモリは中央のチャルハノールに縦パスを通した(ただし、この後チャルとブラヒムの連携ミスによりボールロスト)
○トナーリについて
先述の通り、この試合のチャンスの多くは左サイドから生じましたが、序盤にはトナーリの前線への飛び出しからチャンスを作り、CKを獲得しています。

――このシーンでは、サレマ(56)の下がる動きに付いてきたカセレス(22)の背後にイブラ(11)が入り込み、ダロト(5)からロングボールを引き出す。トナーリはケシエ(79)よりも高い位置を取るのが基本

――その後の場面。ロングボールを収めたイブラを見て、トナーリが前線に飛び出しパスを引き出す。その後、CKを獲得した
現時点でトナーリという選手を評価するのは色々な意味で難しいと思っていまして、ここでも曖昧な表現に留めさせていただきますが、今回のように積極的な飛び出しでチャンスに絡んでいくスタイルを突き詰めていくというのは一つの育成方針としてアリだと思っています。
その場合はゴール前やライン間での精度を磨く必要がありますが、運動量は豊富ですし、スペースを突く意識もありますから、今後インクルソーレ的な選手として大成する可能性はあるんじゃないかと。
買取が不透明なブラヒムやメイテとは違い、実質的な買取義務付きレンタルで加入したトナーリが来期以降もミランでプレーするのはほぼ確実ですから、それだけ彼に懸かる期待というのも否が応でも大きくなります。
まだまだ若いとはいえ、そろそろ明確な強みというのを発揮していって欲しいですし、できれば今シーズン中にも印象的な活躍を見せて欲しいと思います。
○フィオレンティーナの攻撃
フィオレンティーナの攻撃についても少しだけ触れていきます。
フィオは極力リスクを避ける攻撃がメインだったかなと。組み立てに関してもロングボールがメインで、そのこぼれ球を拾って攻めていこうとする形が良く見られました。
そのため、ミランとしてはハイプレスからの(ショート)カウンターが中々出来ないと。フィオはゴールキック時もロングキックが多かったですしね。
また、フィオの守備はハイプレスとブロックのミックス。特にハイプレス(ネガティブトランジション)時にボールを奪い、そこから速攻に転じるシーンというのもありました。
とは言え、全体的なチャンスの量でいえば少なく、ミランとしては比較的上手く守れていたのではないかと。
具体的に、相手のキープレーヤーの1人であるヴラホビッチには主にトモリが対応。ヴラホビッチへのロングボールを弾き返すだけでなく、オープンスペースでも持ち前のフィジカルでしっかりと対応していきます。

――例えばこの場面。テオがブラヒムとのワンツー突破を図るも、失敗してボールロスト

――その後の場面。こぼれ球を拾ったプルガル(78)が素早く前線のヴラホビッチ(9)にボールを送り、カウンターを目論む。しかし、ここでトモリがしっかりと対応し、前進を阻むことに成功した
ヴィオラとしては、カウンター・速攻の起点となるべきヴラホビッチが抑えられたのは相当痛かったのではないかと。
また、比較的自由に動くリベリーに対しては主にケシエ、ケアー辺りが注意深く監視し、スペースを消していきます。(ただ、後半の得点シーンを始め、随所に良いプレーでチャンスを演出されました。)
そんなこんなでリードを保っていきたいミランでしたが、17分。プルガルに直接FKを決められて同点に追いつかれました。
このFKを与えてしまったのはダロトですが、彼はそのシーンだけでなく後半にも自陣深くでファールしてイエローを貰っており、守備の危うさというのを露呈してしまった印象です。
また、得意なはずの攻撃面でも精度の低いクロスを見せるなど、どうにも信用しかねるパフォーマンスでした。
左右両サイドの控えとして計算されているため、試合毎に起用サイドがコロコロ変わる難しい役目を担っているのは確かですが、今のままなら右はカルルを優先的に起用しても良いんじゃないかなぁと思います。
○レジスタの帰還
1-1で迎えた後半。序盤は左サイドでボールロストが目立ち流れを掴めなかったミランは、51分にリベリに決められ逆転を許してしまいます
しかし57分、CKからブラヒムが決めて再び同点に。セットプレー守備に弱いチーム同士の対戦ということで、この試合ではお互いにセットプレーから点を分け合う展開となりました。
続く58分、ミランは遂に復帰したベナセルを投入。精度の高い中長距離のパスも出せるベナセルの投入により、一気にギアを上げていきます。

――例えばこの場面。ミランによるCKがクリアされた後の状況。ベナセルは右サイドに正確なロングボールを送り込み、一気にゴール前のイブラにボールを供給

――その後の場面。CKの流れで前線に残っていたケアー(24)に、イブラがクロスを送る。惜しくも合わなかったが、決定機に繋がってもおかしくなかったシーン
また、60分過ぎ辺りからチャルハノールがブラヒムとポジションを入れ替え、左サイドで起点を作るようになります。これにより攻撃の形が整理され、テオの上がりもより活かせるようになりました。

――例えばこの場面。サイドに流れたチャルハノールに、ベナセルからパスが送られる。その後、チャルは中にドリブルし、一方で中央のブラヒムはサイドに流れる

――その後の場面。チャルからサイドのブラヒムにボールが渡る。こうした一連の流れでフィオレンティーナ守備陣はポジションと目線を動かされ、エリア中央にスペースが生じる。そこへテオ(19)が飛び込み、ブラヒムからのクロスをダイレクトで合わせて決定機を作り出した
こうして完全に主導権を握ったミランは72分。トモリのインターセプトから素早くパスを繋ぎ、最後はチャルハノールが決めて勝ち越しに成功しました。
トモリの素晴らしい縦への反応が勝ち越し弾の起点となったのは間違いないわけですが、こうした行け行けムードを作り出したベナセルの投入というのはやはり大きかったのではないかと。
彼は今のミランにとって代えの利かない別格の選手の1人だと思いますし、彼の復帰はリーグ終盤戦に向けて本当にデカいですね。
今後は戦線離脱がないことを願うばかりです。
勝ち越しとなる3点目を奪ったミランはその後、これ以上の失点を許すことなく、無事に試合終了しました。
フィオレンティーナ2-3ミラン
雑感
逆転された時はどうなることかと思われましたが、何とかミランが勝利を収めました。
これにより、ミランの勝ち点は59。1試合未消化の5位ナポリの勝ち点が53ですので、今回の勝利が如何に大きいものであったかがわかります。
また、スペツィア~ウディネーゼ戦辺りの時期に比べ、チームパフォーマンスは底を脱した感がありますし、イブラとベナセルを筆頭に離脱者も戻ってきた(戻ってきそうな)ため、これからまたチームとしての状態も上がっていくんじゃないかと。日程も比較的楽になりましたしね。
個人的に、最近の試合内容には小さくない不満を感じていましたが、今後はまた楽しい試合が観られそうでワクワクします。
さて。今シーズンも残り10試合となりました。念願のCL権確保に向け、チームには最善の準備をお願いしたいところです。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。