【求められる対応力】ミラン対インテル【2020-21シーズン・セリエA第23節】
多分、この記事を投稿する頃にはローマ戦まで3時間を切ってます(笑)
スタメン

ミラン:4-2-3-1(『Google試合速報』より)

インテル:3-5-2(『Google試合速報』より)
開始早々の5分。ルカクのクロスにラウタロが合わせてネットを揺らし、インテルが先制に成功しました。

――1点目の流れについて。ハキミが自陣深い位置まで下がり、シュクリニアルからボールを引き出す。そこにはテオが対応。また、同じく下がるバレッラにはケシエが付いていき、周囲の選手もそれぞれマークに付く

――その後の場面。テオの寄せが間に合わず、ハキミは前方の様子を見た上でロングパスを送る

――その後、前方でロングボールを受けたルカクが対面のロマニョーリを剥がし、ドリブルで一気にペナルティエリア内に侵入していく

――その後の場面。最初のピンチはケアーの素晴らしいカバーリングで防いだものの、こぼれ球をルカクに拾われ、クロス。それにラウタロが頭で合わせてネットを揺らした
インテル側としては、「ルカク対ロマニョーリ」の状況を作れれば優位に立ちやすいというのがこれまでの直接対決から既に明らかですし、この得点シーンにおいてもしっかりとそのマッチアップを活かしています。
右サイドからビルドアップを始める際、ハキミとバレッラを下がらせて対面のテオとケシエを食いつかせる。そして、それによって生じた前方のスペースにロングボールを入れ、そこでルカクにボールを収めてもらい速攻に繋げる、と。
これ、別に対ミラン用の特別な策というわけでもないでしょうが、とかくミラン相手には実に効果的です。実際インテルの2点目も、同様の流れから生まれています。

――2点目の流れについて。右サイドの自陣深くでボールを受けたシュクリニアル(水色)は、下がってきたバレッラにパスを送る。

――その後の場面。バレッラへの対応に少し遅れるケシエ。下がるハキミにはテオが対応。その間にバレッラは前を向き、前方のルカクに狙いを付けてロングパス

――その後、ルカクがボールを収める。ロマニョーリによりプレーは制限されているものの、ルカクが味方の上がりを待つ時間を作り出す

――その後の場面。ルカクは上がってきたハキミにボールを落とし、ハキミがそれを受ける。

――その後、ハキミが同サイドをぶち抜き、ロマニョーリ、テオ、トナーリの3人を置き去りに(赤)。そこから中央へボールを展開し、華麗な崩しから最後はラウタロが2点目を獲得した
これらに関しては、今のミランがハイプレスを採用し、かつロマニョーリを起用してる以上避けられないリスクです。
オープンスペースでの対応に優れているとは言えないロマニョーリが、スペースのある状況でルカクを個人でどうにかしろってのは到底無理な話ですし、この点はチーム全体で対処する必要があると思います。しかし、今回は(も)それができなかったと。
例えば、最前線からハイプレスをかけるなら、それこそ極限までプレス強度を上げてルカクへの正確な(ロング)ボールを徹底的に妨害することが求められるはずなのですが、上記の得点シーンにおいては割とあっさりボールを通されてしまっていますよね。
正直なところ、現在のチーム戦術下(ハイラインハイプレス)においてロマニョーリの能力に限界を感じるのは今に始まったことではないと思いますし、この戦術でインテルレベル相手に継続的に勝つには個のレベルアップを図る(より戦術に適した選手を入れる)か、もしくは先述の通りチームとして卓越したパフォーマンスを披露するしかないかなと。後者については、この試合後半の最初の数分間に見せたプレーが好例ですね。
○インテルの3点目
続いて。この試合に見られたインテルのビルドアップ時のもう一つの特徴として、左インサイドハーフのエリクセンが下がり、アンカーのブロゾビッチと横並びの関係になる形が非常に散見されました。
一方で、その際に右インサイドハーフのバレッラは2人に比べ高い位置にポジショニングするのが基本。これによって以下のような状況が生まれます。

――例えばこの場面。ボールホルダーはハンダノビッチ。下がるエリクセンに対し、付いていくトナーリ。一方、バレッラはこの位置をキープ

――その後の場面。エリクセンとトナーリの動きにより生じた中盤のスペースにラウタロが下がり、ハンダノビッチからボールを引き出す。ここでケシエはバレッラを監視しているため、ラウタロにはマーク担当であるケアーが前に出て対応

――その後の場面。ラウタロがケアーをあっさりと躱し、ドリブルで持ち運んで速攻に繋げる。その後、ケアーが無理にラウタロを止めてイエローカードとなった
下がるエリクセンにはトナーリが対応するわけですが、これによりトナーリとケシエの距離が大きく空きやすくなってしまいます。そのため、その間のスペースを使われるなどしてインテルに縦に速い攻撃を許すシーンが見られました。
そして、3点目はこのスペースを使う形から生まれています。

――3点目の流れについて。右サイドでハイプレスをかけ、ボール奪取を狙うミラン。そこで、インテルはペリシッチがワンタッチで中央にロングパスを出す

――その後の場面。ボールは手薄な中盤の中央に落ち、そこにはケシエ1人に対しルカクとバレッラがポジショニングしている。

――その後の場面。ルカクがボールを拾い、ドリブルで敵陣に侵入。そのまま強烈なシュートを突き刺した
インテルはこのように、素早く前線に当てて2トップ+バレッラ、ハキミ等の個を活かした速攻を得意としていますし、ミランとしてはそういう状況に持ち込まれたら厳しい、と。晒された状態では、ロマニョーリは元より、流石のケアーでも彼ら相手じゃ守り切れませんしね。
○ミランの拙攻
続いて、ミランの拙攻(ポゼッション)についても軽く触れていきたいと思います。
ミランはビルドアップ時、カラブリアが最終ラインに入ってロマニョーリ、ケアーとボールを回し、インテルの2トップに対し数的優位に立とうとする形が基本です。
で、2トップの横にボールを持ち出したカラブリアから起点となるパスを出そうとするわけですが、中々上手くいきません。

――例えばこの場面。ケアーからカラブリアにボールが渡る。対するインテルは5-3-2でセットし、カラブリアに対しては左インサイドハーフのエリクセンが前に出て対応する形が基本

――その後の場面。サイドに張るサレマがカラブリアからボールを引き出す。その際、トナーリは前に出たエリクセンの背後のスペースに侵入し、サレマからのパスに備える

――その後の場面。サレマからワンタッチでボールを受けたトナーリは、ワンタッチで前方にロングボールを飛ばす

――その後の場面。しかし、前方にはイブラ1人だけで、サイドの深い位置を突く動きもない。そこでインテルはCB2人で対応し、悠々とボールを回収した
特に序盤は、チャルハノールが左サイドにいたこともあり、右サイドで詰まって結果的にボールロストというシーンが散見されました。
この点については、縦に抜ける動きが足りなかったというのが問題かなと。上記の場面のように、カラブリアが最終ラインからボールを運び、サレマがサイドに張ってボールを引き出す。そして前に出てきたエリクセンの背後のスペースをトナーリ(もしくはチャルハノール)が使おうとする形がよく見られたわけですが、その際に前方にタイミング良く飛び出す選手がいないため深さが取れず、詰まってしまうと。
チャルハノールが右サイドでボールを運ぶ際は、トナーリが何度か前線に飛び出そうとしていましたが、これがどこまで意図された攻撃だったのかは疑問です。
左サイドについても、テオがやけに高い位置取りをすることが多かったり、レビッチが不調だったりでほとんど上手くいかずと。
インテルがラインを下げて守っていたこともあり、ミランとしては何度か敵陣深くまでボールを運んでシュートチャンスにまで持っていくシーンはありましたが、決定機にまでは中々至らず。
素晴らしい立ち上がりを見せた後半序盤こそ決定機を複数作りましたが、ハンダノビッチに尽く阻まれ、お返しに反撃の2失点目を喫して万事休す、と。試合全体としては拙攻に終わった印象です。
良い時のミランの攻撃っていうのはベナセル、チャルハノール、それとイブラ辺りが流動的にポジションを変え、周囲がそれに連動することで相手の守備の基準点をずらしていけたと思うのですが…。現在はチャルハノールが低調なパフォーマンス、ベナセルは欠場中という事で、そういった強みが全く発揮されていないように感じます。
そして、相手のマークをずらし、スペースを作るといったことが中々できないので縦パスも入らないですし、イブラへのロングパスからの速攻も上手く決まらない。加えてこの試合に関していえば、インテル相手にハイプレスがほとんどハマらず、相手がラインを基本的に下げて守ってきたため、得意のカウンター・速攻も封じられました。
というわけで、こんな現状だと、攻撃時の形はもっと整理した方が良いように思いますし、そのための方法の一つとして、システム変更という選択肢はありますよね。
まぁ出来れば3バックとかにチャレンジしてみて欲しいですけど、あまり大胆に変えるっていうのはなさそうですし、一旦4-4-2に回帰するのが無難でしょうかね。
雑感
正直、僕はスペツィア戦の敗戦後も楽観視していたのですが、その後のベナセルの再離脱(痛すぎる)とインテル戦の大敗、更にはEL2試合での体たらくにより流石に危機感を覚え始めました。
今のトナーリじゃベナセルの代役は荷が重いですし、チームコンディションの低下+対戦相手のミラン研究により、ストロングポイントだったハイプレス(からのカウンター)も機能しなくなりつつあります。よって、ミランとしては攻守ともに多少なりとも形を変えていく必要に迫られているんじゃないかと。
さて。今節の相手は4位ローマという事で、この直接対決を落とすと順位的にも精神的にも尋常じゃない痛手を負うことになります。
ここが正念場ですし、もうどんな形でもいいので勝って欲しいと強く願います。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。
※前回の記事でいただいたコメントへの返信は後ほど必ず行います。遅れてしまい本当に申し訳ないです。