【貫禄のドッピエッタ】カリアリ対ミラン【2020-21シーズン・セリエA第18節】
スタメン

4-3-2-1のカリアリと4-2-3-1のミラン(『SofaScore』)
今回は、いつものような90分全体のレビューではなく、試合の中で気になった点をピックアップして言及するに止めさせてもらいます。
○ハウゲの不振
まずは、この試合で左サイドハーフとして先発したハウゲについてです。これはツイッター上でも言及させていただいたんですけどね。
前提として、右サイドに守備的なアタッカー(カスティジェホ)を置いている以上、左サイドハーフにはより突破力が求められます。
そして、普段はレビッチもしくはレオンがその役割を担い、背後のテオと協力して攻撃時に(特にカウンターにおいて)驚異的な存在感を見せるわけですが、この試合のハウゲは十分なパフォーマンスを発揮できず、割と早い時間に交代させられています。
セリエAに来て半年ちょっとのハウゲが、このリーグ特有の守備に苦戦するというのは仕方ないことです。プレッシャーを受けながら後ろ向きでボールを貰った時や、ライン間でのプレーに関し、ミスが目立つのは許容範囲だと思います。
こういった点は文字通り時間の問題であって、時間と共にリーグの特長(スペースの少なさ)というものを感覚的に理解し、適応していけるのではないかと。
しかしながら、思い通りプレーできないためか、最近のハウゲは消極的なプレーが目立つようになった印象です。
ドリブルを仕掛けられそうな状況でもいち早くパスを選択するなど、ハウゲの思い切りの良いプレーがあまり見られなくなったように感じます。
それこそ同期のブラヒムなんかは、パスミスや判断ミスでボールロストするシーンこそ少なくないですが、それでめげることなく積極的にライン間でボールを引き出しそこからドリブルで持ち運ぶ事でチャンスを演出し、この試合でも先制点の獲得に大きく貢献しています。
ハウゲだって前を向き、ドリブルで仕掛けたときの期待感はやはり非常に大きいですし、実際にそれがセリエAでも通用するシーンは散見されるだけに、彼にも自信を持って積極的に取り組んで欲しいと思います。

――例えばこのカウンターの場面。ケシエからボールを受けたハウゲが、そのままドリブルでペナルティエリア手前まで侵入していく

――対面のDFをギリギリまで引き付け、裏に抜けたイブラにパスを通し、決定機を演出した
○ブラヒムの活躍
続いては、先に少し触れたブラヒムについてです。
この試合でもチャルハノールに代わってトップ下で先発出場し、上記の通り先制点に繋がるPKの獲得に貢献しています。

――PK獲得のシーンについて。下がってボールを受けたブラヒムが近くのダンカンを躱して前を向く

――ブラヒムがそのまま敵陣深くまでドリブルで運ぶ

――その後、ブラヒムは前方のイブラにスルーパス。その際、イブラはパスコース上のゴディンを軽く押すことで体勢を崩させ、インターセプトを妨害

――その後、イブラはエリア内で22番に倒されPKを獲得した
イブラヒモビッチが復帰を果たしたことで、今後トップ下のブラヒムにとってはイブラとの関係性が非常に重要になってくるわけですが、この点に関しては先のシーンにも見られるように、中々良い感じになってきたように思われます。
以下にもう一つ例を挙げます。

――右サイド。イブラがCBゴディンを引き連れながら下がってカラブリアからボールを引き出し、ワンタッチでブラヒムに落とす

――その後、ブラヒムはCBの空けたスペースにワンタッチでスルーパスを出し、カスティジェホを走らせた
また、守備に関しても、相手アンカーをマークしながらCB(主にゴディン)にプレスをかける役割を丁寧に遂行していましたし、攻守ともに安定したパフォーマンスを発揮できているように思われます。
新しい環境・クラブで堂々たるプレーを披露していますし、やはりマドリーブランドの凄さというのを再認識させられますね。
チャルハノールがコロナにより離脱を余儀なくされた以上、ミランとしてはトップ下ブラヒムに懸かる期待が大きくなりますし、是非ともこの調子で成長を遂げて欲しいと思います。
○貫禄のドッピエッタ
そしてこの試合については、やはり貫禄のドッピエッタをマークしたイブラヒモビッチにも触れないわけにいきません。
先のPK獲得のシーンについては、ゴディンの背中(肩辺り?)を小突いて体勢を崩させ、ブラヒムのスルーパスをカットさせないようにするなど、狡猾なプレーを披露(もちろん褒め言葉です)。
その後、以前は「ケシエにPKを譲る」と言いつつも、今回はちゃっかりと自分がPKを蹴って見事に先制点をマークしました(笑)
そして以下が2点目です。

――カラブリアがボールを持った場面。ここでは対面のダンカンがサイドに張るブラヒムを優先して前に出られず、カラブリアに時間とスペースがある状況

――その後の場面。カラブリアは前方の状況をしっかりと把握してから、イブラへのロングボールを選択。ペドロが寄せに行くが間に合わず

――その後、ボールはイブラに完璧に通り、そのままイブラが正確なワンタッチシュートでネットを揺らした
DFに押されても物ともしないイブラのフィジカル、そして冷静なシュートは流石の一言です。
また、ここではカラブリアのロングパスも素晴らしいものがありました。
前回のマッチレポート記事でも、カラブリアのロングパスからイブラがシュートチャンスを迎えたシーンを取り上げましたが、この2人の呼吸はだいぶ合っているように感じます。
また、それらに限らず、カラブリアの中長距離のパスがミランの崩しの起点になるシーンは多く、もはや攻撃面においても欠かせない存在です。
対角線のロングフィードが得意なケアーもそうですが、ポゼッション時はセーフティーなプレーを優先する傾向の強い(ベナセル不在時の)ミランにとって、彼らのロングパスは非常に大きな武器ですね。
○交代選手
最後に。この試合で途中投入された3選手についてそれぞれ言及させてもらいたいと思います。
まずはカルル。大事を取って休んだケアーに代わり、後半早々に投入されましたが、これまた積極的なプレーを披露。
それに関連し、以下のシーンを取り上げます。

――カルルがボールを持った場面。まずは体をサイドのカラブリアに向けることでパスを相手に予測させ、ダンカンをカラブリアの方に引き付ける

――その後、カルルは中央方向へ切り返してボールキープし、守備陣の意識を自分に向けさせる

――その後、カルルはペドロの背後で動くトナーリにパスを通し、プレスを突破した
この後、トナーリがロングパスをミスしてチャンスがフイにはなりましたが、カルルの非常に冷静なプレーだったのではないかと。
インタビューでの発言などを見てもカルルの強心臓ぶりが窺えますが、トップチーム初経験となるシーズン、それも新加入クラブで20歳の若手DFがこれほど落ち着いたプレーを披露できるのは非常に珍しいように感じます。
こういう(良い意味で)ふてぶてしい選手は高確率で伸びると思いますし、今後も積極的に出番を与えて欲しい選手です。
続いてサレマについて。1カ月近くの離脱期間を経て待望の復帰戦となりましたが、66分に投入されて74分に退場するまさかの展開に。
サレマの良さが攻守にアグレッシブな所にあるとはいえ、いくらなんでもハジケ過ぎでしたね。
この試合はともかく、次のアタランタ戦にサレマがいないのはかなり厳しいですし、彼には右サイドハーフのレギュラーとしての自覚を持っていただきたい所です。
試合後にピオーリ監督がサレマについて擁護していたので今回は大丈夫だとは思いますが、こういう事で指揮官の信頼を失いかねませんし、ミランの右サイドハーフは層が薄いので…。ホントに頼みます。
次に、新加入選手のメイテについて。72分に投入され、ミランデビューとなった彼ですが、先述のサレマ退場によりいきなり10人で戦うハメになりました。
しかしながらその中で、フィジカルの強さや推進力といった持ち味を発揮し、チームの無失点に貢献。上々のデビューになったのではないかと感じます。
個人的には彼のパフォーマンスにそこまで驚きはありませんし、普通にやれると思っているので、今後の活躍に大いに期待します。
最後に。4人目の交代選手となったコンティについては、次回の記事で言及したいと思います。
パルマへの移籍が決まりましたが、新天地では怪我なく頑張ってほしいですね。
雑感
ミランが0-2で勝利を収めました。
今節の勝利により、CL圏内となる4位までと勝ち点差「9」に広げることに成功。
離脱者が止まらない中、極めて大きな勝利だったように感じます。
次節はいよいよ前半戦最後の試合、相手はあのアタランタです。
約1年前に屈辱の敗戦を喫した相手であり、そのリベンジが未だに達成されていませんから、ここで何としても雪辱を果たしたいところです。
引き続き離脱者が多いため、極めて難しい試合になること必至ですが、イブラの復帰を筆頭にポジティブな要素も多くあります。期待していきましょう。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。