【重要な勝利】ミラン対トリノ【2020-21シーズン・セリエA第17節】
スタメン

4-2-3-1のミランと3-5-2(3-5-1-1)のトリノ。
この試合も、ミランは前線からの猛プレスにより主導権を握ります。
トリノはあっさりとボールを奪われる事はないものの、ミランのプレスを前にチャンスに繋げることはできないという状況です。
特に序盤はミランがGKシリグにロングボールを蹴らせ、そのボールを拾ってカウンターという形が何度か見られました。
○ミランの守備②~サイドの囲い込み~
それでもトリノが何度かミランのハイプレスを回避し、主に右サイドにボールを展開したわけですが、そこから崩しのフェーズにおいて大苦戦します。
というのも、そこでミランはトリノ側右サイドにコンパクトな陣形を形成し、トリノ攻撃陣を同サイドに押し込めました。

――一例。右WBシンゴがボールを持った場面。コンパクトに守るミラン。ここでシンゴは左インサイドハーフのゴヤクにパス
トリノとしてはサイドチェンジにより、手薄なサイドを突く形が一つの解決策として考えられます。しかし左サイドへの有力な中継地点であるゴヤクに対しては、近くのトナーリやSHのカスティジェホが中に絞って対応し、逆サイドへの展開を阻止します。
また、上記の通りハウゲやブラヒムがプレスバックしているため、バックパスも難しい状況です。

――先ほどの場面のその後について。ボールを受けたゴヤクに対し、ミランは近くのトナーリとブラヒムで挟み込んでボール奪取

――その後の場面。ボールを奪ったブラヒムは近くのカスティジェホに預け、カウンターを開始した
ロングパスにより一気に逆サイドへ展開するという手段も考えられましたが、ミランの選手が近くでプレッシャーをかけていますし、おそらくは技術的な問題もあったため実際には出来ませんでした。
というわけで、同サイドから攻め込もうとするトリノに対し、ミランは複数の選手が近い距離間で相手のボールホルダーを挟むことでボール奪取を連発。そこからカウンターに繋げ、チャンスを量産していきました。

――同様の場面について。右CBイッツォからサイドのシンゴにボールが渡る

――その後の場面。シンゴに対し、対面のテオとプレスバックしたハウゲの2人で挟み込み、ボール奪取。カウンターに繋げた
○ミランのビルドアップと、2得点について
続いては、ミランのビルドアップについて。普段通りカウンター主体の戦術を採ったミランは、基本的にビルドアップ時にはSB(主にカラブリア)を起点に前線へロングボールを蹴り込んでいきます。

――例えばこの場面。守備時5-3-2で守るトリノは、ミランのSBに対して主にインサイドハーフが対応する。ここでボールホルダーのカラブリアは、裏に抜けるレオンにスルーパス。これによりCKを得たミランは、その流れから2点目を獲得した(後述)
ただし、一度ブラヒムが得意な位置(右ハーフスペース)でボールを引き出し、そこから速攻に繋げるシーンがありました。
そして25分、ミランが先制に成功します。

――先制点のシーンについて。サイドでボールを受けたテオが中にドリブルし、敵の注意を引き付けたところでライン間のブラヒムにパス。ブラヒムは裏に抜けるレオンにワンタッチでパスを通し、そのレオンが冷静にゴールを破った
ライン間で恐れずボールを引き出せるのがブラヒムの特長であり魅力だと思うのですが、そこからのパスやドリブルが上手くいかず、ボールロストしてしまうというのが最近の傾向としてありました。
しかしながら、今回の得点シーンではしっかりと周りの状況を見極めて素早く正確なラストパスを出せており、こうしたプレーが継続的に出来れば選手として一皮むけるのではないかと思われます。
また、この得点シーンにおいてはテオの中へのドリブルによる敵DF陣の引き付けがゴールに大きく関与しています。
テオはSBながら、チーム戦術もあってより中央へ進行する意識が高まっているだけに、今回のように中央の狭いスペースでも正確にプレーできるようになると更に選手として破壊力が増しますね。
続く32分。先述の流れで得たCKの流れからブラヒムが見事なドリブル突破でエリア内に侵入し、ベロッティと接触して転倒。それがVAR判定の結果PKとなりました。
そして35分、ケシエがPKをモノにし、ミランが貴重な追加点の獲得に成功します。
是非ともブラヒムにはこの調子で頑張ってもらいたいです。
○前半終盤の攻防
ここまでは文句なしの試合運びとなったミランでしたが、その後はトリノも少し盛り返していきます。
先述のような、ミランのサイドでの囲い込みを避けるため、CBの持ち上がりやバックパスからのサイドチェンジなどでミランのプレスを外していき、打開を図りました。

――例えばこの場面。イッツォからパスを受けたルキッチは、前方の状況を見てバックパスを選択

――その後の場面。バックパスを受けたイッツォはサイドチェンジで右サイドに展開した
それもありミランはいくつかファールを与えてしまい、結果ブラヒム、ロマニョーリ、トナーリが次々とイエローを貰ってしまうという嫌な展開に。
そして42分には、ミランゴール前で得たFKからリカルド・ロドリゲスがポスト直撃のシュートを放つなど、ゴールを脅かしました。
とは言え実際にゴールを破られることはなく、前半を2-0で折り返します。
○後半序盤の攻防
後半序盤はトリノが主にボールを握る展開に。
ミランの堅い守備をこじ開けるため、パスを前後左右に散らしながらミランの守備を動かし、機を窺います。
また、その際はヴェルディがライン間でパスを引き出す形で打開を狙います。

――例えばこの場面。ライン間に侵入したヴェルディがブレーメルからパスを引き出す

――その後の場面。ケシエがすぐさま対応するも、ヴェルディはベロッティにパス。その後、プレスバックしたダロトがベロッティを倒してしまい、トリノがFKを獲得した
ケシエの守備範囲、ケアーのカバーリング共に前半から素晴らしいものがあり、トリノに決定機こそ作らせませんが、ミランにとってあまり良い流れとは言えなかったかなと。
しかも、53分にはトナーリが負傷し、ダロトと交代(カラブリアがボランチに)。続く60分にはブラヒムも足を痛そうにしながらチャルハノールと交代という事で、怪我人続出中のミランに更なる試練が襲いかかります。
○後半中盤・終盤の攻防
決定打に欠けていたトリノは64分、ザザとムッルを投入し、システムを4-3-1-2に変更。攻勢を仕掛けてきます。
対してミランは、サイドチェンジやカウンターなどから打開を図ります。

――例えばこの場面。4-3-1-2でプレスをかけるトリノに対し、ミランはサイドでボールを受けたチャルハノールが鋭いサイドチェンジで逆サイドのダロトに展開

――その後の場面。ダロトに対し左インサイドハーフのリネティが急いでスライドして対応するが、全体のスライドが間に合わず中央にスペースが空く。ダロトがそこへパスを通し、途中からボランチに入ったカラブリアがフリーでボールを受け手速攻に繋げた
しかしながら、良いところでパスが合わなかったりギリギリのところで相手にカットされたりで中々決定機を作ることができません。
一方で守備に関しては、システムの変わった相手に対してもしっかりと対応し、引き続きプレスをかけ続けることでトリノのスムーズなビルドアップを妨害していきます。

――例えばこの場面。レオンにプレスをかけられたリャンコは、横のブレーメルにパス。それと同時に、アンカーをマークしていたチャルハノールがブレーメルに寄せに行き、レオンがカバーに入る

――その後の場面。しっかりとパスコースを制限したミランは、ブレーメルからヴェルディのパスをインターセプトすることに成功した
普段通りとは言え、終盤になっても継続的にプレスをかけ続けることのできるチームの献身性と集中力、そして組織力は流石の一言です。
そして85分。ハウゲに代えてダニエル・マルディーニ、そしてレオンに代わってイブラヒモビッチが投入されます。待望のイブラ復帰です。
試合内容に関しては、トリノが猛攻を仕掛けていくつかシュートチャンスを作りますがドンナルンマとケシエがしっかりとブロック。
ミランもカウンターで応酬しますがゴールは至らず。試合はそのまま2-0で終了。
ミラン2-0トリノ
雑感
前節に久方ぶりの敗戦を喫してしまったミランでしたが、今節はきっちりと勝利を収めることに成功しました。
敗戦のショックをズルズルと引きずらないため、何としても勝利が求められた一戦だっただけに、この勝利は非常に大きいのではないかと。
また、チームパフォーマンスに関しても引き続き安定しています。
これだけの離脱者が出てもなお一定のパフォーマンスを発揮するチームには脱帽ですし、ピオリを中心とするコーチ陣の能力の高さが窺えますね。
続いて。この試合の注目は何といってもイブラヒモビッチの復帰にあったのではないかと。
投入時のスコア状況もあり、今日は試運転という感じでしたが、この苦しい台所事情の中で彼が戻ってきてくれたのは本当に助かります。
ミッドウィークのコッパイタリアは休んでもらって、次節のカリアリ戦から本格復帰して欲しいところですがどうなるか…。イブラの性格的にコッパイタリア出場を直訴しそうですが、ここで無理はして欲しくないんですよね…。
一方、イブラ復帰という喜ばしい事実とは逆に、この試合でもトナーリとブラヒムが負傷交代するというアクシデントが発生してしまいました。
不幸中の幸いというべきか、大怪我も心配されたトナーリが比較的軽い怪我で済んだのというのには一安心ですが、この怪我の連鎖がいつまで続いてしまうのか…。コッパイタリア、ELといったカップ戦も始まる今後の日程を考えると戦々恐々です。
今のミランにとってリーグ戦の結果こそが最重要であることは明白ですから、このチーム状況を考えれば、カップ戦を捨てるという選択も本格的に検討すべきなのではないかと思う今日この頃です。
さて。次節はミッドウィークのコッパイタリア(またしても相手はトリノ)を挟み、カリアリとの一戦を迎えます。
この一戦にも確実に勝利を収めてもらい、再び勢いに乗りたいところです。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。