【才能爆発】ベネヴェント対ミラン【2020-21シーズン・セリエA第15節】

今回はセリエA第15節、ベネヴェント対ミランのマッチレビューを行いたいと思います。

スタメン

【20-21】ベネヴェント対ミラン_スタメン

4-3-2-1のベネヴェントと4-2-3-1のミラン。
(※当記事におけるキャプチャ画像の映像引用元はいずれも『Dazn』より)


ベネヴェントの攻撃とミランの守備

まずはベネヴェントの攻撃(ビルドアップ)について。序盤~中盤のベネヴェントは主に左サイドから組み立てていくわけですが、その際、左インサイドハーフ(イオニタ)がサイドに流れてボールを引き出そうとします。

通常、彼をマークする担当は対面のトナーリになるでしょうが、中央スペースを受け持つトナーリがそのまますぐサイドまで付いていくのは難しいため、基本的にはSBのカラブリアが前に出ていきます。しかし、その場合はカラブリアの裏にカプラーリを走らせ、ボールを受けようというのがベネヴェントの1つの狙いのように見えました。

【20-21】ベネヴェント対ミラン_戦術解説1
――例えばこの場面。左SBのバルバにボールが渡り、そこへ右SHのブラヒムがプレスをかけている(黄色)。一方、インサイドハーフのイオニタがサイドに張り、そこにはカラブリアが対応(青色)


【20-21】ベネヴェント対ミラン_戦術解説2
――その後の場面。下がってきたラパドゥーラがバルバからのロングボールを受け、カラブリア(とトナーリ)の背後を走るカプラーリにワンタッチで落とす


【20-21】ベネヴェント対ミラン_戦術解説3
――カプラーリにボールが渡り、速攻に繋げた(その後はケアーが攻撃を遅らせ、最終的にカット)


ミランとしてはハイプレスからのビルドアップ妨害を図り何度か成功させる一方で、上記のような形もしくはサイドチェンジで展開され、帰陣を余儀なくされるシーンも何度かありました。



ミランの攻撃とベネヴェントの守備

一方、ミランの攻撃(ビルドアップ)とベネヴェントの守備はどうか。

ベネヴェントは4-3-3(4-3-2-1)で中央を固め、待ち構える形が基本。そこでミランはいつも通りサイドを起点に組み立てながら、主に序盤は前線のレオンに蹴り込んでいきます。


【20-21】ベネヴェント対ミラン_戦術解説4
――ケアーからカラブリア(赤)へのパスが通った場面。ここでベネヴェントはインサイドハーフ(イオニタ)がプレスしに寄せる


【20-21】ベネヴェント対ミラン_戦術解説5
――これに対し、カラブリアは裏に抜けるレオンにロングボールを蹴り込んだ

引き続きイブラ&ベナセルが不在という事もあり、あまりポゼッションを重視せずにプレスとカウンター・速攻で仕留めたいという事でしょうかね、
実際に、ミランは速攻やカウンターからブラヒム、レオンが続けてシュートを撃つなどして、相手ゴールを脅かしていきました。

すると14分。ハイプレス時にレビッチがエリア内で相手DFと衝突してミランがPKを獲得。そのPKをケシエがモノにして先制に成功します。

その後、高い位置からプレスもかけてくるようになったベネヴェントのライン間を突き、いくつか惜しいチャンスを作り出していくミラン。
また、中央スペースが空いてきたことで、チャルハノール、ブラヒム等が見せ場を作り出していきます。


【20-21】ベネヴェント対ミラン_戦術解説6
――例えばこの場面。ケアーがカラブリアとのパス交換で相手インサイドハーフをサイドに引き寄せてから(水色)、ライン間のブラヒムに縦パスを通す


【20-21】ベネヴェント対ミラン_戦術解説7
――その後、ブラヒムはプレスを受けつつも横にドリブルし、手薄な左サイドに張るダロトにパスを通すことで速攻に繋げた


退場の影響

また守備に関しても、ミランは先述のベネヴェントの攻撃に対して明確に対応するようになった印象でした。
サイドに流れるインサイドハーフ(イオニタ)にはカラブリアが素早く前に出て対応し、その背後をトナーリ(とケアー)がカバーする形でしっかりとサイド突破を封じていきます。


【20-21】ベネヴェント対ミラン_戦術解説8
――例えばこの場面。バルバにボールが渡った瞬間、ブラヒムが素早くプレスをかける。この時点でカラブリアはカプラーリに付いているが、トナーリにカプラーリのマークをスムーズに受け渡し、前方のイオニタに向け動き出す


【20-21】ベネヴェント対ミラン_戦術解説9
――その後の場面。バルバからイオニタにパスが出たところで、カラブリアが素早くプレスをかけ、他の選手も連動して周囲のパスコースを消す


【20-21】ベネヴェント対ミラン_戦術解説10
――その後の場面。パスの出し所のないベネヴェントはボールをGKにまで戻す。GKはサイドチェンジを試みるが、そのボールはレビッチによってインターセプトされた

何度かベネヴェントにカウンターを受けるシーンこそありましたが、上記のようにして徐々にミラン優勢になってきたといって差し支えない試合展開だったかと思います。
しかし34分、トナーリが足裏で相手を削り一発レッドで退場したことで、試合展開が一変。

ミランはブラヒムに代えてクルニッチを投入し、4-4-1で引いて守るようになり、対するベネヴェントが主導権を握るという展開になりました。


【20-21】ベネヴェント対ミラン_トナーリ退場後
――トナーリ退場後のミラン

優勢となったベネヴェントは右からのサイドチェンジ等でチャンスを次々と作り出していきますが、ドンナルンマがファインセーブを連発。ミランが何とか無失点に抑え、前半を終了しました。



レオン、才能爆発

後半も耐え忍ぶ展開が予想されたミランでしたが、開始早々の49分。ロングカウンターから最後はレオンが見事なシュートを決め、貴重すぎる追加点を獲得しました。


(※得点シーン)

このシーンにおいては相手守備陣の判断を狂わせた圧倒的なスピード、また難しい角度・姿勢からゴールを決められるシュートテクニックといったレオンの先天的な能力が発揮された一方で、ここではレビッチからスルーパスを引き出すため、右サイド後方から斜めの長距離スプリントを見せています。
後者に関し。スペースに走り、スペースでボールを貰おうとする動きについては昨季からレオンの課題とされていたわけですが、今季はこのように重要な局面(カウンターチャンスなど)において走れる選手へと成長を遂げつつあります(この改善については試合後にピオリ監督も褒めていました)。
ピカイチの身体的・技術的才能を持つ彼が戦術的な動きを身に付ければ鬼に金棒ですし、是非とも継続性を見せて欲しいと思います。



ベネヴェントの猛攻

さて。極めて幸先の良い後半立ち上がりとなったミランでしたが、流石にその後はベネヴェントに主導権を握られます。

ベネヴェントは後半からモンチーニを投入してシステムを4-4-2(4-2-2-2)に変更。右ボランチのスキアッタレッラが中心となり主に右サイドから組み立て、もう片方のボランチ(イオニタ)と両サイド、2トップ等が前線に攻め込むことでミランゴールを脅かしていきます。

ミランは、1トップのレビッチが中盤手前のスペースを担当し、主にスキアッタレッラを献身的にマークするわけですが、CBを含めたベネヴェントの後方のパス回しに対応するのは難しく、次第に押し込まれていきます。また数的不利のため、従来の4-2-3-1で守る場合と比べて中盤が手薄になるのは避けられず、バイタルにボールを入れられてしまうシーンが散見されました。


【20-21】ベネヴェント対ミラン_戦術解説11
――例えばこの場面。右サイドでボールを回すベネヴェントに対し、ミランはチャルハノール、ケシエが近い距離間で対応。一方、クルニッチはマンツーマン気味にイオニタに付くため、中盤にスペースが生まれている状況


【20-21】ベネヴェント対ミラン_戦術解説12
――その後の場面。そのスペースにボールが入り、ベネヴェントは短いパス交換から崩しにかかる。


【20-21】ベネヴェント対ミラン_戦術解説13
――最終的にエリア内に侵入し、惜しいチャンスを作り出した


加えてクルニッチがボランチだと、球際が比較的弱いため自陣に押し込まれると厳しいこともあり、この部分がベネヴェントにとっては一つの攻め所となりました。

すると60分、エリア内に侵入したカプラーリにスキアッタレッラが縦パス。そこへ急いでカバーに入ろうとしたクルニッチがカプラーリを倒してしまい、ベネヴェントがPKを獲得。
しかしながらこのPKを外してしまい、ゴールには至らず。ミランにとっては非常に助かりましたね。


頼れるベテランの存在

しかし、その後もベネヴェントは気落ちせずに攻勢をかけていきます。
引き続き右サイドを中心に組み立て、そこから中央への縦パスなどで次々とゴールを脅かしていく形です。
サイドのフォローやスキアッタレッラのマークのためにケシエが広範囲に動く一方、クルニッチが対面のイオニタにマンマーク気味で付くため、先述のスペース(ロマニョーリの手前辺り)が空きやすいですし、ベネヴェントとしては引き続きそこを主な攻め所にしていきます。


【20-21】ベネヴェント対ミラン_戦術解説14
――例えばこの場面。この位置でボールを持つスキアッタレッラにケシエがチェック。その後、スキアッタレッラは斜め前方のラパドゥーラに正確なパスを通す


【20-21】ベネヴェント対ミラン_戦術解説15
――その後の場面。ロマニョーリが反転を許し、ラパドゥーラに強烈なシュート撃たれるも、ドンナルンマがファインセーブ


このように厳しい試合展開でしたが、ミランは復帰したケアーを中心とする懸命なDFや、最後の砦であるドンナルンマの先述のようなファインセーブにより何とか凌いでいきます。

こういう苦しい試合っていうのは長いシーズンの中で必ずあるわけで、そういうときに頼りになるのはベテランの安定感なのだなと。ケアーやドンナルンマ(実質ベテラン)を見ていると改めて思い知らされますね。

さて。試合終盤になると、猛攻を仕掛けてくるベネヴェントに対しミランもロングカウンターで応酬し、いくつかチャンスを演出。84分には、カウンターから最後はケシエがポスト直撃のシュートを放ちました。

その後もミランはベネヴェントにゴールを許すことなく、0-2で試合終了。


ベネヴェント0-2ミラン



雑感

苦しい試合展開の中、ミランが何とか勝利を収めました。
まぁやはりというべきか、ベネヴェントは簡単には勝たせてくれない相手ということで(笑)
ちなみに17-18シーズンの同対戦カードにおいても退場者が出ており(その時は若き日のロマニョーリ)、何かと話題に事欠きませんね。

続いて。例によって選手個々についての雑感…といこうと思ったのですが、上記マッチレビュー記事にて言及済みのため、今回は割愛します。

さて。シーズン後半戦初戦を白星スタートで飾ったミランですが、次節、いよいよ王者ユベントスとの一戦を迎えます。
ミランが上の順位でこの対戦を迎えるなど果たしていつ以来かわかりませんが、主力に欠場者が続出しているミランにとっては変わらず厳しい試合になるでしょう。

しかし、どんな厳しい状況でも負けず、無敗記録をここまで伸ばしてきたのが今のミランですから、引き続きこのチームの無敗記録継続に大いに期待していきたいですね。


Forza Milan!

最後まで読んでいただきありがとうございました。


追記

先日行ったアンケート「ミラン対ユベントス、勝つのはどっちだ!」にて、たくさんの回答をいただき誠にありがとうございました!
まだ実施中ですので、もし投票していない方がおりましたら参加してくれると嬉しいです。


(※投票欄が表示されていない方は、お手数ですが上記リンク先での投票をお願いします)

明日のユベントス戦も全力で応援していきましょう!
それでは。

3Comments

すくろう

マッチレビューお疲れ様です!
今回、トナーリの退場で割を食った形になってしまいましたがブラヒムの右はもうちょっと長く見たかったと思う出来だったと思います。かといってピオリの判断に文句はありませんしトナーリの退場もトナーリはボールのバウンド後の辺りを狙いに行った所、相手選手がバウンド前にボールを抑えたので結果的に削っちゃったみたいに見えたんで退場は妥当とは言え悪意みたいなのはなかったと思うんでまぁ次は気を付けてくれよってくらいに感じてます。
まぁ勝てたから言える事ですが…
それにしてもレオン凄かったですねー。ゴールシーンに関しては完全に彼の才能だけでもぎ取ったように見えました。時間帯も最高でしたしね
攻撃に関してはゴール以外の面でもかなり改善されてますし守備もCF起用であれば及第点レベルにはなってきたと思います。
話は変わりますがミランってそこそこPK取られてるとは思うんですよね…まぁそこはミランの守り方もあるんで不当だとは思ってはいないんですがPK取られてもそれで負けたとかそういう印象はあまりないなーとなんとなく思ってたんです
まぁ僕の印象ってレオンの走行距離だとかDFがセットプレイで決める気がするだとか全くあてにならないのが分かったので今回はちょっと調べてみたんですがドンナルンマの2015年のデビュー以来すべてのPKの阻止率(枠外も含む)が42%もあるんだそうです。ある一時期だけを都合よく切り取って阻止率7割だとかはたまに聞きますがキャリア通じてのこの阻止率はちょっと聞いたことがないレベルです。さすがですね!
カカニスタさんは僕の適当なコメントにも丁寧に答えて頂けるのであまり負担になってもなーと言うことでコメント自体はセーブしてる面もありますが全ての記事を欠かさずしっかり読んでいます!これからも楽しみにしています
ユーベ戦、怪我人やトナーリのサスペンションもあり緊急事態ではありますが今季のミランであれば…と思えるという事が既に嬉しいですよね。何年ぶりかな…こんなに楽しいのは

  • 2021/01/06 (Wed) 23:02
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すくろう

ってレビッチ、クルニッチがコロナなのか…緊急事態中の緊急事態ですねえ
まぁコンティも結構頑張ってたんでカラブリア中盤のコンティorカルル右SBですかね…とにかく頑張れミラン!

  • 2021/01/06 (Wed) 23:08
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カカニスタ22

カカニスタ22

To すくろうさん

コメント&労いのお言葉ありがとうございます。
そして返信が遅れてしまい申し訳ございません。久々の敗戦ということもありショックで少し離れておりました…。

ブラヒムが右サイドでハマるとチームとしては凄く助かるんですよね。得意なプレー位置に入りやすいのは間違いないと思うので、判断面やフィジカルを鍛えて頑張って欲しいです。

レオンは色々とだいぶ改善されましたよね。レビッチの圧倒的プレス強度にこそ敵いませんが、守備のポイントも分かってきたようなので、今後も引き続き成長に期待していきたいです。

>>ドンナルンマの2015年のデビュー以来すべてのPKの阻止率(枠外も含む)が42%もあるんだそうです。

通算でPK阻止率42%ですか…!凄すぎますね。
PKを継続的に止めてきた実績に基づく自信と相手に与えるプレッシャーはかなりのものでしょうし、相手の枠外シュートも実質的にはドンナルンマが止めたといっても過言ではなさそうです。貴重なデータ提供ありがとうございました!

僕の体調にまで気づかっていただけているようで、本当に感謝です。
場合によっては今回のように遅れてしまうこともありますが、コメントは大変励みになるので今後も気軽にいただければと思います。ただ、コメントを書く側にも結構な労力がかかることも承知しているので、どうかお時間のあるときによろしくお願い致します。

  • 2021/01/09 (Sat) 07:58
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