【セリエA史上最速弾】サッスオーロ対ミラン【2020-21シーズン・セリエA第13節】
スタメン

4-3-3(守備時4-4-2)のサッスオーロと4-2-3-1のミラン
○ミランの最速弾と守備
ミランはキックオフ直後、チャルハノールがドリブルで持ち運び、敵陣深くに侵入。その後、チャルハノールからパスを受けたレオンがエリア内でシュートを決め、先制点を獲得。
これはセリエAだけでなく5大リーグでも最速記録となる「試合開始から6.76秒」でのゴールという事で、これ以上ないほどに幸先の良いスタートを切りました。
その後もミランは、出鼻を完全に挫かれたサッスオーロに対し、プレスと速攻でいくつかのチャンスを演出していきます。
続いて守備についてですが、この試合のミランは守備時に普段よりもラインを下げ、基本的にプレスの開始位置をハーフウェイライン手前に設定。
後方からの組み立てに非常に優れたサッスオーロに対し、前から奪いに行くよりも背後のケアを優先した格好です。
具体的に、前線のレオンとブラヒムの2人が対面のCBにプレスをかけ、パスコースを限定。その際は2人のどちらか(大抵はブラヒム)が相手アンカー(ブラビア)をマークないしパスコースを切り、アンカーへパスを出させません。

――例えばこの場面。CBフェラーリがボールを持ち、縦パスを窺う。その際、ブラヒムがアンカーをマークし、レオンは右CBへのパスをケア。一方、トナーリは対面のトラオレ、ケシエはライン間に侵入するロペスをそれぞれマーク

――その後の場面。ブラヒムがアンカーへのパスコースを切りながらフェラーリにプレス。フェラーリは縦パスを出すも、ブラヒムにボールを触られ方向がずれる。

――その後、トナーリがこぼれ球を拾い、ミランがカウンターを仕掛けた
こうした形なら、ミランのダブルボランチが後方のスペースをしっかりと埋められますし、対面の相手インサイドハーフにもしっかりと付くことができますね。(詳細は省きますが、普段のように最前線からプレスをかけた場合、相手アンカーには基本的にミランのボランチが付く必要がある)。
またこの点については、CBへ継続的にプレスをかけつつ、アンカーを徹底マークして自由にプレーさせなかったブラヒムは素晴らしい守備パフォーマンスだったと思います。
そして、9分にはサッスオーロのプレスをロングボールで躱して速攻。サレマ、レオンと繋ぎ、最後はレオンのクロスにチャルハノールがダイレクトで合わせてネットを揺らしました(しかし、カルルからのロングボールを受けたサレマの位置がオフサイドラインを越えていたため、VARによりノーゴール判定)
○サッスオーロの反撃
立ち上がりをまんまと衝かれた格好のサッスオーロでしたが、その後は落ち着きを取り戻し、ミランのプレスを躱して押し込んでいく時間帯を増やしていきます。
サッスオーロは様々な形でミランの守備を崩していこうとするわけですが、一つの形としてはCBからトップのデフレルへ楔を当てていくというシーンが散見されました。

――例えばこの場面。左CBのフェラーリから右CBのマルロンへ横パス

――その後の場面。レオンの寄せが間に合わず、マルロンからトップのデフレルに楔のパスが通る
とは言えデフレルのポストプレーが十分ではなかったことや、先述の通りボランチが後方にしっかり残っていることもあり、そこから直接危険な場面になることはなかったかなと。
○ミランの攻撃
前半中盤以降も引き続きサッスオーロが主導権を握る展開。ハイプレス(ネガティブトランジション時や、相手のバックパスに応じて前に出た際などに行う)がハマらないミランはカウンターや速攻を受けるシーンもありましたが、素早い帰陣により決定機は作らせません。
すると26分、被CKのこぼれ球を拾ったミランがロングカウンターを発動。テオが左サイドをドリブルで疾走し、エリア内に侵入してクロス。そのクロスにサレマが合わせてミランが追加点を獲得しました。
数少ないチャンスをモノにし、極めて効率的に得点を奪うことに成功。パルマ戦ではミランがしてやられたことですね(笑)
テオはこの得点シーンのように、ラストプレーの精度さえ上がれば紛うことなき最恐のカウンターマシーンだと思います。
そして追加点後も、ミランは前半中盤辺りから徐々にポゼッションで惜しいチャンスを作り始めます。
これに関し、サッスオーロの守備(プレス)はトラオレが一列上がってデフレルと共にミランの2CBに対応し、残りの中盤2枚でミランのダブルボランチに対応する4-4-2の形が基本でした。
そこでミランは、右サイド後方でボールを持ってトラオレや中盤を前に引き付けながらロングボールを放り込むことで、ライン間やDF裏でボールを受けようとしたり、手薄な左サイドに展開してそのスペースへテオを飛び込ませたりといった形を見せていきます。

――例えばこの場面。ケシエがサイドに下がってボールを受け、ロマニョーリとのパス交換でサッスオーロを前に引き付ける。同時にブラヒムは背後のスペース(ライン間)に移動。

――その後の場面。ケシエが前線のレオンにロングパス。その周囲にはブラヒムとサレマが位置し、レオンからの落としを待ち構える形。ロングボールは惜しくもレオンに合わなかったが、チャンスになりかけたシーン
以下が同様の場面です。

――レオン目がけて後方からのロングボールが送られ、そのこぼれ球を周囲に走り込んだブラヒムが拾う

――その後の場面。ボールを持ったディアスは左サイドのスペースにパス。そこへテオ(赤色)が走り込み、速攻に繋げた
ミランとしては、自陣右サイドでボールを持った際、左サイドのチャルハノールが中央に入ることでフリーとなっていたシーンがあったため、そこにボールを入れられると更に良かったかなと。
一方のサッスオーロも、前半中盤から終盤にかけて攻勢かけシュートを放っていきますがゴールには至らず。
前半は0-2。ミランリードで折り返しました。
○後半の概略
後半からサッスオーロはデフレルとロジェリオに代えてカプートとキリアコプロスを投入
一方のミランも負傷したトナーリに代えてクルニッチを投入。
試合展開については引き続き、サッスオーロが主導権を握ってボールを持ち、ミランが引いて守るというもの。ミランは2点リードということもあり、より低めの守備に比重を置いた印象です。
前半同様の形でミランが人数をかけて中央を固め、ライン間でボールを受けようとするカプートに対しては主にカルルがケア。そして両インサイドハーフには基本的に対面のミランボランチが対応し、前を向かせません。また、エリア内に飛び込んでくるSBには主にミランサイドハーフが付いていく形でしっかりと対応。
それでもサッスオーロは細かいパス回しとロングパスを駆使して何度か深い位置までボールを運び、サイドからベラルディのパス(サイドでボールを受け、ハーフスペースに飛び込むSBにスルーパス)や途中投入されたボガの鋭いドリブル等で崩していきますが、最後の局面ではミランCBが中心となりしっかりとブロック。

――参考:この試合におけるクリア数トップ5(『WhoScored』より)。ロマニョーリ、カルルがそれぞれ1位、2位を記録
低いラインでのロマニョーリの安定感は流石の一言ですし、カルルも素晴らしいパフォーマンスを披露します。

――参考2:この試合におけるカルルの守備に関する主要スタッツ(『SofaScore』より)。インターセプト、タックル、地上戦勝利数がいずれも「4回」と高成績を記録
そして、ミランが低い位置でボールを奪った後はロングカウンター。この点についてはレオンのドリブル&キープと、テオの推進力を活かしてボールを運び、チャンスを作っていきます。
このようにして、安定した試合運びで時間を消費していったミラン。
ポゼッション率こそ約「7対3」と圧倒されながらも、枠内シュート数は「5対5」と互角の数字を記録しています。
終盤には危ないシーンも比較的増え、最後の最後にFKからベラルディに直接決められ失点を喫しましたが、それ以上は許さず。試合は1-2で終了。
サッスオーロ1-2ミラン
雑感
ミランが難敵サッスオーロを下し、3試合ぶりの勝利を手にしました。勝ち点1差で首位をキープです。
この試合については、何よりも開始6.76秒で先制点を奪えたことが大きかったんじゃないかと。
仮に先制せずとも今回はサッスオーロにボールを持たれる試合展開になったでしょうし、そんな中、スコアレスの状況で我慢強く守るのと1点リードの状況で守るのとでは精神的に大きな違いがありますしね。
しかも試合後のピオリ&レオン曰く、この得点の形は事前に狙っていたものだったとのこと。ミランの戦略勝ちですね。
続いて、そのレオンについてですが、今回はCFとして最も大事ともいえる得点という大仕事をやってのけ、チームの勝利に大きく貢献しています。
また、トランジション時に前線でボールをキープし時間を作り、ロングカウンターに繋げるシーンもあったように、押し込まれる時間帯の長かった今回の試合で彼の果たした役割は大きかったのではないかと思います。
守備に関しては未だに問題があるように見受けられますが、CFの本分が得点に絡むことだと考えると、十分なパフォーマンスだったのではないかと。
とは言え、個人的にレオンはまだまだこんなものじゃないと思っているので、今後とも攻守両面での成長に期待です。
さて。ミランの次節の相手はラツィオという事ですが、非常に気がかりなのが欠場者の続出です。
中でもボランチに関しては壊滅気味で、次節はベナセル(負傷中)、ケシエ(サスペンション)が欠場確定。またこの試合で負傷交代したトナーリも間に合うか微妙なため、純粋に起用可能な選手がクルニッチのみ(しかもラツィオクラス相手ではボランチ計算できるか微妙)という状況です。
ここまで粘りに粘ってリーグでは無敗記録を伸ばし続けてきたミランですが、ある意味では次が最大の難関といえるかもしれません。
チームの底力に期待しましょう。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。