【安定の勝利】ミラン対フィオレンティーナ【2020-21シーズン・セリエA第9節】
スタメン

4-2-3-1のミランと4-3-3のフィオレンティーナ。
ただ、フィオレンティーナは守備時にリベリがブラホビッチと2トップとなり、カストロヴィッリとカジェホンで両サイドを構成する可変型(4-4-2)。
○ミランの攻撃、ヴィオラの攻撃
今回のミランの2列目は右サレマ、中央ディアス、左チャルハノールという構成。
そしてイブラが欠場という事で、代役として入ったのはレビッチです。

――前半のミランの基本ポジション
具体的には上のように、レビッチを頂点に、ディアスが右ハーフスペース、チャルハノールが左ハーフスペースを主に使い、両サイドをテオとサレマが担当するというのが基本的な形です。
イブラがおらず、1トップを裏抜けタイプのレビッチが務めるという事は、2列目に独力で前を向いてボールを運べる選手が今まで以上に求められます。
その点でディアスには大いに期待が寄せられるわけですが、今回は動きやすいトップ下起用という事もあり(右~中央エリアにポジショニング)、周囲のサレマやチャルと連動しながらチャンスをいくつか作り出していきました。

――例えばこの場面。カラブリアがボールを持った瞬間、サレマが縦に走ってビラーギを引っ張る。それにより生じたスペースにディアスが入り、カラブリアからパスを引き出す。

――その後、ディアスがドリブルで運び、サイドのサレマにボールを渡した場面。ディアスが相手のSB-CB間を突き、サレマからパスを引き出す。

――プルガルがカバーに入るがインターセプトに失敗し、この位置でディアスにボールが渡った
ただし、ミランはベナセル不在で後方からのビルドアップがあまり安定しないこともあり、チャンスの多くは素早いトランジションからの速攻からでした。
一方でミランの守備は、いつものように前からプレスをかけて相手のビルドアップを妨害していく形。これに対しフィオレンティーナは、2トップ(特にリベリ)への楔のパスを起点にミランのプレスを何度か回避していきます。

――例えばこの場面。ディアスにプレスをかけられたペッセーラはサイドのビラーギ(黄色)にパス。それに対しサレマが詰めに行き、トナーリとカラブリアもそれぞれ身近な相手選手をマークに行く。一方、その背後でリベリが動く

――その後、ボールはビラーギからプルガルへ。プルガルはワンタッチで前方のリベリにパス。

――その後、リベリがワンタッチで落とし、走り込んだカストロヴィッリにボールが渡って速攻に繋げた。
崩しの局面においても、中心となるのはリベリ。中央~左サイドでボールを引き出し、ドリブルとパスでチャンスメイク。流石の存在感です。
○ミランのPK獲得とヴィオラの守備問題
16分、CKからロマニョーリが決め、ミランが珍しくセットプレーから得点します。
続く25分には、スルーパスに抜け出したサレマがエリア内で倒されPK。それをケシエがモノにし、ミランが順調に追加点をゲットしました。
フィオレンティーナは監督交代と、それに伴うシステム変更の影響か、DF陣の連携が悪いシーンが散見されました。ミランとしてはその隙を突き、決定機を作っていった、と

――PK獲得のシーンについて。左サイドからのスローインのこぼれ球をディアスが拾う。それに対し、CBのペッセーラ(水色)がチェックに行く。ディアスは右のカラブリアに展開し、前方へ走る

――その後の場面。フィオレンティーナはペッセーラが前に出た事で生じたスペースを埋めずに放置。そこへサレマが走り、カラブリアからパスを引き出す

――ボールを受けたサレマは、そのままエリア内に侵入してシュート。そのシュート直前に急いで戻ったペッセーラのスライディングを受け、PKを獲得した
36分には再びミランがフィオのDFライン間を突き、そこへ飛び出したテオが倒されPK。しかしこれはケシエが外してしまい、3点目とはなりませんでした。

――2度目のPK獲得のシーンについて。トナーリからチャル、レビッチとパスが繋がり、レビッチはミレンコビッチを背負いながら反転する(赤色)

――その後の場面。レビッチがミレンコビッチとカセレスの間にスルーパスを通し、エリア内でテオが受ける。その後、急いで戻ったカセレスにテオが倒され、PKを獲得した
一方でミランの守備に関しては、前半中盤以降も引き続きハイプレスを継続。1トップのレビッチが素早くプレスをかけ、それに後ろの選手が連動し、サイドに追い込む事でビルドアップを妨害していきました。

――ペッセーラからミレンコビッチへのバックパスに対し。レビッチがプレスをかけに行く。ミレンコビッチはキーパーに戻すが、レビッチはそれに対しても追いかける。その動きにチャルハノールとサレマが連動

――その後、追い詰められたドラゴフスキは前方へのロングボールを選択。ボールはカラブリアによりクリアされた
レビッチの献身性は流石の一声です。
終盤には押し込まれたシーンもありましたが、しっかりと守り切って前半終了。危なげなく2-0リードで折り返します。
○後半序盤の攻防
後半からフィオレンティーナはカジェホンに代えてボナベントゥーラを投入。システムを4-3-1-2に変更します。
これに対し2点リードのミランは、セーフティにロングボールを送り込んでいく形を多用。主にレビッチに当て、そのこぼれ球をチャルハノールを始めとする周囲の選手が狙っていきます。
ただ、最強のターゲットマンであるイブラがいればこうした攻めは非常に有効ですが、この試合はその彼がいないため、しっかりと収めて速攻に繋げるシーンというのはそれほど多くありませんでした。

――参考:この試合における空中戦勝利数トップ5(『WhoScored』より)。空中戦の強さを誇るミレンコビッチが両チーム合わせてトップとなる「9回」を記録。1トップのレビッチはそんなミレンコビッチとの競り合いに大いに苦戦し、空中戦勝利数「3回」を記録したものの、成功率は38%に止まった
それに、期待のディアスはフィオレンティーナ守備陣(特にプルガル)にフィジカルで阻まれ、後半はボールロストを連発。決定機を演出することはできませんでした。
一方のフィオレンティーナも、中盤の枚数を増やしたわけですが、序盤はそれをあまり活かせずミランのプレスに捕まるなどしてパスミス・連携ミスが目立ちました。

――例えばこの場面。中盤のアムラバトにパスが通り、続けて彼は前方のボナベントゥーラ(画面外)にパスを通そうする。

――しかし、そのパスは弱く、ケシエがインターセプト。ミランが惜しいカウンターチャンスに繋げた
というわけで、ボールロストからカウンター・速攻の応酬というシーンが増え、お互いにチャンスを作っていきます。
すると55分にはリベリがカウンターから裏に抜け出しドンナルンマと1対1を迎えますが、ドンナルンマのスーパーセーブで事なきを得ました(そもそもオフサイドに見えましたが、オンサイド判定)。
○後半中盤・終盤戦の攻防
後半中盤から終盤にかけて、システムに慣れてきたフィオレンティーナが徐々にミランを押し込んでいきます。
更に途中からリベリに代えてクトローネ、カセレスに代えてリローラを投入したフィオは、右サイドからクロスを放り込んでいく形に。
アムラバトを中心に中盤の数的優位を活かしながらボールを運んでいき、サイドに展開。そこからのクロスという形でミランゴールを脅かしていきます。

――例えばこの場面。アムラバトから右サイドのリローラへとボールを展開

――その後、リローラのクロスに対し、エリア内ではブラホビッチがニアに走り、ロマニョーリを引き付ける。一方、その背後からボナベントゥーラが侵入。またクトローネはファーポストに構える
クロスに対し、ボナベントゥーラやクロトーネが飛び込んでいく姿は何か感慨深いものがありました(笑)
その後もクアメ、バレーロと攻撃的なカードを切り、終盤に攻勢を仕掛けるフィオレンティーナ。
一方、危ないシーンが増え始めたミランも74分にディアスに代え、クルニッチを投入。フィジカル的にも体力的にも、妥当な交代ですね。
更に82分にはトナーリに代えハウゲを投入。守備を固めつつも、カウンターによる追加点を狙っていく形です。
86分にはCKからピンチを迎えますが、最後の砦であるドンナルンマがしっかりとキャッチ。
その後も最後の攻勢をかけるフィオレンティーナ相手に、ミランはチーム全体でしっかりと時間を使いながら守り切り、試合終了。
ミラン2-0フィオレンティーナ
雑感
ミランが勝利を収め、首位をキープしました。
いくつか気になる点はありますし、イブラ不在時の形が明確になったとは言い難いものの、こういう勝つべき試合できっちりと勝ち点3を積み重ねられたというのは大きいですね。
続いて選手個人に目を向けますと、まずロマニョーリは試合勘が戻ってきたようで、積極的なラインコントロールや正確なカバーリングが再び見られるようになってきた印象です。
また、トナーリもフィジカルコンディションに関しては完全に仕上がったようですし、後はビルドアップ時の動きとかパスの安定感が改善されると尚良いですね。
そしてサレマ、カラブリア、ケアー、ケシエ、チャルハノールと好調組が引き続き好パフォーマンスを披露していますし、守備に関してはイブラ不在でもほとんど問題はないと。
後は攻撃が更に良くなると申し分ないんですけどね。
後方からのビルドアップについてはベナセルが戻ってくればさほど問題ないでしょうが、崩しの局面においては(イブラ不在時は)2列目の貢献が強く求められますから、ディアスやハウゲの更なる成長・フィットが期待されますね。
この点については引き続き期待して見ていきたい部分です。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。