【貴重な1ポイント】ミラン対エラスヴェローナ【2020-21シーズン・セリエA第7節】
スタメン

4-2-3-1のミランと3-4-2-1のヴェローナ
○最悪の立ち上がり
試合開始早々の5分、CKからバラクに決められ、ミランは早くも失点を喫しました。
すぐさま反撃開始といきたいところでしたが、その後はしばらくヴェローナの守備に苦戦します。
まずはそんなヴェローナの守備(ハイプレス)について。彼らは守備時に陣形が5-3-2となり、ミランの4-2-3-1に噛み合うよう変更します。
中盤ではベナセルにイリッチ、ケシエにバラク、チャルハノールにダヴィドヴィッチがマンツーマンで付きながら、2トップとなったカリニッチとザッカーニがミラン両CBをマークし、時おりGKにまでプレスをかけてロングボールを誘発。サイドにパスが出れば、同サイドのWBがミランSBにプレスをかける形です。

――ヴェローナの守備陣形について。2トップがミランCBをマークし、両インサイドミッドフィルダーがミランの両ボランチにマンツーマンで対応。また、WB(ラゾビッチ)がミランSB(テオ)へのパスを警戒する。結局、GKのドンナルンマは前線へのロングボールを選択。
これに対しミランは、イブラへロングボールを当て、そこからの速攻という対ハイプレス用の形を狙いますが、序盤はイブラに良い形でボールが収まらずに苦戦。
またヴェローナ守備陣のプレスからの戻りが早く、こぼれ球も中々拾えないため苦しい状況を強いられました。

――その後の場面。ドンナルンマからイブラにボールが入るが、マニャーニが競り勝ちヴェローナボールへ(赤色)。
それでも何とかポゼッションを確立した後は、ミランは流動的な攻撃によっていくつかチャンスを作っていきます。
リトリート後もマンツーマン志向のヴェローナに対し、ミランはイブラが下がってボールを受けることで、それにより生じたスペースにチャルハノール、レオン、サレマの2列目が侵入しマークを外していこうとする形がメインです。
とは言えミラン2列目の動きにもほとんどしっかりマークが付いてきたため、そこを打開するには速いパス交換や独力での突破、後方(3列目とかSB)からの飛び出しなどが求められました。

――例えば、イブラがこの位置でボールを受けた場面。前方のチャルハノールがボールを受けに下がり、イブラが一度そこに当てる

――その後の場面。チャルはすぐにイブラにリターン。この一連の動きでダヴィドヴィッチを前に引き付け、その背後のスペースにレオン(水色)が流れる

――その後の場面。イブラからレオンにパスが通る。同時にチャル(赤)はレオンが元々いたスペースに侵入し、レオンからパスを呼び込む。一方のレオンもワンタッチでチャルに出し、突破を目論む
しかしラストパスがずれたりして、最後の局面を崩し切るには中々至りません。

――その後の場面。レオンとの連携でチャルがエリア内でボールを持つが、クロスは味方に合わず
一方のヴェローナの攻撃について。ヴェローナはビルドアップ時に後方でボールを回すことはせず、全体の陣形をコンパクトに保ちながら高めに移動させ、そこへロングボールを放り込んでいく形がメインです。

――GK時におけるヴェローナの基本的陣形
具体的には主にバラク目がけて放り込み、そのボールを自身の後ろに落とせれば1トップのカリニッチが、前に落ちれば中盤が素早くボールを回収しに動くという流れです。

――ロングボールに対し、バラクとケシエが競り合う(黄色)。ヴェローナはその後、こぼれ球の回収を目論む
ミランとしてはそこでボールをキープされたり奪われたりして、カウンターに繋げられると危ない所でしたが、しっかりと処理できていたためその流れからピンチに陥るシーンというのはほとんどありませんでしたね。

――参考:この試合における守備時の空中戦回数ランキング(『whoscored』より)。ケシエはチームトップとなる「6回」を記録。バラクとの空中戦を制し続けた。
というわけで、ヴェローナは主にカウンターからいくつかのチャンスを創出。左サイドに流れるザッカーニに素早くボールを渡し、そこからWBのディマルコやイリッチ、バラク等と絡みながらハーフスペースを狙っていきます。

――例えば、左サイドのディマルコにボールが渡った場面。ザッカーニがサイドに張ってカラブリアを引き付け、イリッチ(青)がカラブリアの背後に飛び出しパスを引き出す。

――そこでボールを受けたイリッチは、カバーに入ったケシエに倒されFKを獲得した。
そして19分、そのFKのこぼれ球をザッカーニがダイレクトシュート。それをカラブリアが処理し損ねてオウンゴールとなりました。
最近のミランのセットプレーの弱さは何なのか…。今回はちょっとした不運もありますが。
○ミランの反撃
2点ビハインドとなったミランでしたが、その後も引き続き2列目やSBが飛び込んでいく形を継続し、マンマークを外すために積極的に前線に侵入していきます。
すると26分、サレマのクロスにケシエがエリア内へ飛び込んで合わせ、それが相手DFに当たってネットを揺らしミランが1点差に追いつきました。

――得点シーンの場面について。サイドでサレマがボールを持ったとき、ケシエ(黄色)が前方のエリア内のスペースに飛び出す。しかしマーク担当であるバラクの反応が少し遅れ、ケシエに付き切れず。

――その後の場面。サレマからのクロスにケシエがダイレクトで合わせ、結果的にボールはネットに吸い込まれた。
3列目からの飛び込みが功を奏しましたね。
そして、時間が経つにつれヴェローナのプレスの圧が弱まったこともあり、後方からイブラへのロングボールが徐々に通るようになり、そこからの速攻というシーンも増え始めたミラン。
というのも先述の通り、ヴェローナの中盤3枚がミランの中盤3枚に主にマンツーマンで対応するため、流れの中でエリア中盤にスペースが生まれやすく、前線のイブラに収まるようになったことでそのスペースが使いやすくなる(つまり速攻に繋げやすくなる)、と。
そして、サレマやレオンが中央に絞ってそのスペースでボールを受け、そこを起点に何度かチャンスシーンを作り出すことでヴェローナを押し込んでいきます。

――例えばこの場面。エリア中盤でロングボールを競り合う際、マンツーマンでミランの中盤3枚に対応するヴェローナ。そこで、ミランはその背後にサレマとレオンがポジショニング。

――その後の場面。ケアーによりクリアされたボールをサレマが拾い、カウンターを仕掛けた。
しかしながら、同点弾を奪うには至らず。前半は1-2で終了しました。
○攻撃的カルテット
ミランは後半からサレマを下げ、レビッチを投入。レビッチを左に配置し、レオンを右に回します。
レオンは守備時こそ右サイドハーフでしたが、攻撃時は前半のように中央に入り、中盤スペースでボールを受ける形が多かったです。
また、右サイドは主にカラブリアが駆け上がって使用しつつ、時おりレオンやチャルハノール、もしくは逆サイドからレビッチが斜めに走り抜けてボールを引き出していく形。
さて。こうして攻撃的なカルテットを前線で形成したミランは、主に左サイドで彼らが流動的に動きながら次々とチャンスを作っていきます。
具体的には、イブラがボールを収め、チャルが上下に動くことでマンツーマン対応してくるダヴィドヴィッチを釣り出し、かつレビッチが前線に飛び出すことでCBを牽制。そうしてできた中盤(ライン間)のスペースでレオンがボールを受け、チャンスを作るといった形などですね。

――例えばこの一連のシーン。まず、ケアーからのロングボールをイブラが収め、時間を作る。

――その間、チャルハノールがサイドに流れてパスを引き出しながら、マンツーマンで対応してくるMFのダヴィドヴィッチをサイドに釣り出す(赤色)。イブラはそこへパスを送る

――その後の場面。レビッチ(水色)がエリア内に飛び出すことでパスを引き出しながら、CBを引き付ける。一方レオンは手薄となった中央バイタルエリア近くで構える。この場面でチャルハノールはレビッチへのパスを選択するも、ヴェローナDFがクリアしスローインに。

――スローイン後の場面。下がり目の位置でイブラがボールを受け、サイドに残っていたチャルハノールに縦パスを通す。

――その後、レビッチは再度エリア内に飛び込んでDF陣を押し下げる。一方チャルハノールが今度は中央のレオンにパスを出し、レオンがバイタルエリアでシュート。そのこぼれ球をチャルハノールが押し込みネットを揺らした(しかしオフサイド)。
更にその4人にテオも絡んでいきながら、攻勢をかけていくミラン。
すると65分、ケシエがエリア内で倒されPKを獲得。同点に追いつく大チャンスでしたが、イブラがそのPKを外してしまいました…。
○3度目の正直
とは言えその後も猛攻を仕掛けるミランと、防戦一方のヴェローナという構図は変わらず。
ヴェローナは一度だけGK(先述のロングボール戦術)から決定機を作り出しましたが後は上手くいかず、押し込まれているためカウンターもほとんど機能せずという状態に。
そしてミランは相変わらずチャンスを量産していきますが、ヴェローナの体を張ったDFとキーパーシルヴェストリの好セーブ連発により、ネットを揺らすことができません。
終盤にはディアス、ハウゲと攻撃的なカードを投入。ディアスはもっと早くレオンと代えても良かったと思うんですけどね。
そして91分にはエリア内でのイブラの落としにカラブリアが反応してネットを揺らしますが、ハンドにより認められず。
万事休すかに思われましたが93分、ディアスのクロスにイブラが頭で合わせてゴールに流し込み、ミランが何とか同点に追いつきました。
この勢いで逆転…とまではいかず、タイムアップ。試合は引き分けに終わりました。
ミラン2-2ヴェローナ
雑感
正直、全体として見たときに内容的には順当に勝つべき試合だったと思うんですけど、セットプレーからの2失点と決定機でのミス連発(というより相手キーパー凄すぎ)がチームに重くのしかかりましたね。
とは言え、1点ビハインドの状態でアディショナルタイムまでもつれてしまった時点で敗戦も十分にあり得たわけで、そこから何とか1点返して勝ち点1をもぎ取れたというのはポジティブに捉えて良いのかなあと。
うーん…それでもやはり勝ちたかったのが本音ですかね。
それとイブラのPK外し過ぎ問題については、次回からケシエにPKを譲るそうなので無事解決ですかね。
まあイブラならPKがなくても得点を積み重ねられるでしょうし、PKを蹴らずとも超重要な選手であることに変わりないので、来る代表ウィーク期間中にコンディションを回復してもらって、しっかりと次戦に備えて欲しいです。
あと代表ウィークといえば、ミランは今回もまた多くの選手が招集されるでしょうが、とにかくコロナ感染と怪我だけはしないよう願いたいです。
さて。代表ウィーク後はナポリ戦という事で、これまたタフなゲームになること必至ですが、今度こそ勝利を収めて再び勢いを付けたいところですね。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。