【激闘のミラノダービー】インテル対ミラン【2020-21シーズン・セリエA第4節】
スタメン

3-4-1-2のインテルと4-2-3-1のミラン。
○ミランの守備
まずはミランの守備(プレス時)について。インテルの3バックに対し、ミランは1トップのイブラと両サイドハーフのサレマとレオンの3人で対応します。そして、相手のダブルボランチに対してはチャルハノールと片方のボランチが対応し、トップ下に対してもう片方のボランチが付く形が基本です。

――ミランの守備陣形について。この場面ではサレマがコラロフへのパスコースを切りながら、ハンダノビッチにプレスをかける
このように、相手の中盤3枚に対しミランは少し柔軟に形を変える必要があるため、最序盤は相手中盤に良くない形でボールを持たれるシーンが何度かありました。

――例えばこの場面。ボランチのマークが間に合わず、中盤で数的不利に。ボールホルダーのデフライはブロゾビッチにパス

――その後の場面。サレマがカバーに入るが、ブロゾビッチはフリーとなったコラロフへパスを出す。
とは言え、その後は大体において上手く守れていたかなと。
○インテルの攻撃とミランの守備
一方のインテルの攻撃について。インテルの強みは何といっても強力2トップにあります。
DFを背負ってからのプレーが上手く、敏捷性に優れるラウタロと、圧倒的なフィジカルを持つルカクの2人が基本的に前線に張ってパスを受け、それぞれケアー、ロマニョーリと対峙する形です。
また、走力とテクニックに優れるバレッラがトップ下で流動的に動き、主にその2人と絡みながらチャンスを演出していこうとします。
対するミランは組織で応戦。1対1では分が悪いため、ベナセルとケシエの中盤2人が奔走し、積極的にDF陣を助けることでインテルの攻撃を凌いでいきます。

――例えばこの場面。ルカクがこの位置でロマニョーリを背負いながらボールキープ(黄)。これにより生じるスペースにバレッラ(青)が侵入していこうとするも、ベナセルが付いていく。

――その後の場面、ラウタロがワンタッチでエリア内のバレッラにパスを送るも、ベナセルがカット。
対ラウタロについては、例えば以下の形です。

――ラウタロがボールを持ち、ケアーに対しドリブルで仕掛ける

――その後、ケシエが素早くヘルプに入り、ケアーと挟み込んでラウタロを止める(黄)
○ミランの強力カウンター
このようにしてインテルの攻撃を防いだミランは、カウンターないし速攻からチャンスを量産していきます。
ミランの狙いは明確で、それは相手ボランチ(ブロゾビッチ、ビダル)の背後に素早くボールを送り込むというもの。
そこでボールを持てれば一気に相手の3CBと対峙できますし、今回のインテルの左右CBは本職ではないため、質的な意味で優位に立つことが可能となりますからね。
そして、その際に重要な役割を担ったのが、チャルハノールとイブラヒモビッチの2人です。
まずチャルハノールは、抜群の走力とポジショニングセンスを如何なく発揮し、攻撃時に素早く相手2ボランチの背後に潜り込むなどしてパスを引き出します。

――例えばこの場面。自陣エリア内からサイドのテオにパスが通り、ミランがカウンターを開始。同時にチャルハノール(赤)は前方へすぐさま駆ける

――その後の場面。テオから斜めのパスを引き出し、ファールを獲得した
そして、イブラは後方からのボールを圧倒的なキープ力で収めつつ、ストライカーとして自ら積極的にゴールを狙っていきます。

――例えばこの場面。自陣深くでこぼれ球を拾ったチャルハノールは、ワンタッチで前方のイブラ(画面外)にロングパス。イブラがそのボールを収め、時間を作る。

――その後の場面。サレマが駆け上がり、イブラがそこへスルーパスを送る
このようにして相性抜群のこの2人を中心に攻撃を展開したミランは、13分、16分に立て続けにゴールを奪うことに成功しました。

――1点目のPKに繋がった場面について。自陣でのボール奪取後、カラブリアがドリブルでボールを運ぶ。同時に、チャルハノールは相手2ボランチの背後に走り、カラブリアから縦パスを引き出す

――その後の場面。チャルハノールはイブラの裏への動き出しに合わせてスルーパスを通す。イブラはそのままエリア内へ侵入し、倒されてPKを獲得した。

――続いて、2点目に繋がった場面について。右サイドからパスを受けたチャルハノールは、ワンタッチで素早く左サイドのレオンにパス。レオンはダンブロージオとの1対1の局面を迎える

――その後の場面。スピードを活かして縦に抜いたレオンは、そのままイブラに素晴らしいクロスを供給し、ゴールをアシストした。
以前(昨季中断前まで)のチャルハノールはプレーの判断・走力に関しては素晴らしいものがありながら、肝心のプレー精度が足りないことで、目に見える結果を残すことはできていませんでした。
しかし今、こうしてプレーの精度をも高めたことで申し分のない選手となりましたし、もはやミランに決して欠かすことのできない存在です。
イブラについてはもう流石としか言いようがないですね。最高の選手です。
ポゼッション・カウンター両局面で今なお絶対的な存在ですし、この試合でもドッピエッタを記録する大活躍。
この試合にもしイブラが間に合わなかったと思うとゾッとします。
○インテルの反撃
幸先良く2点を決めたミランですが、インテルも反撃。前線の2トップ(特にルカク)に集中的にボールを集めることでチャンスを作っていきます。
この点については、ビルドアップ時にバレッラが動きを変えたのも大きかったかなと。積極的にサイドに流れることでボールを引き出そうとしつつ、これにより2トップのためのスペースメイクも行います。
バレッラ(トップ下)に対するマーク担当は、バレッラにタイトに付いていけば中央にスペースを空けてしまいますし、かといって付いていかなければフリーの状況でバレッラにボールを受けさせてしまうリスクが生じるということで、難しい選択を強いられることになりました。

――例えばこの場面。サイドに流れるバレッラ(青)に、ベナセルが付いていく。一方のハンダノビッチは前線のルカクにロングパス

――ルカクがケアーと競り合う(紫)。一方で、ラウタロは中央フリーでそのこぼれ球を狙う
そうこうしている内に29分、左サイドからのクロスにルカクが合わせ、インテルに1点を返されてしまいます。

――1点目の少し前の場面について。右サイドでルカク(紫)がボールをキープし、ハキミにバックパス。

――その後、ハキミは逆サイドのコラロフにパス。ミランは全体的に左サイドに寄せられており、かつ右サイドハーフのサレマがこの位置だったためプレスバックが間に合わず、逆サイドで数的不利となり失点を喫した
このようにしてインテルが盛り返していきますが、ミランも速攻・カウンターで応酬しチャンスを演出。
その後も両チームともにチャンスを作っていきますが、前半はそのまま1-2で終了。ミランリードで前半を折り返します。
○後半の攻防
ミランは前半同様、チャルハノールとイブラを中心に速攻を仕掛けてチャンスを演出。
ただし後方からのビルドアップ時は、イブラへのセーフティなロングボールをより多用していきます。
具体的には、ミランの2ボランチに対し、インテルは主にバレッラとボランチのビダルで対応するということで、ミランはその背後のスペースにボールを送り込んでいくといった形などですね。

――例えばこの場面。ミランはロングパスを使い、ビダルとバレッラの背後にボールを送る。このボールにはブロゾビッチが対応。

――そのこぼれ球をイブラとケシエで拾い、最終的にはチャルハノールがボールを受けて速攻に繋げた
イブラは大抵のボールに競り勝ち、そして収めてくれるので、こうしたシンプルな攻めも実に効果的なものになりますね。

――参考:この試合における空中戦勝利数トップ5。イブラは断トツの「9回」を記録(『WhoScored』より)
一方のインテルも前半と同様の攻めの形を継続しつつ、より前線へのロングボールを多用していく形です。
ラウタロに対しては、ケアーが流石の落ち着きで前半よりもしっかりと抑え込めていましたが、ルカクは止められず、次々とボールを収めてチャンスに繋げていきます。
このルカク無双についてはルカク自身が素晴らしかったのもありますが、対峙したロマニョーリのコンディションが最悪に近く、抜かれないことを最優先に守った結果、ルカクに自由にボールキープさせてしまったというのも原因として大いにあったと思います。
ただ、長期離脱明けで即ダービー戦、しかもマッチアップ相手はルカクという精神的にも肉体的にも滅茶苦茶タフな状況でしたし、そうした背景を考慮するとロマニョーリは最善を尽くしてくれたのではないかと。
また、ミランにはこの圧倒的不利なマッチアップをチーム全体でカバーする意識もありましたし、中でもケシエの貢献度は高く、的確なカバーリングでスペースを埋めていました。
しかも、ルカクに対してフィジカルで互角に渡り合える数少ない選手として、存在感を大いに発揮していましたね。

――例えばこの場面。ルカクがボールを収め、ロマニョーリが対応。その背後のスペースにビダル(青)が侵入するが、ケシエもカバーに入る

――その後の場面。ハキミからビダルにパスが送られるが、ケシエがインターセプト(水色)。そのままカウンターに繋げた
○交代の意図
62分、ミランはレオンとサレマに代え、クルニッチとカスティジェホを投入。カスティジェホはそのまま右サイドに、一方のクルニッチはトップ下に入り、チャルハノールは左サイドに回ります。
この交代に関しては、どちらかというと守備面を重視したとみて間違いないと思います。
もしスコアが同点ないしビハインドの状況であれば、ディアスやハウゲといった攻撃的なカードを切ったのでしょうが、1点リードという状況でしかも若干押され気味でしたから、フィジカル(守備での貢献度)と走力(カウンター)を考えて上記の2人を投入したのでしょうね。
そして72分にはロングボールから2人の速攻でチャンスを作り出しましたが、クルニッチが決められず。
対するインテルも67分にエリクセンをブロゾビッチに代えて投入。攻撃的なカードを切り、73分にはあわやPKかというシーンに絡みました。
更に83分にはビダルに代えてサンチェス。最後の攻勢を仕掛けます。
追い詰められたミランでしたが、チーム全体で意地の守りを見せてインテルの猛攻を凌ぎ切り、試合はそのまま終了。
インテル1-2ミラン
雑感
激戦となったミラノダービーでしたが、結果は1-2でミランの勝利となりました!!!
ミランがインテル相手にリーグ戦で勝利を収めたのは実に2015-16シーズン(ミハイロビッチ・ミラン時代)以来ということで、本当に久しぶりですね。
「自分がミラニスタになって初めてインテルに勝ったのを見た」という旨のコメントも拝見しましたし、改めて月日の経過というものを実感します。
いやはや…それにしてもやはりインテル相手の勝利は格別ですし、何ものにも代えがたい喜びを覚えますね。
なお、これでミランはリーグ4連勝ということで、暫定ながら単独首位に浮上しました。
まだ4試合を消化したに過ぎないとは言え、内容・結果共にこれほど充実したシーズン序盤など記憶にないレベルですから、弥が上にも期待が高まりますね。
このチームが今シーズン、どのような結果を残すか本当にワクワクしますし、今シーズンこそはきっと目標を達成し、ミラニスタ同士で喜びを分かち合えると信じています。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。