【安定のCBコンビ】 ミラン対パルマ 【セリエA第33節】
スタメン

4-2-3-1のミランと、4-3-3のパルマ。
○2人のパフォーマンス
この試合の注目としては、やはり先発に抜擢されたビリア、レオン両名がどれほどのパフォーマンスを見せるかという点でした。
最初にビリアについてですが、今回は良い面と悪い面の両方が見られたかなと。
良かった点は、何といっても積極的な縦パスと攻撃参加。
おそらくピオリに試合前、「縦パスを常に狙っていけ」とでも言われていたのでしょう。悪いときは横バスとバックパスによるバランサー(という名の消極的なプレー)がお仕事のビリアですが、今日は前方のチャルハノールやイブラ、ボナベントゥーラにバシバシと縦パスを当てていきます。
この点については、パルマが前方からのプレッシャーが強いチームではないというのも大きかったかなと。ボールキープ力に欠けるビリアですが、今回はプレッシャーが比較的弱いので前を向きやすかったですからね。
そして、縦パスを出しながら自らも積極的に前に行くという点も良かった。
これまでアンカー起用の多かったビリアですが、今回は2ボランチの一角として起用。そのため前線への飛び出しも求められましたが、しっかりとやってくれていたかなと。
一方で、守備面に関して、失点シーンに絡んでしまったというのはやはり印象が悪い。
今日の特に前半はチームとしてパルマの攻撃をほぼ完全に抑え込んでいただけに、数少ないピンチで目立ってしまったのは痛かったですね。
また、今ではベナセルが広範なスペースをスピーディーにカバーしてくれているだけに、その代役として考えるとどうしてもビリアには物足りなさを感じます。
ただ、予想よりはずっと良いパフォーマンスを披露してくれたので、これを維持してくれるなら残りのシーズンで出番は回ってくるかなと。
続いて、レオンについて。今回はサレマ、パケタ、カスティジェホがベンチ外ということで、右サイドハーフで先発起用。これは個人的に楽しみでした。
というのも、レオンは左サイド起用時もカットインというよりは縦に突破するプレーを好んでいる(得意とする?)ように感じていたので、利き足と同じ右サイドならより縦に抜きやすいんじゃないかなと。
ただ、結論から言うと決定的なプレーは見せられず。このポジションであれば、もう少しクロス精度と斜めの飛び出しに磨きをかけたいところですかね。
まぁ右サイドでのプレーは左と比べるとまだ慣れていないでしょうし、右サイドで幅を取り中央を渋滞させなかったという点で消極的な役割はきっちりとこなせていたため、今後も機会があれば試してもらいたい起用法だと個人的には思います。右サイドでの仕掛けには可能性を感じましたしね。
○ミランの好守
さて。以上を踏まえたうえで、試合内容に目を移していきましょう。
まずはミランの守備についてですが、この試合のミランは積極的にパルマのビルドアップを妨害する形を採用。

上記の画像はパルマのゴールキック時。イブラがパルマの右CB、ボナベントゥーラが左CBに付く。ケシエが前に出てアンカーをチェックし、左サイドのチャルハノールが中央に絞って右SBと右インサイドハーフの中間の位置に立つ。そして右サイドのレオンはパルマの左SBへのパスコースを切る(レオンは画面外なので、不確かですが)というのが基本的な形です。
ミランとしては、パルマの右SBのダルミアンにボールを持たせ、そこへプレスをかけて奪いたいという狙いがあったのでしょう。パルマとしてもそれをわかっているので、ダルミアンには単純に渡さず右サイド前方にキーパーがロングボールを蹴ったり、もしくはダルミアンに渡してもすぐにアンカーやインサイドハーフが動いてボールを引き出そうとします。

――例えばこの場面。右CBのイアコポーニがボールを持つ。右SBでダルミアンがフリーだが、チャルハノールがプレスの準備をしている。そこでイアコポーニは、前方のグラッシへの浮き球のパスを選択。

――しかしグラッシには合わず、チャルハノールがボール奪取
このようにして、大体の場面においてミランがパルマのビルドアップの妨害に成功。この点に関し、素晴らしかったのがロマニョーリのパフォーマンスです。
ケシエがアンカーを見ることで生じる背後のスペースを積極的に前に出ることで消し、ほとんどの場面で相手を自由にさせることがありませんでした。

――この場面では、ダルミアンからのパスを下がって受けたクルゼフスキがテオのプレスを受けながら、フリーのブルグマンにボールを渡す

――その後、ブルグマンはケシエ(とテオ)の背後のスペースへスルーパス。そこへグラッシが走り込む

――しかし、そこへロマニョーリがスライディングでカバー。事なきを得た
逆に、それができなかった43分の場面ではこのスペースでグラッシにボールを持たれ、前線のジェルビーニョにスルーパスを通される。そして、その流れから失点を喫しています。
これは彼のプレーがいかに相手にチャンスを作らせない上で重要だったかを示すものではないかと。
○ミランの攻めとパルマの守り
そんなわけで、大体においてパルマの攻撃を抑え込み主導権を握ったミランは、速攻を織り交ぜながらパルマ守備陣を次々に脅かしていきます。
パルマは両ウイングが下がる4-5-1の形で、おそらく中央を固めて守ろうとしますが、左サイドのジェルビーニョ(途中からカラモー)の守備が良くなく、また右のクルゼフスキも対面のテオに対し時折マンツー気味で対応するため、5バックのような形になるシーンも。よって、中盤にスペースが生まれやすく、そこをチャルハノールとボナベントゥーラ、そしてイブラを中心に使われます。

――ビリアがボールを持った場面。グラッシがチャルハノールに付き、アンカーのブルグマンがボナベントゥーラをマーク。更に、右サイドのクルゼフスキがテオ(画面外)を気にしてサイドに寄っているため、バイタルエリアにスペースができている。そこで、ビリアからイブラへの縦パスが通り、同時にチャルハノールがそのスペースへ飛び込む

――イブラからのパスを受けたチャルハノールは、そのままダイレクトシュートを放つ
先述の通り、ビリアがライン間にずばずばとパスを通しますし、レオンも右サイドで幅を取り、中央を渋滞させないので前節よりもスムーズな形で攻めることができていたかなと。
この形ならイブラも下がり過ぎることなく中央でポストプレーに専念できますし、実際にイブラのポストプレーを起点に惜しいチャンスを次々と作り出していきます。
それと途中から、パルマは前からの圧を強め、プレスをかけにくるシーンが増えますが、その場合ミランはサイドを上手く経由するなどしてプレスを回避し攻め込んでいきます。

――この場面では、ミランのダブルボランチにそれぞれパルマの両インサイドハーフが付く。そこで、ケアーは左サイドへのロングボールを選択

――無事にテオにボールが渡る
しかし、最後の局面でのミスが目立ち、ゴールには至らず。21分には見事な連携から最後はボナベントゥーラがネットを揺らしますが、惜しくもオフサイド。
対するパルマはカウンターを中心に何度か反撃を試み、先述の通り43分に得点。
内容的にはミランが圧倒していていただけに、なお悔やまれる失点でした。
前半はパルマの1点リードで終了。
○スーペルゴラッソ
後半早々。前半にイエローを貰っていたコンティに代えてカラブリアを投入。
それと、相手ゴールキック時にアンカーに付くのがビリアに変更。これはケシエを前に上げないことで左サイドにスペースを作りたくなかったんでしょうかね。
ビリアが上がってくる分、パルマとしてはミラン側右サイドを攻めたいですし、実際にそちらサイドからも組み立ててスペースを突こうとします。ただ、一度惜しいシーンがあったくらいで、全体的に上手くいかず。ロマニョーリ同様、右サイドではケアーが安定したカバーリングを披露。
対するミランの攻撃は前半同様に決して悪くないだけに、パルマが完全に守りを固めてしまう前に何とか得点を奪いたいところ。50分には速攻から最後はボナベントゥーラがミドルシュートを放ちますが枠外。
すると54分、ケシエがとんでもないミドルシュートを突き刺し、ミランが早々に同点に追いつきます。
これまでのケシエであればあんなところから撃ってもまず入らないわけですが…。最近の好調を裏付ける完璧なシュートでした。
56分にはビリアに代えてベナセルを投入。すると数分後の59分、セットプレーからロマニョーリが決め、ミランが逆転に成功。
今日は前半からセットプレーで惜しいチャンスを作っていて、確かに得点の匂いがしていましたが…ミランがセットプレーから点を取るのは珍しい(笑)
○記念試合でのゴールなるか
61分、ミランはレオンに代えてレビッチを投入。レビッチを左に、チャルハノールを右サイドに回す。
とはいえチャルハノールは中央にガンガン入ってくるため、左サイドに選手が偏る配置になります。
そして左でボールを回し、機を見て中央に入り込むチャルハノール、ボナベントゥーラへのパスを起点に、次々とチャンスを作っていくミラン。
ただ、イブラが強引に点を狙いに行くこともあり、なかなかゴールが決まらない。

――イブラがボナベントゥーラからのクロスを後ろ向きで収めた場面(オフサイド)。そこへチャルハノールが走り込み、パスを要求するも、イブラは強引に反転しシュートに持ち込む
前半からですが、この試合のイブラは明らかにゴールが欲しくてしょうがないといった様子で、いつも以上に積極的にゴールを狙っていきます。
というのも、イブラはこの試合が、ミランでの通算100試合目の出場という記念すべき一戦でしたからね。

――この試合のシュート数ランキング(『WhoScored』より)。イブラが9回で断トツ
終盤に差し掛かる時間帯になると、パルマもクルゼフスキが推進力を活かしてチャンスを作り出す。
75分にはその彼のパスからイングレーゼが決定機を迎えますが、ドンナルンマがスーパーセーブで防ぎます。
すると77分、ミランがプレスを躱してボナベントゥーラが左サイドを突破し、バイタルに走り込むチャルハノールにパス。ボールを受けたチャルハノールが右足一閃。ネットを揺らし、試合を決定づける3点目を獲得しました。
パルマは帰陣する人数が少ないうえ、レビッチとテオのフリーランニングによってDFラインを押し込まれた結果、チャルハノールにフリーかつバイタルでシュートチャンスを与えてしまいました。

――ゴールシーンの少し前の場面について。ボナベントゥーラがドリブルで運び、テオがエリア内に侵入。CBのデルマクはテオへのパスを警戒し、少し下がる

――ボナベントゥーラは中央に走ってきたチャルハノールへのパスを選択

――デルマクが急いで距離を詰めるも間に合わず、チャルハノールにフリーで強烈なシュートを撃たれる
チャルハノールもシュートが入らないときはとことん入らないわけですが、今回は低くおさえた強烈なシュートを叩き込んでくれました。
3点目を決めた余裕ができたミランは、80分にチャルハノールとテオを休ませ、クルニッチとラクサールを投入。
その後もイブラのために貪欲にゴールを狙いに行くミランでしたが、イブラにゴールは訪れず。
ケシエのクロスに頭で合わせたシーンは決まったと思ったんですけどね。
一方で、パルマの攻撃はしっかりとシャットアウト。一つだけ危ないシーンがありましたが、ドンナルンマがまたしても防いでくれました。
ミラン3-1パルマ
雑感
まず何よりも「逆転勝利を収めることができた」という点が最も重要だったわけですが、今後に向け、ベナセルとレビッチに休養を与えられたことも良かったですね。
確かに、ミランは強豪3連戦というタフな日程をこなした直後であり、更に今後の相手(ボローニャ、サッスオーロ、…)を考えた場合、今回のパルマ戦でベナセルとレビッチを休ませるというのは相手の調子的にも戦術的にも妥当だったと思います。
しかし一方で、既に中盤の要となっているベナセルと点取り屋であるレビッチをスタートから外して休ませるというのは簡単な判断ではなかったと思いますし、このタイミングでターンオーバーを決行し、それでもなおしっかり勝利を手にしたピオリ監督は評価されて然るべきでしょうね。
欲を言えばイブラにゴールが生まれて欲しかったですが、1点ビハインドとなった状況からキッチリと逆転できたというだけでこの試合は十分に素晴らしかった。
イブラ的には不満もあるでしょうし、ゴール前でのミスもかなり多かったですけど、やはり彼がピッチにいるというだけで味方選手全員に間違いなく好影響を与えていると思うので、本当に偉大な男です。
今回の勝利で、リーグ戦再開から8戦負けなしと快進撃を続けるミラン。
次節ボローニャ戦でも勝利を収め、この記録を伸ばしていきたいところですね。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。