【復活のディアボロ】ミラン対ユベントス【セリエA第31節】
本当はもっと早く載せたかったのですが、図解の作成に二夜かかった上、結局のところ不手際(フリーズ)で消去してしまうというとんでもなく愚かなことをしていました。
なので、先ほど早急に作った雑な必要最小限の図と、いくつかのデータしか画像がなく、今回は普段以上に文字ばかりの見づらいマッチレポートになってしまいましたがご了承くださいませ。もう二度と作図はしません(笑)
スタメン

4-4-2のミランと、4-3-3のユベントス
まずはミランの守備について。
この試合のミランはハイプレスを志向し、継続的にプレスをかけます。

――ルガーニがボールを持ち、右サイドのクアドラードにパスを出した場面。クアドラードにパケタが詰める
そして、相手アンカーのピャニッチに対しては特定の誰かがマンマークで付くことはなく、2トップの一角(大抵はレビッチ)もしくはダブルボランチのいずれかが状況に即して対応していきます。

――上記の続きの場面。クアドラードは中央のピャニッチへパスを送るが、ケシエが一気に距離を詰める

――ケシエに詰められたピャニッチは前にパスを出せず、後ろを向きルガーニへバックパス。その後、もう一度クアドラードにボールが渡るが、パケタに再度詰められボールを外に出してしまい、ミランボールに。
一方、これが破られる状況としては、ユーベ側左サイドで選手がフリーとなり、そこから縦パスや右へサイドチェンジされるというものが一つ。
例えば、レビッチがピャニッチにマークに付いた場合に、左CBのボヌッチが空くため彼にボールを持ち運ばれるシーンというのが何度かありました。

――例えばこういったシーン。GKのシュチェスニーがボヌッチへパス。ピャニッチをマークしていたレビッチが追いかけるも間に合わず、ドリブルで前方に運ばれる。その後、空いている右サイドのクアドラードにサイドチェンジ。
しかしながら大体において、ユベントスの後方からの組み立てを妨害できていたかなと。
そして22分には、相手のミスを誘って敵陣深くでボール奪取。その流れからエリア内でイブラがシュートを放ちました。

――22分の場面。クアドラードのパスがピャニッチに合わず、ケシエがインターセプト。その後、レビッチ、イブラと繋いでシュートを撃つ
また、プレスを躱された場合は、CB陣の縦へのカバーや中盤の素早い帰陣によって守る。
この点に関してはファールで相手を止めるという場面も多く(特にパケタ)、それにより自陣でユベントスにセットプレーのチャンスを多々与えてしまったわけですが、しっかりと弾き返していきます。
こうした状況におけるロマニョーリ&ケアーはもとより、長身のイブラが守備時セットプレーにおいても本当に頼もしい存在ですし、セットプレーでチャンスを作らせることはほとんどありませんでした。

――参考:この試合前半における、両チームがファールをした場所を示す図(ミランは赤。ユーベは青。『WhoScored』より)ミランは10のファールの内、6つが自陣でのファール。一方のユベントスは8つのファールの内、自陣でのファールは1つだけ
○ミランの攻撃、ユベントスの守備、
一方、ミランの攻撃、ユーベの守備についてはどうか。
ユーベは守備時に4-4-2となり、ハイラインハイプレスを志向するわけですが、それに対しミランはヒラリヒラリと躱していきます。
この点においては、相変わらずベナセルが傑出したパフォーマンスを見せてくれるわけですが、その他の選手も素晴らしい。
組織が成熟し、落ち着いてビルドアップできるようになったため、危なげなくボールを回していきます。
安定したDF陣の組み立てに加え、ケシエもベナセルの動きを見ながらパスコースを作り出す動きをしっかりと遂行。時にはパケタも下がりながらボールを引き出していきます。
またユーベの2トップがそこまで守備意識が高くないこともあり(イグアインはベナセルを見なきゃいけないようで大変そうでしたが)、相手の前線と中盤の間に何度もスペースを作り出しながら、落ち着いてボールを前進させることができました。
その後はテオとサレマが各サイドの幅を確保しながら、前線にレビッチが張り、ライン間でパケタとイブラがボールを引き出しながらチャンスを作っていこうという形です。
レビッチを頂点に置いたのは、ユーベのハイラインの裏を突く狙いもあってのことだと思いますが、レビッチの裏抜けに合わせるパスというのをミランはあまり選択せず。
先述の通り後方から綺麗にボールを繋げているので、ロングボールはあまり必要ないという判断でしょうかね。
それと前半に関していえば、レビッチが縦パスを処理し損ねるシーンというのが散見された印象です。
今でも十分すぎるほどのパフォーマンスを披露してくれているレビッチですが、欲を言えばポストプレーの精度を上げたいところですかね。
そしてイブラは基本的にやや下がり目かつ中央右寄りに位置しながら、チャンスシーンでゴール前に飛び込んでいく形。ミスも少々ありましたが、ゴール前では流石の存在感を発揮。
ただ、チーム全体としてはフィニッシュの局面でのミスもあり、シュートシーンの数自体というのは多くありませんでした。
今回のトリデンテ(レビッチ、イブラヒモビッチ、パケタ)は中々に興味深かったものの、イブラをこのようにやや下がり目の位置でプレーさせるのであればパケタはあまり活きない気がします。パケタとしては、今後イブラと調和していけるかが重要になってきそうです。
まぁ今後は前者2人にチャルハノールという組み合わせになることが濃厚でしょうかね。
○前半終盤の苦戦
30分頃から、ミランは疲労により前線からプレスがかかりにくくなり、徐々に押し込まれる展開に。
そうなってくると活き始めるのがピャニッチ。システムの噛み合わせ上、フリーでボールを受けやすい彼を経由していくことでミランを揺さぶり、クロスやシュートチャンスを増やしていきます。
36分には、ピャニッチを止めに行って倒してしまったベナセルにイエロー。
終盤は嫌な流れが続きましたが、しっかりと守り切りスコアレスで前半終了。
○怒涛の展開
後半開始早々の46分、自陣右側からラビオがドリブルで爆走。最終的にミドルシュートを突き刺してユベントスに先制されます。
確かにラビオのプレーは素晴らしかったわけですが、ミラン側のミスによりお膳立てしてしまった得点でもあったかなと。非常に勿体ない。
更に53分、クアドラードからのDFライン裏へのロングボールを処理できず、ロナウドに一発で裏を取られて2失点目。
近年の対ユベントスであれば早くもゲームセットといった感じですが、今回のミランは一味も二味も違います。
ミランは気落ちすることなく、後半から投入されたチャルハノールを中心に、主に左サイドから攻めていく。
そして、後半のポイントとしては、イブラが前半とは異なり中央の左側高めに位置するという点。これは良い戦術修正です。
これによってチャルハノールと絡みやすくなりますし、しかも相手右CBのルガーニ(人に付くのが得意じゃない選手)とマッチアップしやすくなるため、イブラのポストプレーが存分に発揮できる状況になりました。

――参考:この試合の前半におけるイブラヒモビッチのボールタッチポジション(右攻め。『WhoScored』より)。やや下がり目、それも右サイド寄りでボールを多く受けている。

――参考:後半におけるイブラのボールタッチポジション。PKとキックオフを除き、ほぼすべて中央左寄り高めでボールを受けている
更に、レビッチも積極的に左サイドに寄ることで崩しに関与。一方、右サイドではサレマ(60分からは交代で入ったレオン)があまり中央に寄らず幅を取ることで、左からのサイドチェンジの受け手になるという構成です。
これは左からの攻め一辺倒にはせず、時おり右へのサイドチェンジを選択して手薄なサイドを活用し、ユーベDF陣を揺さぶるためですね。
そのようにして狙い通り、チャルハノールとイブラ、そしてレビッチを中心に、ミランが惜しいチャンスを次々と作り出していきます。
すると59分、テオがチャルハノールとのワンツーでエリア内に侵入してクロス。そのボールがボヌッチの手に当たり、VARの結果ミランがPKを獲得。
62分、イブラがそのPKを冷静にモノにし、1点を返すことに成功します。
続く66分。チャルハノール、イブラと繋ぎ、最後はケシエがエリア内でボヌッチを躱してシュートを放ち、ゴール。ミランが瞬く間に同点に追いつきます。

――2点目に繋がる少し前の場面について。チャルハノールからボールを受けたレビッチは、右サイドでフリーのレオンへサイドチェンジ。これによってユーベDF陣を押し込む

――その後の場面。レオンは中央へドリブルし、後方から走ってきたケシエにパス。ケシエは横のチャルハノールへ預け、エリア内に走る

――チャルハノールがイブラにパス。イブラはルガーニを背負いながら、走ってきたケシエに絶妙なパスを送る。ケシエはパスを受け、前方のボヌッチを躱してシュート。ゴールを決めた
2点目はまさに理想通りの得点といった感じです。
その直後、イブラに代わってボナベントゥーラを投入。後半のイブラは随所に決定的なプレーを披露し、結果的に1ゴール1アシストを記録。堂々とピッチを去ります。
○最高の展開
2点目の直後となる68分。相手のパスミスを拾って一気にカウンター。レオンがルガーニの股下を通す冷静なシュートをゴールに沈め、ミランが逆転弾を奪取。
10分にも満たない時間で怒涛の3点を獲得。凄すぎました。
その後のミランはレビッチを裏に走らせ、カウンターという形でチャンスを演出していく。
一方、逆転されたユーベはコスタ、ラムジー、マテュイディを一気に投入。ハイプレスの強度を高め、攻勢をかけます。
ミランとしてはレオンがいる右サイドが心許なく、実際にユーヴェは同サイドから崩しかけるシーンがありました。
77分にはミラン側右サイドで得たCKからルガーニが強烈なヘッド。ドンナルンマが好セーブで防ぎます。
しかし80分、途中投入のアレックス・サンドロが自陣深くでサイドチェンジを痛恨のミス。
エリア内でボナベントゥーラに拾われ、最後はレビッチが強烈なシュートを突き刺しミラン4点目。試合を決定づけました。
82分、ミランはコンティとレビッチに代えて、カラブリアとクルニッチを投入。
これは先ほどから怪しかった右サイドを固める為の守備的な交代でしょうね。
コンティはすでにイエローを貰っていましたし、退場のリスクは避けたい。そしてレビッチの位置にレオンを回し、空いた右サイドの位置にクルニッチを入れると。
その後はリスクを極力避け、パスを回しながら時間を使うミランと、主にコスタのいる左サイドを使って何とか点をもぎ取りたいユベントスという構図。
いつものミラン対ユベントスとはまさに真逆の展開。最高です(笑)
ミランは3点目を許すことなく試合終了。
ミラン4-2ユベントス
・雑感
ユベントス相手に2点ビハインドから4点を奪い返すという夢のような試合展開で、ミランが逆転勝利を果たしました。
素直に白状しますが、2点を取られた時点で僕は負けたと思いました。
それもそのはずで、ミランがユベントス相手に2点以上を取った直近の試合は何と2013-14シーズンのリーグ戦とのこと(ちなみにその試合も3-2で敗北)。
また、3点だと2009-10シーズンにありましたが(3-0で勝利)、4点となると、実に1988-89シーズンのリーグ戦までさかのぼるみたいです(4-0で勝利)。
まぁそんなわけで、諦めムードで試合を静観していた情けない僕だったのですが、一方の選手たちは気落ちすることなく反撃を開始し、最終的には4得点を挙げて勝利と。最高です。
先日、ローマ勢相手に2勝したことももちろん滅茶苦茶嬉しいことではあったのですが、僕の中ではやはりユベントス相手の勝利は格別。
この種の喜びを味わうことができるのはユベントスとインテルに勝ったときだけなので(それだけこの2クラブは特別)、数年ぶりの喜びを噛み締めております(笑)
さて。今のチームは組織的にもメンタリティという部分においても、近年のミランの中で間違いなく最高レベルのものですが、それはピオリとイブラヒモビッチという2人の指導者が中心となって作り上げたものです。
極めて難しい状況下にあったミランにやってきて、ここまでのものを作り上げたこの2人には改めて尊敬の念を示させていただきます。
残念なことに2人とも今季限りでの退団が決定的ですが、今シーズンはまだ7試合残っています。
最後まで彼らの勇姿をしっかりと見届けたいですし、結果という形で報われて欲しいと心から願います。
そのためにも、次節のナポリ戦でも勝利を収めて欲しいですね。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。