【完勝】ラツィオ対ミラン【セリエA第30節】
スタメン

イブラヒモビッチが遂に先発復帰のミラン。
ラツィオはコレアとアルベルトが前線でコンビを組む。
○ミランのダブルボランチ
過密日程ということもあり、両チームとも全体的にスローテンポな前半。
まずはミランについて詳しく見ていきたいと思うのですが、今回のポイントの一つとしては、ボランチのケシエとベナセルの配置をいつもとは逆にするというもの。
この狙いとしてはまず守備時において、ケシエをサビッチに付きやすくさせることで、空中戦を始めフィジカルバトルで負けないようするためというのが一つ考えられます。

――このように、サビッチを注意深くマークするケシエ

――サイドからクロスが入りそうな場面。特に、サビッチがエリア内に侵入した際は厳しくチェックする
本日もタフな仕事を任されたケシエですが、非常に良くやってくれたのではないかと。
サビッチの後方からエリア内に飛び出す動きは驚異ですし、ストライカー不在の今回のラツィオにとって、彼の空中戦はいつも以上に頼りにしていたはずですしね。

――上記と同様の場面。クロスに備え、ケシエが最終ラインのカバーに入る。この時点でサビッチは侵入していないが、ケシエはサビッチの動きをしっかりと確認している

――その後の場面。クロスが入り、サビッチが飛び込んでくるが、ケシエがしっかりとックリアする
ダブルボランチの配置を変えたもう一つの理由は、ベナセルを基本的に右サイドに置くことで、比較的フレッシュな状態であるサレマとコンティがいる右サイドから攻めようというものがあったのかなと。
テオの上がりがいつもより控えめでしたしね。
ただ、全体としてはそこまで機能せず、決定機はおろかシュートチャンスも作れない時間帯が続きます。
この点に関連し、ちょっとスタメンは厳しいかもなあと個人的に感じたのは、ボナベントゥーラ。
スピードは前からですが、今は運動量も落ち、キープ力も下がったため試合から消える時間が長くなりました(それでも要所でかなり良いプレーは見せてくれますが)。特に今回はイブラとの相性を考えても、彼の近くにはもっと運動量とスピードのある選手を置きたいところだったかなと。
ただ、スペースがあり、ゴール近くで良い形でボールを持てれば今なお存在感を発揮しますし、それはこの試合の後半からのパフォーマンスを見ても明らか。
要は起用法の問題であって、オープンな試合展開での途中投入といった使い方のほうが良いのかなと。現在は過密日程ですからあまり贅沢は言えませんけどね。
それと、今回はベナセルが右にいることが多い影響で左サイドではほとんど上手くボールが回らないため、前半途中から、痺れを切らしたイブラが下りてきてボールを受け始める。

――イブラ(黄)が自陣まで下がってくる
気持ちはわかりますが、これをやられてしまうと前線でボールを受けてくれる選手がいなくなるため、あまり望ましくない状況に。

――右サイドからサレマがアーリークロスを入れる場面。この場面でイブラ(黄)はボールサイドに寄ってきており、エリア内にいない
しかしながら、23分。左サイドに流れてきたベナセルの縦パスを起点に敵陣深くまでボールを運び、最後はチャルハノールがシュート。DFの足に運良く当たってコースが変わり、ゴールに吸い込まれていきました。
この試合の初シュートがゴールになるというまさかの展開です。
更に33分、ミランがカウンターから右サイドを突破し、最後はサレマのクロス。これがエリア内のDFの手に当たってPKを獲得。
このPKをイブラが何とかモノにし、ミランが追加点。
シュート2本で2ゴールという素晴らしい得点効率の良さ、前節とは大違いです(笑)
オフサイドでしたが、コンティの素晴らしいクロスからイブラがダイレクトで合わせてネットを揺らしたシーンもありましたね。
そんなわけで、ミランが前半のうちに2点を奪取する最高の状況になりました。
○ラツィオの大不振
対するラツィオについて。インモービレ、カイセドのFW2選手を出場停止で欠いたことで苦戦が予想された彼らですが、結論から言うとそれが大ダメージになっていたかなと。
今回はルイス・アルベルトとコレアが前線でコンビを組むことになったわけですが、アルベルトが一列上がったことで中盤の構成力が大きく低下。
パローロではアルベルトの代役になり得ず、縦にパスを通せないので結局アルベルトが下がってボールを受けることに。
それによりチームの重心が下がりますし、さらにコレアも下がる傾向が強いので、前線に張る選手がいないという状況が散見されました。

――例えばこの場面。左サイドで詰まったパローロがラドゥにバックパスし、アルベルトがサポートのため下がる。同時にコレア(桃)も相手ライン間でボールを受けるため下がる。ラドゥはコレアへのパスを選択。

――コレアがボールを受けるが、ケアーがしっかりとマーク。コレアは強引に前を向こうとするが、ボールロスト。このように前線に選手が残っていないため、DFがしっかりと前に出て潰しに行くことが可能
ミランの前線のプレッシャーが弱いため、ラツィオは敵陣までは運べるものの、上記のためそこから手詰まりになってしまう、と。裏抜けする選手がいないのにDFライン前でパスを繋がれてもあまり怖くないですしね。
更に、ラツィオの最大の武器ともいえるカウンターも、鋭く縦を突くインモービレがいないこともありほとんど機能せず。
リーグ再開後はインモービレの調子があまり上がっていないようにも見受けられましたが、やはり戦術的に重要な存在である彼がいないのはラツィオにとって痛恨だったかなと。
加えて、過密日程による選手のコンディション不良も相まって、全体的に相当低いパフォーマンスでした。
それゆえ作り出したチャンスも少なく、惜しいシーンはあれど決定機は皆無といっていいものだったかなと。
また、前半中盤辺りからサビッチを高く上げて積極的にクロスのターゲットにし、アルベルトをやや下げる。そして、元々サビッチのいた右サイドの位置にパローロを回す形でバランスを取り戻そうとしましたが、完全に裏目に出る。
というのも、この変更によりアルベルトの守備負担が大きくなったことで、中盤左側のスペースが空きやすくなり、イブラヒモビッチのゴール(オフサイド)や2失点目を喫する原因の一つとなりました。

――イブラのゴール(オフサイド)の少し前の場面。ラツィオがこのような形でハイプレス(画面から見切れているが、ベナセルにはアルベルトが付いている)。ロマニョーリは縦のチャルハノール(画面外)へのパスを選択

――ボールを受けたチャルハノールは、ワンタッチで中央のボナベンへパス。アンカーのルーカスは背後のスペース管理を優先したため、ボナベントゥーラがフリーでボールを受けることができた。その後、ボナベントゥーラは右サイドのコンティへパス

――コンティが敵陣深くまでボールを運び、ファーサイドに正確なクロスを供給。そのクロスにイブラがダイレクトで合わせてネットを揺らした。このシーンにおいて、パローロとルーカスは戻れているが、ミラン側右サイドを埋めるべきアルベルトが戻れていないため、コンティはフリーでクロスを送ることができた
2失点目のシーンに繋がる場面でも、ラツィオは左サイドをミランに巧みに突かれています。

――アルベルト(茶)がボールホルダーのケアーへプレスをかける。そこで、ケアーは右サイドのコンティにパスを送る。

――ボールを受けたコンティに対し、対面のジョニーが対応。そこで、ボナベントゥーラ(緑)が下がってコンティからボールを引き出す。同時にベナセルは前方へ移動。コレアはボナベントゥーラをマーク。

――ボナベントゥーラがフェイントでコレアのマークを外し、前を向く。ベナセルはカバーに来ていたルーカスの背後のスペースへパスを要求。ボナベントゥーラがそのスペースにスルーパス

――ラドゥがカバーに入るが間に合わず、ベナセルはサイドを走っていたサレマにパスを通し、速攻へ

――サレマが敵陣深くまでボールを運び、クロス。クロスはラドゥの手に当たり、ミランはPKを獲得
そんなわけで、ラツィオとしては2点ビハインドという最悪に近い展開で前半を折り返すことになりました。
○後半の攻防
前半のレビューだけで疲れ果ててしまったので、後半はあっさりと(笑)
後半。ラツィオはルーカスに代えてアデカニェを投入し、コレアと前線でコンビを組む。中盤はアンカーがパローロで、両インサイドハーフにサビッチとアルベルトという形に変更。
一方のミランはイブラに代えてレビッチを投入します。
ラツィオは、途中投入のアデカニェ(正直良く知らない選手でした)が前に残り、時折裏を狙うので前線の関係性が向上。下がるコレアを起点に、いくつか惜しいシーンを作り出していきます。
そして53分にはフリーキックの流れからラツィオがカウンター。ミランは大ピンチを迎えますがコンティが完璧なラインコントロールでオフサイドに追い込む。素晴らしいプレーを披露。
対するミランはラツィオが積極的に前プレしてくるようになったため、前線のパケタもしくはレビッチに素早くロングボールを入れるセーフティな形を序盤は多く選択。
それからラツィオのプレスと疲れによってスペースが空き始めると、ボナベントゥーラが活き始める。
パケタ(前半途中からチャルハノールと交代)も左サイドでやや窮屈そうにしていましたが、ボナベントゥーラの動きを良く見ており何度か正確なパスを供給します。
そしてレビッチは鋭い裏抜けを繰り返し、ボールを引き出していく。今のボナベントゥーラにとっては、イブラよりレビッチとの方がやり易いのかもしれませんね。
すると59分、相手DFのロングパスをインターセプトしたテオが爆走ドリブルから中央フリーのボナベントゥーラへパス。その後、ボナベントゥーラがフリーのレビッチへのパスコースを冷静に見つけてパスを送る。最後はレビッチが1対1を制し、ミランが3点目を獲得。
中々にメチャクチャなラツィオの守備でしたが、いずれにせよテオの突破力、ボナベントゥーラとレビッチのゴール前での落ち着いたプレーは素晴らしいですね。
それからはとにかくカードと怪我人が出ないことが重要だったわけですが、結論から言うと怪我による交代は後半に関してはなく、イエローカードもパケタのみに抑えました。
ロマニョーリがルカクへのスライディング時にファール判定を受けた時は流石に肝を冷やしましたけどね。
終盤は、途中投入のカラブリアが危険なパスを披露することで、3点取って油断しているミラニスタを刺激したり、テオがラツィオのゴール前で優しさを見せたり(試合終了直後のブチギレっぷりは何だったんでしょう?)、クルニッチが久々にプレーしたりといった内容。
最後は滅茶苦茶テキトーで恐縮ですが、そんなこんなで試合終了。
ラツィオ0-3ミラン
雑感
完勝!ということで、大事な強豪3連戦の1戦目で見事に勝利を収めてくれました。
まぁ確かにラツィオの状態が最悪に近いものだったというのもありますが、層が薄く主力選手に疲労が溜まっているのはミランも同じこと。
そんな中で、変わらず見せたミラン選手の献身性には頭が下がりますし、この過密日程の中でも選手の良好なコンディションを維持しているピオリ含めたコーチ陣の働きぶりにはただただ感服です。
この試合で唯一懸念されたチャルハノールの負傷についても軽いものだったらしいですし、精神的には万全の状態で次節以降に挑めるのではないかなと。
そして次節といえば、相手はユヴェントスです。
数週前にはコッパ・イタリアで負かされた借りがありますし(スコア上は引き分けですが)、この勢いのままユヴェントスにも勝ってくれたら最高ですね。
Forza Milan!
非常に長くなりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。
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