【深刻な決定力不足】 SPAL対ミラン 【セリエA第29節】
スタメン

右サイドのカスティジェホを除き、ミランは先日に書いた予想スタメンと一致。
SPALは4-4-2表記が適切かなと。
○まさかの2失点
序盤からミランが優勢。
パケタが躍動し、相手のライン間でボールを引き出し周囲の味方を使いながら次々とチャンスを作っていきます。
またビルドアップに関しても、時折見せるSPALの前プレに対してはベナセルがしっかりとボールを引き出し回避する形で安定していました。

――上記の一例、SPALがプレスをかけた場面。ベナセルがタイミング良く中央に移動し、テオからフリーでボールを受ける。その際、ボランチのダボ(紫)はこの位置

――その後の場面。パケタ(赤)が空いた中央のスペースに移動し、ボールを引き出す。ボールを受ける前に背後の状況を確認し、レビッチの動きを察知する

――前を向き、右SBの背後のスペースに抜けだしたレビッチに素早くスルーパスを通す
正直、序盤の段階でミランの得点は時間の問題かなと高をくくっていたわけですが、11分。コーナーキックからのこぼれ球をヴァローティが押し込んでSPALが流れに反して先制に成功します。

――失点の数分前の場面について。CBのヴィカーリがボランチのダボに対応したケシエの背後のスペースを突いて縦パス。

――その後の場面。フロッカリ(桃)にボールが収まる。本来であれば潰しに行きたいところだが潰せず、自由にしてしまう。フロッカリはサイドに流れるヴァローティへパスを送り、最終的にCKを獲得。
このCKの流れから少し押し込まれ、その後に与えた2度目のCKで失点してしまいます。
上記のシーン前までほとんどピンチもなかっただけに、非常に悔やまれる失点でした。
しかも失点直後のワンプレーでカスティジェホが負傷するという最悪の展開に。サレマーカーズと交代します。
○決定力不足
失点後もミラン優勢の流れは変わらず。
ロマニョーリとベナセルを中心に組み立て、その後キレッキレのパケタ、流動性を高めるチャルハノールが中心となり何度もゴールを脅かしていきます。
また、緊急出場のサレマーカーズもドリブルでアクセントを付けながら、視野の広さを活かして上手く攻撃に絡んでいく。ただ、最後の局面でのキック精度は低い。
一方でレビッチ、テオの動きがあまり良くなく、チャンスシーンでロストするという場面が散見。
カルチョが再開してから走りまくってますし、流石にコンディションが厳しいでしょうか。
まぁそんなわけで、敵陣深くまで良い形で運ぶものの、クロスとシュート精度を尽く欠いて
不発に終わるミラン。
対するSPALは、チャルハノールが攻撃時に中央に動くことで生じる左のスペースを起点に攻めていこうとするわけですが、ほとんどチャンスは作れず。
しかしながら29分、GKの流れからフロッカリがとんでもないスーパーミドルをネットに沈めてSPALが追加点。
細かい文句は付けたくなりますが、このゴールに関してはフロッカリ凄すぎという感じでしょうか。
それにしてもこの試合展開で2点ビハインドという状況は何とも受け入れがたい…。
その後37分には、カウンターからレビッチのクロスにチャルハノールが合わせてネットを揺らしますが惜しくもオフサイドでノーゴール。
41分にはダレッサンドロがテオに危険なスライディングをかまして一発退場。SPALは10人になりました。
しかし、その後も得点は生まれず前半終了。
○攻撃的システム
後半は「リードを何としても守りきりたいSPALが引いて守り、点を何としてももぎ取りミランが攻勢をかける」という構図になることは明白でした。
まずSPALはフロッカリ、ヴァローティに代えてファレスとミッシローリを投入。システムを4-4-1に。
一方のミランはカラブリアに代えてレオンを投入。サレマを右SBに下げ、レビッチとレオンの2トップ、そしてチャルハノールをトップ下に配する4-3-1-2の形に変更。2点ビハインドということで、早速勝負を仕掛けてきました。
更に、今回は両SBを高く上げるかなり攻撃的なシステム。まず右サイドではサレマが幅を確保し、サイドを高く駆け上がった彼にボールを預け、相手のDFラインを広げてから中央を使う形でチャンスを演出します。

――例えばこのシーン。ガッビアが右サイド高めに張るサレマ(画面外)へとパス

――その後の場面。ケシエが斜めに走りCBを引っ張る。それにより生じたCB間のスペースへとサレマがパス。そのパスをレオンが受ける
同様の形は他にも見られました。

――ケシエの動きに今度はボランチが対応。それによりバイタルエリアが空き、そこでパスを要求するチャルハノールへとサレマがパス
一方左サイド~中央ではパケタ、チャルハノール辺りが流動的に動きながらボールを持ち、レビッチやテオ、ベナセル等と絡んでいく形でチャンスを作ります。
これらの点に関連し、2トップにより動きが限定されたこともあってかレオンのプレーはかなりキレていましたし、裏抜けとDFライン表でのシンプルなパスを使い分けて崩しに継続的に関与。イブラによる監視のおかげですかね(笑)
しかしながら、結局のところミランは肝心のゴールを決められず。前半同様ラストパスの精度を欠いたり可能性の低いミドルシュートを放ったりで上手くいきません。
その代わりにCKを次々と獲得していくわけですが、モノにできず。これはいつものことですが、非常に勿体ないですね(この試合では17本ものCKを獲得)。
○劇的な幕切れ
65分、ミランはテオに代えてラクサール、レビッチに代えてイブラヒモビッチを投入。精彩を欠いていた2人を交代させました。
その後、早速イブラへクロスを放り込んでいく戦術へシフトしていくミラン。シンプルですが効果的。
71分にはそのイブラの落としからパケタがダイレクトでシュートを放ちますが、ボールは本日何度目か知れない枠外へ。
そして、もう一人の交代選手であるラクサールは、左サイドを駆け上がりぽんぽんとクロスを供給。
フレッシュな状態ですし、余裕を持ってクロスを入れられる状況が多いこともあって正確なクロスを送り続けます。
すると79分、ラクサールのクロスをトモビッチがクリアミス。こぼれ球をレオンが冷静に流し込み、ミランがようやく一点を返すことに成功。

――参考:ラクサールのクロス本数とそのポジション。クロス7回はサレマの11回、チャルハノールの10回に次いでチーム3位(左攻め。『WhoScored』より)。
その後もミランが攻勢。SPALは後半を通して1人前線に残したペターニャとフレッシュな交代選手(ファレスとかストレフェッツァ)とで何とかチャンスを作ろうとしますが上手くいかず
そんなこんなでもどかしい状況が最後まで続きましたが、94分。サレマのクロスをクリアしようとしたヴィカーリが痛恨のオウンゴール。ミランが最後に同点に追いつき、試合終了。
SPAL2-2ミラン
雑感
「決定力不足」
今日の試合を一言で表すとすればこれに尽きるかなと。
個人的に、この試合は相手DFを崩す段階までは全く悪くなかったと思いますし、パケタとチャルハノールを中心に何度も惜しいチャンスを作り(かけ)ました。
しかし、個のクオリティが要求される最後の局面でミスを連発した結果、約40本ものシュートを撃ちながらもこのようなもどかし過ぎる結末を迎えてしまったのかなと。
そうした原因の一つに「過密日程による主力選手の疲労蓄積」があることは明白であって、中でもそれによってテオとレビッチが精彩を欠いていたのはミランにとって痛恨でした。
今後も過密日程がずっと続くことを考慮すると、この問題とはシーズンを通して付き合い続けることになるやもしれませんね…。
そんな中、数少ないポジティブな点としては何よりイブラヒモビッチの復帰が挙げられます。
途中交代してすぐさま持ち味を発揮するのは流石としか言いようがありませんし、チームにおいてオンリーワンの存在であることは今なお揺らぐことはありません。
頼もしい男が帰ってきてくれました。
そのほかにも、前節に引き続き良いパフォーマンスを披露したパケタとサレマは素晴らしい。後はフィニッシュの局面でのプレーを向上させていってほしいところです。
カラブリアは可もなく不可もなし。一方でガッビアは全く以てよろしくなかったわけですが、ロマニョーリとケアーの2人でシーズンを乗り切ることは流石にほぼ不可能なので、何とか成長して欲しいですね。
さて。次節からいよいよ困難を極める3連戦が始まります。最初の相手はラツィオです。
ラツィオも怪我人や出場停止を多数抱え、厳しいやりくりを強いられている状況ですので、勝機はあるかなと。ホームでの借りを返したいですね。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。