イブラ不在時におけるミランの戦術・システムを考える
Milan confirm injury to Ibrahimovic's right leg https://t.co/s1KYeQ7ft4 pic.twitter.com/HeoPteKVIU
— Reuters Sports (@ReutersSports) 2020年5月26日
当初はアキレス腱の負傷による長期離脱も懸念されましたが、そこまでには至っておらず不幸中の幸いといったところです。
ですが、約1カ月以上の離脱ということは、予定されるセリエA再開の日程には十中八九間に合わないため、ミランは再開後の数試合をイブラ不在で戦うことになりそうです。
そこで今回は、イブラ不在のミランがどのようなシステム・戦術で戦っていくのかについて、個人的な見解を述べさせてもらおうかなと。
ですので、今のシステム・戦術(前線のイブラに素早くボールを当て彼がポストプレーを行うことで、周囲の選手が前を向きながらパスを受ける)は使えないため、小さくない戦術変更がどうしたって求められます。
そこで、個人的な見解として、以下の4-3-3(4-1-4-1)システムへの変更が一つの策として妥当なところではないかと。

順に説明していきますと、まず基本メンバーはこの通り。ケアー、コンティ、ケシエに関してはコンディションに応じて()内の選手と入れ替えても特に問題はないかなと。後は不動。
続いて、ベースとなる戦術はミドルプレスからのショートカウンター。

(参考:守備時における中盤以上の選手たちの動き方、超簡略図。詳しくは以下の文参照)
最初に守備に関してですが、1トップのレオンが相手のアンカーポジションの選手(※相手のシステムは4-3-3を想定)をマーク。CBがボールを持っても積極的にプレスにはいかず、アンカーへのパスコースを徹底的に防いでもらいます(丸1)
代わりに、一定のラインを越えた敵CBに対してはインサイドハーフ(チャルハノール、ケシエ)が飛び出すことで対応。それにより生じる背後のスペースはベナセルの機動力でカバー(丸2)
その後、SBへボールが出ればサイドハーフ(カスティジェホ、レビッチ)が素早くプレスを仕掛け、それに連動してインサイドハーフやアンカーが囲い込んでボールを奪いにかかるというのが主な狙いです(丸3)
そして、狙い通りハーフライン近くのサイドでボールを奪えた場合、前線で縦ないし斜め(CB-SB間)に抜けるレオンに即座にスルーパスを出すという形で、彼に前向きでボールを収めさせます。
そこから、他の選手も受け手として一気に前線へ飛び出す。特にレビッチとカスティジェホはレオンと入れ替わるようにダイアゴナルに走ってエリア内へ飛び込んでもらいます。もちろん中盤にも運動量豊富な選手を揃えているため、前線へ一気に走ってフィニッシュワークに関与。
つまり、裏に抜け出してボールを受けたレオンがそのままゴールを決める、もしくはドリブルでキープし、走り込んできた選手たちにパスを送ってフィニッシュという形が主な狙いとなるカウンターです
これは第一に、レオンの「縦へのスピード」と「サイド(斜め)に流れた後にそのまま仕掛けられるドリブル」という強みを活かすためのものでして、これに近い役割は昨年末のアタランタ戦でも担っていました。

(参考:アタランタ戦のスタメン)
しかし、当時の両ウイングはチャルハノールとスソというふざけた選出でした。一人でエリア内に飛び出そうとしてもさほど効果的ではない前者と、そもそもエリア内に走る気のない後者では当然ながら前線中央に厚みを加えることはできず、レオンが抜け出しサイドで起点を作っても、肝心の中央エリアに人が少ないという問題が発生していました。

――参考:アタランタ戦におけるワンシーン。中央から右サイドに抜け出し、クロスの体勢に入るレオン(黄色)。しかしながら中央エリアにはチャルハノール(紫)と、ファーサイドからギリギリ走り込んできたボナベントゥーラ(画面外)しかいない。
この点について、先ほどの妄想イレブンであれば、両ウイングがスピードと運動量のあるレビッチとカスティジェホのため上記の問題は改善し得ますし、特にレビッチの現在の決定力はチーム随一のところがありますので、彼の得点力を活かすという点でも効果的かなと。
以上、イブラ不在時のベースとなり得る戦術について僕なりの見解を述べさせてもらいましたが、これには2つの大きな懸念点があります。
1つは「レオンが自らの役割をこなせるか」という点です。
上記の戦術において、レオンにはカウンター時における先導的な役割が与えられるわけですが、その役割を十全にこなすためには「味方のボール奪取後、素早く相手DFラインの裏を突いてボールを引き出すための駆け引きとトランジションの意識」に加えて「ボールキープ後、味方の上がりを待ってから最適なパスを出すための技術と判断力」の両方が求められます。
しかしながら、プレーの継続性という点において今季のレオンは少なくない課題を抱えていましたし(具体的には、フリーランニングの量が少ない、また裏抜けしてもパスが来ない場合、すぐに戻らずちんたら歩いている等)、パスの判断についても全体としてよろしくなかった印象です。
イブラが加入し、彼との共存によって改善の兆しが見られていましたが、上記の役割をこなせるほどに成長する(している)かについては中断期間の今だと何とも言えません。
もう1つの懸念点としては、「相手に引かれたときにどうするか」というものです。
まぁこの点については今季を通じた問題点の一つと言えますし、それこそイブラがいる時ですらはっきりとした解決には至らなかったわけですから、この戦術に限った話ではありませんけどね。
これに関しては一応僕なりに色々と考えてはみたものの、その考えを書き出すほどにまとめられませんでしたし、文量の都合もあるので今回は省略させていただきます。すみません。
さて。最後になりますが、イブラの代役が実質的に存在しない現状ですと、システム・戦術変更は避けられないと思います。
そして、そうなるとこれまで出場機会の少なかった選手に焦点が当たることになりやすいわけで、その中でも特にレオンは注目すべき選手になるでしょうね。
上記の戦術が採用されるかはわかりませんが、いずれにせよチャンスが与えられることは間違いないと思いますし、是非ともそのチャンスをモノにして欲しいです。個人的には大いに期待しています。
他にもパケタやクルニッチといった去就不透明な選手にも挽回のチャンスが到来しやすいですし、一部報道では下部組織のダニエル・マルディーニやコロンボといった選手の起用をピオリが考慮しているとのことです。
イブラの離脱は痛恨ですが、全員の力でその不在をカバーして欲しいと思います。
それでは今回はこの辺で。