カスティジェホのプレースタイルの変化 ~スタッツから読み解く~
新年明けてから2戦目となるカリアリ戦で先発を果たすと、そこから11試合連続でスタメン出場。それによって計1ゴール4アシストを記録しました。
また、総プレー時間に換算しても、昨季は1008分だったのが今季は既に963分(『WhoScored』より)。
セリエA中止でもない限り、シーズン終了時に昨季の総プレー時間を大きく上回ることは間違いないですね。
こうした点に関し、カスティジェホは『AS』にて以下のように語ったようです。
「セリエA1年目は適応の時期だった。それに毎試合15分ちょっとで自らの価値を証明することは簡単ではなかったね。スタートからプレーするのも2~3週間に1度だった。」
「ラ・リーガは全てがずっと技術的だったが、対してイタリアの方が守備は固い。セリエAのチームはより戦術面に取り組んでいるね」
昨シーズンは大体の時期においてウイング(特に右サイド、というかスソ)に後方からのボール運びも託していたこともあり、その代役として出場した際のカスティジェホは明らかに苦戦していました。
対面のDFに素早く詰められて前を向けず、バックパスや横パスに逃げてしまったり、前を向いても狭いスペースを前に上手くプレーできなかったりといったシーンが多発していましたしね。
しかし、再三指摘してきた通り、今季後半戦からはイブラの加入によってシステム・戦術が変わり、スペースが比較的ある状況かつ前向きでボールを受けられるようになったことでカスティジェホは激変しました。
無論、こうした変化はシステム・戦術変更によるものだけではなく、移籍2年目でセリエAの特徴を掴み始め、相手チームの組織的な守備に慣れ出したというのも大きいと思います。カスティジェホも、1年目はセリエAへの適応に苦しんでいたと言っていますしね。
そんな苦しい状況においても腐らずに適応しようと努力を続け、見事にレギュラーの座を勝ち取ったカスティジェホは本当に素晴らしいですし、彼の姿勢から学ぶべきことは多いと思います。
さて。続いては視点をデータに移し、カスティジェホの昨季と今季のスタッツの違いを見比べていこうかなと。
なお先述の通り、今季のリーグ戦における暫定プレー時間は現時点で昨季とほぼ同じ(昨季は1008分、今季はここまで963分)ということで、昨季の全試合におけるスタッツと今季ここまでのスタッツをそのまま比較していきたいと思います。ちょっとした参考程度にご覧ください。(※以下のデータはいずれも『WhoScored』より
・キーパス数
19(昨季)→37(今季)
約2倍に増加。
昨季よりもチャンスに繋がるパスを遥かに多く出せているというのは、システム・戦術の違いはもちろんあれど本人の判断力やプレースタイルの改善による部分も大いにあると思います。
Samu Castillejo has created 31 chances since the turn of the year - more than any other player in Europe's top five leagues
— WhoScored.com (@WhoScored) 2020年3月10日
Prior to the New Year this season the Spaniard had created just six chances across nine Serie A appearances for AC Milan pic.twitter.com/peGXvvopiF
ちなみに、カスティジェホは上記のキーパス数37の内、31回が後半戦に入ってから記録されたものですが、これは同時期における欧州5大リーグの中でトップの数字だそうです。
・ドリブル
成功数:19→17
失敗数:22→16
ドリブル成功数は減っていますが、それ以上に失敗数(ボールロスト)が減っています。よって、ドリブル成功率も今季は上昇。
こうしたドリブルスタッツに関しては、どのようなピッチ状況で仕掛け、その後どうなったか(チャンスに繋げられたか、はたまた無駄にキープしてチャンスを無駄にしたか等)が非常に重要だと思うためデータだけで一概には言えませんが、少なくともボールロストが減ったという点は確かですね。
なお、ミラン移籍前のビジャレアル時代(17-18シーズン)には、実に106回ものドリブルを試みていたそうです(成功数47、失敗数59)。今よりも2~3倍多かったようですね。(その分、出場時間も今より2倍ほど多かったわけですが)
・ポゼッション
トラップミス:28→24
ボールロスト(ドリブルミス以外):27→18
トラップミスや、相手のタックル等によるボールロストの数も減少。
移籍2年目となり、セリエDFとの対峙の仕方に慣れてきたことが原因の一つと考えられるかなと。
ボールの置き所や間合いの取り方などですね。
・守備
タックル数:36→45(成功数:15→22)
インターセプト数:8→21
ファウル数:27→10
個人的に注目したいのは、コチラの守備スタッツについてです。
タックル数、インターセプト数共に大きく増加している一方で、ファウルを与えた数は大きく減少しているという理想的な変化を見せています。
昨季は、カスティジェホの守備については当初から献身的な姿勢が目立っていた一方で、その動き方に関してはやや雑な印象が拭えませんでしたが(そのためファウルも多い)、その点もセリエA2年目となった今季は大きく改善されたと思います。実際、データにも表れていますしね。
組織的守備が身に付いてきたといえる証ではないでしょうか。
以上、昨季のスタッツと比較しながらカスティジェホのプレースタイルの変化について見てきました。
繰り返しになりますが、昨季~今季前半戦の苦しい状況の中でも腐らずに努力を重ね、こうしてレギュラーの座を勝ち取ったカスティジェホは本当に素晴らしいですし、こうした姿勢を選手たちには是非とも見習ってほしいと思います。
特に、加入1年目で現在苦戦中のレオンにとって正にカスティジェホは良き見本と言えますし、来季は彼のように捲土重来を果たして欲しいところです。
また、カスティジェホにもここから更なる成長を見せて欲しいわけですが、真面目な彼ならば現状に驕ることなく努力を重ね続けてくれるでしょう。
このまま成長を続け、これからも末長くミランに貢献して欲しいですね。
それでは今回はこの辺で。