フィオレンティーナ対ミラン 【セリエA第25節・マッチレポート】
スタメン

4-4-1-1(4231)のミランと、3-5-2のフィオレンティーナ
○ミランの守備とフィオレンティーナの攻撃
最初にミランの守備について。まずはハイ~ミドルラインでセットし、フィオレンティーナの左右のCBを最初はフリーにするというのがポイント。
仮に上記の2人がボールを持ったとしても、真ん中のCBにはイブラが、両WBにはレビッチとカスティジェホが付き、そしてフィオの中盤3枚はそれぞれケシエ、ベナセル、チャルハノールが上手く見るというのが基本的な形なので、一見して近くにパスコースがないという状況です。

――カセレス(紫)がボールを持った場面。近くのパスコースは近くのパスコースは封じられているので、カセレスは前方へのロングボールを選択するも、ボールはラインを割る
そして、状況に応じて、ボールを持ったCBに対してミランがパスコースを切りながら詰めてボール奪取を狙うというのが一つの守備の形です。

――ミレンコビッチからカセレスへのパスの場面。その際、カスティジェホ(黄)がプレスを開始

――その後の場面。一気に距離を詰めて奪いにいく
フィオはほとんどが左サイドからのビルドアップだったので、左CBのカセレスを狙う形が多かったですね。
これに対し、フィオは中盤で全くといって良いほどボールを持てないため、ロングボールに逃げる形が多い。
ミランのショートカウンターが怖いのか、そもそも繋ぐ気がないのか知りませんが、とにかく中央は使わずに(左)サイドから運んでいこうとする。
今日のミランはチャルハノールがアンカー(プルガル)にべったりと付く形ではないので、割とパスコースは空いていたんですけどね。それに、プルガルへパスが渡った時は良い形で何度か速攻が出来ていたのですが。

――この場面では、プルガル(茶)がチャルハノールのマークを外し、フリーのダンカンへパス。ダンカンはワンタッチでベナセルを躱し、速攻へ繋げた
25分辺りからフィオレンティーナはカストロヴィッリとダンカンの位置を変え、カストロヴィッリを左サイド高めの位置にポジショニングさせる。彼は基本的には左インサイドハーフの選手のはずですしね。
そしてロマニョーリ、ベナセルのいる左サイドより明らかに右サイドの方が崩しやすいこともあり、何度かカストロヴィッリが惜しいチャンスを作り出す。
しかし、全体としてチャンスはほとんどなく、(ドンナルンマのやらかしを除けば)危険なシーンというのはほとんどありませんでしたかね。
ちなみに、前半のボール支配率はミランが約63%ということで、ボール自体は相当握られていたことがわかります。
○フィオレンティーナの守備とミランの攻撃
フィオレンティーナの守備は、主にミドルラインでセットしてブロックを作りながら、状況(相手のバックパスとか)に応じてハイプレスに移行して前で奪おうというのがおそらく当初の狙い。
具体的な守備方法としては、まず2トップがミランの2CBに対応し、ミランのSBに対してはインサイドハーフが中央から流れて対応する形が基本。
ただし、全くといって良いほど前では奪えないため、大抵はリトリートして低い位置で守る形が多い。
こうした形に対するミランの攻撃については、先述のインサイドハーフが空けた中央のスペースを使ったり、ベナセルが2トップの背後のスペースを使ったりといった形で突破するというのものです。

――この場面では、ダンカン(青)がコンティをチェック。コンティは中央にフリーで構えるケシエ(橙)にパス
ベナセルは相変わらずプレス耐性もボールを引き出す動きも半端ないし、ロマニョーリもバンバン縦パスを通すし、今日はチャルハノールもいるし、おまけにフィオのプレスは良くないしで危なげなく前線のプレスを突破していきます(ドンナルンマがやらかし、一度だけ危ないシーンを作られましたが)。
しかしながら、問題は崩しのフェーズ(前線のプレッシャー)を超えた後であって、その後はリトリートした相手に攻めあぐねるという状況が前半を通して続きます。
理由はいくつかありますが、1つはフィオレンティーナが5バックで、かつWBがキッチリとミランの両サイド担当(右はカスティジェホ、左はテオ)をマークするため中々ボールを持てず、あまりサイド深くで起点を作れないというもの。
そういうわけで、アンカー(プルガル)の両脇のスペースをチャルハノール、ベナセル、イブラ(相手のDFラインが低く、スペースがないので積極的に下りてくる)辺りが突き、ボールを引き出して中央突破を図りますが上手くいかず。
というのも先述の通りサイドを上手く使えていないのでフィオを完全に押し込めていないですし、そのため3CB+プルガル辺りでしっかりとバイタルエリアを埋められることによりゴール前で攻めあぐね、中々フィニッシュまで持っていけないということですね。

――フィオレンティーナのコンパクトなローラインブロック
実際、ミランのこの試合前半におけるシュート数は3本。例えば先日のインテル戦・ユヴェントス戦では同時間帯でそれぞれ13本・11本のため、違いは明らかですね。
ちなみに前節のトリノ戦は6本で、今節と同様に苦戦しました。ただし、違いとしてはトリノがハイラインでのマンツーマンプレスがメインだったため中央のスペースが空きやすく、そこへロングボールを通してイブラに収めてもらうという形ができ、速攻へ繋げられた点。例えばイブラの落としをパケタが拾ったりして、惜しいチャンスを作っていましたね。
しかしながら、今回はその点に関しても上手くいかず。先述の通りフィオはミドルブロックがメインなのであまりスペースがないですからね。
おまけに、ロングボールの出し手としてかなり良かったケアーも今節は欠場ということで、この点も地味に響きました。

――今節の空中戦勝利数トップ5.前回のイブラは「11回」で断トツだった
グダグダと書きましたが、要はシステム変更後のミランが強みとしていた部分(イブラを軸とした速攻、相手を押し込んでからのバイタル利用、カスティジェホのクロスなどなど)がこの試合ではほとんど活かせなかったと。
ただ、この点について対戦相手のフィオが特別良かったというわけでは全然なく、相性として「引かれた相手を崩せない」というミランの抱える問題点が露呈したに過ぎないというのが個人的な印象です。
それでも34分、エリア手前でボールを受けたイブラヒモビッチが強引に突破しスーパーゴールを決めます。
しかしながら、VARによりノーゴール判定。
新ルールによると、攻撃側はボールが腕に当たったらハンド判定とのことですが、そもそもイブラの手に当たってたか?と。僕には腹に当たったように見えましたが。
非常に腹立たしいですが、まぁ微妙な判定だったということで。
まぁそんなわけで、前半はスコアレスで終了。
ホームのヴィオラがどこかで攻勢をかけてくるでしょうし、その時が勝負どころですかね。
後半
まずフィオレンティーナですが、前半よりも中央で繋ぐ意識を持つようになる。
後方からのビルドアップ時には、前半では途中から行方不明だったダンカンが下がってきてプルガルと一緒にパスを引き出そうとする。
また、引き続き左サイドを攻めの中心としながらも、中央や右サイドも使うようになる。
一方で、上記の変更点により前半に比べ危険な位置でのボールロストのリスクが高まり、実際に中央高めやミラン側左サイドでボールを失うようになる。そのためミランとしては、前半よりも危険なカウンターを繰り出せるようになりました。

――縦に持ち運んできた右WBのリローラ(水)がベナセルからボールを奪われた後の場面。その後、チャルハノール→テオ(赤)と繋いでリローラが上がったことにより生じた背後のスペースを突き、カウンター
52分、ドンナルンマ→ベゴヴィッチ
まさかの負傷交代。その直後にセットプレーの流れから決定機を作られますが、ベゴヴィッチが見事にセーブ。
56分、チャルハノールのクロスをカセレスが落とし、そのボールをレビッチがワンタッチでゴールに沈めてミランが先制。
更に60分、ミランのカウンターの場面でダウベルトがイブラを背後から倒し、ファール。最初はイエローカードが提示されましたが、VARの結果レッドカードで一発退場に。
退場後、おそらく4-3-2のような形にしたフィオレンティーナ。
当然1点ビハインドなので攻め込みますが、その分スペースが空くためミランもカウンターで応酬。しかし決めきれず。
前節もそうでしたが、ちゃんと追加点を奪って試合を終わらせてくださいよと。
チャルハノールはこういう試合展開時にキッチリと仕事ができれば、サポーターからの評価も全く違ってくると思うんですけどね。個人的には好きな選手ですが、決定的なプレーが少な過ぎるのも紛れもない事実だと思います。
68分、カストロヴィッリ→クトローネ
リローラを左WBに、キエーザを右に回した3-4-2のような形に。
キエーザを右に回すことで右サイドが活性化し、両サイドのバランスが良化した感がありますね。
71分にはカスティジェホがネットを揺らしますがオフサイド。
前掛かりになってきたミランは、攻め込む一方で逆にカウンターを食らうようになる。
それも両ボランチが前に出た時に最悪の状態でボールを失うため、CBが晒されるという状況。
ケシエは守備だけやっていればいいのに、なぜ上がるのか
73分にはガッビアがその煽りをモロに受け、イエロー。
74分、ガッビア→ムサッキオ
イエロー貰っているし、審判がアレ過ぎるので退場のリスクを考えての交代でしょうか。それにしてはイエロー貰ってから交代までの流れが早すぎる気もしますが。
その後も追加点を奪えず、むしろフィオに良い形を断続的に作られていると83分、クトローネがPKを獲得。それをプルガルがモノにしてフィオレンティーナが同点。
まぁPKは明らかに誤審とは言え、PKに至るまでの守備もおかしいし、一体何をやってるのかと。
11対10の数的に有利な状況とは言え、相手GKからのリスタート時に中途半端にプレスをかけ、後方中央にスペース空けて相手に速攻の機会与えてちゃ世話ないですよと。

――ぽっかり空いた中盤のスペースへと、プルガルからクトローネにパス。クトローネは手前のヴラホビッチ(桃)に落とし、そのまま速攻。PK奪取に繋がった
まぁとは言え誤審だし、本来であればこのシーンに関してはロマニョーリの好守でノーゴールだったはずなので、一番悪いのは明らかに審判ですけどね。
そういうわけで、「試合」はここで完全に終わったのでマッチレポもここまで。
フィオレンティーナ1-1ミラン
雑感
これほど審判に腹が立ったのは、約8年前のアノ試合とアノ試合以来ですかね。
内容的に反省すべき点は多いとはいえ、こういう形で勝ちを逃すのは残念極まりないですし、かなり腹立たしいです。
イブラのノーゴール判定も個人的にかなり怪しいと思いますし(そもそも当たったのは腕じゃなくて腹じゃないか?と。再確認していないので何とも言えませんが)、心情的にもあのスーパーゴールが取り消されたのは許しがたいものがあります。
まぁ既に終わったことですし致し方ないので、とりあえずカルヴァレーゼという審判の名前だけは心に留めておきましょう。
ネガティブな雑感だけで終わるのもあれなので、良かった点にも目を向けますと、何よりベゴヴィッチのパフォーマンスですよね。
正直、加入当初はほとんど期待していなかったのですが、途中投入であれだけ集中したプレーを見せてくれるのは素晴らしいですし、頼れるセカンドGKになってくれそうです。
後はレビッチのゴールラッシュが続いていること。
全体的にケチャップが詰まっているミラン選手が多い中、毎試合ゴールを決めてくれる彼の存在は極めて重要ですし、できるだけこの調子を維持して欲しいものです。
さて。次節の相手はジェノアです。
コロナウイルスの影響で、そもそも試合が無事開催されるのかも怪しいですが、この悪い流れを断ち切るためにも勝利をお願いしたいところです。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。