レビッチがミランで復活した理由 ~プレースタイルと戦術の合致~

5 Comments
カカニスタ22
はじめに

今季からミランにレンタルで加入したアンテ・レビッチでしたが、シーズン前半戦は大苦戦。
出場機会はほとんど与えられず、時間にしてわずか178分。成績もノーゴールノーアシストに終わっていました。

しかしながら、冬の移籍市場にてイブラヒモビッチが加入し、それに伴うシステム・戦術変更により徐々に出場機会を与えられるようになると、水を得た魚のように躍動。

2020年に入ってから公式戦通算で5ゴール1アシストを記録している(※トリノ戦でもゴールを決め、通算6ゴールになった)わけですが、これは同時期におけるミラン選手たちの中でトップの成績とのことです(『Opta』より)。
それでは、なぜレビッチはシーズン前半戦と後半戦とでこれほどまでに変わったのか。端的に言えば、それはプレースタイルと戦術が見事に合致したからだと言えるかなと。

というのも、現戦術においては速攻・カウンターがベースですので、敵陣にスペースのある状況でプレーしやすい。したがって、レビッチのスピードとフィジカルを活かしたドリブルやフリーランニングが活きやすいんですよね。

それに加えて、ここ最近になって採用し始めた4-4-1-1(4-2-3-1)システムも彼にとっては追い風です。
このシステムでは左サイドで起用されているわけですが、状況に応じてどんどん中央やエリア内へと侵入し、ゴールに近いエリアで絡むことが許されています。

ただ、これだけですと説明としては不十分。そこで今回は、もう少し具体的にレビッチの動きやプレースタイルを振り返っていくことで、彼の現チームにおける重要度や復活の理由を改めて確認していこうかなと思います。

(※キャプチャ画像の映像引用元はいずれも『Dazn』より)


サイドアタッカーとしての役割

まずは、ミランの後方からのビルドアップ時および左サイドからの組み立て・崩しの際におけるレビッチの動きについてですが、左サイドやや内寄りが基本ポジションです。
これはテオが積極果敢にオーバーラップするので、そのためのスペース作り(タッチライン沿いを空ける)でもあり、またテオがボールを持った際に縦へのパスコースを作ることで、サイドからの崩しを連携(ワンツーパスなど)により行うためでもあります。


特に後者については重要で、これまでの442だと、左サイドで円滑にボールが回らずに詰まるシーンというのが少なくなかったんですよね。

というのも、これまで(4-4-2時に)左サイドハーフを務めていたチャルハノールorボナベントゥーラは中央侵入への意識が非常に高く、左SHながらトップ下のように振る舞い中央の狭いスペースへと移動することが多かったので、テオが後方でボールを持った際に縦へのパスコースがなく詰まりやすいという問題点がありました。

この点、今のシステムであれば左サイド前方にはレビッチが構えており、また今では始めからトップ下で起用されているチャルハノールが左に流れてくるなどしてパスコースを作ってくれるため、以前のような形で詰まるシーンというのが非常に少なくなりました。

もちろん、単純な動き方だけでなく、レビッチの実際の具体的パフォーマンスにも特筆すべきものがあります。
圧倒的なフィジカルを活かしてのボールキープ、そして両足とフィジカルとスピードを活かしたキレのあるドリブル、積極的なフリーランニングなどにより左サイドで起点となり、崩しやフィニッシュに大きく関与。

この点も、当初のチャルハノールorボナベントゥーラはサイドでボールを持ってもそこまで効果的ではなかったわけですが、レビッチに代わったことで劇的に変化し、テオとの連携ないしそれぞれの個人技による突破で崩していけるようになりました。


レビッチ、プレースタイル1
――例えばこのシーン。ゴディンをフィジカルで抑えつけながら、レビッチ(赤)は左サイド内寄りにポジショニング。テオ(紫)はそのレビッチへパスを出し(白)、裏へ抜けてリターンパスを貰う。その流れからFKを獲得



レビッチ、プレースタイル2
――このシーンでは、後方からのロングフィードに反応し、持ち前のスピードを活かすことで一気にサイド深くの位置でボールを受ける



ストライカーとしての役割


続いて、チームが右サイドでボールを持った場合や、相手を押し込んだ場合はどうか。
その際、レビッチはより中央に侵入することで、イブラヒモビッチと2トップに近い関係になる形が多いです。


レビッチ、プレースタイル3
――右サイド後方からのロングボールをイブラ(黄)がワンタッチで落とし、チャルハノール(黒)に繋がった場面。レビッチ(赤)は前線にポジショニングし、イブラと近い距離を保つ。その際、空いた左サイドにはテオ(紫)がオーバーラップ

右サイドからの攻撃の場合、前線の要であるイブラへの(ロング)パスを組み立て及び崩しの起点とする形が非常に多いため、その周囲でプレーする人数を増やすことでイブラを出来る限りサポートすることが重要になります。

そのため、チャルハノール、カスティジェホ等と同様にイブラと近い距離を保ちつつ、積極的にフリーランニングしてパスコースを作ったりロングボールのこぼれ球を拾ったりといった役割がレビッチには求められるわけですね。

特にイブラは役割上、相手DFライン手前でボールを受ける形が多く、またDFライン裏に抜け出す頻度は少ないため、代わりにレビッチが前線で裏抜けすることも戦術的に重要になってきます。


レビッチ、プレースタイル4
―― 後方からのロングボールをイブラが収め、速攻に転じた場面。レビッチ(赤)はすぐさま裏に抜け出し、そこへイブラがスルーパスを出す。決定機になりかけたが、デ・フライの好守に阻まれる

強力な個の力を持つこの2人が前線にいるのはかなり魅力的ですし、ボールを収めてくれるイブラと、その周りを精力的に走り回れるレビッチの補完性も高い。
連携面の向上と共に、このコンビの破壊力は更に増しそうです。


ところで、上記の他にも、右サイドからの主な攻撃方法としてはカスティジェホによるクロスがあるので、レビッチにはそうしたクロスボールのターゲットマンとしての役割も期待されています。
そして、この役割の効果の大きさについては既に「得点」という形で表れていますね。


レビッチ、プレースタイル5
――インテル戦における1点目のシーンの少し前、カスティジェホ(桃色)がボールを持っている場面。レビッチは左サイド側へ流れていたイブラと入れ替わるようにして、右サイド側のエリア内へと移動。カスティジェホは左サイド側にいたイブラ(画面外)へとロングパスを送る



レビッチ、プレースタイル6
―― その後の場面。イブラ(黄)がロングボールに競り勝ち、そのこぼれ球に反応したレビッチが冷静にゴール。



レビッチ、プレースタイル7
――続いて、ユヴェントス戦における得点シーン。カスティジェホのクロスに対し、ターゲットはレビッチとイブラの2人。イブラに複数のユーヴェDFが引き付けられたところで、その背後からレビッチがダイレクトで合わせてネットを揺らした


ゴールシーンに限らず、レビッチのゴール前でのDF陣との駆け引き、クロスに対する反応等は特筆すべきものがあります。
シュート精度自体はそこまで高くなさそうですが、シュートシーンにまで持ち込む為の動きや重要な場面で冷静に決めきるメンタリティは素晴らしいですし、現在ゴールを量産しているのも決して偶然ではないでしょう。



まとめと追記~守備貢献の高さ~

以上をまとめると…

・ボールを前線で収めてくれるイブラが加入したことにより、メイン戦術が「最前線のイブラへの縦パスを起点にした流動的かつ速い攻撃」に変化。そのため、2列目の選手たちが前を向いてボールを受けやすくなった

・上記に関連し、2列目の選手たちに求められるものも変化。まず重要なのは、積極的なフリーランニングによるパスコース作り(特にトップ下)と、速攻やカウンターに積極的に関与するための走力(スピード、運動量)。加えて、左サイドハーフは左SBであるテオが駆け上がるためのスペースを空けるため、中央に寄る(=中央でも上手くプレーする)ことが求められる

・レビッチは「豊富な運動量と積極的なフリーランニングをベースに、サイドでプレーする際はスピードとフィジカルとキレのあるドリブルでボール運びに貢献でき、中央(寄り)に侵入すればボールキープと裏抜けで崩しに関与でき、更にストライカーとしてボールを呼び込みゴールも奪える」選手であり、上記の左サイドハーフに求められる役割に完璧にマッチ。

まぁそんなわけで、レビッチの元々のプレースタイルと、それを活かすことのできる戦術とが相まって凄まじい活躍を見せてくれてることになったと。



また、ここまでは攻撃面についてのみフォーカスを当ててきましたが、守備面における献身性にも触れないわけにはいきません。

先述の通りレビッチは積極的に中央に侵入することが求められる一方、従来の左サイドの位置での守備(プレスによるパスコース限定、リトリート後のブロック参加)も大きく求められています。
そのため、ネガティブトランジション時には素早く所定の位置に戻らなければいけませんし、同サイドのSBであるテオが攻撃時に高い位置を取る関係上、場合によっては裏のスペースを急いでカバーする動きも重要になってきます。

そんな中、守備時においても持ち前の走力を活かして上記の守備の役割をしっかりとこなしてくれていますし、彼が不動の地位を築き始めたのは、こうした守備面における貢献度の高さも要因の一つでしょうね。



おわりに

最後に。こうしたレビッチの大活躍を喜ばしく思う一方で、気がかりな話が一つだけあります。
それは、レビッチが現在ドライローンでミランに加入しているため、このままだとレンタル期間の終わる1年半後にはフランクフルトに戻ってしまうという点です。

もちろん、再度クラブと交渉して獲得の合意にこぎつけられれば良いのですが、今の活躍ぶりが続けば移籍金の高騰は避けられませんし、状況によっては他の強豪クラブも獲得に乗り出してくる恐れがあります。
そうなればミランとしては極めて厳しくなりますし、再獲得は難しいと言わざるを得ません。

しかし、そこで現在、ボバンがレビッチの完全移籍を目指してフランクフルトと交渉の場を設けようとしているとのことです。
かなり難しい交渉になるとは思いますが、是非とも実現して欲しいと思います。

願わくはレビッチがこの活躍を続け、21-22シーズン以降もロッソネリのユニフォームを身に纏い続けて欲しいものです。



Forza Rebic!!

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Comments 5

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CL8  

かつてのボアテングやノチェリーノのように、イブラが前線でキープして裏抜けをサポートしてくれるから輝けるようになったんですかね?ピョンテクは前線でキープできず完全に穴になってましたから、そこが改善されたのは非常に大きいですね
。ジャンパオロがピョンテクに求めていたのはイブラのようにキープして裏抜けする選手をサポートさせたかったのかなと思っているので、もしかしたらピオリ以上にハマっていたんじゃないかと考えてしまいます。笑

  • 2020/02/22 (Sat) 12:39
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管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

  • 2020/02/22 (Sat) 17:18
  • REPLY
ビオラ  

本当によく解りました!
そうなんですね。
いつも、ドリブル上手いなとか、動き出し早いなとか、足も早くて守備も頑張ってるなとか観てるだけなのでこのように特集レポートを書いていただけると嬉しいです!

今年になるまでは、レビッチは時々見たけどあまり印象に残っていないな、、ぐらいでした。

思えば選手って、システムに合うかどうかは死活問題なんですね。移籍してきても監督が代われば戦術もシステムも替わるわけで実力を発揮できず去る選手も多い。
レビッチは、まさにイブラが来たことがラッキーだったわけですね。

レビッチはクロアチア代表ですが、名前に、ッチが付く選手はみな技術があり上手いですよね。センスもあるし。
イブラしかり、、

モドリッチほしいですね(笑)

ありがとうございました!

  • 2020/02/22 (Sat) 17:41
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Joie_de_Myao  

CL8さんのコメントといくらか被ってしまいますが、イブラが前回のミラン在籍時に同僚だったボアテングやノチェリーノのようにエリア内のスペースに侵入してイブラの落としやラストパスの受け手となる役目がレビッチにピッタリハマってこの大爆発につながったんじゃないかな
あと、これは皮肉でもあるけどシーズン前半に殆ど出番がなかった故に、シーズン前半から出続けてる選手より疲労の蓄積が少ないのもあるんじゃないかなw

  • 2020/02/22 (Sat) 20:24
  • REPLY
ふっと  

はじめまして。難しいことはわかっていますが、昔のようなミランに財政状態が戻るといいですね。

貴重な試合映像を見つけました。
94/95シーズン チャンピオンズリーグ ミラン対AEKアテネです。
アルベルティーニ、マッサーロがいます。
https://youtu.be/pG3UwLuILaQ

  • 2020/02/24 (Mon) 23:18
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