ピョンテク、ヘルタ・ベルリンに移籍 ~納得と感謝~

クシシュトフ・ピョンテク
今さらな話で恐縮ですが、ピョンテクがヘルタ・ベルリンへと移籍しました。
移籍金は約2700万ユーロと報じられており、ピョンテクのサラリーも約2倍になったとか。



ところで、この移籍に関しては賛否両論(否寄り?)あると思うのですが、個人的にはフロントの決断を支持しています。

僕がそのように考える理由は大きく分けて3つあって、まず一つは現戦術に合っていないこと。

確かに、現戦術が速攻をベースにしているという点では彼のスタイルに合致するようにも思われるわけですが、今のFWに求められる具体的な役割とは合っていないんですよね。

というのも、今のFWに求められているのは「前線でボールを収め、中盤の選手たちが攻め上がるためのスペースと時間を与えること(要はイブラの役割)」と「広範囲に精力的に動いてパスを引き出し、裏抜け、キープ、ドリブルなどで崩しに貢献すること(要はレビッチ、レオンの役割)」に大別できるわけですが、ピョンテクは主に前者に近い役割を任されていました(コッパ・イタリアのSPAL戦、トリノ戦など)。

しかし、今のピョンテクにポストプレーやロングボールのターゲットとしての役割が期待できないことは今シーズン散々見せつけられたわけで、戦術のベースが変わったとしてもそれは変わりません。
また、後者の役割をこなそうにも彼にはドリブル技術もキープ力もないので難しいですしね。



2つ目の理由は、タイプ的に他の選手との相性が良くないこと。

ピョンテクの本来の持ち味は何といっても裏抜けやエリア内での動き出し(特にクロスに対する動き)、そしてそこからのシュート精度にあるわけですが、先述の通り自力でシュートまで持っていく技術がない(※昨季を見るに、本調子ならば多少はあるのかもしれませんが、少なくとも今季はない)ため、持ち味を活かすには周囲の味方のサポートが必須です。

具体的には、一人でゴール前までボールを運べる人、チャンスメーカー、正確無比な裏へのパスを出せる人などが中盤やサイドにいて、ピョンテクをエリア内近辺での駆け引きに専念させてあげられる形が理想的(クロス主体なら、強力なサイドアタッカーやクロッサーの存在など)。
極端な話、カカとピルロがいればゴールを量産できるんじゃないかなと(笑)

一方で、現チームの中盤やアタッカーはほとんどが活かされる側(自らがシュートを撃ったり、飛び出したりが持ち味)の選手ですし、数少ない活かす側の選手も決定的なパスというのが技術的・ポジション的に出せませんでしたから、元々ピョンテクのようなプレースタイルは活きるのが難しいチームです。

昨季にしても、ミランでゴールを量産できたのは偏にピョンテクの異常な決定力と得点感覚によるものでしたし、決定機の数それ自体は非常に少なかったですからね。
事実、ピョンテクが調子を落としたシーズン終盤戦はゴール数が激減しました。

ただ、選手のタイプに関わらず、もっとスペースにパスを出してあげるとか、ピョンテクの動き出しに合わせたラストパス(クロス)を出すなどしてあげればプレーしやすかったと思いますし、要は周囲の意識を変えるだけでだいぶ状況は違った気もしますけどね。

この点については、本来もっとピョンテクをサポートするべきだった両ウイングのチャルハノール、スソの責任は大きいんじゃないかと。
チャルハノールが好む足元へのパス、スソのクロスなど、とてもじゃないですがピョンテクに合っているとは思えませんでしたしね。



最後に3つ目の理由としては、ピョンテクがサブとしてチームに残留するのがチーム・選手双方にとってマイナスになる可能性が高かった(と個人的に感じた)こと。

イブラの復帰や、上記の戦術変更に伴い、今季後半戦のピョンテクは控えとしてベンチを温めることが極めて濃厚でした。
無論、イブラと共に練習をこなし、彼の技術やメンタルを直で学んで成長を遂げる可能性はありましたし、前線の層も厚くはないですから、もし残留しても出場機会は決してゼロではなかったとも思います。

しかしながら、スーパーサブとして活きる選手かというとそうではないですし、先述の通り現戦術にも合っていないですから、使い所がかなり限定される恐れがありました。
そして何より、彼のように得点感覚を持ち味とするタイプの選手にとって、出場機会を減らしてその感覚を鈍らせるのは死活問題です。百戦錬磨のベテランであるならばまだしも、彼はまだまだ若いですしね。

このまま半年間を過ごせば、来夏には更に市場価値が下がった可能性が高いですし、そうなればFFPの問題を抱えるチームにとっては痛恨です。

そう考えると、ピョンテクにとってはスタメンで出られるチームへと移籍でき、ミランにとってはピョンテクへの投資分を回収できた今回の取引は双方にとって良かったんじゃないかなと。



おわりに

以上、僕の考えるピョンテク移籍を是とする理由なのですが、最後に書いておきたいのは彼への感謝です。

今回の移籍直後に、ミランの抱える「ストライカーがチームに定着しない問題」について挑戦的なコメントを残したのは残念ですし少し腹も立ちましたが、確かに彼には同情すべき点があったのも事実。

何より、昨季後半戦における半年間のプレーに限ってはまさに救世主と呼ぶに相応しいものであり、ナポリ戦やアタランタ戦でのドッピエッタなど記憶に残るものでした。

彼の得点力がなければ最終節までCL圏争いに留まることなどあり得ませんでしたし、シーズン最終盤まで夢を見せてくれたという点では彼には感謝しかありません。

ミランでのプレーは終わってしまいましたが、今後は昨季のような得点感覚を取り戻しつつ、更なる成長を遂げて欲しいです。

「エル・ピストレロ」の復活・成長を心より願っています。


6Comments

リーナ

お疲れ様です( ・∇・)
ピョンテクの移籍に関しては、ぶっちゃけてしまえば監督(戦術)次第なんでしょうねw
ただ、彼のプレーの幅がなかったのも事実なので致し方なしかと。しかし、彼に助けられた試合も多いですからね。なんとも言えないですw
ある程度の収益が得られたのなら良しなんでしょうねw

来季の監督に関しては、元ライプツィヒのラングニックが候補に上がってるのでめっちゃ楽しみです( ・∇・)
基本ベースが4-4-2(4-2-2-2)のハイプレス-カウンターなので、浸透しやすいかもです。懸念材料がライプツィヒの要のヴェルナーみたいな韋駄天フィニッシャーがミランにはいないところですかねw
ただ、チームの若さからしたらライプツィヒもミラン並みに若いので私はめっちゃ賛成です!( ・∇・)

  • 2020/02/06 (Thu) 21:14
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ビオラ

こんにちは!
ピョンテク、ヘルタでさっそくゴールを決めたようで良かったです!

移籍後のコメントですが、なかなか言えてるなと思いました。
イグアインもフィットしませんでしたし、誰が来てもダメなんじゃないかと思わせる雰囲気がミランにありました。イブラが来るまでは。

選手は、特にストライカーはメンタルが重要なポジションですよね。色々な理由があったとしても決められないのは苦しかったと思います。

昨年はミラニスタに希望をもたらしてくれましたし、PKはミランに来てから一度も外してないですよね。ほんとに感謝です。

自分の才能を発揮できるチームに行くのが一番の良いし、お給料も上がったとか(笑)
活躍を願っています。

さあ、ダービーですね!
久々に早起きして観ようかな。

コッパのユーベ戦もあるし、ミランもミラニスタも、そしてカカニスタさんも正念場ですね!

全力でがんばれー!

  • 2020/02/07 (Fri) 12:46
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ぴょぴょぴょん

行ってしまいましたねぇ。
残っていてもお互いのためにならなそうだったのはありますね。
ただジェノアではクアメやパンデフが、代表ではレバンドフスキが、とボールを収めて捌ける相棒がいるときに輝いていたので、
せっかく2トップを採用する運びになった今イブラピョンテクの形をほとんど試さずに売ったのは疑問ですし、もったいないんじゃないかと思います。
まあ移籍後の発言からしてすでに腐ってしまっていたのかもしれないですが。

プロ選手として「2トップじゃないと僕は駄目なんだ。」では失格ですが、
不得手な1トップ(中でも能力外なスタイル)をずっと強いてきて、
監督交代シーズン半年でポイってのは本人も不満吐き出したくもなるかなと。
昨季幾度かチームを救った自負もあるでしょうし。
クトローネやアンドレ、レビッチ最後はイブラと2トップを試せるだけの駒はずっといた気がするんですけどねえ。
まあ監督側の引き出しに左右されるのはしょうがないことですけども。

  • 2020/02/07 (Fri) 13:33
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カカニスタ22

カカニスタ22

To リーナさん

コメントありがとうございます!

現戦術、所属選手(MF、サイドアタッカー)のタイプとピョンテクのプレースタイル・実力との相性を考えるとこのまま残留していても活躍はあまり見込めませんでしたし、放出という選択肢は選手・クラブ双方にとって良かった気はどうしてもしてしまいますね。

ブンデス素人の僕でも、ラングニックがライプツィヒの飛躍的に成長させた人物だというのは知っていたのですが、なるほどそういう戦術なのですか。
表記のされ方を見るにサイドハーフがかなり絞る感じなんですかね。となると純粋なサイドアタッカーに欠ける今のミランでもプレーしやすそうですね。
ただ、お話を伺う限りショートカウンターがメインとのことで、仮に相手に自陣で守備を固められたらどう対策しているのか気になります。
ミランだとボールを持たされる試合も多くなりますしね。

  • 2020/02/07 (Fri) 19:14
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カカニスタ22

カカニスタ22

To ビオラさん

コメントありがとうございます!

確かにメンタル面の問題がパフォーマンスに影響を与えていた可能性は大いにありそうですね。
昨季の最終盤からゴールが激減し、今オフシーズンもゴールを上げられずにシーズン開幕。
更に「9番のジンクス」で騒がれるというようにピッチ内外で問題がありましたし、平静を装っていましたがだいぶプレッシャーがあったのではないかと。

ここからビッグクラブとの試合が多くなってきますし、イブラ擁する今のミランの真価が問われますね。
結果によってはミランへの注目度がこれまで以上に増しますし、僕も負けじと頑張りたいです(笑)

  • 2020/02/07 (Fri) 19:14
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カカニスタ22

カカニスタ22

To ぴょぴょぴょんさん

コメントありがとうございます!

>>移籍後の発言からしてすでに腐ってしまっていたのかもしれないですが

この点は気になりますね。
シーズン序盤の最悪に近い時期に比べればピョンテク個人のパフォーマンスは上がっていましたが、それでも昨季のような鋭い動き出しや決定力は見る影もありませんでしたし、それが起用されなかった要因なのかなーと思っています。
もし昨季のパフォーマンスであればイブラと2トップを組むことも十分にあり得たのかなと。

ただ、仰るように苦手な役割と得意じゃないシステムでずっとやってきて、コンディションや得点感覚を鈍らせたという点では彼には大いに同情できますし、持ち味を発揮しやすい組織作りをしてもらえなかったのは気の毒でしたよね。
イブラ加入前にしたって、システムを3-5-2(ジェノア時代と同じ)にでもして速攻とクロスを主体とした攻撃をすれば今よりは間違いなく活躍できたと思いますしね。

  • 2020/02/07 (Fri) 19:15
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