ブレシア対ミラン 【セリエA第21節/マッチレポート】
スタメン

4-3-1-2のブレシアと4-4-2のミラン。
(※キャプチャ画像の映像元はいずれも『Dazn』より)
○ミランの守備とブレシアの攻撃
最初にミランの守備(ハイプレス)について。
まず左サイドハーフのチャルハノールが内に絞って相手右インサイドハーフのビゾーリに付き、ベナセル、ケシエと共に3人で相手の中盤に対応し、順次プレスをかけていくのが基本。おおむねいつもと同じ形ですね。
しかし、今節の相手であるブレシアの中盤はトップ下を含め4人いるため、ガッチリと噛み合う形ではありません。構造上、相手アンカーのトナーリが比較的フリーとなりやすい状況なわけですが、ミランは主にベナセルが前に飛び出してチェックする形で対応しようとします。しかし、あまり機能せず(後述します)。

――チャルハノール、ベナセル、ケシエがそれぞれビゾーリ、トナーリ、デッセーナをマーク(黒矢印)
なお、リトリート後は4-4-2で守ります。
続いてブレシアの攻撃についてですが、ワイドにボールを回しながら、右サイドに展開して攻め込むというもの。
具体的な攻撃パターンは主に2つ。
1つは、2トップの一角が前線から降りてくる、もしくはサイドに流れて縦パスを引き出し、パスを受けたら周囲のインサイドハーフ、トップ下、もしくは近づいてきたもう一方のFW等と細かくパスを繋いで崩すという形。
この場合、プレスに来たミランのインサイドハーフやSBの裏をロングボールで突いていく形が多いためプレス回避にもなりますし、ミランCBの2人は元々前から潰しにいくのが得意なタイプではないため(ケアーはよく知りませんが、ここ数試合を観る限り)、起点を作られるシーンが目立ちます。
早々にイエローカードを貰うなど、特にケアーは対応がだいぶ不味い。

――コンティ(水色)の裏を突き、アイェ(茶丸)がサイドでボールをキープ
もう1つは、構造上フリーになりやすい右SBサベッリの攻め上がりと、トナーリの縦パスによって、サイドから素早く運んでいく形。
先ほどのミランの守備で説明したように、チャルハノールは内寄りのポジションを取っていることが多いためミラン側左サイドを空けやすく、サベッリにこのスペースを使われるシーンというのが多々ありました。

――ブレシア側左サイドから右サイドへと展開されたシーン。チャルハノールがインターセプトに失敗。デッセーナからサベッリ(緑)へとボールが渡り、前方の広大なスペースへとドリブルを開始
また、トナーリに付く役割のベナセルは基本的にトナーリとの距離が遠いため、トナーリがフリーでボールを受けて局面を打開していくシーンも目立ちます。

――フリーでボールを受けるトナーリ(赤)。ベナセルがプレスにいくが距離が遠く(黒線)、左サイドへと展開される

――このシーンでもチェックが間に合わず、正確なスルーパスを通される
こうした形によってサイド深くでボールを持ち、ファーサイドへとクロスを放り込んでチャンスを作っていくのがブレシアの主な攻撃パターンです。
狙い通りの攻撃が出来ていると思いますし、逆にミランが良い形でボールを奪うシーンというのは非常に少ないですね。
○ブレシアの守備とミランの攻撃について
ブレシアの守備はミドル~ローラインブロックがメインで、4-3-1-2の形を維持したまま非常にコンパクトに守るというのが基本。
トップ下ロムロの献身的な守備は勿論、時には2トップの一角(主にアイェ)がガッツリ下がって守備参加。これにより中央はガチガチに固められ、サイドへとインサイドハーフが出ていってもロムロやアイェがカバーすることで中央の密度を維持。

――ブレシアのコンパクトな4-3-1-2(右SBは画面外)
前節のウディネーゼ同様、しっかりと中を固めることでミランを苦しめます。
一方のミランの攻撃はいつも通り左サイドから徹底して攻め込んでいく形ですが、今回は全く機能していない。
まず、チャルハノールのポジショニングが宜しくない。ポゼッション時にはとっとと中央に入ってしまうわけですが、先述の通りブレシアは中央に人数をかけているためボールをほとんど良い形で受けられない。仮に受けたとしても、スペースが狭いため効果的なプレーというのもほとんどありません。

――チャルハノール(赤)のポジショニング
確かにテオのオーバーラップの為に前方のスペースを空けることは重要ですが、左サイドから組み立てる時はもっとサイドに流れる必要があると思いますし、裏に抜けるなどしてサイドでパスを引き出す動きも必要でしょう。
テオがボールを持っても周囲のパスコースがない(少ない)し、彼自身狭いスペースを細かいドリブルで切り崩す力は流石にないため詰まってしまいます。心なしか、今日はそこまで調子も良くなさそうですしね。
そしてサイドを崩せないためほとんど良い形でクロスを上げられず、ブレシアの弱点(クロス対応の甘さ)を突くことができません。偶にベナセルが気を利かせてサイドまで出てきますが、散発的。
また、スペースのない状況で右サイドが機能しないのはいつも通り…。
こんな状況のため、適当にイブラとレオンの2トップに放り込んでいく方がまだチャンスを作れています。
唯一の決定機は前半40分の場面。テオのクロスからイブラがドフリーで合わせますが、まさかの枠外。
前半はスコアレスで終了。
まぁ最近のミランは後半勝負みたいなところがありますし、ピオリの戦術修正に期待しましょう。
後半
ブレシアは攻守ともに前半と同様の形を継続。
前半も上手くいっていましたし、特に変える必要はないという判断でしょう。
ミランもメンバー交代はなし。しかし、チャルハノールがサイドでボールを受け始める。

――カスティジェホ<(赤)からのサイドチェンジを受けるチャルハノール(黄色)。前半には見られなかった形
良い傾向です。確かにチャルハノールがサイドでボールを受けても効果的とは言い難いものの、バランスは改善しますからね。テオもスペースでボールを貰い易くなりますし。
一方、ブレシアはトナーリのパスから惜しいチャンスを量産していき、55分にはトッレグロッサがネットを揺らしますがオフサイド。
その後もチャンスを作っていきますが、ドンナルンマが尽くシャットアウト。
相変わらずのスーパーパフォーマンスです。
58分、レオン→レビッチ
レビッチはそのままレオンの位置、すなわち2トップの一角に。
時間の経過と共にミランは、ロングボールを起点に速攻からチャンスを作り始めます。
というのもブレシアがイケイケムードで前からプレスを積極的にかけるようになってきたため、後方のスペースが空き、イブラやレビッチへのロングボールが頻繁に入るようになりましたからね。
それにしても、イブラの空中戦の強さには惚れ惚れします。

――後半の空中戦勝利数トップ5(『WhoScored』より)。イブラ以外は全員DFであり、FWの中では断トツ
また、速攻を仕掛けられるようになってきたため、カスティジェホも持ち味が出始めます。
すると71分、チャルハノールの見事なサイドチェンジからイブラがダイレクトでクロス。混戦から最後はレビッチがネットを揺らしてミランが先制!

――得点シーンの少し前。コンティ(画面外)からのロングボールをレビッチが上手く落として速攻に繋げ、その流れから得点に至った
77分、チャルハノール→クルニッチ
残り時間は、猛攻を仕掛けてくるブレシアを相手にミランがしっかりと守りつつ、速攻からゴールを脅かしていくというはっきりした展開に。
イブラの献身ぶりには頭が下がります。
83分、カスティジェホがネットを揺らしますが、オフサイド判定。
試合はそのまま終了。
ブレシア0-1ミラン
○雑感
内容的にはブレシアが非常に良いサッカーを見せましたが、個の力で優るミランが競り勝ち公式戦4連勝となりました。
前節に引き続き、苦しい試合展開の中でしっかりと勝ち切れたというのは非常に大きいですし、ミランに長年欠けていた粘り強さを取り戻しつつあるように感じられます。誰の力によるものかは明白ですね。
しかし、やはり組織的な面に関してはあまり改善が見られず、攻撃に関しては中央を固められた場合に攻めあぐね、守備に関しては相手の前線への楔のパスを起点に攻め込まれるシーンというのが目立ちます。
そして前者については、左サイドからの組み立て~崩しに際して左サイドハーフが上手く絡めていないこと、後者についてはスペース管理のできる守備的なボランチの不在が響いており、いずれも適切な補強により改善が期待される点です。
余剰戦力の放出が遅々として進んでいない現状ですと、補強が難しいのはわかります。ですが、最低でも上記2つのポジションの補強&スソの放出(完全移籍)だけは今冬の内に確実に遂行して欲しいですし、そうすれば怒涛の快進撃からの上位フィニッシュも決して夢物語ではなくなります。
まぁ本気で上位を狙うのであれば、他にも即戦力級のCB、テオとベナセルの控えになれる選手1人ずつ、そしてカスティジェホとタイプの異なる右サイドハーフ(ドリブルが上手くスピードがあり、個でサイドを打開できる選手)なんかが求められますが、流石に全部は厳しいと思いますしね。
報道を見るに、上記の2つのポジションについては補強しようという動きがあるようですし、今のフロントは獲得に関しては非常に優秀ですから期待したいです。
さて。次節のミランの相手はエラス・ヴェローナですが、その前にコッパ・イタリア、ベスト8のトリノ戦がミッドウィークに行われます。
タイトル獲得の可能性を残すためには絶対に負けられない一戦ですし、ここは何としても勝利を収めて欲しいと思います。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。