ルーカス・パケタ復活の可能性を考える
しかし1年が経った今、彼らはベンチに座り、放出候補として積極的に市場に出されている状況です。
ミランはこの1年でフロント(レオナルドout、ボバン、マッサーラin)が変わり、監督が変わり、そして戦術も変わったわけですから、このような状況に陥ることはあり得ない話ではなかったものの、やはり昨季の輝きを思い出すと悲しい気持ちにさせられます。
果たして、彼らが再びミランで定位置を取り戻すことはないのでしょうか。
今回はパケタについて、復活の可能性を考えてみたいと思います。
※1;考えるにあたっては、今のミランのシステム(4-4-2で、速攻スタイル)を基準にしていきます。
※2;年末に書いたコチラの記事「パケタとミランの1年間 【プレースタイル・長所・今後の課題】 」を前提に書いているため、未読の方はこちらを先に読んでいただけると助かります。
○ボランチ
昨季のパケタが魅せたボール運びの上手さを活かすには、中央で、かつ下がり目の位置からのポジションが適切ということで、攻撃的なボランチとして起用することはできないか。
自分で話題提起しておいてなんですか、このポジションでの起用は限りなく0に近いですね(笑)
まず、今のシステムにおけるこのポジションには、攻守における尋常じゃない運動量と、トランジションの速さ、及び速攻の起点となる素早いパスの判断と精度が必須とされるわけですが、この役割についてはベナセルがほぼ完璧にこなしているため、彼からポジションを奪うのは至難です。
ベナセルとパケタを併用するのは流石に現実的ではないですしね。攻守のバランスを著しく欠くし、何より2人とも左利きですし。
ただ、ベナセルが欠場するなんて事態になれば(考えたくはないですが)、実質的に控えがいないこともあり抜擢の可能性もゼロじゃないかなと。
まぁその場合、普通に中盤を3枚にするのが濃厚でしょうか。
○右サイドハーフ
(※今のミランのサイドハーフは、右と左で役割が微妙に異なるため、分けて考えます)
このポジションで主に求められるのは、攻守における尋常じゃない運動量(+フリーランニング)、素早いトランジション、スピード、積極的な裏抜け、左サイドへの正確なサイドチェンジ、及びある程度の突破力&決定力などですが、ご存知の通りこのポジションではカスティジェホが絶対的な地位を築きつつあります。
後述する左サイドハーフと比べ、よりサイドアタッカーとしてのプレーが求められるこのポジションだと、パケタは厳しいと思います。
○左サイドハーフ
おそらく、今のシステムにおいてパケタが起用されるとしたらここかなと。
このポジションの場合、主に求められるのは攻守における尋常じゃない運動量(+フリーランニング)、守備の判断の上手さ、素早いトランジション、中央への積極的な侵入、バイタルエリアやライン間でのプレー判断・精度、ある程度の突破力&決定力などなど…。
右サイドハーフと決定的に違うのは、左SBのテオの上がりを促すためにスペースを空けなければいけない(=中央へ積極的に移動する)点と、それゆえに中央でのプレー精度が求められる点ですね(もちろんサイドでの効果的なボールキープや、場合によっては突破も求められますが)。
元々パケタは中央エリアでのプレーを得意とするタイプのはずですし、流動的に動くことが許されるポジションのため、比較的持ち味を発揮しやすい役割だと思います。
ただ、問題としては今季のパケタがバイタルエリアでほとんど良いプレーができなかったため、おそらくピオリの信頼を失ってしまったこと。
ピオリ就任後は初戦となるレッチェ戦を始め、しばらくは右インサイドハーフとして先発していたパケタでしたが、守備に奮闘する一方で攻撃面ではほとんど結果を残すことが出来ませんでした。
不慣れなはずの右サイド起用、それも相性の悪いスソと併用されるなど、同情すべき点はあったとは言え、確かに彼自身のプレーがあまり効果的でなかったのも事実。
また、守備に関しても高度な判断と豊富な運動量が求められるためあまり適役とは言えず(チャルハノールの方が守備が出来る)、サイドでのプレーに関しては先日台頭したレビッチが抜きん出ているため、これまた厳しい状況と言えます。
○セカンドトップ
このポジションで主に求められるのは、積極的な裏抜け、ドリブル、キープ、チャンスメイク、イブラとの相性などなど…。
現状はレオンが飛躍的成長を遂げているため、このポジションを脅かすのは難しいでしょう。
また、イブラとの相性についても個人的に疑問符が付くんですよね。
というのも昨季のプレーを見るに、パケタはどちらかと言うと自分にボールを集めてもらうことで真価を発揮するタイプに見えますが、今求められるのはイブラに活かされるタイプの選手、つまり彼のために積極的にフリーランニングできる選手です。
そのため、昨季のパケタが魅せた「ボールキープしながらDFを引き付け、それにより空いたスペースへパスを出す」といったプレーは現状あまり必要とされず(後方ではベナセル、前線ではイブラがより効率的にやってくれるため)、むしろ球離れの悪さというデメリットが目立ってしまうのが現状かなと。
ただ、選手層の問題もあり、左サイドハーフの次に出番がありそうなポジションですかね。。
◎復活のためには~プレースタイルの改善~
こうして見ていくと、やはり今のパケタに出番がないのは致し方ないかなと。今のシステムにおいては、どのポジションにも彼より適任の選手がいますしね。
まぁ全体的に層が厚いとは言えないため、今後出番が回って来るとは思いますが、本来はサブとしてのポジションを受け入れて良い選手ではないはずです。
結局のところ、現状を打破して継続的に出場機会を得ていくためには、彼自身が何とかしてプレースタイルを改善していくしかないのではないでしょうか。
具体的には①ポジショニングセンスの復調・改善、②球離れを早くする、③バイタルエリア、ライン間でのプレー判断・精度を上げるといったところですかね。
①については、昨季は比較的上手いポジショニングによってボールを引き出し、ボールの運び役を担っていたため、おそらくジャンパオロの指導によって狂わされたんでしょうね(彼だけが悪いとは言いませんが)。
そのため復調には期待できますし、この点が攻守において改善されれば出番は確実に増えてくると思います。
②については昨季からの継続的課題の一つであって、やはり無駄なボールキープが今なお目立ちます。
特に、今の速攻をベースとした2トップが中心のサッカーの場合、この点はすぐにでも直さないと出番はあまり貰えないかなと。
③については、より攻撃的なポジション(トップ下やセカンドトップ)で活躍していくためには必須のスキルです。①や②とも密接に関わってきますね(①と②をクリアすれば必然的に改善がなされるため)。
ピオリの言葉を借りれば、「より決定的な場面に関与しなければならない」といったところでしょうか。
確かに、フォーメーションや戦術・メンバーが変われば今のままでもパケタが活きる方法はあるでしょうけど、彼が超一流の選手に成長していくためには上記の改善が必要だと思いますし、22歳という若い年齢でこうした壁にぶち当たるのは決して悪いことではないと思うんですよね。
上記の点が改善され、バイタルエリアで細かいテクニックと創造性を活かしたパスを出せるようになれれば、正に今のミランに欠けているチャンスメーカーとして重宝されるようになるのは間違いないと思いますし、いずれは絶対的なトップ下として君臨することになることだって考えられます。
今のシステムにおいても、左サイドハーフやセカンドトップで先発起用されるようになる可能性は十分にありますしね。
しかし報道によると、最近は練習態度もあまりよろしくないそうで、しかも先日は不安発作を引き起こして病院に向かったとかで、非常に不安定な状態らしく本当に心配です。
今冬の放出はなさそうですが(PSGのレオナルドから約2000万ユーロというふざけたオファーしか届いていないらしいので)、このまま無為にシーズン終了を迎えるのも勿体ないですし、何とか復調のキッカケを掴んでほしいです。
— Lucas Paquetá (@LucasPaqueta97) 2018年9月10日
昨季のパケタのプレーに希望を感じた者の1人として、彼の復活を心より願っております。