ミラン対SPAL 【コッパ・イタリア・ベスト16/マッチレポート】
スタメン

4-4-2のミランと、3-4-1-2のSPAL。
ミランに関し、前回の記事で言及した予想スタメンと違うのは、レオンに代わってレビッチという点。
2トップの一角にレビッチというのは良いと思いますし、このシステムで活躍するとしたらココかなと。
(※キャプチャ画像の映像元はいずれも『Dazn』より)
○前半序盤戦の攻防
ミランはロングボールを多用し、ピョンテク目がけてのハイボールもしくは前方のスペースにどんどん蹴り込んでいく。
テクニックはあまりないが走力のある2人を前線で起用する以上、足元ではなくスペースに出すのは良いと思います。縦への意識の高さも前節から継続。
押し込んだ後は、基本的にはクロス。8分には、レビッチのクロスにカスティジェホが頭で合わせますが枠外。
一方のSPALは、後方で繋ぎつつ中央への縦パスを起点に崩していきたいのでしょうが上手くいかず。
ミランの守備(後述)によってロングボールを使わされ、ボールを回収されるシーンが目立ちます。
やや不安定なミラン側左サイドを使って攻めることもしましたが、チャンスには繋がらず。
○前半中盤・終盤戦の攻防
SPALは、攻守において戦術的によろしくない。
まず彼らの守備についてですが、前からプレスをかけて奪いに行く形が基本。

――SPALのハイプレス。手近なパスコースを全てチェック。GKアントニオはロングボールを選択
しかし、ミランとしては元々ビルドアップがロングボール主体のため特に問題はないし、むしろプレスによって後方にスペースを空けてくれるため、こぼれ球が拾いやすくなるし速攻も仕掛けやすくなるという願ったり叶ったりな展開に。
プレスに関しても、基本的にGKにまでは行かないため、アントニオ・ドンナルンマは余裕を持ってボールを前線に蹴り込むことができました。

――先ほどのロングボールに対し、ピョンテクとヴィカーリ(黒丸)が競り合う。そのこぼれ球をピョンテクが拾い、裏に抜け出したレビッチにすぐさまパス。惜しいチャンスに繋げた
続いて攻撃に関しても、SPALは前線の2トップ(主にフロッカリ)にボールを当て、そこからサイドに展開したいのでしょうが、ロマニョーリとケアーが2人をしっかりと抑えているため機能せず。
そして何よりSPALは無駄にボールを持ちたがるため、ミランにとってはかなりオイシイ展開に(ボールを奪ってからのカウンターがしやすいため)。
実際に見事な守備を披露し、どんどんカウンターに繋げていきます。
具体的に、ミランはSPALの3-4-1-2の形に対応するため、守備時には4-3-3気味(レビッチが左ウイング、ボナベントゥーラが左インサイドハーフ)に変化してハイプレスで襲い掛かる形。
まず、SPALの3バック+GKに対してはレビッチ、ピョンテク、カスティジェホの3トップで対応してプレス。

――このシーンではレビッチ(黄丸)が右CBトモビッチ、GKベリシャに連続でプレッシャーをかけ、ロングボールを誘発。後の2人はそれぞれ残りのCBをマーク
3人ともプレス強度が高いため強力ですし、こうした動きにより大抵の場合、キーパーはロングボールで逃げざるを得なくなりました。
場合によってはそれでもショートパスで繋いでいこうとするわけですが、SPALの中盤3枚(2ボランチ+1トップ下)に対しては、それぞれボナベントゥーラ、クルニッチ、ベナセルがマンツーマン気味に対応し、中盤でボールを自由に触らせない。

――ムルジャの下がってもらう動きに対してもボナベントゥーラが付いていき、自由にプレーさせず(黒丸)

――その直後の場面。何とか縦パスを出すが、受け手であるヤンコビッチに対してもクルニッチが徹底マークで前を向かせず(黒丸)。その後はカスティジェホと挟んでボールを奪い、カウンターに繋げた
更に、サイドのWBにボールが渡れば、テオorコンティがプレスを仕掛け、周囲の選手と協同して囲い込んで奪いにかかる。

――右WBストレフェッツァにボールが渡るが、テオのプレスによって前を向かせず(黒丸)。更に、周囲のパスコースは全てそれぞれのマーク担当がチェック(黒線)
ミランは以上のような守備を以てSPALの攻撃をほぼ完全に封じ込め、一方の攻撃ではカウンター(or速攻)によって次々とチャンスを作っていきます。
2トップ+カスティジェホがどんどん裏に抜けてボールを引き出すスピーディーな攻めですね。
すると20分、SPALのボールロストからカウンター。ベナセルのパスに抜け出したピョンテクが冷静に1対1をモノにしてミランが先制。

――こぼれ球を拾ったベナセル(赤)が裏のスペースへと素早くスルーパスを出し、ピョンテク(青丸)が抜け出す。縦への意識の高さが生んだゴール
この試合展開なら更にカウンターから2、3点取れそうな感じです。
しかしその後もミランはカウンターから惜しいチャンスを量産していきますが、前線のクオリティ不足もあって中々決まらない。
最後の精度を欠き、いずれも得点ならず。
44分、カウンターからようやくカスティジェホが決める。見事なシュートでした。
こうして前半は2-0で終了。
この試合内容なら2-0はセーフティーリードといって差し支えないですし、よほどのことが起きない限りこのまま何の問題もなく勝てそうです。
ミドル~ローラインブロックを敷いてスペースを消し、カウンターに徹すれば今日のミランを苦しめることは容易なはずですが…SPALの戦術ミスによって伸び伸びとプレーすることができました。嬉しい誤算です。
ただ、選手の特性に応じた戦術や、選手たち自身の動きも良いことは間違いなく、前節に引き続いてピオリも選手たちも素晴らしいと思います。
後半
後半早々、カウンターからピョンテクが決定機を迎えるもシュートはキーパー正面。
後半序盤も同じ感じで、ただひたすらカウンターからチャンスを作るミランと、グダグダポゼッションのSPAL。
63分、カスティジェホ→スソ
カスティジェホは1枚イエローを貰っているし、それに休ませるための交代でもあるのでしょう。
66分、インターセプトからテオがそのまま独走ドリブルでボールを運び、ミドルシュートをネットに突き刺す。ミラン3点目。
相変わらず素晴らしいプレー。
この状況ならテオ、ベナセル辺りは休ませたいところですが、いずれも有力な控えがいないという…。
72分、ヤンコビッチ→ヴァローティ
75分、ボナベントゥーラ→パケタ
正直、この展開でここまでチャンスに絡めないのは想定外でした。
82分、ケアー→ガッビア
その後はアントニオのファインセーブ位でしたかね、見どころは。
Antonio Donnarumma 🧤🔴⚫️
— ACMGIF (@ACMGIF) 2020年1月16日
pic.twitter.com/fHDwOiETV4
約2年の公式戦ブランクがありながら、こうしたセーブを見せることができるのは凄い。
堂々とたるプレーぶり。年俸1億の第3GKは伊達じゃないですね(笑)
そんなこんなで、試合終了。
やる気の欠片もない後半のレビュー(笑)
後で追記するかもしれませんが、とりあえずこの試合の言いたいことは前半の内容として書いたものがほとんどですので良いかなと。後半もだいたい同じ展開でしたしね。
ミラン3-0SPAL
○雑感
久しぶりの3-0完勝により、危なげなくベスト8突破を決めました。
正直なところ、SPALが戦術的にやらかした印象が強いわけですが、ミランにも良い点が多くあったのも事実。
まず、チーム全体に縦への意識が根付き始め、(相手の戦術的ミスもあれど)カウンターがバシバシと決まるようになったこと。
ピョンテク、レビッチもこういう展開であれば活きますし、カスティジェホも前節に続き素晴らしい。
無駄に攻撃の流れを止める選手を外すだけで、組織的に不十分ながらここまでのチャンスを作れるようになるんだということが前回に引き続いて実証されてよかったです。
選手個人に目を向ければ、上記の3選手の他にもテオとベナセルは相変わらず素晴らしく、心配だったアントニオとケアーも安定したパフォーマンスを披露。
アントニオについては先述の通りとして、ケアーも合流直後ながら非常に上手くこなしていたかなと。
相手が相手だけにまだ何とも言えませんが、ひとまず幸先の良いスタートを切ってくれて良かったです。
さて。システム変更後は公式戦2連勝を飾り、勢いに乗るミランの次の相手はウディネーゼです。
彼らは先日のコッパ・イタリアではユヴェントスに4失点完敗を喫したものの、リーグ戦では現在3連勝中と好調をキープ。決して侮れません。
また、今季開幕戦でミランはウディネーゼに敗れているだけに、ここはキッチリと借りを返したいところです。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。