ミラン対サンプドリア【セリエA第18節/マッチレポート】
例によって辛口ですが、寛大な心でお許しください。
スタメン

ミランのシステムは便宜上4-3-3表記にしましたが、実際はボナベントゥーラがトップ下の4-2-3-1といった方がより適切かなと。
注目の1トップはイブラヒモビッチではなくピョンテク。
○前半序盤戦の攻防
ミランが主にポゼッション。
サンプドリアの守備は、非常にコンパクトな4-4-2のミドルブロックをメインに、状況に応じてハイプレスをかけていく形。
やはり、サンプドリア(ラニエリ)のブロック守備は非常に固い。
そして中央エリアに必要以上に人数を割く最近のミランだと、サイドに追いやられ中央にボールが入らないと非常に苦しい。
相手SB裏へのパスとか、サイドチェンジによって惜しい形を散発的には作れていますが、いずれも決定機には繋がらず。
体力的にサンプドリアのライン間が空いてくるであろう前半中盤~終盤が勝負どころでしょうか。
○前半中盤・終盤戦の攻防
ミランは高い位置でのインターセプトからの速攻、もしくはベナセルが頑張ってマークをずらして攻めることでいくつか決定機を作り出しますが、全体としては拙攻で、全く以て機能していない。よって、サンプドリアのセットされたブロックは全く崩せない。
まず、中央でほとんどボールを受けられなし、受けてもほとんどチャンスに繋がらないわけですが、この点に関しては地味にボナベントゥーラが酷い。シュート精度は高いので現チームに必要だとは思いますが…。ミスがかなり目立つ。チャルハノールも相変わらずのパス精度。
また、ここまでカラブリア起用の意図も良く分かりません。
この試合ではスソにサイドに張ってもらい、カラブリアは積極的なオーバーラップでサイドでの起点作り(サイドに相手を釣り出し、中央のスペースを空ける)に関与するのかと思いきや、スソはこの試合でも序盤を除き相変わらず中央へと入っていく傾向が強い。

※カラブリア(黄)とスソ(橙)のポジショニング
カラブリアに孤立した状態でボールを持たせて一体どうしろと言うんでしょうか。
案の定ボールロスト、パスミスのオンパレード。
更に、初っ端からスソが中央寄りに位置することが多いせいで、クルニッチも基本的に飛び出せず後ろでバランスを取るしかないし、中央が渋滞して流動性が皆無。これは酷い。
一方のサンプドリアですが、彼らも攻撃が宜しくない。
ビルドアップはグダグダでボールロストも多いし、2トップに当ててサイドへ展開し、最後はクロスという攻撃の形が基本ですが全く怖さを感じません。怪我で早くも2人を失うなど、アクシデントもありました。
ミランも上記の通りアレだし何とも退屈な試合。
ベナセルの頑張りとベンチに座るイブラヒモビッチだけが見どころの前半がようやく終了。
想定していた低いハードルをも下回る、とんでもない前半でした。
新年を明けても絶賛迷走中のピオリは流石に擁護するのがキツくなっててきました…。時間をかけてどうこうというタイプの監督でもないですし。
システムやメンバーはまぁギリギリ許容範囲(これまでの4-3-3固定という経緯を踏まえて考えると。まぁその経緯からしておかしいですが)としても、組織として全く機能していないのはいかがなものかと。
厳密に言うと今回は、ボナベントゥーラトップ下、クルニッチとベナセル2ボランチの4-2-3-1(しかも流動性がほとんどないバージョン)といった方が適切かもしれませんが、いずれにせよ同じこと。
独力でボールを運べない両サイド、チャンスメイクできないトップ下、ボールキープできない1トップというとんでもない組み合わせ。これでは機能するはずもありません。

※ミランのスタメン選手の平均ポジション(右攻め。『WhoScored』より)
後半は流石に修正してくれるでしょうが、コンディション面が万全ではないイブラに早くも頼りたくなる何とも情けない状況です…。
後半
○後半序盤戦の攻防
スタートは特に変化なし。
49分、ミランの連携ミスからサンプドリアのカウンター。決定的なピンチを迎えるもドンナルンマのスーパーセーブにより事なきを得る。
55分、ピョンテク→イブラヒモビッチ
遂に王の登場。
ピョンテクは少し気の毒ではありますが、今日のような試合展開(裏への効果的なパスほとんどなし。基本的にいつものことですが。)だと出ている意味がほとんどないので致し方なし。
56分、ボナベントゥーラ→レオン
酷かったので妥当な交代。チャルハノールを一列下げてトップ下的な位置に配し、レオンを左ウイングに。
「4-3-3(4-2-3-1)固定」、「スソ起用」という2つの制約を己に課しているミランの状況を踏まえると、どちらも良い交代じゃないでしょうか。
そして何より、スソがサイドに張るようになる。ようやくまともな戦術修正。
これでクルニッチやカラブリアが飛び出せるし、流動性も出てくる。

※スソがサイドに張り、クルニッチ(紫)が前方の中央右寄りにポジショニング。前半では全く以て見られなかった形
上記の交代・修正により、惜しいチャンスを作れるようになるミラン。
まぁ、始めからやれよという話ですが…。
○後半中盤戦の攻防
チャルハノールのシュートはもはや魔法。よくあそこまでキーパーに向かって正確無比なボールを蹴れるなと。
先述の通りチャンスを作っていくミラン。
左サイドでドリブルを仕掛けられるレオンが推進力をもたらし、中央にスペースが出来たことでチャルハノールとクルニッチが活き始める。
そして何より、得点の匂いを常に感じさせるイブラはやはり特別ですし、万全とは程遠いコンディションながら動きも比較的良い。
そうしてイブラのヘッド、クルニッチとレオンのボレー等決定機を作っていきますが、決めきれず。
一方で、サンプドリアにもいくつか決定機を作られる。
大体はカラブリアのせいですが、スタミナ切れによってトランジションが遅くなり、カウンターを食らうようになったのも原因の一つでしょうね。まぁ恒例の展開です。
○後半終盤戦の攻防
終盤になり、スソのクロス練習が始まる。
スソをサイドに置くようになったのは、中央前方にスペースを空け、かつパス回しにおいて彼を経由するにしても、すぐに周囲の味方にボールを渡すからこそ良い修正だったと思うのですが、彼にボールを集めてクロスを連発する昨季のサッカーに逆戻りじゃ本末転倒。しかも、昨季と違って精度もまるでないクロスを連発。
ただ、個人的にもはやスソには何の期待もしてないし(試合記事以外で言及が極端に少ないのもそのため)、悪いのは彼を起用する監督だと思うので、彼に対して特に批判するつもりはありませんが…。
数少ない武器であった(特定のコースからの)クロスとミドルシュートの精度すら失った今、彼を起用する必要性をどこに見出せば良いのでしょうかね。ピオリ監督、教えてください。
85分、クルニッチ→パケタ
その後も得点は奪えず、試合終了。
ミラン0-0サンプドリア
○雑感
サンプドリア戦は従来のメンバーでも何とか行けると思っていましたが…読みが甘かったですね。反省します。
ピオリは…昔はもっと柔軟な人だったと思うんですけどね。
ボローニャ時代なんか、3バック・4バックを問わず様々なシステム・戦術を使い分けていたわけですが、今や見る影もありません。
インテル時代の失敗がよほど響いたのか、やけに消極的で、主力選手の顔色をうかがい(?)、面白味のない采配をするようになってしまいました。
それでも1つのシステムを完璧に機能させられるってなら一向に構いませんが、ご覧の有様ですからね…。
個人的に、今シーズン一杯は指揮を執ってもらいたい気持ちは変わらないですし、何とか浮上のキッカケを掴んで欲しいところです。
他にも言いたいことは山ほどありますが、時間の都合もあるので今回はネガティブな雑感はこの辺で。
続いて良かった点に目を向けますと、何といってもそれはイブラヒモビッチの復帰でしょう。
贔屓目に見ている部分も否定できませんが、やはり存在感が違います。
合流して未だ日が浅く、チームメイトとの連携や身体的コンディションが不十分な中であれだけのプレーを披露できるのは本当に素晴らしい。
昔ほどのパフォーマンスは無理でも、今なおチームの軸としてプレーし得るポテンシャルは示しましたから、今後はしっかりとイブラを中心とした組織作りを行って欲しいと強く願います。
さて。次節の相手となるカリアリは今シーズン躍進しているチームですし、非常に厄介なわけですが、今度こそここ数年のミランとは異なった姿を見せて欲しいですね。
もう何度同じことを書いてるかわかりませんが(笑)
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。