ベナセルとミランの半年間を振り返る 【プレースタイル/役割/今後の展望】
攻撃時にはアジリティと運動量を活かして幅広く動き回り、テンポ良くパスを散らしてリズムを作れていますし、守備時も広範囲のカバーリングに奔走しながら、タックルでボールを奪取します。
上記のいくつかのプレーを裏付けるデータをご紹介しますと、まず1試合における平均走行距離が10.494km(チーム内2位)、平均タックル成功数が2.3回(2位)、平均インターセプト数が1.7回(2位)、平均パス本数が47.7本(3位)、平均ドリブル成功数が2.6回(1位)といった感じです。
今回は攻撃面については割愛しますが、特筆すべきは守備面についてです。現状はあまりにもベナセルの負担が大きい。
基本は対面のトップ下ないしアンカーに対しマークに付きつつ、空きがちな両脇のスペースにも注意を払わなければならないという状況。更に被カウンター時には主に左サイドのテオの裏のスペースを懸命にケアし、隙あらば体を張ってボールを止めにいかなければなりません。
非常に頑張ってはいるものの、元々守備的な選手ではないですし、スペース管理が上手いわけでもありません。
実際に、現在のベナセルの与ファール数は1.8本でチーム2位、イエローカード数に至っては7枚で、チームどころかリーグ2位の多さです。
それに両インサイドハーフがパケタとクルニッチの時は、2人とも体を張ってボールを奪ってくれていましたが、それがボナベントゥーラとケシエになってからは益々彼の負担が増えた印象です。
アタランタ戦なんか本当に酷かったですからね。
このままだとベナセルが順調に成長できるかは怪しいですし、もっと彼の守備面の負担を減らして欲しいというのが率直な思いです。
アンカー起用でもシステムが3-5-2ならだいぶ話は変わってきますが、やらないでしょうしね…。
Résultat décevant malgré un match solide de l'équipe 🔴⚫️ @acmilan
— Ismaël Bennacer (@IsmaelBennacer) 2019年11月11日
Place maintenant à l'équipe nationale 🇩🇿 #DZ pic.twitter.com/cFOuf45rWf

さて。そんな中、一部報道では新しくアンカーを補強し、ベナセルをインサイドハーフ(兼アンカー)に回すという話があります。
現戦術・システムだと守備的なアンカーの補強はマストですし、そうなるとベナセルを一列前で起用することになるのは妥当だと思います。
それに、細かいテクニックと運動量があり、スペースを見つけるのが上手く、それでいてスルーパスの出せる彼ならボールの運び役orチャンスメーカーとして十分に適応可能だと思いますし(そもそも元々はインサイドハーフ)、何より守備の負担をだいぶ軽減できるのは大きい。
得点力と、特定の状況における判断の遅さ(右足が使えないため、詰まるときがある)がやや気になりますが、それ以外は特に問題ないかなと。
いずれにせよ、素晴らしい才能を持つベナセルの成長が来年は本当に楽しみですし、このまま順調に出場機会を重ねていって欲しいと思います。
○おまけ
数カ月前に載せようと思ったまま、お蔵入りになったベナセルに関する小話を最後に一つご紹介します。
以前のとあるインタビューによりますと、ボバンがベナセルに対し、以下のようなアドバイスを送ったそうです。
「かつて、ピルロがどのようにプレーしていたかを観るんだ。彼は決して速いわけではなかったが、常にボールの行方とチームメイトの位置を把握していた。そしてポジショニングはいつだって完璧だった。」
これを受け、ベナセルは現在ビデオでピルロの研究をしているそうです。
まさにボバンの言う通りだと思いますし、一般的にレジスタと呼ばれる有望な若手には「ピルロ研究」を義務付けるべきではないでしょうか(笑)