アタランタ対ミラン 【セリエA第17節/マッチレポート】
試合内容が内容だけにかなり辛口になりましたが、寛大な心でお許しください(笑)
スタメン

ミランはレオンを1トップに抜擢。
テオが欠場し、サイドで起点を作れそうにない状況だったため、レオンの起用自体はアリだと思います。でも1トップかぁ、と。
対するアタランタは、パプ・ゴメスとイリチッチが復帰。便宜上3-4-1-2としましたが、流動的な2トップです(後述します)。
○前半
(※キャプチャ画像の映像引用元はいずれも『Dazn』)。
序盤からアタランタが攻め込む。
左サイドへと流れるゴメスを起点に、徹底的に左から攻め込んでミランを押し込んでいきます。
左WBのゴセンスが積極的にオーバーラップしてコンティを釘付けにし、ゴメスがその後ろでボールを動かす。その後ゴメスとゴセンス、そこにトップ下のマリノフスキーが絡んで崩していく形が基本です。

――ゴメス(赤)、ゴセンス(青)、マリノフスキー(緑)のポジショニング
ゴメスに対しては、基本的にケシエかスソが付きますが、相変わらずユルユルのマーク。
しかも、2人とも最初はそれぞれボランチ(パシャリッチ)、左CB(ジムシティ)に寄っていることが多いため、ゴメスへのマークに遅れるシーンが目立ちます。
さらにそこへ、背後からCBのジムシティが上がってきたらもうお手上げ状態ですね。
そんな感じでアタランタが押し込んでいくと、開始早々の10分。ゴメスが独力で左サイドをぶち抜き、アタランタが先制に成功します。
その後もアタランタにタコ殴りにされるミラン。
流動的に動くゴメスを全く捕まえきれず、彼を中心にひたすらに攻め込まれます。
なにしろ、中盤にスペース管理の出来る選手が誰もおらず、かつ戦術的にマンツーマン志向の強い今のミランの守備にとって、アタランタのように流動的な攻撃を持ち味とするチームは最悪の相性。
2トップのゴメスやイリチッチが自由に動いて中盤のスペースを使われますし、CBも4バックなので積極的に潰しにいくのが難しい(そもそもそういうのが得意なタイプでもない)という状況ですからね。
そんな中であっても、相対的に守備の上手いクルニッチを冷遇し続ける実に興味深いピオリ様の
まぁこの試合でケシエの守備が良いみたいな風潮が完全に霧散すれば良いんですけどね。
余談ですが、そういえばフィオレンティーナ戦でも、キエーザとリベリの流動的な2トップにボコボコにされたことを思い出しました。
当時は監督も戦術も異なる一方で、出場メンバーのタイプはほぼ同じ感じでしたしね。
閑話休題。一方のミランの攻撃は、速攻からレオンが両サイドCBの裏に抜け出して起点を作り、そこから何とかしようという形と、サイドチェンジによって空き気味のサイドを突いていく形がメイン。
これは間違いなく想定していた形でしょうね。ただレオンを起用すること、そしてサイドに流れさせること自体は良いと思うわけですが、一方で「誰が点を取るの?」という根本的な問題が露呈。
1トップのレオンがサイドに流れれば、当然その中央のスペースへ飛び込む選手が求められるわけですが、今節のミランで言えばその選手は主にチャルハノールとボナベントゥーラです。

――レオン(黄)が中央から右サイドへと抜け出してクロス。エリア内にはチャルハノール(紫)と、画面外からボナベントゥーラが侵入
まぁボナベントゥーラはギリギリ良いとしても、チャルハノールはないでしょうと。
中央から細かくポゼッションで崩していくスタイルなら未だわかりますが、今節のような速攻スタイルなのであれば、何より求められるのはスピードがあって決定力のある選手のはず。
ですので、ピョンテクと組ませる必要があると思いますし(出来れば2トップがいいけど、それが無理ならウイングにレオン)、どうしても1トップにレオンという形を崩したくないのであれば最低限ウイングにカスティジェホでしょうと。
また、テオの不在や、アタランタの攻撃サイドの偏りからして、おそらくミランは主に右サイドからのカウンターを想定していたはずです。
スソを若干中央寄り高めに攻め残らせつつ(押し込まれるため、大体において後方で守備参加せざるを得ませんでしたが)、ボールを奪ったら即座に彼に渡して速攻みたいな感じですね。
そして、その分空きがちになる後方のスペースを機動力のあるケシエで埋めようみたいに考えてたんじゃないでしょうか。
しかし、勿論この計画は完全に瓦解。こうなるのは火を見るよりも明らかでしたけどね。
というのも、脅威のカウンターストッパーであるスソ、守備技術のないケシエに期待できる役割ではないですから。
そして、アタランタの先述の攻め&速いトランジション+推進力が皆無でボールを運べないミラン両ウイング+カウンターの起点となるべきパスを尽くミスるケシエ&ベナセルというトリプルコンボにより、全くといって良いほどチャンスを作ることができず、押し込まれる時間が長く続きました。
それに何より、テオがいないのが本当に痛恨です。彼の強引なドリブル突破による押し上げができませんし、左サイドが全くといっていいほど使えないですからね。
試合終盤からは、アタランタはゴメスが積極的に右にも流れ出して右サイドからも攻め込む。
右サイドではこれまでイリチッチをロマニョーリが割と抑え込んでいたこともあって比較的上手く守れていましたが、ゴメスも絡んでいくことで危ないシーンを作られるようになります。
それでも何とか守り切って前半終了。1-0という望外のスコアで折り返すことができました。
○後半
ミランは前半同様、レオン君お願いしますサッカーを継続。ただひたすらレオンが速攻からボールをキープし、どうにかしようとする展開。
レオンはかなり頑張ってましたけど、サイドに流れてからの動きとパスの判断はまだまだだし、先述の通り彼を支えるはずの両翼がよろしくないためどうしようもない状況。
プレーエリアもプレーの幅も狭小なスソと、連携ありきのチャルハノールとの3人で流動的なカウンターなど機能するはずもありませんしね。
一方、アタランタはゴメスがマリノフスキーと位置を入れ替えトップ下に変更。
よりポゼッション色を高めつつ、両サイドからバランス良く崩したいという狙いでしょうかね。前半は左サイドに偏っていましたしね。
また、マリノフスキーは前半のゴメスほどワイドには張らず、左のハーフスペース辺りにポジショニング。より中盤の密度を高め、中央のスペースを突いていくという狙いもあるのでしょう。
そして、ゴメスに対するマーク担当はポジション的にベナセルになったのでしょうが、ゴメスは上下に動き回るし、相手2トップが下がってパスを貰おうとするためそちらのプレーに気を取られ、前半同様ゴメスを全く捕まえきれない状態です。

――ゴメスのヒートマップ(右攻め。『WhoScored』より)。なお、ボールタッチ数、パス本数、キーパス、ドリブル成功数のいずれもトップの数字
今さら言うまでもないことですが、ゴメスは本当に素晴らしい。
テクニック、ドリブル、パス、インテリジェンスとあらゆる能力が高いですし、こういう選手が中心だと本当に強いチームを作れますよね。
カターニャ時代から個人的にお気に入りの選手でしたが、彼のような傑物がちゃんと脚光を浴びるのは素直に嬉しいことです。
しかしミラン戦だけは活躍するのを止めてください(笑)
さて。そんなわけで試合は前半同様にアタランタに押し込まれる展開が続きます。
すると61分。ゴセンスのシュート性のボールをパシャリッチが触って押し込み、アタランタが追加点。

――2点目に至る少し前のシーン。中央のゴメス(赤)がフリーでパスを受け、左サイドへとロングボールを展開してゴールに繋げた。ベナセル(水)はこれ以前にマリノフスキーのマークに付いていたため、ゴメスの下がる動きに対応できず
その直後の63分、ロングカウンターからイリチッチに決められてアタランタが3点目。
コンティもベナセルも試合を通して酷すぎますね…(ベナセルは同情の余地ありですが)。
この辺りから僕の抱いていた怒りが悲しみ、そして虚無感へと変わります。
その後は72分、83分にそれぞれイリチッチとムリエルが決めてアタランタが計5得点の大勝、と。
ガスペリーニの満面の笑みがこの試合を観ていてほっこりとした唯一の場面でした(笑)
アタランタ5-0ミラン
○雑感
※試合の雑感については前回の記事「さらば愛しきディアボロ ~アタランタ戦雑感~ 」で書き殴ったため、当記事では割愛します
さて。新年初戦となる次節の相手はサンプドリアです。
現在は17位と下位に沈んではいるものの、当然油断はできません。
それに、現監督はラニエリ。個人的に、どうにもラニエリおじさん率いるチームとは戦績が良くない印象があるのですが、実際のところどうなんでしょうか。
まぁ何にせよ、この嫌な流れを断ち切るためにも勝利は必須です。
今節の歴史的敗戦を教訓にし、新しいミランを見せてほしいと思います。
Forza Milan!
最後まで読んでいただきありがとうございました。